DNAの改修者

kujibiki

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第291話 エマ達の覚悟

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「シャルル様、ここが昨日お話していた広場です」

サマンサ様とグリシャお姉さんの案内で“シャルル巻き”のお店を出すところを見にきています。

ロッキお姉ちゃんとフランお姉ちゃんは屋敷でエマお姉さん達の指導で、それ以外のお姉ちゃんは僕に付いてきています。

「想像していたより素敵な場所だよ」

商店の建ち並んでいる表通りではなく、そこから少し離れた地区にあって広場もこじんまりとしています。
この辺りにはこういった広場がいくつかあるそうです。

広場の中心には大きな木も植えられていて、木漏れ日が石畳にキラキラと光を落としています。
なんだかとても落ち着いた空間です。

「それでシャルル様…、あの建物なんですが…」
「少し大き過ぎましたでしょうか?」

サマンサ様の指し示された建物はこの広場に入ったところの文字通り一角で、建物の前面が広場に面しています。

角地で目の前には大樹が見え、この広場もほとんど専用広場に思えるほどです。

建物も石造りの3階建てのようなので上階はエマお姉さん達の住まいにも出来そうです。

「サマンサ様、ここにするよ!」

「シャルル様、この間行った“よーぐる”のお店がある商店街から離れていますが良いのですか?」

「ここの方が良いよ。それにこっちの方にも人が集まればルージュ領都の活性化にも繋がると思うよ」

トリスお姉ちゃんが心配するのももっともですが、他のお店と被らない方が良いと思ったのです。

「サマンサ様、広場も利用して良かったんだよね?」

「ええ…、この広場には他にお店もありませんから…」

「じゃあキルシッカお姉ちゃん、今度はお店と部屋作りだけれどまた手伝ってくれるかな」

「もちろんです。私はシャルル様の為にいるのですから!」

「「「シャルル様、私達もお手伝いしますから~」」」

「うん、メルモアお姉ちゃんもヌエットお姉ちゃんもトリスお姉ちゃんもよろしくね」

「「「はいっ!」」」



XX XY



「さて、皆さん、これから昨日食べていただいた“シャルル巻き”の作り方を覚えていただこうと思うのですが、その前にもう一度確認します…」

私はサマンサ様のお屋敷の厨房を借り、エマさん達に“シャルル巻き”の作り方を教えることになっています。
ロッキにはお手伝いとして側にいてもらっています。

ソニアさんも教えて欲しそうな顔をされていましたが、シャルル様の為の作り方は私の宝物でもあるので申し訳ありませんが退室してもらっています。

後で領民に公開している作り方をお渡しして我慢してもらいましょう。
シャルル様のお店なのですから公開されている作り方とは差別化が必要なのです。

「今からお教えするこの作り方は門外不出と言いますか、シャルル様が考えられ、私がシャルル様の為にお作りする本当に大切な物です」
「シャルル様はお優しい方ですから何もおっしゃいませんが、私はシャルル様の為に頑張れない方には教えたくはありません」

「それについては私も同じ意見だよ」
「今、シャルル様はお店やエマさん達が住むところを探してくださっているの。もし中途半端な気持ちなら今の内に去って欲しい…」

「ロッキ…」

「ロッキさん…私達は…」
「「「「「「そんなこと……」」」」」」

「正直なところ、シャルル様と知り合ってから幸運続きで戸惑っています」

「シャルル様のおかげで孤児だった私達がこんなに身なりを整えられ、自立できる為にとあんなに美味しいお菓子のお店を仕事として任せていただけるのですから…」

「それに、私達も島を出る時に何が何でもシャルル様についていこうという覚悟は出来ています」
「けっしてシャルル様の名を汚さないように頑張っていくつもりです」

「分かったわ…」

「そういってくれて安心しました」
ロッキも納得しているようです。

「シャルル様専用の作り方は紙に書くことはありません」
「お店で販売することによって必ず悪い商人が作り方を手に入れようとしてきます」
「ですから皆さんが頭と手を使って覚えるのですよ」

「はいっ!(×全員)」

「まずは生地とクリームの役割を決めて覚えましょう」
「最終的には一人でも作れるようにしますよ」

いずれ王都やバルトリア王国内に支店を出されてもいいようにこの娘達に作り方を叩き込んでおかないといけませんね。

「じゃあ、今さらだけどエマさん、皆さんの紹介をお願いできるかしら…」

「そういえばエマさん以外は名前を聞いていなかったわね」

「そうでした…」
「左からニト、ルカ、ジル、ケイ、ヒナ、キオです」

「私とニト、ルカは13歳で、ジル、ケイ、ヒナ、キオは12歳です」

「じゃあ、エマさん達13歳チームは“シャルル巻き”の生地を…、ジルさん達12歳チームはクリームをまずは覚えるようにしましょう」

「「「はい」」」
「「「「はい」」」」



XX XY



『シャルルは領主会議までには戻ってきますよね?』

「そういえば、いつお戻りになられるか聞いていませんね」
「トリスはともかくメルモアが付いていますので大丈夫でしょう…たぶん」

『簡単に連絡が取れる魔道具でもあればいいのですが…』

「それにしても今年の領主会議は大変ですよ。どうされるおつもりなんですか?」

『えっ!?』

「えっ!? じゃありませんよ。オーリエさんとユナさんですよ。各領主のお嬢様もお見えになられるのでしょう?」
「グレイス様も驚くほど若々しくなられていますし、エリシアさんのことをシャルル様のパートナー候補だと報告されるかもしれませんよ」

『そ、そうね。混乱必至ね…』

領主の皆さんはシャルルの精子を狙っていましたからね。
エリシアさんの方がシャルルのパートナー候補だと分かるとどういった反応をされるでしょうか…。

グレイス様の変貌について追求されると答えようがないわね。
私も一緒に驚いたフリをしておけばいいかしら…。

「……ルーシャ様、誤魔化せませんよ」

『……、ダメかしら…』



XX XY



「シャルルがルージュ領都へ行っているそうですね」

「私もさっき聞きましたよ」

「オーリエさんにユナさん、残念なのは分かるけれど今回は私達が付いて行ってもシャルルの邪魔になるだけよ」
「それにシャルルはメルモアさん達もとても大切に思っているもの…」

「シャルルは私達を平等に扱ってくれるけれど、それでも私達は他の皆さんの中では女性器の観察にしても何にしても新参者なのよ」
「トリスさん達から教わっているから付いていけていることを分かっておかないといけないわ」

「「……」」

「さすがエリシアさん、私達の中で最初にシャルルのパートナー候補になっただけはありますね」

「私もエリシアさんがそんな風に考えていたとは驚きました。シャルルに付いて行くと我が儘を言うかと思っていましたよ」

「そ…それはオーリエさんでしょう。ルージュ領都だから自分も付いていこうと思っていたのでは…?」

「ま、まぁ…そうですね」

「とりあえず、シャルルと離れていてもシャルルの為に何が出来るか常に考えていかないとダメだと思うの」
「身の回りのことでも皆さんに頼っているぐらいなのですから…」

「あら、私は自分のことは自分でやってますよ」

「ユナさん…、一人で寝起きしているだけじゃないですか。料理・洗濯・掃除はこの屋敷の誰かがやってくれているでしょう」

「それは……」

そういえばシャルルは立場にも差はないと言っていました。
ここでは私も王女ではないのです。
私もシャルルにとって大切な女性の一人にならないと…。



「屋敷ではシャルルと一緒にお風呂に入ったり、寝たりすることはなかなか出来ないのですね」

「そうよ、オーリエさん。シャルルの為に頑張るとご褒美でお風呂に入ってもらえるぐらいかしら…」
「その機会を得るために皆さん日々女性器の観察をしながら頑張っておられるわ」

「フッフ…、それは大丈夫です。毎晩女性器の観察は続けていますよ」

「……」
オーリエさんは“シャルル~、シャルル~”と大きな声を出していますものね…。
「私もです。続けていると確かに女性器や胸からの感覚が頭の中に繋がり易くなってきたと思います」

「……」
ユナさんはいつものおしとやかな感じとは違って“あんっあんっ”とうるさいぐらいですものね…。
隣の部屋から聞こえてくるぐらいだからかなり大きな声よね…。

「でも、それもシャルルが“男”になるまでの間よ。シャルルが“男”になればきっとルーシャ様が解禁されるはずです」

「「なるほど~」」

「それより先に問題になるのが、しばらくするとこのエルスタイン領都で行われる領主会議についてです」
「お母様以外の領主様は“シャルルの奇跡”を知りません」
「それに今回は各領主のお嬢さん達が来られるらしいのです」

「えっ!? それでは皆さんシャルルを…?」

「当然領主様共々興味を持たれています」
「ただ、皆さんは“シャルルの奇跡”を知らないので、シャルルのことを自分のパートナーにしようと思っているのだと思います」

「それならルーシャ様が認められるわけがありませんね。安心しました…」

「それはそうですが…」

ルーシャ様はオーリエさんとユナさんを紹介されるおつもりなのでしょうか…。
お母様のことだから私がシャルルのパートナー候補になったことを他の領主様達に伝えられるでしょう。

そうなると、サリー様のお嬢様のジェシカ様がどういった反応をされるか気になりますね。
シャルルのことを大変気に入っておられると伺っていましたから…。
それに、もしかしたら“女”になられている可能性があるのですよねぇ。
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