DNAの改修者

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第165話 王領編3

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迎賓館に着くとそれぞれの部屋に案内されました。

僕とお母さんは個室で、お姉ちゃん達は二人部屋です。
しばらく皆と大部屋で一緒に寝ていたので一人だと少し静かで寂しい気もします。

夕食までにはまだ時間があるなぁと思っていると、部屋がノックされ扉を開けるとエリシアとメイドのお姉さんが二人立っていました。

「エリシア、どうしたの?」

「まだ、夕食までには時間があるから都市を散歩してみない?」

「うん、いいね。僕もどうしようか思っていたところだったんだ」

エリシアも時間を持て余しているようでした。

「じゃあ、行きましょうよ」

「ちょっと待ってね。僕もお母さん達に言っておかなくちゃいけないから…」



お母さんに街に出ると話をすると全員が付いてくることになりました。

「お母さん、僕と一緒に外出してても良いの?」

『ええ、ここは私の領ではありませんからね。なかなか来ることがないのだから楽しまないと…』

「さすが、ルーシャ様です」と、お姉ちゃん達も喜んでいます。

「エリシア、どこに行こうか?」

「とりあえず街の広場に行ってみましょうよ」

ポルカは建物が石造りの町並みでした。
昔からある古い町並みのようで道幅もそれほど広くはありません。

「都市の大きさの割には道幅がせまいよね」

「これでも主道路は広くなったそうなんですよ。昔はすべての道が細かったとか…」

『シャルル、これは都市に敵兵が侵入しても、自陣にたどり着けにくいように計画されているんですよ』

「そうなんだ。よく考えてあるね」

『そしておそらく…』

お母さんが何かを言いかけた時に僕たちは大きな広場に着きました。

『やっぱり…、色々な細い道はこの広場に向かいやすいようになっているのですね』

「どうして?」

『この広場に敵を集めて一気にやっつける為でしょう』

「そうなんだ…、こんな楽しそうなところでね…」

広場には大勢の人がいて、みんな楽しそうな声をあげています。

『まぁ、昔のことよ…。これからはそんなことにならないと思うわ』

「うん、そうだよね」

「じゃあ、シャルルどうしましょうか?」

「いっぱい屋台も見えるけれど…、エリシア、あれは何をしているの?」

僕が指をさした方には人だかりが出来ていて、皆が声を上げ何かを見ているようです。

「あ~、あれはね。小さい動物を走って競わせて順位を当てる出し物よ」
「私はやったことが無いけれど、順位を当てることが出来ればたくさんお金がもらえるそうよ」

「へ~、面白そうだね。ちょっと見に行ってみようよ」

皆で見に行くと、ちょうど次の競争が始まるところでした。

「けっこう男の人が見に集まっているんだね」

いつもなら街中ではあまり見ない男性が、かなり集まっているようにみえます。

「当たれば一攫千金ですからね。男の人はこういうのが好きみたいですよ」

「うん、僕も興味があるよ」

ちょうど競争が始まりそうです。
大きな音がすると10匹の動物が一斉に走り出し、この広場に作られたコースを駆けていきます。

「うわぁ~、あの動物とても脚が速いんだねぇ」

「狩猟用だと聞きますね」

その動物たちは決められたコース3周回って競うみたいです。

競争が終わるとたくさんの男の人達から残念そうな声が聞こえています。

「どうすれば、当たったことになるの?」

『あの動物に数字が付いているでしょう? どの動物が1着から3着になるかを当てるのよ』

「シャルル様、あちらで次に走る動物が見られるようです」と、メルモアお姉ちゃんが知らせてくれます。

「お母さん、エリシア達も行ってみようよ」

近づいてみると、次に走る10匹が目の前でゆっくりと歩いているのが見えます。

「お母さん、どうすれば良いの?」

『1着、2着、3着になりそうと思う動物の順番を決めて、あそこに見える小屋で券を買うのよ』

「あそこに張り出されているのはなに?」

『この動物たちの人気情報ね』
『皆が勝つと思っている人気のある動物を選んで買ってしまうと当たってももらえるお金は少ないの、反対に人気がない動物を選んでいて当たるとたくさんお金がもらえるのよ』

「そうなんだね」

僕はお母さんから話を聞いた後、もう一度歩いている動物たちを見ました。

(さて、どれが早そうかなぁ~)
そう思った瞬間に歩いている動物たちの中にポウッと光る物を見つけました。

(まさか…、こんなことにも使えるなんて…)
今までのこともあるので一瞬で理解できました。

でも光り方はそれぞれ違っていて、大きく光っている物、中ぐらいの物、小さい物と3匹はそれぞれ違います。
たぶん、大きく光っている物が1着なんだね。

「お母さん、決めたよ。5-1-2の順番にするよ」

『あら、人気の無い組み合わせを選んでるのね』

「エリシア達は選んで買わないの?」

「ええ、止めておくわ。当たる気がしないから…」

「そう…」
僕はトリスお姉ちゃんに付いてきてもらって小屋へ券を買いに行きます。

一枚の券の価格は同じなのですが、好きな番号を好きな枚数買うことが出来るようです。

「シャルル様、買う券はその順番の物だけで良いのですか?」

「うん!」

「シャルル様、私も同じ物を一枚買っても良いですか?」

「もちろん、いいよ。トリスお姉ちゃんも興味があるの?」
「せっかくですから…」と、トリスお姉ちゃんも自分のお金で券を買っていました。



「では、本日最後の競争を始めま~す!」

『オォ~~~ッ!!』

ちょうど券を買ってコースに戻ってきた頃に案内が聞こえてきました。
僕達が買った券は最後の競争の物だったようです。

「私も買っちゃいました~」

『トリスまで買ってきたの?』

「トリス、そんなに簡単に当たりませんよ」と、シエラお姉ちゃんも少しあきれています。

「いいんですよ、当たらなくても…。シャルル様とポルカに来た記念です」

「あっ、そうだったんですね。私も一緒に買っておけば良かったです」と、ヌエットお姉ちゃんが残念がっていました。

「シャルルの選んだ番号は何番なの?」

「うん、5-1-2番だよ」

「じゃあ、私も応援するから」と、エリシアもコースを眺めています。

「では、いよいよ開始します!」
ザワついていた場が、誰もが息をころして一瞬シーンと静かになりました。

パァーンッ!!
合図の音が鳴ると10匹の動物が一斉に走り出しました。

1周を走り終える頃はどの動物にも差がありませんでしたが、2周目の半分を過ぎた頃から徐々に先頭が分かるようになって来ました。

「シャルル様、シャルル様…」

「うん…、うん…」

トリスお姉ちゃんの呼びかけに、僕はうんとしか答えられません。
現在は2-1-9の順番になっているのです。

「5番、来て~!!」と、トリスお姉ちゃんが横で叫んでいます。
僕も心の中で、来い5番!と思うのでした。

3周目に入ると想いが通じたのか、1-2-5番の順になりました。

「シャルル様、シャルル様…、5番が…」

「うん…、うん…」
僕達の選んだ順番が勝つにはここから5番が先頭にならなければなりません。

『シャ…ルル…、5-1-2でしたよね』

当たると思っていなかったお母さんも段々興奮してきたようです。

「「「5番こ~~っい!!」」」と、シエラお姉ちゃん達も声を出してくれています。

最後の曲がる箇所で5番がついに1番に並びました。

元々人気のない番号だったので、周りの男の人達や観客はすでに諦めた雰囲気です。

その中で、僕達だけが大きな声で「5番こ~~っい!!」と叫んでいるのです。
目の前の決着線を3匹が駆け抜けていき、他の動物も続いて通り過ぎて行きます。

『ワァ~~~ッ!!』
「「大番狂わせだ~~~」」と、ため息交じりの声が周りから聞こえ始めました。

「シャルル様、シャルル様…、5番が…」

「うん…、やったよ…、トリスお姉ちゃん!」

「「「シャ、シャルル様~」」」

『シャルル、やったわね!』

「うん、当たったよ!」

周りから痛いぐらいの視線を浴びながら僕達は喜びます。

『さぁシャルル、さっさと券をお金に換えにいきましょう。皆さんの目もあるわ』

「そうだね。喜ぶのは後にしようか…」

「まさか当たるなんて…、当たるなんて…」と、トリスお姉ちゃんも興奮して放心状態です。

皆で券を買った小屋に向かい、小屋のお姉さんに僕達の券を見せるととても驚いていました。
この順番の券を買っていたのは僕達だけだったからです。

受付の奥から2つに分けられたお金をとても重そうに持ってこられ、「これが当たりの賞金です」と、ドサッと布袋を2つ置かれました。

「まさか最後の競争で当たりが出るなんて…、それも二人だけとか…」

「……」
当たった人が少ないほどもらえる賞金は多くなるのでした。
最後の競争だけあって今日一番多い賞金のようです。
トリスお姉ちゃんも賞金を見て固まっています。

「お母さん、いっぱいもらっちゃったよ」

『そ、そうね…。シャルル、あなたこの旅でいくら手に入れたか分かっている?』

「う~ん、分からないけれど、あって困るものじゃないよね」

『そうだけど…』

これから“シャルルの風”の発明料もシャルルが亡くなるまで入ってくることを思うと気が遠くなりますよ…。

「シャ、シャルルすごいわ~」と、エリシアの声が聞こえました。

「エリシアごめんね。ほったらかしにしてしまって…」
そうだった、エリシア達もいたんだった。

「ううん、良いのよ。皆さんが一緒になって叫んでいるのを見ていると、とっても楽しそうだったし、私もドキドキしたわ」

「うん、とっても楽しかったよ」

他にも面白そうな出し物はあったのですが、夕食の時間に近づいてきたので皆で迎賓館に戻ることにしました。
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