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第173話 【閑話】まだまだお子様
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「オーリエ達は元気にしているかしら…」
「大丈夫ですよ、サマンサ様。ローマン帝国に向けて渡航したことは港町の町長から確認済です」
「エルスタイン領都にも無事にたどり着いている事でしょう」
「それにしても、よくオーリエ様の旅を許可されましたね。それも自国内ではなく他国になんて…」
「つい大戦以前の昔話の一つとして、ローマン帝国のエルスタイン領都と親交があったことを話してしまったのです。それ以来、ことあるごとに旅に行かせろとうるさくて…」
「なんでも、エルスタイン領の後継者が男の子だとか…」
「オーリエもその男の子に会いに行ったのかもしれませんね…」
「オーリエ様も行動力だけは大したものです」
「グリシャ、それはちょっとひどいのでは…」
おそらく自国自領の男性ではダメだと思ったのでしょう。
私がパートナーを選んでいた頃よりも男性が弱々しくなってきたように感じます。
他領では“男”になったら精子の強制搾取を行うべきだという声があがっているとも聞きますが、はたして男の子が少ないのは男性だけの問題なのでしょうか…。
「オーリエ様も戻ってこられましたら、そろそろパートナー候補を決めなければならないでしょうね…」
「数人、パートナーにとおっしゃっている方がいますよね?」
「あぁ、あの方達ね…。私はご免だわ」
「いえ、サマンサ様のパートナー候補じゃないですから…」
「あの方達は女性を物としか考えていませんよ。どうしてあんなに傲慢なのかしら…」
どこの国も男性が少ないと聞いていますから、他国でパートナーが見つかるとは思いませんが、せめてオーリエの納得する形になって欲しいですね…。
「オーリエ様は残念ながら体型が…、男性の目に留まるでしょうか…」
「そ、そうね。どうして私のようにならないのかしら…」
性格もちょっとひねたところがありますしねぇ。
「グリシャは“誕生の儀”をしたいと思ったことは無いのですか?」
「私はサマンサ様にお仕えする身ですから…」
「今さら弱々しいパートナーは要りませんが、昔、オーリエ様の小さい頃を見て子供は欲しいかなと思ったことはあります」
「今となれば、精子だけもらえれば“誕生の儀”にも興味はありますが、そんなことはありえませんからね」
「そうなのね…」
やはり結局は精子の確保が問題になるわけですか…。
XX XY
「今日もようやくお仕事が終わったわね」
「そうね…」
「どうしたの元気がないじゃない」
「だって、しばらくシャルル様のお姿を見ていないのよ」
「もうすぐ帰ってこられるわよ」
私はキルシッカといつものように岩風呂に入りに行きましたが、先に誰かが入っているようでした。
「あっ、オーリエ様達でしたか…」
服を脱ぎ浴場に入ると、先日から屋敷に滞在されている異国のお嬢様達が湯船に浸かっておられました。
「え~っと、エリオンさん…」
川で見ていましたが、シャルルと同じくらいの身長なのにメンテールさんよりも大きな胸をされています。
うぅ…、すごい敗北感です。
「キルシッカ、こちらはオーリエ様よ」
私とキルシッカもかかり湯をしてから湯船に入ります。
「バルトリア王国のルージュ領から来ましたオーリエです。こちらはサンディとローザです。よろしくお願いしますね」
「キルシッカと申します。屋敷に滞在されているのは存じていましたがご挨拶が遅くなり申し訳ありません」
「気にしないでください。ここに無理を言って滞在させていただいているのは私達の方ですから、キルシッカさんも気を使わずにお話くださいね」
キルシッカさんという方もなんてお綺麗なのかしら…。
緑色の髪が艶やかで肌も瑞々しいです。
「オーリエ様、薄褐色の肌がめずらしいですか?」
「ごめんなさいね。ジッと見ちゃって。あまりにも髪と肌が艶やかで見蕩れてしまったのよ」
「そうですか。ありがとうございます」
もう今の私は自分の身体を卑下することはありません。
シャルル様に綺麗にしていただいた身体なので、シャルル様の為にも自信を持って堂々としないと…。
「私達の国にもキルシッカさんのような肌色の女性はいるけれど、あなたほど艶やかな女性は見たことがないわ」
「そう言っていただけると、とっても嬉しいです」
私にとってはシャルル様が褒められているのと同じなのですから…。
「キルシッカ、あなた最近身体の肉付きも良くなってきたんじゃない?」
「そ、そうかな…」
個室をいただいて女性器を観察しだしてから、確かに胸は大きくなってきたような気がします。
「キルシッカさんの体型が羨ましいですよ…」
身長もあって一見細身なのに出る所が出ていて女性らしい身体つきをされています。
胸の突起部分周辺の色が違うところが胸よりもプックリしていて、薄いピンク色なのがなんだかかわいいわ。
「オーリエ様達はよく岩風呂に入られるのですか?」
「ええ、初めの日にメンテールさんに案内していただいてから、時間帯を変えながら毎日入っているんですよ」
「いつ入っても趣のあるお風呂ですね」
「キルシッカが橋やこの岩風呂の木製部分を製作したんですよ」
「そうだったのですか。細部にいたるまで丁寧に作られていて、とてもすばらしいと思っていたんです」
「ありがとうございます」
「製材されるということはキルシッカさんは風属性なのですね」
「はい」
「ローザは同じ風属性ですが、こんな風に出来ますか?」
「いえ、私にはこんなに上手に製材は出来ませんね」
「橋もシャルル様の案だとメンテールさんから聞いていますが、それを実行できるキルシッカさんもすごいですよ」
「エリオンさんは何属性なのですか?」
「私は火属性です」
「そうだったんですか、私も火属性なんです…よ。うっ…」
親近感が持てたと一瞬喜びましたが、湯面の上に見えるエリオンさんの胸を見て、なんだかさらに敗北感を知った感じになりました。
「サンディさんは何属性なのですか?」
「私は水属性なんです」
年齢を聞いてみると、サンディさんがシエラ先輩と同じで、ローザさんがトリス先輩よりも一つ上でした。
「でもキルシッカさんが16歳だなんて…、私よりも女性らしく見えます」と、ローザさんがつぶやいています。
「ハァ~~~、本当ねぇ」
キルシッカさんが16歳なら私はまだまだお子様だわ。ため息が出てしまいました。
「どうされたんですか、オーリエ様まで…。私もキルシッカと同じ16歳なんですよ」
「……」
もはや10年掛かっても近づける想像すらできません。
どうして私はお母様に似なかったのかしら…。
「シャルルっていつ戻ってくるのかしらねぇ?」
まだ知り合って間もないけれど、いないととっても寂しく感じます。
「おそらく帰りの途中じゃないでしょうか。早く帰ってきてほしいですよね」
同行されている先輩達が羨ましいです。
きっとバルゼ領に連れて行ってもらった時のように楽しい旅なんだろうなぁ。
「大丈夫ですよ、サマンサ様。ローマン帝国に向けて渡航したことは港町の町長から確認済です」
「エルスタイン領都にも無事にたどり着いている事でしょう」
「それにしても、よくオーリエ様の旅を許可されましたね。それも自国内ではなく他国になんて…」
「つい大戦以前の昔話の一つとして、ローマン帝国のエルスタイン領都と親交があったことを話してしまったのです。それ以来、ことあるごとに旅に行かせろとうるさくて…」
「なんでも、エルスタイン領の後継者が男の子だとか…」
「オーリエもその男の子に会いに行ったのかもしれませんね…」
「オーリエ様も行動力だけは大したものです」
「グリシャ、それはちょっとひどいのでは…」
おそらく自国自領の男性ではダメだと思ったのでしょう。
私がパートナーを選んでいた頃よりも男性が弱々しくなってきたように感じます。
他領では“男”になったら精子の強制搾取を行うべきだという声があがっているとも聞きますが、はたして男の子が少ないのは男性だけの問題なのでしょうか…。
「オーリエ様も戻ってこられましたら、そろそろパートナー候補を決めなければならないでしょうね…」
「数人、パートナーにとおっしゃっている方がいますよね?」
「あぁ、あの方達ね…。私はご免だわ」
「いえ、サマンサ様のパートナー候補じゃないですから…」
「あの方達は女性を物としか考えていませんよ。どうしてあんなに傲慢なのかしら…」
どこの国も男性が少ないと聞いていますから、他国でパートナーが見つかるとは思いませんが、せめてオーリエの納得する形になって欲しいですね…。
「オーリエ様は残念ながら体型が…、男性の目に留まるでしょうか…」
「そ、そうね。どうして私のようにならないのかしら…」
性格もちょっとひねたところがありますしねぇ。
「グリシャは“誕生の儀”をしたいと思ったことは無いのですか?」
「私はサマンサ様にお仕えする身ですから…」
「今さら弱々しいパートナーは要りませんが、昔、オーリエ様の小さい頃を見て子供は欲しいかなと思ったことはあります」
「今となれば、精子だけもらえれば“誕生の儀”にも興味はありますが、そんなことはありえませんからね」
「そうなのね…」
やはり結局は精子の確保が問題になるわけですか…。
XX XY
「今日もようやくお仕事が終わったわね」
「そうね…」
「どうしたの元気がないじゃない」
「だって、しばらくシャルル様のお姿を見ていないのよ」
「もうすぐ帰ってこられるわよ」
私はキルシッカといつものように岩風呂に入りに行きましたが、先に誰かが入っているようでした。
「あっ、オーリエ様達でしたか…」
服を脱ぎ浴場に入ると、先日から屋敷に滞在されている異国のお嬢様達が湯船に浸かっておられました。
「え~っと、エリオンさん…」
川で見ていましたが、シャルルと同じくらいの身長なのにメンテールさんよりも大きな胸をされています。
うぅ…、すごい敗北感です。
「キルシッカ、こちらはオーリエ様よ」
私とキルシッカもかかり湯をしてから湯船に入ります。
「バルトリア王国のルージュ領から来ましたオーリエです。こちらはサンディとローザです。よろしくお願いしますね」
「キルシッカと申します。屋敷に滞在されているのは存じていましたがご挨拶が遅くなり申し訳ありません」
「気にしないでください。ここに無理を言って滞在させていただいているのは私達の方ですから、キルシッカさんも気を使わずにお話くださいね」
キルシッカさんという方もなんてお綺麗なのかしら…。
緑色の髪が艶やかで肌も瑞々しいです。
「オーリエ様、薄褐色の肌がめずらしいですか?」
「ごめんなさいね。ジッと見ちゃって。あまりにも髪と肌が艶やかで見蕩れてしまったのよ」
「そうですか。ありがとうございます」
もう今の私は自分の身体を卑下することはありません。
シャルル様に綺麗にしていただいた身体なので、シャルル様の為にも自信を持って堂々としないと…。
「私達の国にもキルシッカさんのような肌色の女性はいるけれど、あなたほど艶やかな女性は見たことがないわ」
「そう言っていただけると、とっても嬉しいです」
私にとってはシャルル様が褒められているのと同じなのですから…。
「キルシッカ、あなた最近身体の肉付きも良くなってきたんじゃない?」
「そ、そうかな…」
個室をいただいて女性器を観察しだしてから、確かに胸は大きくなってきたような気がします。
「キルシッカさんの体型が羨ましいですよ…」
身長もあって一見細身なのに出る所が出ていて女性らしい身体つきをされています。
胸の突起部分周辺の色が違うところが胸よりもプックリしていて、薄いピンク色なのがなんだかかわいいわ。
「オーリエ様達はよく岩風呂に入られるのですか?」
「ええ、初めの日にメンテールさんに案内していただいてから、時間帯を変えながら毎日入っているんですよ」
「いつ入っても趣のあるお風呂ですね」
「キルシッカが橋やこの岩風呂の木製部分を製作したんですよ」
「そうだったのですか。細部にいたるまで丁寧に作られていて、とてもすばらしいと思っていたんです」
「ありがとうございます」
「製材されるということはキルシッカさんは風属性なのですね」
「はい」
「ローザは同じ風属性ですが、こんな風に出来ますか?」
「いえ、私にはこんなに上手に製材は出来ませんね」
「橋もシャルル様の案だとメンテールさんから聞いていますが、それを実行できるキルシッカさんもすごいですよ」
「エリオンさんは何属性なのですか?」
「私は火属性です」
「そうだったんですか、私も火属性なんです…よ。うっ…」
親近感が持てたと一瞬喜びましたが、湯面の上に見えるエリオンさんの胸を見て、なんだかさらに敗北感を知った感じになりました。
「サンディさんは何属性なのですか?」
「私は水属性なんです」
年齢を聞いてみると、サンディさんがシエラ先輩と同じで、ローザさんがトリス先輩よりも一つ上でした。
「でもキルシッカさんが16歳だなんて…、私よりも女性らしく見えます」と、ローザさんがつぶやいています。
「ハァ~~~、本当ねぇ」
キルシッカさんが16歳なら私はまだまだお子様だわ。ため息が出てしまいました。
「どうされたんですか、オーリエ様まで…。私もキルシッカと同じ16歳なんですよ」
「……」
もはや10年掛かっても近づける想像すらできません。
どうして私はお母様に似なかったのかしら…。
「シャルルっていつ戻ってくるのかしらねぇ?」
まだ知り合って間もないけれど、いないととっても寂しく感じます。
「おそらく帰りの途中じゃないでしょうか。早く帰ってきてほしいですよね」
同行されている先輩達が羨ましいです。
きっとバルゼ領に連れて行ってもらった時のように楽しい旅なんだろうなぁ。
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