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第437話 【閑話】モナミのそれから3
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男性探しの旅もいよいよ終盤です。
ルージュ領は毎年『男性選手権』が催されていることから各都市だけを巡り、少し前から最後の王領内を旅しています。
ルージュ領から王領に入ると王都には寄らず周りの都市や町を先に巡ってきています。
後は王都を残すだけですね…、この調子なら今年の領主会議までには余裕を持って帰ることが出来そうです。
でも…。
「モナミ様~、“シャルル巻き”が食べたいです~」
「もう我慢の限界ですよ~」
「わ…私もよ!」
王領に入って数日は我慢できましたが日が経つにつれ“シャルル巻き”で頭がいっぱいになって、テラとナンシーが言うように、もう男性探しどころではありませんでした。
「あと数日の辛抱よ。王領が終わればもう一度ルージュ領都に向かうから…」
当初の予定なら王領が終わればそのままパレス領に向かうつもりだったのですが、最後に食べておかないと…、もう我慢が出来ません。
「ほ…本当ですよ、モナミ様…」
「好きなだけ食べさせてくださいね…」
「分かったわよ」
今日中には王都に着きます。
王都には名物の“ばーむ”があるわ…。
少しでも“シャルル巻き”を忘れさせてくれるようなお菓子を食べましょう。
XX XY
「シャルルは戻って来ませんね~、どうしたのかしら?」
「マイヤさんの方はどう?」
「はい、初回販売分は完成していますし発売日も決まりました」
「ただ…、次回分からどうしようかと…」
「どういう事ですか?」
「はい、初回分はこれまで製作時間が十分あったのですが、これから毎月販売分を生産するにはどうしても5人では難しいのです。シャルル様が戻って来られたら相談しようと思っているのですが…」
「そうでしたね…。おそらくシャルルは従業員を増やそうとするかもしれませんよ。それまでは二ヶ月に一度、又は生産数が揃ってからの販売でもかまわないのではないですか」
「そうですよね…。さすがにいつまでも5人だけというわけにはいきませんね。“シャルルの糸”もどこで生産するか決まっていませんし…」
シャルル魔道具製作所の従業員を増やすことも出来ますが…。
「個人的な需要は“シャルルの糸”の方があるでしょうからねぇ」
「メロさんの所のように信頼できる魔道具製作所が無ければやはり従業員の募集を検討しておく必要がありそうですね。メロさんにもそれとなく伝えておきます」
「ええ、マイヤさんお願いしますね」
「シェリー、マイヤ、ただいま…」
「「えっ!? シャ…ルル(様)~」」
「今ちょうどシャルルの話をしていたのよ。なかなか戻って来ないから…」
「そうなんだ…、色々あってね…。マイヤも長い間任せっぱなしでごめんね」
「そんなこと…、私はシェリー様のおかげで毎日不自由なく過ごせてますから…」
「今日から数日はルージュ領都に用事があるのだけれど、その後シャルル巻きのお店の皆と少し旅に出るからそれまでにマイヤとトイカお姉さんをケープノット領都に送って行こうと思っているんだ」
「旅ですか…?」
「そう、皆はほとんど領都から出る事が無いからね。気晴らしをさせてあげようと思っているんだよ。エマ達の覚醒もあるし…」
「そうでしたか…。シャルルと一緒に旅とは羨ましいですよ」
「ではシャルル様、“シャルルの渦”についてご相談したい事もありますからケープノット領都へ戻るのは明日でもかまいませんか?」
「もちろん、じゃあ相談が終わってからマイヤとルージュ領都へ戻ろうかな。明日はトイカお姉さんと合流して、久しぶりに『シャルル魔道具製作所』の皆にも顔を出しておいてもらわないとね…」
「は…はいっ!」
「あっ、そうだ…、マイヤとは“シャルルの糸”についても相談が出来ていなかったよね。とりあえずメロお姉さんのところへ行こうか…」
「はいっ」
「わ…私も付いて行きますよ~」
XX XY
夕方前には王都に到着しました。
シェリー様への挨拶は明日にしてまずは宿を取るようにテラに伝えます。
もう夕食は“ばーむ”で良いかしら…、とにかく美味しいお菓子が食べたいところです。
宿にチェックインすると早速街を歩きます。
テラとナンシーも同じことを考えていたようで、夕食は“ばーむ”に決まりました。
お菓子のお店は早く閉まるので早目に食べに行かなければなりません。
「モナミ様、あんなところに『シャルル魔道具販売所』がありますよ」
「本当ね…、一等地じゃない…。確か“シャルルの風”を販売する為に各領都にあるのよね」
「本当にシャルル様は凄い方なんですねぇ~」
「……」
テラが感心するように、今は『男性選手権』の優勝者のシャルル、“シャルルの風”の発明者のシャルル、そして“シャルル巻き”の考案者のシャルル、全てが同一人物と分かっています。
お母様までがそのシャルル様に会っているだなんてね…。
「モナミ様、『シャルル魔道具販売所』に荷物が運び込まれているようです」
「そうみたいね…。ちょっと見に行ってみましょう」
近づくといくつか大きさの違う物を運び入れているところでした。
“シャルルの風”とは大きさが違いますね。
「すいません、皆さんは『シャルル魔道具販売所』の関係者の方なのですか?」
「は…はい…」
私が突然声を掛けたので薄褐色の肌の女性は驚いているようでした。
「それは“シャルルの風”ではないのですか?」
「す…すいません。先ほどは驚いて返事をしてしまいましたが、実際には私達は魔道具製作所の者です。シャルル様の発明品を少しずつ運び入れて販売の準備を進めているのです」
「そうでしたか…」
そう言われて魔道具販売所を見ると、閉じられたお店の入り口には『“シャルルの渦”近日発売』と張り紙がされていました。
「“シャルルの渦”…ですか…?」
また新しい発明品なのね…。
それにしてもこの女性、すごい体型ですね。
私も体型には自信がある方ですが、この方の胸はシャツから飛び出してきそうです。
そして、周りにいる女性達も全員が薄褐色の肌の女性のようです。
「皆さんがシャルル様の発明品を生産されているという事ですか?」
「はい、今回新たに販売予定の“シャルルの渦”の生産を任されています」
この胸の飛び出してきそうな女性がそう答えると、周りの女性も嬉しそうに微笑んでいます。
「もしかして、皆さんはシャルル様にお会いになったことが?」
「はい、もちろんです。今日もお会いしましたよ」
「何度見てもたくましくて、格好良くて、優しいお方です」
「です、です!」
「今日、シャルル様に触っちゃった~」
「またお話ししたいなぁ~」
「何ですって!? 今日シャルル様が王都に…?」
「えっ、シャルル様をご存知なのですか!?」
「いえ、その…あの…、ご存知と言う訳では…き…気にしないでください…」
くっ、羨ましい…。
彼女達までシャルル様を知っているだなんて~。
「さぁ、クララにレイ、ノルンとジュリも作業を続けますよ」
「「「「はいっ」」」」
「ごめんなさいね、お手間をとらせて…」
私達も邪魔にならないようにその場を離れることにしました。
XX XY
翌朝、シェリー様にご挨拶するために王城へ向かいます。
昨日は『シャルル魔道具販売所』に立ち寄ったせいで“ばーむ”を食べ損ねてしまいました。
それに街でもシャルル様らしき男性を見掛けませんでした。
シャルル様を知る人みんながたくましくて格好良いと言うのですから街にいれば目立って話題になると思うのですが…、そんな噂も聞こえてきませんでしたね。
まさか王城に滞在されているとか…。
コンコン、コン。
ガチャ…。
「モナミ様、お待たせいたしました。シェリー様がお見えです」
「ようこそモナミさん、お久しぶりですね」
「シェ…シェリー様、突然の訪問申し訳ありません。只今旅をしておりまして王都に立ち寄りましたのでご挨拶に参りました」
「それはご丁寧に…。モナミさんが旅をされているのはローレン様から聞いていましたよ。あれは…モナミさんが旅に出られた後でしたね…」
そうおっしゃるシェリー様は少し前にお会いしたサマンサ様と同じくらい若々しく変貌されていました。
まるで20代になったばかりのようで、私の後ろに立っているテラとナンシーも感嘆の声をもらしています。
「そうなのですか!?」
それにしても…。
「シェ…シェリー様、とっても若々しくてお綺麗ですね。…と言いますか若返られたようですよ」
「フフ…、ありがとうモナミさん」
「あれっ? シェ…シェリー様…、左右の瞳の色が違っているんじゃ…?」
「やっぱり気付きましたか。これはカラードの一種みたいなものだと思ってください。少し前に色が変わったのです」
「そんなことが…」
黒色の瞳なんて初めて見ましたよ。
だいたいシェリー様の年齢でカラードのように変化する訳が…。
「そ…そういえばユナ様はいらっしゃるのですか? お元気にされているのでしょうか? せっかくですから一目お会いしてご挨拶を…」
「フフ…、もう元気にしていますよ~。あの娘にもようやくパートナー候補が決まりましてね。今はその方のところへ行っているのです」
「そ…そうなのですか、それはおめでとうございます」
えぇ~っ、ユナ様もパートナー候補を見つけられたですって~!?
オーリエさんに続いて…、アデルさんもパートナー候補を見つけられたようなことを言っていましたし…。
「オ…オーリエさんがシャルル様という方のパートナー候補になられたことはご存知ですか?」
「もちろんです。シャルル…様以上の男性はこの世界にはいないでしょうね。幸運な事です…」
シェリー様の後ろに控えておられるメイドの方も頷いておられます。
以前領主会議でこちらのメイドの方を見たことがありますがこの方も若々しく変貌されています。
二人ともテラやナンシーより若く見えますし、なんだか15歳の私よりも艶やかで瑞々しく見えるのです。
「ちなみにユナ様のお相手はどんな方なのですか?」
「フフ…、今は内緒です。今年の領主会議で大々的に発表する予定なのですよ。きっと驚かれますよ~」
私自身もシャルルのパートナーで、シャルルの子供を胎内に宿しているのですからね。
「そ…そうですか…、それは楽しみです」
こ…心が折れそう…。
サマンサ様に続きシェリー様も領主会議で発表ですか…。
本当に今年の領主会議は凄いことになりそうです。
このままだと私の目の前でオーリエさんとユナ様のパートナーを紹介されることになるのでしょう。
「シェ…シェリー様、もう一つお伺いしたいことが…」
「何でしょう…?」
XX XY
「モナミ様、サマンサ様もシェリー様も30歳を超えておられるのですよね?」
「凄かったです…。髪があんなに艶やかで、肌もシワやくすみが無く瑞々しくて…」
「私も驚きましたよ」
お母様の方がかなり年上に見えますね…。
残念なのはシャルル様は王城に立ち寄られた後、昨日の内に王都から離れられたとのことでした。
シェリー様はルージュ領都に向かわれたとおっしゃっていましたが、おそらく追いつくことは不可能でしょう。
またしてもお会い出来ませんでした…。
「ハァ~、私って本当に運がないのかな~」
「モナミ様、元気を出してください!」
「そうです。王都はこの国の中心ですよ。せっかく来たのですからせめて美味しい物を食べて素敵な男性を見つけましょうよ…」
「そ…そうね…」
相変わらずテラとナンシーはお気楽です。
でもシェリー様が“シャルル様以上の男性はこの世界にはいない”って…。
あれほどはっきり言われると私の旅は意味があるのかなぁって、ちょっと悲しくなりますよ。
ルージュ領は毎年『男性選手権』が催されていることから各都市だけを巡り、少し前から最後の王領内を旅しています。
ルージュ領から王領に入ると王都には寄らず周りの都市や町を先に巡ってきています。
後は王都を残すだけですね…、この調子なら今年の領主会議までには余裕を持って帰ることが出来そうです。
でも…。
「モナミ様~、“シャルル巻き”が食べたいです~」
「もう我慢の限界ですよ~」
「わ…私もよ!」
王領に入って数日は我慢できましたが日が経つにつれ“シャルル巻き”で頭がいっぱいになって、テラとナンシーが言うように、もう男性探しどころではありませんでした。
「あと数日の辛抱よ。王領が終わればもう一度ルージュ領都に向かうから…」
当初の予定なら王領が終わればそのままパレス領に向かうつもりだったのですが、最後に食べておかないと…、もう我慢が出来ません。
「ほ…本当ですよ、モナミ様…」
「好きなだけ食べさせてくださいね…」
「分かったわよ」
今日中には王都に着きます。
王都には名物の“ばーむ”があるわ…。
少しでも“シャルル巻き”を忘れさせてくれるようなお菓子を食べましょう。
XX XY
「シャルルは戻って来ませんね~、どうしたのかしら?」
「マイヤさんの方はどう?」
「はい、初回販売分は完成していますし発売日も決まりました」
「ただ…、次回分からどうしようかと…」
「どういう事ですか?」
「はい、初回分はこれまで製作時間が十分あったのですが、これから毎月販売分を生産するにはどうしても5人では難しいのです。シャルル様が戻って来られたら相談しようと思っているのですが…」
「そうでしたね…。おそらくシャルルは従業員を増やそうとするかもしれませんよ。それまでは二ヶ月に一度、又は生産数が揃ってからの販売でもかまわないのではないですか」
「そうですよね…。さすがにいつまでも5人だけというわけにはいきませんね。“シャルルの糸”もどこで生産するか決まっていませんし…」
シャルル魔道具製作所の従業員を増やすことも出来ますが…。
「個人的な需要は“シャルルの糸”の方があるでしょうからねぇ」
「メロさんの所のように信頼できる魔道具製作所が無ければやはり従業員の募集を検討しておく必要がありそうですね。メロさんにもそれとなく伝えておきます」
「ええ、マイヤさんお願いしますね」
「シェリー、マイヤ、ただいま…」
「「えっ!? シャ…ルル(様)~」」
「今ちょうどシャルルの話をしていたのよ。なかなか戻って来ないから…」
「そうなんだ…、色々あってね…。マイヤも長い間任せっぱなしでごめんね」
「そんなこと…、私はシェリー様のおかげで毎日不自由なく過ごせてますから…」
「今日から数日はルージュ領都に用事があるのだけれど、その後シャルル巻きのお店の皆と少し旅に出るからそれまでにマイヤとトイカお姉さんをケープノット領都に送って行こうと思っているんだ」
「旅ですか…?」
「そう、皆はほとんど領都から出る事が無いからね。気晴らしをさせてあげようと思っているんだよ。エマ達の覚醒もあるし…」
「そうでしたか…。シャルルと一緒に旅とは羨ましいですよ」
「ではシャルル様、“シャルルの渦”についてご相談したい事もありますからケープノット領都へ戻るのは明日でもかまいませんか?」
「もちろん、じゃあ相談が終わってからマイヤとルージュ領都へ戻ろうかな。明日はトイカお姉さんと合流して、久しぶりに『シャルル魔道具製作所』の皆にも顔を出しておいてもらわないとね…」
「は…はいっ!」
「あっ、そうだ…、マイヤとは“シャルルの糸”についても相談が出来ていなかったよね。とりあえずメロお姉さんのところへ行こうか…」
「はいっ」
「わ…私も付いて行きますよ~」
XX XY
夕方前には王都に到着しました。
シェリー様への挨拶は明日にしてまずは宿を取るようにテラに伝えます。
もう夕食は“ばーむ”で良いかしら…、とにかく美味しいお菓子が食べたいところです。
宿にチェックインすると早速街を歩きます。
テラとナンシーも同じことを考えていたようで、夕食は“ばーむ”に決まりました。
お菓子のお店は早く閉まるので早目に食べに行かなければなりません。
「モナミ様、あんなところに『シャルル魔道具販売所』がありますよ」
「本当ね…、一等地じゃない…。確か“シャルルの風”を販売する為に各領都にあるのよね」
「本当にシャルル様は凄い方なんですねぇ~」
「……」
テラが感心するように、今は『男性選手権』の優勝者のシャルル、“シャルルの風”の発明者のシャルル、そして“シャルル巻き”の考案者のシャルル、全てが同一人物と分かっています。
お母様までがそのシャルル様に会っているだなんてね…。
「モナミ様、『シャルル魔道具販売所』に荷物が運び込まれているようです」
「そうみたいね…。ちょっと見に行ってみましょう」
近づくといくつか大きさの違う物を運び入れているところでした。
“シャルルの風”とは大きさが違いますね。
「すいません、皆さんは『シャルル魔道具販売所』の関係者の方なのですか?」
「は…はい…」
私が突然声を掛けたので薄褐色の肌の女性は驚いているようでした。
「それは“シャルルの風”ではないのですか?」
「す…すいません。先ほどは驚いて返事をしてしまいましたが、実際には私達は魔道具製作所の者です。シャルル様の発明品を少しずつ運び入れて販売の準備を進めているのです」
「そうでしたか…」
そう言われて魔道具販売所を見ると、閉じられたお店の入り口には『“シャルルの渦”近日発売』と張り紙がされていました。
「“シャルルの渦”…ですか…?」
また新しい発明品なのね…。
それにしてもこの女性、すごい体型ですね。
私も体型には自信がある方ですが、この方の胸はシャツから飛び出してきそうです。
そして、周りにいる女性達も全員が薄褐色の肌の女性のようです。
「皆さんがシャルル様の発明品を生産されているという事ですか?」
「はい、今回新たに販売予定の“シャルルの渦”の生産を任されています」
この胸の飛び出してきそうな女性がそう答えると、周りの女性も嬉しそうに微笑んでいます。
「もしかして、皆さんはシャルル様にお会いになったことが?」
「はい、もちろんです。今日もお会いしましたよ」
「何度見てもたくましくて、格好良くて、優しいお方です」
「です、です!」
「今日、シャルル様に触っちゃった~」
「またお話ししたいなぁ~」
「何ですって!? 今日シャルル様が王都に…?」
「えっ、シャルル様をご存知なのですか!?」
「いえ、その…あの…、ご存知と言う訳では…き…気にしないでください…」
くっ、羨ましい…。
彼女達までシャルル様を知っているだなんて~。
「さぁ、クララにレイ、ノルンとジュリも作業を続けますよ」
「「「「はいっ」」」」
「ごめんなさいね、お手間をとらせて…」
私達も邪魔にならないようにその場を離れることにしました。
XX XY
翌朝、シェリー様にご挨拶するために王城へ向かいます。
昨日は『シャルル魔道具販売所』に立ち寄ったせいで“ばーむ”を食べ損ねてしまいました。
それに街でもシャルル様らしき男性を見掛けませんでした。
シャルル様を知る人みんながたくましくて格好良いと言うのですから街にいれば目立って話題になると思うのですが…、そんな噂も聞こえてきませんでしたね。
まさか王城に滞在されているとか…。
コンコン、コン。
ガチャ…。
「モナミ様、お待たせいたしました。シェリー様がお見えです」
「ようこそモナミさん、お久しぶりですね」
「シェ…シェリー様、突然の訪問申し訳ありません。只今旅をしておりまして王都に立ち寄りましたのでご挨拶に参りました」
「それはご丁寧に…。モナミさんが旅をされているのはローレン様から聞いていましたよ。あれは…モナミさんが旅に出られた後でしたね…」
そうおっしゃるシェリー様は少し前にお会いしたサマンサ様と同じくらい若々しく変貌されていました。
まるで20代になったばかりのようで、私の後ろに立っているテラとナンシーも感嘆の声をもらしています。
「そうなのですか!?」
それにしても…。
「シェ…シェリー様、とっても若々しくてお綺麗ですね。…と言いますか若返られたようですよ」
「フフ…、ありがとうモナミさん」
「あれっ? シェ…シェリー様…、左右の瞳の色が違っているんじゃ…?」
「やっぱり気付きましたか。これはカラードの一種みたいなものだと思ってください。少し前に色が変わったのです」
「そんなことが…」
黒色の瞳なんて初めて見ましたよ。
だいたいシェリー様の年齢でカラードのように変化する訳が…。
「そ…そういえばユナ様はいらっしゃるのですか? お元気にされているのでしょうか? せっかくですから一目お会いしてご挨拶を…」
「フフ…、もう元気にしていますよ~。あの娘にもようやくパートナー候補が決まりましてね。今はその方のところへ行っているのです」
「そ…そうなのですか、それはおめでとうございます」
えぇ~っ、ユナ様もパートナー候補を見つけられたですって~!?
オーリエさんに続いて…、アデルさんもパートナー候補を見つけられたようなことを言っていましたし…。
「オ…オーリエさんがシャルル様という方のパートナー候補になられたことはご存知ですか?」
「もちろんです。シャルル…様以上の男性はこの世界にはいないでしょうね。幸運な事です…」
シェリー様の後ろに控えておられるメイドの方も頷いておられます。
以前領主会議でこちらのメイドの方を見たことがありますがこの方も若々しく変貌されています。
二人ともテラやナンシーより若く見えますし、なんだか15歳の私よりも艶やかで瑞々しく見えるのです。
「ちなみにユナ様のお相手はどんな方なのですか?」
「フフ…、今は内緒です。今年の領主会議で大々的に発表する予定なのですよ。きっと驚かれますよ~」
私自身もシャルルのパートナーで、シャルルの子供を胎内に宿しているのですからね。
「そ…そうですか…、それは楽しみです」
こ…心が折れそう…。
サマンサ様に続きシェリー様も領主会議で発表ですか…。
本当に今年の領主会議は凄いことになりそうです。
このままだと私の目の前でオーリエさんとユナ様のパートナーを紹介されることになるのでしょう。
「シェ…シェリー様、もう一つお伺いしたいことが…」
「何でしょう…?」
XX XY
「モナミ様、サマンサ様もシェリー様も30歳を超えておられるのですよね?」
「凄かったです…。髪があんなに艶やかで、肌もシワやくすみが無く瑞々しくて…」
「私も驚きましたよ」
お母様の方がかなり年上に見えますね…。
残念なのはシャルル様は王城に立ち寄られた後、昨日の内に王都から離れられたとのことでした。
シェリー様はルージュ領都に向かわれたとおっしゃっていましたが、おそらく追いつくことは不可能でしょう。
またしてもお会い出来ませんでした…。
「ハァ~、私って本当に運がないのかな~」
「モナミ様、元気を出してください!」
「そうです。王都はこの国の中心ですよ。せっかく来たのですからせめて美味しい物を食べて素敵な男性を見つけましょうよ…」
「そ…そうね…」
相変わらずテラとナンシーはお気楽です。
でもシェリー様が“シャルル様以上の男性はこの世界にはいない”って…。
あれほどはっきり言われると私の旅は意味があるのかなぁって、ちょっと悲しくなりますよ。
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