DNAの改修者

kujibiki

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第117話 トリスの肖像画

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「シャルル様…、エルスタイン領都も寒くなってきましたね…」

「う…ん…、そうだね…、あっ動かないでトリスお姉ちゃん!」

「す、すいません。う、腕がしびれちゃって…」
うぅ…、なぜこんな姿勢でお願いしたんだろ…。

私は今、上半身裸でシャルル様のベッドに腰を掛け、頭の後ろで両手を組み、思いっきり胸を張っています。

バルゼ領都から帰ってきてから、何回かフランの作った“りんこパフ”を試食していたのですが、ロッキにやっぱり太ったと言われたので、シャルル様に胸が大きくなっているということを見てもらおうと思ったです。

シャルル様は絵を描かれるのが上手でしたので、軽く「肖像画でもどうですか?」と被写体の志願をしたところ、興味を持たれて熱心に私を描いてくださっているのです。

一体どんな絵になっているんでしょうか。
私がシャルル様の初めて描かれる肖像画の被写体です。

シャルル様が私の目や顔、首筋や脇、そして両胸をジッと見つめられると、胸の突起部分がピクピクッとして下腹部がドクドクとしてきます。

シャルル様の視界に私しか入っていないと思うと、こんな大変な姿勢でもした甲斐があったといえるでしょう。

でも…、両腕から血の気が引いて冷たくなってきたような気がします。
胸を張ると腰も自然と反ってしまうので姿勢を保つのも大変です。

「で、出来たよ。トリスお姉ちゃん!」

「本当ですか…」
私は組んでいた手を解いて、上着を整えてから手を太ももの上に置きます。

「色をつけて欲しかったら、また明日同じ姿勢になってもらうけれど…」

「見ても良いですか?」

「もちろん!」

私はシャルル様の後ろにまわり、描かれた自分を見るのでした。

「す、すごい。シャルル様…」

私はその描かれた自分を見ながら、さっきまで自分が座っていたところを見つめ直します。
なんだかまだ自分があそこに座っているような錯覚に陥ります。

「私ってこんなに綺麗な身体の線をしていましたか?」

胸を張って腰を反らせていたとはいえ、自分じゃないような体型でした。

「うん、トリスお姉ちゃんは確かにムッチリしているけれど、僕も上手にトリスお姉ちゃんのそのままを描けたと思うよ」
「でも、食べ過ぎたら本当に太るからね~」

「はっ、はい! ありがとうございます。シャルル様」

「それでトリスお姉ちゃん、色はどうしたい?」
「つけて欲しいなら明日塗ってみるけど…」

「そうですね。シャルル様が初めて描かれた私の肖像画ですから、お手間じゃなかったらお願いしたいです」

「うん、分かったよ」



XX XY



翌日、私は昨日描いてもらった同じ時間帯に同じ姿勢でシャルル様のベッドに腰を掛けました。
線で描かれた状態の陰影に合わせるために、同じ時間帯が良いとシャルル様がおっしゃられたからです。

(私の裸ってシャルル様にはどう見えているのかしら…?)
線画の状態でもあんなにすごかったのに、色が付くと思うと期待せずにはいられません。

実は色を付けるのは昨日よりも簡単なのかなと思っていたのですが、そんなことはありませんでした。

シャルル様は昨日と同じ真剣な目つきで、私の色んなところをジッと見ていかれます。
(すいません、シャルル様。安易にお願いしてしまって…)



「ふぅ~、出来たよ…」

そう言われたのは昨日と同じ頃でした。
良かった~、申し訳ないのですが私の腕もちょうど限界です。

私は上半身裸のままでシャルル様の後ろに歩み寄り、完成した肖像画を見ます。

「こ、これが私…」

もちろん鏡に映せば自分がどんな姿なのかは分かるのですが、シャルル様の描かれた私はもう一人の自分のように生き生きとしているのです。

「シャルル様~!」
私は嬉しさのあまり上半身裸のままシャルル様の顔を自分の胸に抱き寄せてしまいます。

「シャルル様、ありがとうございます。私、一生の宝物にしますから…」

「うん、そう言ってもらえると僕も一生懸命描いた甲斐があるよ」と、ニコッと笑顔で答えてくださいました。

私はその日の内に額装し、部屋内のシャルル様の部屋との隔壁に飾るのです。



XX XY



「どうですロッキ、これが私よ!」
「ムッチリしていても太っているわけじゃないんだからね!」

私のことを太っていると言っていたロッキと、フランを部屋に呼んで絵を見せました。

「この絵をシャルル様が…?」

「そうよフラン、シャルル様に二日かけて描いていただいたんだから…、見たままの私をね!」

「トリス、これって上半身裸じゃない…」

「その方が胸が大きくなっているってロッキも納得するでしょ?」

「そんな…、シャルル様に裸を見られるなんて…」

「シャルル様にならどこを見られても私は平気よ!」

シャルル様にはすでに身体の隅々まで見られているので恥ずかしい事はありません。

「それにしてもこの絵は本当にすごいですねぇ。まるで生きているみたいですよ」
「胸のところを触ればドクドクと心音が感じられるんじゃないでしょうか…」

「フランはこの絵の凄さが分かるのね」

(シャルル様は本当に私のことを良く見てくださっているわ…)
この胸の突起部分なんて、本当にピクピクしてそうだもの…。

翌日には屋敷中に知れ渡り、みんなが私の部屋に肖像画を見に来るのでした。
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