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第114話 【閑話】シャルルのりんこパフ
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「ナーナルン様、大変です!!」
「どうしたのフィル、そんなに慌てて…」
「領都内で人気の“りんこパフ”店に数量限定の特別な“りんこパフ”が売られているんです!」
「だから…なに?」
「ナーナルン様、まだ8歳なんですから、もっと感情を出さないと…」
「“りんこパフ”って時々おやつで出てくるあれでしょ?」
「そうですが、数量限定の特別なものですよ」
「どうせ、いつもより大きいとか、使われている“りんこ”の量が多いとかじゃないの?」
「そんなことで私がナーナルン様にご報告するとでも…」
「じゃあ、なによ、早く言いなさい」
「ふぅ~っ、なんと…、その数量限定の商品名は“シャルルのりんこパフ”と言うのです!」
「なんですって!? そ、それを早く言いなさいよ!」
「シャルル様がバルゼ領都から帰られた翌日から販売されているのです」
(えっと、もう2日も前じゃない)
なんでフィルはそんなことを知っているのよ…。
「あれ? ナーナルン様、どうして知っているんだって顔をされていますね」
「くっ…、本当にあなたは嫌な性格をしているわね」
「で?」
「それは当然、発売日から毎日食べているからですよ。一日一人1/6カットしか買えないんですよね…」
「え~~~~っ!! なんですって~!?」
「それで一昨日からおやつの時間になるといなかったのね」
「ひどい…、あまりにひどすぎます。お母様に言って当分フィルの休みを無しにしてもらいます!」
「えっ? シクスエス様もご存知で発売日からお店に通われていますよ」
「ひぃ~~~~~~っ!!」
「もうお母様も信じられませんわ。シャルルの下に家出します~!」
「……」
あれ? ナーナルン様がシャルル様の下に行けば、私も自然とシャルル様のお側に行けるんじゃ…。
その可能性は低いですが、そうなると嬉しいですね。
「はいはい…、それでナーナルン様、どうされますか?」
「どう…とは…?」
「いえ、私はこれからお店に食べに行くつもりなんですけど…」
「フィル、あなた本当にひどいわね。行くに決まっているじゃない。すぐに行きますよ!!」
「ふぅ~、このお店ね…」
看板に“シャルルのりんこパフ”数量限定と書いてあるわ。
ガチャ…。
私はフィルが扉を開けるより先に自分で開けてお店に入ります。
「ありがとうございました~」
「いらっしゃいませ~」
「“シャルルのりんこパフ”を一つ」
私は店から出てくる人を避け、店員の下に駆けよると“シャルルのりんこパフ”を注文します。
「申し訳ありません。今出られたお客さんで売り切れました」
「え~、なんですって~!?」
「あ…明日にはまた売るのよね…? ねっ?」
「いえ、本当に先ほどのお客様で最後でした。私達も5日間ぐらいは販売できると思っていたのですが、初日の口伝てであっという間に…」
「いぃ~~~やぁ~~~っ!!」
「ちょっと! ナーナルン、うるさいですよ。ご迷惑でしょ」
「へっ?」
店の奥にあるテーブル席から声が掛かりました。
「お、お母様…、それにネルまで…」
「シクスエス様にネル先輩、今日も来られていたんですか?」
「一度食べたら忘れられなくて…」
「シクスエス様のおっしゃる通り、普段甘いものを食べない私もハマってしまいましたよ」
「店主は教えてはくれませんでしたが、商品名のシャルルとはやっぱりシャルル君のことなのでしょう…」
何にシャルル君が関係しているのか分かりませんけれど…。
「おそらく、間違いなく…」
「やっぱりシクスエス様もネル先輩もそう思われますか。お店には悪いですが、“シャルルのりんこパフ”は通常の物とは格別に違いますよね」
「普段からこの味だったらみんな食べ過ぎて太りますよ。残念ながら今日は私も食べ損ねましたが…」
「み…、みんな…、ひどい~~~っ!!」
エ~ン…、ワァ~ン!!
「あら、ナーナルンが泣いてしまいましたわ。よっぽど食べたかったのね」
「シクスエス様、さすがにかわいそうなのでは…」
「仕方がないですね~」
「ナーナルン、特別にこちらに1カット、あなたの分が頼んでありますよ」
「きっと来ると思っていましたから…」
グスッ…。
「えっ、ほんと…?」
「本当ですから、こちらに来ていただきなさい」
「うん…」
一口食べると、これまでの“りんこパフ”が別の食べ物に感じるくらいの美味しさでした。
(これって本当に“りんこ”なの?)
私は最後の一片までシャルルを思い出しながら味わって食べます。
「お母様は二日前から今日で3個もこれを食べたのですね。本当にひどすぎます」
「なぜ教えて下さらなかったのですか?」
「ナーナルンには1個で良かったかもしれないわよ。3個も食べてしまった私はもう普通の“りんこパフ”が食べられないもの…」
「シクスエス様、それはちょっとここで言っては…」
横でことの顛末を見ていた責任者と店員が悲しそうな眼をしながらこちらを見つめているのでした。
「どうしたのフィル、そんなに慌てて…」
「領都内で人気の“りんこパフ”店に数量限定の特別な“りんこパフ”が売られているんです!」
「だから…なに?」
「ナーナルン様、まだ8歳なんですから、もっと感情を出さないと…」
「“りんこパフ”って時々おやつで出てくるあれでしょ?」
「そうですが、数量限定の特別なものですよ」
「どうせ、いつもより大きいとか、使われている“りんこ”の量が多いとかじゃないの?」
「そんなことで私がナーナルン様にご報告するとでも…」
「じゃあ、なによ、早く言いなさい」
「ふぅ~っ、なんと…、その数量限定の商品名は“シャルルのりんこパフ”と言うのです!」
「なんですって!? そ、それを早く言いなさいよ!」
「シャルル様がバルゼ領都から帰られた翌日から販売されているのです」
(えっと、もう2日も前じゃない)
なんでフィルはそんなことを知っているのよ…。
「あれ? ナーナルン様、どうして知っているんだって顔をされていますね」
「くっ…、本当にあなたは嫌な性格をしているわね」
「で?」
「それは当然、発売日から毎日食べているからですよ。一日一人1/6カットしか買えないんですよね…」
「え~~~~っ!! なんですって~!?」
「それで一昨日からおやつの時間になるといなかったのね」
「ひどい…、あまりにひどすぎます。お母様に言って当分フィルの休みを無しにしてもらいます!」
「えっ? シクスエス様もご存知で発売日からお店に通われていますよ」
「ひぃ~~~~~~っ!!」
「もうお母様も信じられませんわ。シャルルの下に家出します~!」
「……」
あれ? ナーナルン様がシャルル様の下に行けば、私も自然とシャルル様のお側に行けるんじゃ…。
その可能性は低いですが、そうなると嬉しいですね。
「はいはい…、それでナーナルン様、どうされますか?」
「どう…とは…?」
「いえ、私はこれからお店に食べに行くつもりなんですけど…」
「フィル、あなた本当にひどいわね。行くに決まっているじゃない。すぐに行きますよ!!」
「ふぅ~、このお店ね…」
看板に“シャルルのりんこパフ”数量限定と書いてあるわ。
ガチャ…。
私はフィルが扉を開けるより先に自分で開けてお店に入ります。
「ありがとうございました~」
「いらっしゃいませ~」
「“シャルルのりんこパフ”を一つ」
私は店から出てくる人を避け、店員の下に駆けよると“シャルルのりんこパフ”を注文します。
「申し訳ありません。今出られたお客さんで売り切れました」
「え~、なんですって~!?」
「あ…明日にはまた売るのよね…? ねっ?」
「いえ、本当に先ほどのお客様で最後でした。私達も5日間ぐらいは販売できると思っていたのですが、初日の口伝てであっという間に…」
「いぃ~~~やぁ~~~っ!!」
「ちょっと! ナーナルン、うるさいですよ。ご迷惑でしょ」
「へっ?」
店の奥にあるテーブル席から声が掛かりました。
「お、お母様…、それにネルまで…」
「シクスエス様にネル先輩、今日も来られていたんですか?」
「一度食べたら忘れられなくて…」
「シクスエス様のおっしゃる通り、普段甘いものを食べない私もハマってしまいましたよ」
「店主は教えてはくれませんでしたが、商品名のシャルルとはやっぱりシャルル君のことなのでしょう…」
何にシャルル君が関係しているのか分かりませんけれど…。
「おそらく、間違いなく…」
「やっぱりシクスエス様もネル先輩もそう思われますか。お店には悪いですが、“シャルルのりんこパフ”は通常の物とは格別に違いますよね」
「普段からこの味だったらみんな食べ過ぎて太りますよ。残念ながら今日は私も食べ損ねましたが…」
「み…、みんな…、ひどい~~~っ!!」
エ~ン…、ワァ~ン!!
「あら、ナーナルンが泣いてしまいましたわ。よっぽど食べたかったのね」
「シクスエス様、さすがにかわいそうなのでは…」
「仕方がないですね~」
「ナーナルン、特別にこちらに1カット、あなたの分が頼んでありますよ」
「きっと来ると思っていましたから…」
グスッ…。
「えっ、ほんと…?」
「本当ですから、こちらに来ていただきなさい」
「うん…」
一口食べると、これまでの“りんこパフ”が別の食べ物に感じるくらいの美味しさでした。
(これって本当に“りんこ”なの?)
私は最後の一片までシャルルを思い出しながら味わって食べます。
「お母様は二日前から今日で3個もこれを食べたのですね。本当にひどすぎます」
「なぜ教えて下さらなかったのですか?」
「ナーナルンには1個で良かったかもしれないわよ。3個も食べてしまった私はもう普通の“りんこパフ”が食べられないもの…」
「シクスエス様、それはちょっとここで言っては…」
横でことの顛末を見ていた責任者と店員が悲しそうな眼をしながらこちらを見つめているのでした。
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