DNAの改修者

kujibiki

文字の大きさ
上 下
247 / 567

第247話 ルージュ領編3

しおりを挟む
僕とエリオンお姉ちゃんは朝食をとるために皆のいる大部屋に向かいます。

コンコン、コン。

「は~い」
ガチャ…。

「おはよう、シエラお姉ちゃん…」

「シャルル様…、おはようございますっ」

「お母さん、エリシア、お姉ちゃん達もおはよう…」

「『おはよう、シャルル…』」

「おはようございます。ルーシャ様…」

『エリオン、あなた…』
分かってはいたことですが、毎回このシャルルの能力には驚かされます。

『シャルル、私達と同じようにエリオンの疲れや弱っているところを…?』
エリオンの身体が少しスッキリしたように見えます。

「うん、そうだよ」

確かにエリオンお姉ちゃんも疲れや弱っているところが無くなり、身体つきが少し変わりましたが、お母さんやグレイス様ほどではありませんでした。
やっぱり年齢が高いほど変化が大きいのかもしれません。

「なんという事なの、エリオンがこんなに綺麗になったわ」

「トリス先輩って本当にひどいですね。そこは“が”じゃなくて“も”と言ってくださいよ~」

「エリオンさん、髪も艶々でお綺麗ですよ」

「ありがとうございます。エリシアさん」
「私も鏡に映った自分を見たときは信じられなかったですよ…」

けっして太っているわけではありませんが、体型としては以前のメルモア先輩をギュッと小さくしたそんな感じでした。
背が低いから胸ばかりが目立ってしまって…。

それが一晩で全身が引き締まり、身体が少し細くなったように感じます。
胸は変わらず大きいままですが、硬くてボテッと重たかった胸が驚くほど柔らかくなり、軽やかにポヨンポヨンと弾んでいます。

それに髪は“シャルルの風”を使うのとはまったく違う感じに艶々になり、肌も瑞々しくなりました。

先輩達やキルシッカの変貌を見て内心はとても羨ましいと思っていたことが私にも起こったのです。

「エリオン、少し背が伸びたんじゃない?」

「キルシッカもやっぱりそう思う?」

「それはシャルル様のおかげで姿勢が良くなったのよ」

そう言えばシエラ先輩の言うように、大きな胸を支える為に肩や背中、腰などに力を入れているような負担が感じられなくなっています。

『それでどうでしたか?』

「ルーシャ様や先輩達がシャルル様に対して抱いておられる気持ちがようやく分かりました」
「正直なところ、普段近くにいる先輩達やキルシッカが綺麗に変わっていくことで焦っていたのかもしれません」
「でも…、私がこれまでシャルル様に対して抱いていた気持ちも本当だったことに気付けました」
「今は胸の奥もスッキリとしています」

『そう…、良かったわね…』

「これからはシャルル様への想いは皆さんにも負けないつもりです!」

「エリオン、ちょっと綺麗になったからって大きく出たわね~」

「トリスの言うとおりよ。私もシャルル様への想いで負けることはないんだから…」

『はいはい…、トリスにメンテールもシャルルを大切に想っているのは分かっていますから、シャルルを困らせちゃダメよ』

「もちろんです!」

「シャルル様に嫌われるような事なんてしませんよ!」

「お母さん、早く朝食をとってオーリエ達のところに行かないと…」

『そ、そうね。ちょっと話が長くなりましたね』



コンコン、コン。

「は~い…」

ガチャ…。
「皆さん、おはようございま…す」
「す、すいません…。まだお食事中でしたか?」

『おはよう、オーリエさん。ごめんなさいね。ちょっと遅くなっちゃって…』

「おはよう、オーリエ。サンディお姉さんにローザお姉さんも…」
「すぐ食べるから入ってよ」

「皆さん大部屋で食事をされていて良かったですよ。食堂は満員でした…」
「それから…、あれ? エ…、エリオンさんですか?」
「一体どうしてそんなに変わって…」

「シャルル様のおかげですよ」

「まさか、昨年に皆さんが変わられた時にルーシャ様が言っておられた“シャルルの奇跡”ですか~?」

『まぁ、そんなところです。それでオーリエさんは今何かを言いかけたのでは?』

「……そ、そうです。街や宿に人が多いのが分かりました」
「今日、この都市で『男性選手権』が行われるそうなのです」

『『男性選手権』…?』

「『男性選手権』ってなんだか格好いい名称の催しですね」

「それで男の人がいっぱいいたんだね」

『それで、その『男性選手権』とは何なのですか?』

「都市長から聞いたところ、パートナーを見つけたい男性が自分を売り込んだり、または優勝賞金や賞品を得ようとする催しだそうです」
「女性が多いのは、この『男性選手権』に集まった男性の気を引くためや、気に入った男性を見つける為だそうですよ」

『へぇ~、男性が主体の催しってめずらしいわね』

「それで街の女性達がピリピリした雰囲気だったのね…」

「男性にとっては優勝するだけでかなりの賞金や賞品が手に入りますし、各都市にも知れ渡るそうですからね」
「それでなんですが…、都市長から私にも観覧して欲しいと依頼されたのです」

「もちろんルーシャ様達が先を急がれるのでしたら私も観覧する気はありません」
シャルル以外の男性を見ていても楽しいことはありませんからね。

『一日ぐらい日程がずれても気にしませんよ』
『他国の催しがどんなものなのか気になりますしね』

「うん、僕もどんな催しなのか興味があるよ」

「そ、そうですか…。では都市長にそう伝えて、皆さんの分の観覧席を用意させますね」

オーリエがそう言うと、後ろに控えていたサンディお姉さんとローザお姉さんが都市長の元に向かいました。



用意された朝食には細長くて黄色い果実のような物が添えられていました。

「シャルル、それが“ばななん”ですよ」

「これがそうなの?」

「こうやって皮を剥いて…」と、オーリエが僕の“ばななん”を手に取って食べ方を教えてくれます。

「うわぁ~、綺麗な実が出てくるんだね」

「最後の付け根のところに小さくて細い硬い芯みたいな物がありますが、それは食べない方が良いですよ」

僕はオーリエから半分ほど皮を剥かれた“ばななん”を受け取り食べてみます。

パクリ…。

「甘くて柔らかくて…、それに食べ応えがある果実だね」

お母さんやお姉ちゃん達もオーリエが見せてくれた剥き方を真似てパクパクと食べています。

「私も小さい時からおやつの時や少しお腹がすいた時に食べているのよ」

『これは美味しいわね~』

「2~3個はすぐに食べられますよ!」

「オーリエの言うとおり、この“ばななん”はシャルル巻きに合うよ!」

「そうでしょう! 私も“ばななんのシャルル巻き”を食べてみたいわ~」

「さぁ、シャルル~“あ~ん”っ!」

パクッ…。
「ありがとう、エリシア。美味しいよ」

『あっ、エリシアさん。オーリエさんの前で…』

「えっ、えっ…、なに? 今のは…」

「オーリエなら良いよ。ほら、オーリエもしてあげる!」

僕は新しい“ばななん”を手にとって、剥いてからオーリエの口元に持っていきます。

僕が「あ~ん」と口を開けながら言ったので、オーリエも察したのか“あ~ん”と口を開けました。

パク…リ…。

「うひょっ………」

「やっぱり固まってしまいましたね。オーリエ様を見ているとなんだか懐かしい気分です…」

「エリシアさんも同じように固まっていましたからね」

「まぁ、あの時はシエラさんのおかげで私も“あ~ん”をしてもらえることになったんですけどね」

「皆さんひどいです。私のときは固まっている間に足蹴にして端に追いやったそうなのに…」

エリオンお姉ちゃんが大きな胸を上下に揺らしながらかわいらしく怒っています。

「ハッ…、なにっ? なんだか急に意識が飛んで…」

「もう一回でしょ? はい、あ~ん!」
僕は再起動したオーリエの口元に“ばななん”を持っていってそう言います。

「うん…、あ、あ~ん…」

「おぉぉぉ…おいひぃ~~!! そんな“ばななん”…」
「な、なんて美味しさなの!」

今までに食べてきた“ばななん”は一体なんだったの…。
まったりして甘みが濃厚に感じられました。

『オーリエさん、シャルルに“あ~ん”してもらったというのは内緒よ』

「は…い…」
「シャルル…、私もエリシア様みたいにシャルルに“あ~ん”してもいいですか?」

「うん、もちろん」

「では、あ~んっ!」

「あ~ん」
パクリ…。

「オーリエもありがとう。とっても美味しいよ」

シャルルに“あ~ん”をしてもらうと“ばななん”がとっても美味しいのですが、“あ~ん”をしてあげるととっても幸せな気持ちになるのでした。

それからお母さん達や他のお姉ちゃん達とも“あ~ん”をし合い、いつもより朝食の時間が長くなってしまうのでした。



XX XY



「ローザ、見ましたか?」

「ええ、エリオンさんね…」

「水着姿の時は少しムッチリ、ポチャとされていると思っていたけれど、さっき見たエリオンさんは身体が締まっているようでしたね」

「胸は大きいままだったけれど、全身がスッキリして少し背も高くなっているようだった…」

「“シャルル様の奇跡”を見るのは久しぶりですが、一体何が起こればあんな風に見た目までが変わってしまうのでしょうか」

「本当に不思議…」

「はぁ~、私達の身体も引き締めてくださらないかしら…」

「サンディ、付いたお肉はそんなに簡単になくならないよ」

「あ、あなたもでしょ!」
「さぁ、さっさとライラ様に観覧することの連絡に行くわよ!」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

処理中です...