DNAの改修者

kujibiki

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第214話 サリーの重い腰

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(さて、どうしましょうか…)
ルーシャ様とシャルル君にはいつも驚かされますね。

ルーシャ様からの連絡内容によると、すでにエバーミット様が関わっておられるのが分かります。

それはまぁ当然ですね…。
シャルル君の発明した魔道具がケープノット領都で生産され販売されるということですから…。

それにしても、カプランド領都でシャルル君の発明した魔道具を販売したかったら『シャルル魔道具販売所』なる直販店を設けて欲しいとは…。

よほどすごい魔道具なんでしょうか。
まずはそのシャルル君の発明した魔道具を見てみないことにはなんとも言えませんね。



まずは…「べリンダ…(ボソッ)」を呼んで…。

「はい、サリー様」

(あっ、いたのね…)
「誰かをケープノット領都に向かわせて、“シャルルの風”という魔道具を購入して来てくれないかしら」

「“シャルルの風”ですか…?」

「そうよ、“シャルルの風”…。べリンダもシャルル君は知っているわよね?」

「当然ですよ。領主会議ではサリー様のお供をしているじゃないですか。でも毎回お声を掛ける機会が無くて…」

「あぁ…、そうでしたね。カプランド領都に来てもらった時もすぐにジェシカと遊んでもらったから紹介していなかったわね」

言ったら怒ると思いますが、ベリンダってどうも影が薄いんですよねぇ。
傍にいるのをつい忘れそうになるわ…。

「それで、あのかわいくて、格好いい男の子のという魔道具ですか?」

「へぇ~、ベリンダもシャルル君の事をそんなふうに思っていたの?」

「えっ!? あの男の子をそう思えない女性は目が腐っているんですよ」

「べリンダ…あなた…」
ベリンダがこんな風に言うってめずらしいですね。

「リットは何も思わなかったようですが…」
近年はマシになってきましたが、以前はカラードであることに自惚れていてシャルル様に諭されたそうですし…。

「それで、その“シャルルの風”と言うのは、あのシャルル様が作られた魔道具なんですか?」

「違うわよ…。シャルル君が発明したみたいなの。すでにその魔道具は王都で登録されているそうよ」

「そ、それは早く手に入れないといけないのでは?」
「のんびりされていますと、シクスエス様に先を越されてしまいますよ」
と、いうより私が欲しいです。

「やっぱり、そうよね~」
「では、リットに買いに行ってもらおうかしら…。ジェシカの専属からも外れていることですし…」

「ちょっと待ってください!」
「リットにはシャルル様の魅力が分からないのですよ」
「そんな者が行けば判断を見誤るかもしれません」

「確かにべリンダのいう事も一理あるわね」

「私が行ってもよろしいでしょうか?」

「ベ、ベリンダが…?」
「しかし、あなたが私の傍から離れるとなると…」

「では、いっそのことサリー様ももう一度ケープノット領都に行かれませんか?」
「サリー様が来てくださるなら“転移の祠”も使えますし…」

「た、確かに…」
でも、面倒だわ…。

「もしかしたら、エバーミット様と急遽会談される必要があるかもしれませんよ」

むぅ~、ベリンダの言うことが正しいわね。
もし本当にシャルル君の発明した“シャルルの風”がすばらしい魔道具なら、カプランド領都へ振り分けてもらわなければいけませんものね。

「分かりました。もう一度行くことにしましょう」



XX XY



「ジェシカ様~」

「どうかしたの、カリーナ?」
「今日の魔法の訓練はもう少し後からじゃなかったかしら?」

「そのことじゃないですよ。サリー様がまたケープノット領都へ行かれるそうです」

「えっ、この寒い季節にですか?」

「それが、なんでも魔道具を買いに行かれるそうなのです」
「ベリンダ先輩も準備を進められているようです」

「今、買いにいく必要のある魔道具って何なのでしょう?」

腰の重いお母様が領主会議以外で自ら行かれるだなんて…。

「私もそこまでは…」



XX XY



コンコン、コン。

「はい…」

ガチャ…。
「お母様…」

「ジェシカ…、どうしたの?」

「はい、お母様がケープノット領都に行かれると聞きましたので…」

「ええ、確かにケープノット領都に向かいます」

「出不精のお母様が、ましてやこんな寒い季節にわざわざ出掛けられるなんて…」

「別に隠すつもりはありませんが、実はシャルル君が“シャルルの風”という魔道具を発明したそうなのです」

「えっ、それは本当なのですか?」

「確かです」
「なぜならルーシャ様から連絡が来て、その“シャルルの風”をカプランド領都で販売したいのなら『シャルル魔道具販売所』という直販店を設けて欲しいと言ってこられたのです」

「良いことではないのですか?」

「しかし、領主としてその“シャルルの風”を見てみないことには判断できません」
「場合によってはエバーミット様と協議をしなければなりませんので、私もケープノット領都へ行くことにしたのです」

「シャルルの発明した“シャルルの風”ですか…」

そんなこと、確かめるまでもなくすごい物に決まっているじゃない…。

「お母様、私も一緒に行っていいですか?」
私も一刻も早く“シャルルの風”が欲しいわ。

「ジェシカもですか…」

ふ~む…、“転移の祠”を使って行き来するつもりなので大丈夫でしょうか…。

「いいでしょう。でも向こうに長居はしないですよ…」

「もちろんです」

「では、明日出発しますので準備しておきなさい」

「はい、お母様…」



「カリーナ、今日の魔法の訓練はお休みよ」

「明日、お母様と一緒にケープノット領都へ行くことになったから準備してくれるかしら」
「もちろん、あなたも行くのよ」

「わ、分かりました」

エルスタイン領都より先にケープノット領都へ行くことになったわね。
でも初めて他領に行けると思うとなんだかそれだけで興奮してきますよ。
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