DNAの改修者

kujibiki

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第310話 領主会議ーエルスタイン領編4

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『では、ここからは一般的な領主会議に移りたいと思います』

「そうですね」

「「「……」」」

『……』
先ほどの休憩中はあれほど嬉しそうに“シャルル巻き”を食べておられたのに、再び会議が始まるとシクスエス様達に元気がありません。
それほどエリシアさん達がシャルルのパートナー候補になったことに驚かれたのでしょうか…。

『エ、エバーミット様、まずは“シャルルの風”の生産量から報告をお願いします』

「……はい」
「販売より約一年経ちまして、現状の生産量は当初より5倍強となっています」
「マイヤさんにも確認しておりますが、今のところは生産量よりも品質を重視しており、従業員を育てる方に注力しているようです」

『なるほど…』

あの娘もシャルルに心酔しているようだから不良品が出ないように頑張っているのね。

「しかし、それでは“シャルルの風”が全然足りませんよ」

「シクスエス様、分かっております」
「マイヤさんが言うには生産管理を任せられる従業員が増えていけばこれからもっと生産量を増やしていけるそうです」
「こればっかりは他の魔道具製作所に任せられませんから…」

「むぅ…」

「この一年で10倍には出来ませんでしたが、来年の領主会議までにはなんとか10倍に出来ればと考えています…」

「各領に毎月1000個以上入るようになると少しずつ各都市にも分配できそうですね」

「サリー様のおっしゃるとおりですね。出来るだけ早くそうしたいと思います」

『“他の魔道具製作所”で思い出しましたが、もしかすると“シャルルの風”の模倣品を作ろうとする者が現れるかもしれません』

「えっ!? 本当ですか?」

『まだ確証はありませんが、王都のドラという商人が画策しているようなのです』

「ドラって、エリシアの元パートナー候補の者ではありませんか…」

『そうなのです。あの者が王都のお菓子屋に迷惑を掛けていたところをシャルルが救ってから何かとありまして…』

『先日は王領にあるエルスタイン領が提携している“ふとう”果樹園にもちょっかいを出してきたと聞いています』
『まぁ、その時はナンバスの都市長のチェスカ様が追い払ってくださったのですが…』

「あぁ~、先日久しぶりにチェスカの所に行って領内会議をした時に聞きました」
「その果樹園はエルスタイン領の提携果樹園だったのですか…。私もいただきましたがあんなに美味しい“ふとう”は食べたことがありませんでしたよ」

『はい、『ムーラン・シャルル』といってシャルルの為に“ふとう”が作られているようなところです』

「な、なんですって…」
チェ、チェスカ~、詳しい事を言わないと思ったらシャルル様の“ふとう”を独り占めしているのですね…。

『とにかくそのドラという者がケープノット領で模倣品を作る可能性もありますので注意してください』

「分かりました。もう一度領都内の魔道具製作所に釘をさしておきます」

「エバーミット様、もしその王都の商人が“シャルルの風”に手を出しましたらお知らせください。その者の商会ごと潰しますので…」

「は、はい…」
グ…グレイス様がこんなにも厳しい表情をされるなんて…。
ドラですか…、要注意人物ですね。



『では、他に懸案事項はありますでしょうか?』

「懸案事項ではありませんが先日私のパートナーが亡くなりました。この場をお借りしてご報告させていただきます」

『サリー様…。そ、そうでしたか…、お悔やみ申し上げます』

「「「サリー様…、ご愁傷様です…」」」

「どうぞお気遣い無く…。パートナーもジェシカが“女”になるのを見届けましたから長生きした方だと思います」

「次は私のパートナーかもしれませんね…」

『私のパートナーも心配です。シャルルが“男”になるまで生きていて欲しいものですよ』

「「「シクスエス様、ルーシャ様……」」」

「ふぅ~、すいません。なんだか暗い雰囲気にさせてしまいましたね」

『そ、そんなこと…』

「なんだか今回の領主会議は驚きすぎて疲れましたよ…」

「そうですね。ルーシャ様とグレイス様お二人だけが若返ってしまわれましたし…」

「本当に…もう何も考えたくありませんね」

『……』
皆さんが益々沈んでしまわれました。

「ルーシャ様のお屋敷のメイド服が変わったのですね。とっても軽やかで女性らしくて良いですね」

シクスエス様がそうおっしゃられると、皆がシエラの方を向き、シエラもその場でクルッと一回りしています。

『ありがとうございます。今年のシャルルの誕生日から一新したのです。専属の服飾の者と屋敷のメイド、それにシャルルが考えた物なのですよ』

「またシャルル君ですか…」

「なんだか私達はシャルル君に振り回されてばかりですね」

「はぁ~、本当ですねぇ」

『……』
皆さんが生気の無い目で遠くを見ているようです。

『皆さん、なんだかとても暗いですよ』
『特に議題が無いようでしたら、シャルルの考えたお風呂もありますので皆さん入っていかれますか? 晩餐会前にさっぱりとして癒してこられてはどうでしょう』

「「「お風呂…ですって…!?」」」

「ルーシャ様…」

『もちろん私は一日の終わりに入りますのでご一緒しませんが…』

「わ、私も以前に入らせていただいたのでやめておきます」
以前と言っても先日こちらに来てから毎日ですし、一昨日はシャルル様と一緒に入ったところですけれどね…。

「え~、グレイス様、せっかくですからご一緒してくださいよ~」

「エバーミット様…?」

((エバーミット様…?))

私はグレイス様の服の下に隠れている身体に興味があるのです。
再び“誕生の儀”を自信有り気に検討できるほどの身体に…。

『フフ…、せっかくですからグレイス様も皆さんとご一緒に…。お風呂の案内や使い方を教えていただけると助かります』

「ル…ルーシャ様…」
そんなことをすれば私が非難を浴びるではありませんか…。
自慢をする訳ではありませんが私の若返ったような身体を見られると落ち込むどころではないと思うのですが…。

「……、皆さんがどうしてもとおっしゃるならかまいませんが…」
もう、後悔されても知りませんよ…。

「お願いします。グレイス様と一緒にお風呂に入れるなんて光栄です」

「「……」」



ーシエラー

有耶無耶のうちに今年の会議自体は終了しました。
今回は序盤からシャルル様のパートナー候補の発表もありましたから、サリー様がおっしゃるように驚きすぎて皆様もお疲れのことだと思います。

シャルル様のパートナー候補の発表…、とうとうこの日が来たのは私にとっても一つの衝撃です。
シャルル様がお生まれになってから11年、シャルル様の誕生の瞬間から側で見てきた私には少し寂しい瞬間でもありました。

外交上のことだと分かっていても正式にシャルル様のパートナー候補だと公表されたエリシアさん達3人がとても羨ましく思えます。

シャルル様が私達メイドの事も一人の女性として大切に想ってくださっているのは分かっているのですが…。

ルーシャ様や私達が思っているようにシャルル様が本当に天使で精子の数に問題が無ければ私とも“誕生の儀”をしてくださるでしょうか。

シャルル様が“男”になられると何もかもが動き出すのかもしれませんね。



ーネルー

たった一年なのに、ルーシャ様とシエラさんがまた一段と若々しくなっていました。
一体どこまで若返っていくのでしょう。

それに今回はグレイス女王様まで…。
確かもう30歳ぐらいでしたよね。
正直なところ私よりもかなり若々しくて、私も一瞬叫びそうになりました。
シクスエス様が取り乱されるのもよく分かります。

エリシア王女様がシャルル様のパートナー候補になるということで、グレイス女王様が再び“誕生の儀”をされることを示唆されました。

確かにあれほど若々しくなられたら“誕生の儀”は可能かもしれませんが、そんな簡単に精子が手に入るのでしょうか。

嫉妬…?
そういうわけではありませんが、本当にそんなことが可能なのかは見てみたい気がします…。



ーベリンダー

ハァ~、今年もシャルル様を見ることが出来ました。
また一層たくましく、格好良くなられた感じがします。

面倒な領主会議もシャルル様の顔を見るだけで報われる気がします。

シャルル様を初めて見たのはシャルル様が3歳の時でした。
あの男の子がこんなに立派に…。

今日、エリシア王女様と二人の女性がシャルル様のパートナー候補になったことが発表されました。

私としてはジェシカ様がシャルル様をパートナーにされるとずっと側にいられるのではないかと思っていたのですが、それは叶うことはなさそうです。
発表を聞かれた後のジェシカ様はとても落ち込んでおられましたね。

さて、これからサリー様はグレイス女王様とシクスエス様とエバーミット様と一緒にシャルル様が考えられたお風呂に入られるようです。

羨ましい…、私も入ってみたいです。
でも、今回こそはシャルル様に認識していただいて一言でもお話したいと思います。
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