DNAの改修者

kujibiki

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第364話 【閑話】娘達のそれから

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「ようやくジャトワン領の都市、イーポートに着いたわね」

パレス領都から陽の出る方向にある都市ランタン経て、少し前にようやくジャトワン領内に入りました。
宿にチェックインする頃には辺りも薄暗くなってきています。

「本当ですよ、もう~」

「モナミ様は我が儘ばかり…」

「テラ、ナンシー、仕方が無いじゃない。良い男がいると聞けば見ておかないといけないでしょう。その為の旅なのよ」

小さな町にも寄っているので日数が掛かってしまうのは仕方がありません。
オーリエさんはどの辺りを旅しているのでしょうか…、いつか遭遇したりして…。

「すでに幾人か男性に会われましたが、お気に召さなかったようですね。モナミ様はどんな男性を探しておられるのですか?」

男性から相手にされていなかったとも言えますが…。

「そうね、私より強い男性が良いわね」

「プフッ…、そんな男性いるわけが…」

「前のパートナー候補の方で良かったのでは…」

「あなた達はパートナーを見つけて、“誕生の儀”をするつもりが無いからそんなことが言えるのよ」

領主の娘として“誕生の儀”を行うのは唯一の使命みたいなものですから、せめて納得できる男性の精子で“誕生の儀”をしたいのです。

「私達はメイドですから…、それに男性と知り合うことも無いですからね…」

「それよりモナミ様、他領の都市に来たのですからローレン様に手紙を書いてくださいね」
「私達もタバサ先輩からきつく言われていますから…」

「わ、分かってるわよ…」

別に本当に私より強くなくていいのよ。
ただ、私が魔法を使っても怖がらず、普通の女性として扱ってくれるような男性であれば…。



XX XY



あれから何度かルージュ領都へ“シャルル巻き”を食べに来ていますが、シャルル様にはお会いできていません。

シャルル様に直接聞いてみたいこともあるけれど、とにかく会いたいという気持ちでいっぱいです。

ヨルンも“シャルル巻き”のお店に来れば真っ先に奥の席に目をやり、シャルル様がおられないか確認しているようです。

先ほども店員さん達にシャルル様のことを伺いましたが、しばらくお店には来られていないとのことでした。
そう言えばお住まいはどこなのでしょう…。



先日、ようやく“シャルルの風”が少量ずつですが各領都で販売されるようになりました。

屋敷の者達も朝早くから買いに行っていたようです。
それにしてもシャルル様が“シャルルの風”の発明者でもあるのでしょうか…。

あのサマンサ様の意味有りげな言葉が頭から離れません。
“シャルル巻き”を食べにルージュ領都へ来るたびにサマンサ様に改めて確認すれば良いのでは思うのですが、なぜか躊躇してしまうのです。

「お母様…?」

私自身、それを知ってしまってどうするつもりなのでしょうか。
なんだか胸の奥がモヤモヤするのです。

いえ、違いますね。
モヤモヤするのはサマンサ様が再び“誕生の儀”をされると聞いたからに違いありません。

あの歳で再び“誕生の儀”をするですって…?
つまり誰かしらの精子が必要となってくるのですが、そんなことが本当にありえるのでしょうか…。

「お母様ったら…!」

ハッ…。
「ア…アデルどうしたの?」

「お母様もおかわりですよね?」

アデルにそう言われ自分のお皿を見るとすでに“シャルル巻き”はありませんでした。

「そ、そうね。お願いします…」

アデルもヨルンもあれから何も言いませんが、このお店に来るたびにシャルル様を探しているのは分かります。

アデルがシャルル様のパートナー候補の一人になりたいと言うのも良く分かります。
私もあれほど格好良くてたくましい男性は見たことがありません。
それに賢くて優しくて、人柄も良く不思議な力を持った男性…。
私も若ければきっとアデルと同じように思うことでしょう。

しかし、ジャトワン領都の後継者の事を考えると…。
それに今からパートナー候補の一人になったからと言って、オーリエさんはともかくあの若々しくて綺麗な女性達に今のアデルが勝てるわけが無いのです。

ハァ~~~。

「お…お母様!」

「今度は何…?」

「サマンサ様とシェリー様が…」

「えっ!?」

アデルが驚いた顔で店頭の方を見ていたので私も振り返って見ると、そこにはサマンサ様とシェリー様がおられたのです。

「サマンサ様にシェリー様…」

「やっぱりエンターシャ様でしたか、本当によく食べに来られているのですね」

「私達もご一緒していいかしら…」

「もちろんです、シェリー様…」

シェリー様達はそれぞれお一人お供の方を連れてこられています。

「シェリー様もよくこちらに来られるのですか?」

「“シャルル巻き”は本当に美味しいですからね。それにシャルル様のお店ですから…」

シャルル…?
シェリー様まで様付で呼んでおられるのね。

「そういえば、サマンサ様から聞きましたが、エンターシャ様もシャルル様にお会いになったそうで…」

「えぇ、少し前に偶然…」
「それよりシェリー様、なんだか昨年の領主会議の時より更に若々しくなられたように見えますよ」

私より年上の方達ですが、驚くほど若々しくてお綺麗です。
お二人の側にいると私の方が何歳も年上のように見えてしまいます。

「そうですかぁ、ありがとうございます。でも、しばらくシャルル様にお会い出来ていなくて…」
「それでシャルル様にお会いできるかルージュ領都まで来てみたのです」
「サマンサ様はすぐに抜け駆けされますから…」

魔道具製作所についてもご相談したかったのですが…。

「ひどいですよシェリー様、そんなことしませんよ。シャルル様は本当にお忙しいようでこちらにも来ておられないのですから…」

「どーだか…」

なんでしょう、お二人がシャルル様のことを話されいる表情はまるで歳若い女性のようです。
なんだか羨ましい…。



「サマンサ様、私…、あれから考えてもやっぱりシャルル様のことが頭から離れなくて…」

「アデル、あなた…」

「そうですか…」

「サマンサ様、何の話ですか?」

「アデルさんがシャルル様を気に入って、シャルル様のパートナー候補の一人になりたいとおっしゃっていたのですよ」

「そうでしたか…、私がとやかく言えることではありませんが、アデルさんの覚悟次第でしょうね」

(シェリー様も覚悟っておっしゃいました…)
「そのシャルル様の為に生きる覚悟とはいったいどうのような覚悟なのでしょう?」

「そうですね…。誰よりも…、自分よりもシャルル様が大切だと思えることでしょうか」
「もしアデルさんがエンターシャ様よりシャルル様のことが大切だと思えるのなら、その気持ちをシャルル様に伝えてみればいかがですか?」

「……、わ…分かりました。ありがとうございます」

お母様より大切だと思えるのなら…かぁ…。
ヨルンもシェリー様の言葉を真剣に聞いていました。

「シェリー様、サマンサ様のところのオーリエさんがそのシャルル様のパートナー候補の一人だそうです。それにサマンサ様が再び“誕生の儀”をされるとか…」

「……、それが…なにか…?」

「えっ!? 驚かれないのですか? オーリエさんがシャルル様のパートナー候補なんですよ。それに…」

「だって私のところのユナもパートナー候補の一人ですし、私も“誕生の儀”をするつもりですから…」

「な…なっ…、なんですってぇ~!?」

「え~~~っ!? そんなぁ…」

「「「「……」」」」

「ようやく静かになりましたね。さて“シャルル巻き”をいただきましょうか…」

「シェリー様、言い過ぎですよ。せっかく私が誤魔化していましたのに…」



XX XY



「エリカ、おめでとう!」

「ありがとうございます、お母様。私もとうとう“女”になれましたよ」

「もう少し遅くなるかと思っていましたが早くて良かったですね」

「はい、お父様にも報告することが出来て良かったです…」

「本当ねぇ、もう長くはないでしょうし…」

「さて、これから忙しくなりますよ」
「領主様達への報告は今年の領主会議の場で良いとして、領都内のお披露目もあります」
「パートナー候補も絞っていかないといけませんし…」

「お母様、“シャルルの風”が領都内で販売されるようになりましたが、まだシャルルさんは来てくださらないのでしょうか?」

シャルルさんに会って見ないことにはまだそんな気分にもなれません。

「エリカの言っていた通りずいぶん前に招待状は送ってありますよ。サマンサ様のおっしゃるように本当にお忙しい方なのかもしれませんね」

一度ルージュ領都へサマンサ様にお会いしに行った方が良いかもしれませんね。
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