DNAの改修者

kujibiki

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第347話 シャルルの変化

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コンコン、コン。
ガチャ…。
「ルーシャ様、シエラ先輩…」

「いきなりどうしましたトリス…」

『トリス、朝から慌ててどうしたの?』

ハァ、ハァ…。
急いで伝えたいのに言葉がすぐに出てきません。
「シャ、シャルル様が…、シャルル様が…、精通を…」

『えっ!? シャルルに精通が…、“男”になったっていうの…』

いつ“男”になってもおかしくないと思っていましたが、とうとうこの日がやって来たのね。

「シャルル様が“男”に…」

シエラも待ちわびていたというような顔をしています。

「ルーシャ様、おめでとうございます。今日は盛大なお祝いですねっ!」

『……、そ…そうですね』

無邪気に喜んでいるのはトリスだけのようです。
数日前にシャルルの12歳の誕生日をお祝いしたところじゃない…。

『とりあえずまずはシャルルのところに行きましょう!』

私達は急いでシャルルの部屋に向かうのでした。



XX XY



ガチャ…。

『シャ…ルル…?』
「「シャルル様…」」

シャルルの部屋に入ると、シャルルが両足だけを床に降ろした状態でベッドの上に仰向けに寝ていました。
待っている間にまた寝てしまったのかと思いましたが、側に駆け寄り身体を揺すってみても目を覚ましません。

『これって意識を失っているんじゃ…。トリス、シャルルはあなたのいる前で気を失ったの?』

「いいえ、精通されたので“男”になったとお話ししていましたから…」

トリスに聞くと、シャルルはベッドに腰を掛けた状態で話していたというので、その後に気を失ってしまったようです。

『シ…シエラ、【回復】魔法をかけてもらった方が良いのかしら…?』

「ルーシャ様落ち着いてください。原因は分かりませんが本当にただ気を失っておられるだけのようです。このまま少し待ってみましょう」

『そう…ね』
『シャルル…、シャルル…目を覚ましてちょうだい』

私はベッドに横たわるシャルルの隣に腰を掛け手を握って呼びかけるのでした。



しばらくすると、寝言でも言いたそうに口が少し動きだしました。

『シャルル…、シャルル…』

すると、何かに満足したかのように安らかな顔になり…、またしても突然に金色に輝きだしたのです。

「ま、まさか…」
「シャルル様~」

しかし、今回は少し違いました。
“誕生の儀”の時とは違い、シャルルに光が宿ったという感じにも見えました。
そして、その後は股間も同様に黒い光が集まりだし、吸い込まれていくように消えていくのです。

シエラもトリスも再びシャルルの身体が輝いたことに驚いていますが、ちょうど目の前に見えるシャルルの股間の方が気になるようです。

ハァ~。
『シエラ、トリス…、言わなくても分かっていますね』

私は一度深い息を吐きながら二人に諭すようにそう伝えるのです。



私はトリス。

ルーシャ様達と一緒にシャルル様の部屋に戻ってくると、シャルル様がベッドの上に仰向けで寝ておられました。

ルーシャ様とシエラ先輩に睨まれましたが、どうしてこうなっているのか分かりません。
先ほどまでお話していたのに…。

しばらく三人で見守っていると、シャルル様が“誕生の儀”の時のように輝き出しました。

少し輝き方が違うような気がしますが、輝きが収まるとシャルル様の雰囲気が一瞬変わったような気がしました。
あれ? 何か…と思った瞬間、今度は股間が黒く光り出すのです。

そうそう、これこれ。
輝くならこっちも一緒ですよね。
ルーシャ様もシエラ先輩も、やっぱり…みたいな顔をしています。

しかし、股間がわざわざ黒く輝く理由が分かりません。
シャルル様とは何度もお風呂に入って男性器を見て触ってきたのですが特に変わったところはなかったはずです。
もしかして何か男性器に変化でも起こるのでしょうか…。

股間の輝きが収まるとシャルル様がお気づきになられたようです。



「うん…、ふぁぁ…」

シャルルがまるで寝起きのようにムクリと起き上がりました。

「「なっ!?」」

『シャ…ルル、あなた…』

起き上がったと思うと、シャルルの髪の毛と瞳がゆっくりと黒色に変化し、身体もパジャマがはち切れるんじゃないかと思えるほど大きくなっていきました。
そんな馬鹿な…、一体何が起こっているの…。

「「シャ…ルル様…?」」

『シャ…ルル、身体は大丈夫なの?』

シエラとトリスも目の前で起こっていることに唖然として言葉にならないようです。

「……えっ、お母さんどうしてここに?」
「あっ、なんか僕、“男”になれたみたいでトリスが呼びにいったんだよね」

『シャルルが大丈夫ならいいのだけれど、“男”になった影響なのか…、あなたの…、その髪の毛と瞳の色が黒色に変わってしまったの』
『それに身体がいきなり大きく…』

「えっ、黒色に!? 身体が大きく?」

側で見ていたトリスお姉ちゃんが僕の前に姿鏡を持ってきて見るように勧めています。

「こ、これが僕…!?」

お母さん達にはちょっと驚いて見せましたが、鏡に映る自分を見ても別に驚くほどのことではありませんでした。
記憶の戻った僕にとっては見慣れた色でとても懐かしく感じるのです。

それに昨日までの幼さは無くなり、少し精悍な顔つきにもなりました。
お母さんに似て色白で血色の良い肌、ちょっと癖はあるものの軽やかで柔らかそうな毛髪、目もパッチリしていて力強さを感じます。

これまであまり他の男性と比較する機会はありませんでしたが、色んな女性に言われていたようにかなり容姿は整っていると言えます。

『どうしたの? やっぱり色が変わって驚いたの?』

「そんなことないよ。黒い髪と瞳はめずらしいけれど、僕は全然嫌じゃないよ」

僕がそう言いながらニコッと笑い返すと、シエラお姉ちゃんとトリスお姉ちゃんが僕を見て顔を赤くしていました。



「さて…っと…」

僕はようやくベッドから立ち上がり、今度は大きくなった身体を見てみることにしました。

『シャルル、そんなに大きく…』
「シャ、シャルルさ…ま」
「あわわ……」

お母さんとお姉ちゃん達は立ち上がった僕の姿に驚いています。

確かにこれだけ一気に大きくなると驚くよね。
まだ12歳になったところなのに、側に立っているシエラお姉ちゃんと同じ位の背丈になっています。

「あっ、シエラと同じ目線だね」
「お母さんやトリスより大きくなったよ」

鏡に映しながら両腕で自分の身体を抱きしめるように確かめると、体格もなんだか力が溢れるほどガッシリしており、きつくなったパジャマのボタンを外し上着を脱ぐと、細マッチョような理想的な筋肉質の体型になっています。

「すっ、凄いよ…」

黒い靄のおっさんが言っていたようにパワフルに生きられそうだよ。
確か魂の格が最上位なので普段から身体強化されているのだったよね。
記憶がよみがえったことで、これまで体力もあって力強く、疲れることが無かった事が理解できました。

自分でも少し見蕩れて気付きませんでしたが、鏡を覗き込むシエラお姉ちゃんやトリスお姉ちゃん、横から僕を見ていたお母さんまでがウットリとしています。

「お母さん、これまで大切に育ててくれてありがとう」
「シエラ、これからもよろしくね」
「トリスも今までありがとう」

僕は唖然とする3人を一人ずつ抱きしめながら言葉を掛けるのでした。



ールーシャー

シャルルの髪と瞳が黒色に変わってしまいました。
この数百年、もしかしたら大戦後に黒い髪と瞳を持つものはいなかったはずです。
初めて目にしましたが、黒い髪があんなに綺麗だなんて、肌の白色との対比が素敵です。

そして、見つめられると何もかも見透かされそうで吸い込まれそうな黒い瞳…。
特に両目共、黒色というのには驚きました。

この世界では私のように両目とも茶色なのが一般的で、カラードになって左眼が魔法属性の色となるだけです。

かつての大戦時には両目共色が違う2属性持ちの方もいたと聞いたことがありますが、両目共茶色ではない単一色、それも黒色というのは初めてなのではないでしょうか。
もしかして、黒色も何かの属性なのかもしれませんね。

そして立ち上がった姿はこれまでの男性とは全く違うではありませんか。

細身だというのに弱々しさを感じさせない立派な体躯、まだ12歳だというのに既に青年男性の背丈とそう変わりません。

私より背の高くなった上半身裸のシャルルにギュっと抱き締められると、子宮が震え全身の力が抜けて気を失いそうになりました。

シャルルはやはり天使だったのですね。
その変貌の一部始終を見て確信したのです。
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