DNAの改修者

kujibiki

文字の大きさ
上 下
117 / 567

第117話 トリスの肖像画

しおりを挟む
「シャルル様…、エルスタイン領都も寒くなってきましたね…」

「う…ん…、そうだね…、あっ動かないでトリスお姉ちゃん!」

「す、すいません。う、腕がしびれちゃって…」
うぅ…、なぜこんな姿勢でお願いしたんだろ…。

私は今、上半身裸でシャルル様のベッドに腰を掛け、頭の後ろで両手を組み、思いっきり胸を張っています。

バルゼ領都から帰ってきてから、何回かフランの作った“りんこパフ”を試食していたのですが、ロッキにやっぱり太ったと言われたので、シャルル様に胸が大きくなっているということを見てもらおうと思ったです。

シャルル様は絵を描かれるのが上手でしたので、軽く「肖像画でもどうですか?」と被写体の志願をしたところ、興味を持たれて熱心に私を描いてくださっているのです。

一体どんな絵になっているんでしょうか。
私がシャルル様の初めて描かれる肖像画の被写体です。

シャルル様が私の目や顔、首筋や脇、そして両胸をジッと見つめられると、胸の突起部分がピクピクッとして下腹部がドクドクとしてきます。

シャルル様の視界に私しか入っていないと思うと、こんな大変な姿勢でもした甲斐があったといえるでしょう。

でも…、両腕から血の気が引いて冷たくなってきたような気がします。
胸を張ると腰も自然と反ってしまうので姿勢を保つのも大変です。

「で、出来たよ。トリスお姉ちゃん!」

「本当ですか…」
私は組んでいた手を解いて、上着を整えてから手を太ももの上に置きます。

「色をつけて欲しかったら、また明日同じ姿勢になってもらうけれど…」

「見ても良いですか?」

「もちろん!」

私はシャルル様の後ろにまわり、描かれた自分を見るのでした。

「す、すごい。シャルル様…」

私はその描かれた自分を見ながら、さっきまで自分が座っていたところを見つめ直します。
なんだかまだ自分があそこに座っているような錯覚に陥ります。

「私ってこんなに綺麗な身体の線をしていましたか?」

胸を張って腰を反らせていたとはいえ、自分じゃないような体型でした。

「うん、トリスお姉ちゃんは確かにムッチリしているけれど、僕も上手にトリスお姉ちゃんのそのままを描けたと思うよ」
「でも、食べ過ぎたら本当に太るからね~」

「はっ、はい! ありがとうございます。シャルル様」

「それでトリスお姉ちゃん、色はどうしたい?」
「つけて欲しいなら明日塗ってみるけど…」

「そうですね。シャルル様が初めて描かれた私の肖像画ですから、お手間じゃなかったらお願いしたいです」

「うん、分かったよ」



XX XY



翌日、私は昨日描いてもらった同じ時間帯に同じ姿勢でシャルル様のベッドに腰を掛けました。
線で描かれた状態の陰影に合わせるために、同じ時間帯が良いとシャルル様がおっしゃられたからです。

(私の裸ってシャルル様にはどう見えているのかしら…?)
線画の状態でもあんなにすごかったのに、色が付くと思うと期待せずにはいられません。

実は色を付けるのは昨日よりも簡単なのかなと思っていたのですが、そんなことはありませんでした。

シャルル様は昨日と同じ真剣な目つきで、私の色んなところをジッと見ていかれます。
(すいません、シャルル様。安易にお願いしてしまって…)



「ふぅ~、出来たよ…」

そう言われたのは昨日と同じ頃でした。
良かった~、申し訳ないのですが私の腕もちょうど限界です。

私は上半身裸のままでシャルル様の後ろに歩み寄り、完成した肖像画を見ます。

「こ、これが私…」

もちろん鏡に映せば自分がどんな姿なのかは分かるのですが、シャルル様の描かれた私はもう一人の自分のように生き生きとしているのです。

「シャルル様~!」
私は嬉しさのあまり上半身裸のままシャルル様の顔を自分の胸に抱き寄せてしまいます。

「シャルル様、ありがとうございます。私、一生の宝物にしますから…」

「うん、そう言ってもらえると僕も一生懸命描いた甲斐があるよ」と、ニコッと笑顔で答えてくださいました。

私はその日の内に額装し、部屋内のシャルル様の部屋との隔壁に飾るのです。



XX XY



「どうですロッキ、これが私よ!」
「ムッチリしていても太っているわけじゃないんだからね!」

私のことを太っていると言っていたロッキと、フランを部屋に呼んで絵を見せました。

「この絵をシャルル様が…?」

「そうよフラン、シャルル様に二日かけて描いていただいたんだから…、見たままの私をね!」

「トリス、これって上半身裸じゃない…」

「その方が胸が大きくなっているってロッキも納得するでしょ?」

「そんな…、シャルル様に裸を見られるなんて…」

「シャルル様にならどこを見られても私は平気よ!」

シャルル様にはすでに身体の隅々まで見られているので恥ずかしい事はありません。

「それにしてもこの絵は本当にすごいですねぇ。まるで生きているみたいですよ」
「胸のところを触ればドクドクと心音が感じられるんじゃないでしょうか…」

「フランはこの絵の凄さが分かるのね」

(シャルル様は本当に私のことを良く見てくださっているわ…)
この胸の突起部分なんて、本当にピクピクしてそうだもの…。

翌日には屋敷中に知れ渡り、みんなが私の部屋に肖像画を見に来るのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

スカートの中を覗きたい騎士団員達

白木 白亜
ファンタジー
超美人で噂の新米騎士、クレナ。 彼女が騎士団に入団すると決まったとき、騎士団には女性用の制服がなく、クレナ専用にわざわざデザインされた。 しかし、それは黒く、短くてしかも横にスリットの入ったタイトスカートで…… そんな中で、いろんな団員が偶然を装ったり連携したりして必死にパンチラを狙う下品な話。 ※この物語はスライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話のスピンオフ的作品となります。 不定期更新です。

異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】

kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。 ※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。 『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

セイギの魔法使い

喜多朱里
ファンタジー
 社畜が極まって死んでしまった男は、神の手によって異世界転生を果たす。  AVや成年漫画やエロゲ――R18作品の力を発動できる性技魔法を授かったアルベルト・ハルフォードだが、折角の貴族生まれも性技魔法のせいで追放されてしまい、その日暮らしの冒険者となることに。  人前では力を隠しながら、アルベルトは性欲の力で異世界で成り上がっていく。

修羅場を観察していたら巻き込まれました。

夢草 蝶
恋愛
 異様な空気の社交場。  固まる観衆。  呆然とする第三王子。  そして──、その中央でキャットファイトを繰り広げる二人の少女。  片や、名門貴族のご令嬢。  片や、平民ながらに特別な魔力を持つ少女。  その口からは泥棒猫やら性悪女やらと品に欠ける言葉が飛び出す。  しかし、それに混じってヒロインがどうの、悪役令嬢がどうの、乙女ゲームがどうのと聞こえる。  成程。どうやら二人は転生者らしい。  ゲームのシナリオと流れが違うなーって思ってたからこれで納得。  実は私も転生者。  乙女ゲームの展開を面白半分で観察してたらまさかこんなことになるなんて。  でも、そろそろ誰か止めに入ってくれないかなー?  おお! 悪役令嬢の巴投げが決まった! ヒロインが吹っ飛んで──ん? え? あれ?  なんかヒロインがこっちに飛んできたんですけど!?

処理中です...