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第160話 【閑話】マイヤとロクサーヌ
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ガチャ…。
「マイヤいる~?」
「ど、どちら様ですか…?」
「えっ!? えっ、まさかマイヤの製作所が潰れちゃった…?」
「いえ、ここはマイヤさんの魔道具製作所に間違いありませんが…」
「だったらあなたは?」
「はい、先日よりここで働かせてもらうことになった者です」
(従業員ですって…?)
そういえば作業場の方からも色んな声が聞こえ活気づいているようです。
「じゃあ、マイヤを呼んでもらえるかしら…」
「ですからお名前を…」
「ロクサーヌよ」
「少々お待ちください…」
「ロクサーヌ、久しぶり~!」
「マイヤ、知らない人がいるからとうとう潰れちゃったのかと思ったわ。まさか、人を雇っているなんて…」
「まぁ、いろいろあってね。それでロクサーヌ、どうしたの?」
「属性石を持ってきたのよ」
受付のテーブルに属性石の入った籠を置いて見せます。
「また持ってきてくれたの、ありがとう。いつもこんなにもらってロクサーヌは大丈夫なの?」
「まぁ、マイヤのお店が潰れたら悲しいからね…」
「ありがとう、ロクサーヌ」
「それに属性石はこれだけじゃないんだよ。ちょっと待ってて…」
私は魔動力車に積まれた残りの籠を製作所に運び入れます。
「ちょっとロクサーヌ、こんなにどうしたの?」
「いや、ちょっとわけ有りでね。シャルルっていう男の子にこれら5籠分を届けるように言われていたのさ」
「シャルルって、シャルル様のこと?」
「とってもたくましい男の子だったけど…な」
「ロクサーヌ、シャルル様たちに会ったの?」
「マイヤも知っているだろう。隣町で数年に一度行われる鉱石採掘大会を…」
「ええ、前回もロクサーヌが採った鉱石を持ってきてくれたものね…」
「先日あったその大会にシャルルっていう男の子が参加していてね、ちょっと勝負をふっかけたらいとも簡単に負けたっていうわけさ」
「本当なら、勝負に負けた私達は、採った鉱石をシャルルって男の子に渡す約束だったんだけど、いらないって言われて、かわりにシャルルって男の子が採った鉱石をここへ届けることになったんだ」
「シャルルって男の子には私がマイヤと幼馴染だとは言わなかったけれど、まさか届け先がここだと聞いて驚いたよ」
「そう…、シャルル様…」
シャルル様が採られた鉱石を見ると、ほとんどが風と火と水の属性石でした…。
「どうしたんだマイヤ、急に涙を流して…」
「ええ、とっても嬉しくって…。ロクサーヌもいつも心配してくれてありがとう」
「色々と聞きたいことはあるが、それで製作所はいったい…」
「そうよ、お金を借りて従業員を雇って今フル稼働である魔道具を作っているの」
「お金を借りてって…、マイヤ大丈夫なのか?」
「それが、シャルル様のおかげで救われたのよ」
「ちょっと奥に来てみて…」
「……」
マイヤに付いていくと、数人の従業員が慌しく何かを作っています。
「ロクサーヌ、これよ…“シャルルの風”。これが私の魔道具製作所を救ってくれるのよ」
「何、これ…?」
渡されたそれは風の出る魔道具のようですが、持つところにはいくつかボタンが見られます。
「これは髪を乾かす魔道具なのよ…」
「宿に置いてあるようなやつだな」
「そんな物を作るのにお金なんか借りないわよ。まずは一番上の緑色のボタンを押してみて…」
言われるまま緑色のボタンを押すと、いつもと同じように風が出てきました。
「続けて赤色のボタンを押してみて」
「こ、これは…」
ボタンを押すと熱い風に変わります。
「ねっ、すごいでしょ? 髪をすばやく乾かせられるのよ。寒い季節でも大丈夫なんだから…。ちなみに青色のボタンを押すと冷たい風に変わるのよ」
「す、すごいよこれ! これなら私の長い髪も早く乾かせるわ」
「私も毎日試作品を使っているけれど、朝の寝癖直しにも便利なのよ」
「うわぁ~、これ欲しい~!」
「だから、大丈夫なのよ。借りたお金もすぐに返せるし、さらに従業員を増やしていけると思うわ」
「まさか、この間まで潰れかけだったのにね」
「ルーシャ様達には魔道具製作所の経営状況まで言えなかったけれど、本当にシャルル様に出会えたのは幸運だったわ」
「それで、あのシャルル様って?」
「あの方はエルスタイン領主様のご子息なのよ。周りに領主のルーシャ様や綺麗なメイドの方々がいらっしゃったでしょ?」
「エルスタイン領のシャルルだって…」
「そうか…、思い出したよ。あの男の子が…」
「ハハッ…、どおりで私が簡単に負けるはずだよ…」
「どうしたの、ロクサーヌ?」
「マイヤも少し前に国宝級の属性石が発掘されたのは聞いたことがあるだろう?」
「そういえば…」
「それらを発掘したのがエルスタイン領のシャルル、あの男の子だったんだよ」
「えぇ~~~っ、本当に!?」
「そうかぁ、もっと早く気付いていたら丁寧に話をしていたのに…」
「まだ私より小さい男の子なのに、本当に大きな男だよ」
「あっ、そうだ、言伝があったんだ。依頼していた商品を10個から30個に変更して欲しいとの事だったぞ」
「分かったわ。知らせてくれてありがとう。ルーシャ様たちもとっても気に入っていただいていたからね」
「ロクサーヌ、良かったらシャルル様のところに商品を届けさせてあげるわよ。もちろん無料でだけど…」
「チッ、上手いこと言うなぁ。良いよ、運んでやるよ。私ももう一度シャルル様に会いたいからね」
「でも、この“シャルルの風”1個は報酬としていただくよ」
「仕方がないわね~」
「マイヤいる~?」
「ど、どちら様ですか…?」
「えっ!? えっ、まさかマイヤの製作所が潰れちゃった…?」
「いえ、ここはマイヤさんの魔道具製作所に間違いありませんが…」
「だったらあなたは?」
「はい、先日よりここで働かせてもらうことになった者です」
(従業員ですって…?)
そういえば作業場の方からも色んな声が聞こえ活気づいているようです。
「じゃあ、マイヤを呼んでもらえるかしら…」
「ですからお名前を…」
「ロクサーヌよ」
「少々お待ちください…」
「ロクサーヌ、久しぶり~!」
「マイヤ、知らない人がいるからとうとう潰れちゃったのかと思ったわ。まさか、人を雇っているなんて…」
「まぁ、いろいろあってね。それでロクサーヌ、どうしたの?」
「属性石を持ってきたのよ」
受付のテーブルに属性石の入った籠を置いて見せます。
「また持ってきてくれたの、ありがとう。いつもこんなにもらってロクサーヌは大丈夫なの?」
「まぁ、マイヤのお店が潰れたら悲しいからね…」
「ありがとう、ロクサーヌ」
「それに属性石はこれだけじゃないんだよ。ちょっと待ってて…」
私は魔動力車に積まれた残りの籠を製作所に運び入れます。
「ちょっとロクサーヌ、こんなにどうしたの?」
「いや、ちょっとわけ有りでね。シャルルっていう男の子にこれら5籠分を届けるように言われていたのさ」
「シャルルって、シャルル様のこと?」
「とってもたくましい男の子だったけど…な」
「ロクサーヌ、シャルル様たちに会ったの?」
「マイヤも知っているだろう。隣町で数年に一度行われる鉱石採掘大会を…」
「ええ、前回もロクサーヌが採った鉱石を持ってきてくれたものね…」
「先日あったその大会にシャルルっていう男の子が参加していてね、ちょっと勝負をふっかけたらいとも簡単に負けたっていうわけさ」
「本当なら、勝負に負けた私達は、採った鉱石をシャルルって男の子に渡す約束だったんだけど、いらないって言われて、かわりにシャルルって男の子が採った鉱石をここへ届けることになったんだ」
「シャルルって男の子には私がマイヤと幼馴染だとは言わなかったけれど、まさか届け先がここだと聞いて驚いたよ」
「そう…、シャルル様…」
シャルル様が採られた鉱石を見ると、ほとんどが風と火と水の属性石でした…。
「どうしたんだマイヤ、急に涙を流して…」
「ええ、とっても嬉しくって…。ロクサーヌもいつも心配してくれてありがとう」
「色々と聞きたいことはあるが、それで製作所はいったい…」
「そうよ、お金を借りて従業員を雇って今フル稼働である魔道具を作っているの」
「お金を借りてって…、マイヤ大丈夫なのか?」
「それが、シャルル様のおかげで救われたのよ」
「ちょっと奥に来てみて…」
「……」
マイヤに付いていくと、数人の従業員が慌しく何かを作っています。
「ロクサーヌ、これよ…“シャルルの風”。これが私の魔道具製作所を救ってくれるのよ」
「何、これ…?」
渡されたそれは風の出る魔道具のようですが、持つところにはいくつかボタンが見られます。
「これは髪を乾かす魔道具なのよ…」
「宿に置いてあるようなやつだな」
「そんな物を作るのにお金なんか借りないわよ。まずは一番上の緑色のボタンを押してみて…」
言われるまま緑色のボタンを押すと、いつもと同じように風が出てきました。
「続けて赤色のボタンを押してみて」
「こ、これは…」
ボタンを押すと熱い風に変わります。
「ねっ、すごいでしょ? 髪をすばやく乾かせられるのよ。寒い季節でも大丈夫なんだから…。ちなみに青色のボタンを押すと冷たい風に変わるのよ」
「す、すごいよこれ! これなら私の長い髪も早く乾かせるわ」
「私も毎日試作品を使っているけれど、朝の寝癖直しにも便利なのよ」
「うわぁ~、これ欲しい~!」
「だから、大丈夫なのよ。借りたお金もすぐに返せるし、さらに従業員を増やしていけると思うわ」
「まさか、この間まで潰れかけだったのにね」
「ルーシャ様達には魔道具製作所の経営状況まで言えなかったけれど、本当にシャルル様に出会えたのは幸運だったわ」
「それで、あのシャルル様って?」
「あの方はエルスタイン領主様のご子息なのよ。周りに領主のルーシャ様や綺麗なメイドの方々がいらっしゃったでしょ?」
「エルスタイン領のシャルルだって…」
「そうか…、思い出したよ。あの男の子が…」
「ハハッ…、どおりで私が簡単に負けるはずだよ…」
「どうしたの、ロクサーヌ?」
「マイヤも少し前に国宝級の属性石が発掘されたのは聞いたことがあるだろう?」
「そういえば…」
「それらを発掘したのがエルスタイン領のシャルル、あの男の子だったんだよ」
「えぇ~~~っ、本当に!?」
「そうかぁ、もっと早く気付いていたら丁寧に話をしていたのに…」
「まだ私より小さい男の子なのに、本当に大きな男だよ」
「あっ、そうだ、言伝があったんだ。依頼していた商品を10個から30個に変更して欲しいとの事だったぞ」
「分かったわ。知らせてくれてありがとう。ルーシャ様たちもとっても気に入っていただいていたからね」
「ロクサーヌ、良かったらシャルル様のところに商品を届けさせてあげるわよ。もちろん無料でだけど…」
「チッ、上手いこと言うなぁ。良いよ、運んでやるよ。私ももう一度シャルル様に会いたいからね」
「でも、この“シャルルの風”1個は報酬としていただくよ」
「仕方がないわね~」
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