DNAの改修者

kujibiki

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第120話 【閑話】クーシアの夢

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(あれ? あそこだけ何だか雰囲気が違う…)

私とお母さんが“やきもい”を買って広場の中央に立っている大きな木の側に近づいた時、以前シャルル様が座って“シュー”を食べておられたところに違和感を感じました。

(えっ、えっ~!? 本当にシャルル様なんじゃ~)

これまでと違うのはもう一人メイドさんらしき方が横におられる事でした。

「お、お母さん、ちょっと“シュー”を売っているところの前を通ろうよ」

「どうしたの~、遠回りになっちゃうでしょう」

「でも、もしかしたら、あそこに見えるのは前に話したシャルル様かもしれないよ」

「あ~、クーシア達から“やきもい”を購入されたって言っていたわね」
「よく、こんなところから分かるわね」

「うん…、なんだかシャルル様の周りは明るいような…、雰囲気が違うように見えるんだよ」

「そう、まぁ、いいわ。だったら少し遠回りしてみましょう」



近づくたびに確信が持てました。
シャルル様が背中を向けて椅子に座っているのが分かります。

“やきもい”を持って帰られる後姿を忘れてはいません。
そして側にいる二人の女性はやはりメイドさんのようです。

その内の一人はいつもシャルル様と一緒におられる方ですね。
まだ横顔しか見えませんが、なんだかとてもお綺麗になられているように思います。

「シャ、シャルル様…?」

私は勇気を振り絞って後ろから声を掛けてみました。

いくら見かけたら気軽に声を掛けてねと言われていても、その時の挨拶だったかもしれません。

そんな緊張していた私にまるでこの間も会ったかのように気さくに返事を返してくださいました。
シャルル様の目を見て声を聴くと、本当に気持ちが温かくなって安心します。

シャルル様から私の隣に立っている女性について聞かれ、私が答えようとするとお母さんが自分で名乗りだしました。
まさか本当にシャルル様と会えるとは思ってもみなかったようで、めずらしく少し緊張しているようで口調まで変わっています。

シャルル様はお母さんにも丁寧に挨拶をして、それから私達をメイドのお二人に紹介して下さりました。

昨年もシャルル様の傍におられた方がトリスさんで、今回初めて見た方がフランさんと言うそうです。

聞くと、もう一人のメイドの方が屋敷の調理責任者とのことで、“シュー”のクリームについて教えてもらっていたそうです。
お菓子のことに興味を持たれているって、なんだかおかしな感じです。

それに、私の身長が伸びたことにも気付いてくださりました。
昨年、少しお会いしただけなのに覚えてくださっていてとても嬉しくなりました。

そのシャルル様はこの一年でさらに目線が高くなり、格好良く、たくましくなられていました。
本当にこんな男の子は見たことがありません。

せっかくメイドさん方を紹介していただいたので、私は思い切ってどうすればルーシャ様のお屋敷で働けるかを聞いてみました。

シャルル様もご存じなく、一緒にメイドさんたちに確認してくださります。

聞くと、トリスさんは先輩の紹介で、フランさんは機会が合ったとおっしゃっていますが、料理が得意だったからなのかもしれません。

シャルル様も魔法をコツコツ練習して、得意な事を見つけておく方が良いと言ってくださいました。

なんだかようやく目標が定まった気がするわ。
私も“女”になる前に魔法を練習して得意な事を見つけられるようにしようと思うのでした。



私はリーナ。

今日、初めてシャルル様にお会いして、話まですることができました。

私みたいな者にも嫌な顔一つせず、丁寧に挨拶をしてくださいます。
なんて紳士的で優しい方なのでしょう。

これまでクーシアにはルーシャ様のご子息と同じ誕生日だよと言ってきましたが、本当にクーシアと同い年なのでしょうか…。
身体つきは同じ歳の男の子よりも3歳は上に見えますし、弱々しい感じも全くしません。
“男”よりも男らしい…。
なにより非の打ちどころがないぐらい格好良いのです。

クーシアがよくシャルル様の事を話すのが分かりました。

今回、思い切ってルーシャ様のお屋敷に仕える方法をお二人のメイドの方に聞いて納得できたようです。

クーシアの夢が実現するように、この子が“女”になるまでに出来る限りのことをしてあげようと思うのでした。
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