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第156話 領主会議ーケープノット領編7
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翌朝、町外れのお祭りが行われるという山の麓に皆で向かいました。
たくさんの人が同じ方向に向かって歩いています。
「この人達みんな参加するのかなぁ」
「ほとんど私達の様な観客ではないですか…」
『参加費はナモアイでやっているような観光客相手ではないくらい高額みたいですから、本当に採掘に自信のある者しか出場しないのではありませんか』
しばらく歩いていくと受付はこちらと案内があったので、僕とヌエットお姉ちゃんは受付に向かいます。
「あら、男の子が参加とは…。今までにそんなことがあったかしら。坑道内は広く採掘作業は大変だと思いますが大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ」
受付のお姉さんが心配してくれているようです。
男性は魔法が使えないのですから当然の反応です。
僕達は二人分の参加費を払うと希望者には採掘道具一式が貸し出しされ、大会の決まりごとの説明を受けます。
もちろん僕達は採掘道具なんて持っていないので借りることにします。
「では、しばらくすると大会が始まりますので、参加者の待合場所でお待ちくださいね」
「いよいよだね、ヌエットお姉ちゃん」
「そうですね。それにしても受付されていた方の態度がなっていませんね」
「いやぁ~、あのお姉さんは僕のことを心配してくれていたんだよ」
「そうですかぁ~? なんだかあきれられていたような気がしましたが…」
「まぁ、どっちでもいいじゃない。優勝しようねヌエットお姉ちゃん!」
「はい、必ず!」
「はんっ! 何の話をしているかと思えば優勝するだって?」
「あなた達、採掘を舐めているんじゃないの?」
「まぁ、男の子にしたらしっかりした体躯のようだけど、そんなに簡単に見つかるものじゃないんだよ。歩き回って採掘していくんだからね。魔法も使えないのに…」
「なんですか、あなた達は急に…」
ヌエットお姉ちゃんがムッとした表情で聞き返しています。
「私達のことも知らないのかい? 本当に素人がお祭り気分で参加しているんだね」
「まぁ、もらえるお金が増えるから良いんだけどね…」
「お姉さん達はずいぶん自信があるんだね」
「そりゃそうさ。私達は採掘の専門家だからな。ついでに言うと私は前回の優勝者さ」
「へぇ~、それはすごいね」
「ここで優勝すると賞金だけで一年は遊んで暮らせるからね~」
「そうなんだ~」
前回の優勝者とは違うもう一人の仲間の人も口振りからかなりの専門家のようです。
「シャルル様すごいですね。そんなに貰えるんですか、良かったですねぇ」
(シャ…ルル…? どこかで聞いた名前だな…)
「あなた達~、だから言ってるじゃない私達がいるから無理だって…」
「そんなこと分かりませんよ。シャルル様は凄いお方なんですからね!」
「そこまで言うのなら勝負をしようじゃないか。賞金は優勝者の物だから…、まぁ当然私達だけどな。負けた方が勝った方に自分達が採掘した鉱石を全部渡すってのはどうだい?」
「まぁ、素人の採掘する量はしれていると思うけれどね…。ちょっとは何かの足しにはなるわね…」
「うん、いいよ」
二人とも負ける事は考えていないようです。
「シャ、シャルル様~、私が余計なことを言ったばかりに…」
「ヌエットお姉ちゃん、大丈夫だよ。その方が面白いじゃない」
「フッ…、その度胸だけは褒めてあげるよ…」
「言ったわねぇ~。その言葉忘れないでよ!」
二人はそう言いながら立ち去っていきました。
「あっ、あのお姉さんの名前を聞くのを忘れたね」
「そうですね。でも一人は前回の優勝者だって言っていたので、後から調べることも出来ますよ」
「それもそうか…」
「みなさ~ん、お待たせしました~!」
「いよいよ大会を始めさせていただきま~す」
『ワァ~~~ッ!』
パチパチパチパチッ…。
受付のお姉さんが壇上に上がって司会を始めました。
忙しいお姉さんのようです。
「今回もたくさんの方にご参加していただきありがとうございます」
「なんと今回は128組256人の参加となりました~」
「「「「すごいわ~」」」」
「「過去最高じゃない~?」」
「それに、な…なんと、今回は男の子まで参加してくれています~」
「「「「わぁ~、本当だ~」」」」
「「かっわいい~っ!」」
皆の視線が僕に集まります。
「あの受付の女の人、シャルル様を見世物にまで…」
「まぁまぁ、ヌエットお姉ちゃん。あのお姉さんも大会を盛り上げるのに必死なんだよ」
「そ、それでも~」と、ヌエットお姉ちゃんは不満そうな顔をしています。
「それに、前回優勝者のロクサーヌさんも相方は違いますが続けて参加です。二連覇されるのでしょうか~!」
「「「わぁ~、すごいわ~~」」」
「「あれが採掘者のロクサーヌかぁ…」」
「シャルル様…」
「うん…」
さっきのお姉さんはロクサーヌっていう名前なのか…。
皆の反応を見ていると採掘者として有名みたいです。
「では、只今より鉱石採掘大会を始めます…」
「いいですか~~~、では始め!!」
お姉さんの掛け声で、皆が一斉にいくつかある坑道に流れ込みました。
ほとんどの人は坑道の奥に行くほど鉱石が見つかると思っているようです。
「シャルル様、みんな行ってしまいましたよ」
「本当だね。ロクサーヌさんももういないね」
「さぁ、僕達も人が少なそうな所から入ってみようか」
「はい、掘っていくのは任せてくださいね」
会場から見え難いところを選んで入ってみました。
こちらの方にはあまり人が来ていないようです。
「シャルル様、では指示して言ってくださいますか」
「うん…」
僕は鉱石のことを考えます。
すると、ナモアイの時とは違って至る所で大小のポウッと光っている物が見えました。
「こ、これは…」
「どうかされたのですか、シャルル様?」
「いや、いっぱいありすぎちゃって…、大きいものから採っていこう」
「そうなのですか、私にはまったく分かりませんけれど…」
僕は大きくポウッ光るところから順にヌエットお姉ちゃんに指示を出して採ってもらいます。
魔法が使えると以前と違ってとても楽ちんです。
それにヌエットお姉ちゃんは土属性ですから簡単に綺麗に採れていくのです。
「シャルル様、こんな簡単に一杯になるものなんでしょうか?」
「どうだろうね。入口からそんなに入っていなくてもこんなに採れるんだから、皆も簡単に採っているんじゃないかなぁ」
ナモアイで見つけたほどの大きさではありませんが、かなり大きい物も採れ、しばらくすると僕達の籠が満杯になってしまいました。
「そうですよねっ」
「じゃあ、僕は新しい籠をもらってくるから」
「あっ、私が行きましょうか?」
「いいよ、二人分の籠となるとさすがに重いから…」
「その間に、ヌエットお姉ちゃんは、あそこの通路が少しへこんでいる部分と、あっちの少し色の違う壁の中を掘っておいてくれるかな」
「分かりました」
僕は二人分の籠を持って会場に戻ります。
会場に集まっていた人達も今は採掘中だと知っているので散開し、屋台で食べ物を買ったりと楽しんでいるようです。
「どうかされましたか?」
受付のお姉さんが一人で戻ってきた僕に気付き声を掛けてきてくれます。
「うん、借りていた二人分の籠が満杯になったから、新しい籠を借りに来たんだよ」と、抱えていた籠を見せます。
「えっ!? こんなに…」
「もしかしたらもう一回籠を借りに来るから、ちゃんと預かっておいてね」
僕は新しい籠を受け取ってヌエットお姉ちゃんの下に戻ります。
「あっ、シャルル様…、言われていたところの石を採っておきましたよ」
「ありがとう。けっこう多いね」
「それで、どうでした? 籠が一杯になることは普通なんでしょうか?」
「受付のお姉さんは驚いていたみたいだったけれど、ロクサーヌさんとの勝負もあるし、出来るだけ採っておこうか」
「そうですね。ちょっとのことで負けるのも嫌ですからね」
その後、僕達は順調に鉱石を採り進め、再び新しい籠を借りてきて採っていきます。
「すご~い。シャルル様、本当に一杯採れますね~」
「そうだね。ナモアイではけっこう坑道を歩いたけれど、ここはそんなに歩かなくても採り放題だね」
「シャルル様、そろそろお昼ですね。戻りましょうか」
「そうだね。これだけ採れば大丈夫かな」
「ロクサーヌさん達には負けたくないですね」
僕達が戻るとすでにほとんどの参加者が戻っていて、観覧場所も開始時と同じように一杯になっていました。
お母さん達が会場の最前列に陣取っているのも見えます。
「終了で~す!」
「皆さん、お疲れ様でした~」
受付のお姉さんが壇上に立ち、大会の終了を告げました。
『ワァ~~~ッ!』
ロクサーヌお姉さん達が僕達を見つけ側にやってきます。
「どうだい、鉱石を採るのは難しかっただろう?」
僕達の籠を見ながらロクサーヌさんはニアッと笑っています。
「勝負はどうなるか分かりませんよ。ねぇシャルル様…」
「まだそんなことを言っているのか…」
「みなさ~ん。本来ならここで順番に計量をして優勝者を決めるのですが、この大会始まって以来、計量確認無しで優勝者の発表をいたします!」
「「「「えっ~~~!!」」」」
「「「「そんなことがあるの~」」」」
「一体何だ…」と、ロクサーヌさんがつぶやいています。
「さて、発表します!」
「今大会の優勝者は…、シャルル・ヌエット組み~!!」
「「「わぁ~、すごいわ~」」」
「「あのかわいい男の子が~!?」」
「「素敵~!!」」
「なお、採掘量はこの大会が始まって以来最高です!!」
『ワァ~~~ッ!』
パチパチパチパチッ…。
「「「シャルル様~~~!」」」
「何を言っているんだ、二人の籠には半分ずつぐらいしか入っていないぞ」
「ロクサーヌさんがそうおっしゃるのも分かりますが、二人はすでに4籠分も満杯にしているのです」と、僕があずけていた籠を壇上から指を差しています。
「そ、そんな、ばかな…」と、ロクサーヌさんは膝をつき肩を落としています。
「ロクサーヌさん、僕の勝ちだね」
「……、悔しいけれど完敗だわ」と、約束通り自分達の採った鉱石を差し出してきました。
「別にいいよ」
「ロクサーヌさんはともかく、仲間の方の鉱石をもらっても悪いし…」
「それでは…勝負を言い出した私の気が…」
「それなら、僕の採った鉱石をケープノット領都に届けてくれるかな?」
「シャルル様…」
「いいんだよ、ヌエットお姉ちゃん」
「勝負は楽しめたし、賞金もいっぱい貰えるからね」
「では優勝賞金と記念盾の授与を行います」
ヌエットお姉ちゃんは自分と僕の名前が書かれた記念盾をもらえてとても喜んでいます。
そして賞金はヌエットお姉ちゃんと折半してもかなりの金額になりました。
「それでは、また次回の大会をお楽しみくださ~い!」
お姉さんの挨拶で鉱石採掘大会は終了するのでした。
『シャルルすごいわねぇ』
お母さん達が駆け寄ってきます。
「やっぱりシャルル様が優勝しましたね~」
「本当にすごいです」
「まさか本当に優勝してしまうとは…」
メルモアお姉ちゃんは僕がこんなことが得意だとは知らなかったので驚いています。
「お母さん、賞金をいっぱい貰っちゃったから預かっておいてくれる?」
『ええ、いいわよ』
『それで、そちらの方は?』
「うん、ロクサーヌお姉さんだよ」
『そう、確か前回優勝された方よね…』
お母さんに紹介したところで、ロクサーヌお姉さん達が挨拶をしていました。
「色々あってね。ロクサーヌお姉さんには僕の採った鉱石をケープノット領都に届けてもらうように頼んでいるんだよ」
『そうなの…。あそこに届けてもらうのね?』
「うん」
『じゃあ、ついでに送ってもらう魔道具を30個にしてもらうように伝えておいてもらおうかしら』
「そうだね。それがいいよ」
僕はロクサーヌお姉さん達に僕達の採った5籠分の鉱石を預け、伝言を伝えてもらうように頼み別れました。
「お母さん、お腹が減ったよ。お祭りの屋台を回ろうよ」
『そうね、シャルルたちは何も食べてないものね』
「さっき美味しそうな屋台を見つけましたので、そこに行きましょう」
僕達はトリスお姉ちゃんの案内で改めてお祭りを楽しむのでした。
たくさんの人が同じ方向に向かって歩いています。
「この人達みんな参加するのかなぁ」
「ほとんど私達の様な観客ではないですか…」
『参加費はナモアイでやっているような観光客相手ではないくらい高額みたいですから、本当に採掘に自信のある者しか出場しないのではありませんか』
しばらく歩いていくと受付はこちらと案内があったので、僕とヌエットお姉ちゃんは受付に向かいます。
「あら、男の子が参加とは…。今までにそんなことがあったかしら。坑道内は広く採掘作業は大変だと思いますが大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ」
受付のお姉さんが心配してくれているようです。
男性は魔法が使えないのですから当然の反応です。
僕達は二人分の参加費を払うと希望者には採掘道具一式が貸し出しされ、大会の決まりごとの説明を受けます。
もちろん僕達は採掘道具なんて持っていないので借りることにします。
「では、しばらくすると大会が始まりますので、参加者の待合場所でお待ちくださいね」
「いよいよだね、ヌエットお姉ちゃん」
「そうですね。それにしても受付されていた方の態度がなっていませんね」
「いやぁ~、あのお姉さんは僕のことを心配してくれていたんだよ」
「そうですかぁ~? なんだかあきれられていたような気がしましたが…」
「まぁ、どっちでもいいじゃない。優勝しようねヌエットお姉ちゃん!」
「はい、必ず!」
「はんっ! 何の話をしているかと思えば優勝するだって?」
「あなた達、採掘を舐めているんじゃないの?」
「まぁ、男の子にしたらしっかりした体躯のようだけど、そんなに簡単に見つかるものじゃないんだよ。歩き回って採掘していくんだからね。魔法も使えないのに…」
「なんですか、あなた達は急に…」
ヌエットお姉ちゃんがムッとした表情で聞き返しています。
「私達のことも知らないのかい? 本当に素人がお祭り気分で参加しているんだね」
「まぁ、もらえるお金が増えるから良いんだけどね…」
「お姉さん達はずいぶん自信があるんだね」
「そりゃそうさ。私達は採掘の専門家だからな。ついでに言うと私は前回の優勝者さ」
「へぇ~、それはすごいね」
「ここで優勝すると賞金だけで一年は遊んで暮らせるからね~」
「そうなんだ~」
前回の優勝者とは違うもう一人の仲間の人も口振りからかなりの専門家のようです。
「シャルル様すごいですね。そんなに貰えるんですか、良かったですねぇ」
(シャ…ルル…? どこかで聞いた名前だな…)
「あなた達~、だから言ってるじゃない私達がいるから無理だって…」
「そんなこと分かりませんよ。シャルル様は凄いお方なんですからね!」
「そこまで言うのなら勝負をしようじゃないか。賞金は優勝者の物だから…、まぁ当然私達だけどな。負けた方が勝った方に自分達が採掘した鉱石を全部渡すってのはどうだい?」
「まぁ、素人の採掘する量はしれていると思うけれどね…。ちょっとは何かの足しにはなるわね…」
「うん、いいよ」
二人とも負ける事は考えていないようです。
「シャ、シャルル様~、私が余計なことを言ったばかりに…」
「ヌエットお姉ちゃん、大丈夫だよ。その方が面白いじゃない」
「フッ…、その度胸だけは褒めてあげるよ…」
「言ったわねぇ~。その言葉忘れないでよ!」
二人はそう言いながら立ち去っていきました。
「あっ、あのお姉さんの名前を聞くのを忘れたね」
「そうですね。でも一人は前回の優勝者だって言っていたので、後から調べることも出来ますよ」
「それもそうか…」
「みなさ~ん、お待たせしました~!」
「いよいよ大会を始めさせていただきま~す」
『ワァ~~~ッ!』
パチパチパチパチッ…。
受付のお姉さんが壇上に上がって司会を始めました。
忙しいお姉さんのようです。
「今回もたくさんの方にご参加していただきありがとうございます」
「なんと今回は128組256人の参加となりました~」
「「「「すごいわ~」」」」
「「過去最高じゃない~?」」
「それに、な…なんと、今回は男の子まで参加してくれています~」
「「「「わぁ~、本当だ~」」」」
「「かっわいい~っ!」」
皆の視線が僕に集まります。
「あの受付の女の人、シャルル様を見世物にまで…」
「まぁまぁ、ヌエットお姉ちゃん。あのお姉さんも大会を盛り上げるのに必死なんだよ」
「そ、それでも~」と、ヌエットお姉ちゃんは不満そうな顔をしています。
「それに、前回優勝者のロクサーヌさんも相方は違いますが続けて参加です。二連覇されるのでしょうか~!」
「「「わぁ~、すごいわ~~」」」
「「あれが採掘者のロクサーヌかぁ…」」
「シャルル様…」
「うん…」
さっきのお姉さんはロクサーヌっていう名前なのか…。
皆の反応を見ていると採掘者として有名みたいです。
「では、只今より鉱石採掘大会を始めます…」
「いいですか~~~、では始め!!」
お姉さんの掛け声で、皆が一斉にいくつかある坑道に流れ込みました。
ほとんどの人は坑道の奥に行くほど鉱石が見つかると思っているようです。
「シャルル様、みんな行ってしまいましたよ」
「本当だね。ロクサーヌさんももういないね」
「さぁ、僕達も人が少なそうな所から入ってみようか」
「はい、掘っていくのは任せてくださいね」
会場から見え難いところを選んで入ってみました。
こちらの方にはあまり人が来ていないようです。
「シャルル様、では指示して言ってくださいますか」
「うん…」
僕は鉱石のことを考えます。
すると、ナモアイの時とは違って至る所で大小のポウッと光っている物が見えました。
「こ、これは…」
「どうかされたのですか、シャルル様?」
「いや、いっぱいありすぎちゃって…、大きいものから採っていこう」
「そうなのですか、私にはまったく分かりませんけれど…」
僕は大きくポウッ光るところから順にヌエットお姉ちゃんに指示を出して採ってもらいます。
魔法が使えると以前と違ってとても楽ちんです。
それにヌエットお姉ちゃんは土属性ですから簡単に綺麗に採れていくのです。
「シャルル様、こんな簡単に一杯になるものなんでしょうか?」
「どうだろうね。入口からそんなに入っていなくてもこんなに採れるんだから、皆も簡単に採っているんじゃないかなぁ」
ナモアイで見つけたほどの大きさではありませんが、かなり大きい物も採れ、しばらくすると僕達の籠が満杯になってしまいました。
「そうですよねっ」
「じゃあ、僕は新しい籠をもらってくるから」
「あっ、私が行きましょうか?」
「いいよ、二人分の籠となるとさすがに重いから…」
「その間に、ヌエットお姉ちゃんは、あそこの通路が少しへこんでいる部分と、あっちの少し色の違う壁の中を掘っておいてくれるかな」
「分かりました」
僕は二人分の籠を持って会場に戻ります。
会場に集まっていた人達も今は採掘中だと知っているので散開し、屋台で食べ物を買ったりと楽しんでいるようです。
「どうかされましたか?」
受付のお姉さんが一人で戻ってきた僕に気付き声を掛けてきてくれます。
「うん、借りていた二人分の籠が満杯になったから、新しい籠を借りに来たんだよ」と、抱えていた籠を見せます。
「えっ!? こんなに…」
「もしかしたらもう一回籠を借りに来るから、ちゃんと預かっておいてね」
僕は新しい籠を受け取ってヌエットお姉ちゃんの下に戻ります。
「あっ、シャルル様…、言われていたところの石を採っておきましたよ」
「ありがとう。けっこう多いね」
「それで、どうでした? 籠が一杯になることは普通なんでしょうか?」
「受付のお姉さんは驚いていたみたいだったけれど、ロクサーヌさんとの勝負もあるし、出来るだけ採っておこうか」
「そうですね。ちょっとのことで負けるのも嫌ですからね」
その後、僕達は順調に鉱石を採り進め、再び新しい籠を借りてきて採っていきます。
「すご~い。シャルル様、本当に一杯採れますね~」
「そうだね。ナモアイではけっこう坑道を歩いたけれど、ここはそんなに歩かなくても採り放題だね」
「シャルル様、そろそろお昼ですね。戻りましょうか」
「そうだね。これだけ採れば大丈夫かな」
「ロクサーヌさん達には負けたくないですね」
僕達が戻るとすでにほとんどの参加者が戻っていて、観覧場所も開始時と同じように一杯になっていました。
お母さん達が会場の最前列に陣取っているのも見えます。
「終了で~す!」
「皆さん、お疲れ様でした~」
受付のお姉さんが壇上に立ち、大会の終了を告げました。
『ワァ~~~ッ!』
ロクサーヌお姉さん達が僕達を見つけ側にやってきます。
「どうだい、鉱石を採るのは難しかっただろう?」
僕達の籠を見ながらロクサーヌさんはニアッと笑っています。
「勝負はどうなるか分かりませんよ。ねぇシャルル様…」
「まだそんなことを言っているのか…」
「みなさ~ん。本来ならここで順番に計量をして優勝者を決めるのですが、この大会始まって以来、計量確認無しで優勝者の発表をいたします!」
「「「「えっ~~~!!」」」」
「「「「そんなことがあるの~」」」」
「一体何だ…」と、ロクサーヌさんがつぶやいています。
「さて、発表します!」
「今大会の優勝者は…、シャルル・ヌエット組み~!!」
「「「わぁ~、すごいわ~」」」
「「あのかわいい男の子が~!?」」
「「素敵~!!」」
「なお、採掘量はこの大会が始まって以来最高です!!」
『ワァ~~~ッ!』
パチパチパチパチッ…。
「「「シャルル様~~~!」」」
「何を言っているんだ、二人の籠には半分ずつぐらいしか入っていないぞ」
「ロクサーヌさんがそうおっしゃるのも分かりますが、二人はすでに4籠分も満杯にしているのです」と、僕があずけていた籠を壇上から指を差しています。
「そ、そんな、ばかな…」と、ロクサーヌさんは膝をつき肩を落としています。
「ロクサーヌさん、僕の勝ちだね」
「……、悔しいけれど完敗だわ」と、約束通り自分達の採った鉱石を差し出してきました。
「別にいいよ」
「ロクサーヌさんはともかく、仲間の方の鉱石をもらっても悪いし…」
「それでは…勝負を言い出した私の気が…」
「それなら、僕の採った鉱石をケープノット領都に届けてくれるかな?」
「シャルル様…」
「いいんだよ、ヌエットお姉ちゃん」
「勝負は楽しめたし、賞金もいっぱい貰えるからね」
「では優勝賞金と記念盾の授与を行います」
ヌエットお姉ちゃんは自分と僕の名前が書かれた記念盾をもらえてとても喜んでいます。
そして賞金はヌエットお姉ちゃんと折半してもかなりの金額になりました。
「それでは、また次回の大会をお楽しみくださ~い!」
お姉さんの挨拶で鉱石採掘大会は終了するのでした。
『シャルルすごいわねぇ』
お母さん達が駆け寄ってきます。
「やっぱりシャルル様が優勝しましたね~」
「本当にすごいです」
「まさか本当に優勝してしまうとは…」
メルモアお姉ちゃんは僕がこんなことが得意だとは知らなかったので驚いています。
「お母さん、賞金をいっぱい貰っちゃったから預かっておいてくれる?」
『ええ、いいわよ』
『それで、そちらの方は?』
「うん、ロクサーヌお姉さんだよ」
『そう、確か前回優勝された方よね…』
お母さんに紹介したところで、ロクサーヌお姉さん達が挨拶をしていました。
「色々あってね。ロクサーヌお姉さんには僕の採った鉱石をケープノット領都に届けてもらうように頼んでいるんだよ」
『そうなの…。あそこに届けてもらうのね?』
「うん」
『じゃあ、ついでに送ってもらう魔道具を30個にしてもらうように伝えておいてもらおうかしら』
「そうだね。それがいいよ」
僕はロクサーヌお姉さん達に僕達の採った5籠分の鉱石を預け、伝言を伝えてもらうように頼み別れました。
「お母さん、お腹が減ったよ。お祭りの屋台を回ろうよ」
『そうね、シャルルたちは何も食べてないものね』
「さっき美味しそうな屋台を見つけましたので、そこに行きましょう」
僕達はトリスお姉ちゃんの案内で改めてお祭りを楽しむのでした。
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