DNAの改修者

kujibiki

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第108話 領主会議ーバルゼ領編19

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私はナーナルン。

今日はいよいよ領主会議です。
朝からカプランド領のサリー様やケープノット領のエバーミット様が屋敷に集まってこられていますが、まだエルスタイン領のルーシャ様達はお見えではないようでした。

正確にはまだ集合時間にはなっていませんが、なんだかソワソワしてしまいます。



お母様に紹介されてシャルル様の前に立ちました。

一つ年上の男の子だと聞いていましたが、歳の差以上に身体の大きさが全然違います。

ニコッとしながら名乗られるシャルル様を見て私の胸がドクンと動き、私が名乗る時にはついシャルル様の手を取ってしまいました。

おかしな話ですが、本当に目の前にいる男の子が存在しているのか確認したくなったからです。
その手はとても柔らかく温かいもので、ずっと触っていたいなぁと思ってしまうほどでした。

初めはリビングにお通ししようかと思っていたのですが、フィルの助言で私の部屋に来てもらう事にしました。

シャルル様と話がし易いのではとフィルは言っていましたが、自分もゆっくり座って話をしたかっただけなのかもしれません。
私もそうですが、フィルも男の子と話をする機会なんてそうそう無いのです…。



二人ずつソファに座ると早速フィルが盗賊のことについてシャルルに聞いていました。

盗賊を捕まえられたのは、たまたまだとおっしゃられていましたが、フィルは誰が倒したのかを最後まで確認せず私に話を振ってきました。

フィルの情報ではシャルルが盗賊たちを倒したと聞いていましたが…、そんな風に思っているとこちらを見ているシャルルに気付き胸がドキドキしてしまいます。
なんだろうこの気持ち…。

その後、シャルルは私達の魔法の属性を聞いた後、私達の魔法を見て驚いてくれました。

まだ私は【砂球】しか作れないけれど、やっぱり男の子にとってはすごいことなのかな…。
私も小さくてもフィルみたいに何か造れるように頑張っておけば良かったと思いました。



フィルがシャルルの側にいるキルシッカさんの肌について聞いていました。

私も挨拶をされてから、フィルには悪いけれどなんて綺麗なメイドさんなんだろうと思っていたのです。

フィルは何かを身体に塗っていると思っていたようですが、キルシッカさんが言うには何もされていないそうです。

屋敷にもキルシッカさんと同じように薄褐色の肌の者はいますが、会わせてしまうととんでもない事になりそうなので、シャルルを自室に呼んで正解でした。

特に髪については、毎日フィルにお手入れをしてもらっている私の髪よりも艶やかで輝いています。

そして、驚くことにキルシッカさんは15歳だったのです。
“女”になってからまだ2~3年でしょう。

なのに、なんて“女性らしい”のでしょう。
屋敷にも15歳くらいのメイドはいますが、雰囲気はまるで大人と子供です。

シャルルの口ぶりでは、キルシッカさんは自分に自信が無かったようですが、そんなことを言われたら世の中の女性から顰蹙ひんしゅくを買うでしょうね。

私が15歳になった時に、これほど綺麗な女性になっているかさえも自信がありません。
聞くんじゃなかった…、おそらくフィルもそう思っている事でしょう。



シャルルが“あかべりー”に興味をもったようなので食べてみせました。

これって肌には良いらしいんだけど、酸っぱいのよね。
シャルルもきっと驚くわ。

思っていた通りシャルルも「甘酸っぱい」と言っていました。

肌に良いと教えると、シャルルが自分のお皿の“あかべりー”を一つ摘まんで「あ~ん」と言いながらキルシッカさんの口元へ運んでいます。

えっ、な…何が起こるの?
ゆっくり…、なぜかとてもゆっくり見えるその動作の先に、キルシッカさんが「あ~ん」と言いながら口を開けて“あかべりー”をパクッと食べるのが分かりました。

「いっ…!?」

キルシッカさんによると、シャルルに食べさせてもらうと美味しいのだそうです。
隣にいたフィルも信じられないような顔をしています。

私が言い出す前にフィルがシャルルにお願いして、私達も“あ~ん”をしてもらえることになりました。
シャルルから“あ~ん”をしてもらったことを誰にも言わないことが条件です。

“あ~ん”の行動には驚きましたが、味が変わるなんて…。

そんな風に思っていましたが、実際にさっき食べた物とは味が全く違い、酸っぱくもなく甘くて美味しいのです。

私は、はしたなくもそのまま立ち上がり奇妙な言葉を発してしまいましたが、気にする余裕もありません。

フィルの要望でもう一度“あ~ん”をしてもらいましたが、やっぱり味が違ったのです。



私はフィル。

バルゼ領都、シクスエス様のメイドとして、ナーナルン様の専属としてお仕えしています。

もうすぐ領主会議が始まるでしょうから、もうしばらくするとナーナルン様が噂のシャルル様をこの自室に連れてこられることでしょう。

ナーナルン様はリビングの方へお通しされるおつもりでしたが、それでは他の者も必ず見にやってくるでしょう。
私はナーナルン様に自室にお連れする方が話しやすいのではと提案したのでした。

ナーナルン様がシャルル様とお付のメイドの方と共に部屋に戻ってこられました。
私がご挨拶をすると、シャルル様も挨拶を返してくださいます。

うっ…、なんてかわいいくて、格好良くて、たくましい男の子なの…。
結局、私もシャルル様について聞いていた通りの感想を思ってしまうのです。
私は一目で気に入ってしまいました。

シャルル様の後に挨拶をされてきたメイドのキルシッカさんは薄褐色の肌の女性でしたが、緑色の髪は艶々と輝いており、肌も瑞々しくとても綺麗な方でした。

一見私よりも年下に見えるのに、その女性らしい雰囲気と外見で年齢が想像できません。



飲み物と果物を用意してナーナルン様の横に座らせていただくと、すぐに盗賊に襲われた時の事をシャルル様に聞いてみます。
情報通り、本当にシャルル様が盗賊を倒されたのでしょうか…。

一言二言質問してみて、シャルル様の凄さが分かりました。
本当は誰が盗賊を倒したのか確認したかったのですが、その必要はありません。

「盗賊を二人も捕まえられたのですよね…」と私が聞いた時に、シャルル様は「うん、たまたまね」と答えられたのです。
自分が倒したとも、ルーシャ様達が倒したともおっしゃられていません。

あいまいな答えなのですが、普通9歳の男の子が盗賊を倒せたとしたら「僕がやっつけた」ぐらい言ってもおかしくありません。

なのにこの反応…。
横目でキルシッカさんを見ても表情は変わりませんし、シャルル様が決着したことはあきらか…。
ゆえに、盗賊の言っていたことも本当なのです。

この男の子はすごいです。
とても賢いし、圧倒的な力を感じるわ…。
私がもう少し若ければシャルル様にお仕えしたいところです。

私は盗賊の話を深く聞くのはやめ、ナーナルン様に話を振りました。
話を振られたナーナルン様は顔を赤くして、身体をモジモジとさせておられます。
あれ、もしかして本当に気に入ったとか…?



その後、シャルル様から魔法の属性を聞かれ、魔法で今朝厨房で見た“あくみ”を作ってお見せしました。

シャルル様は男の子なので魔法は使えませんが、想像することの大切さを知っておられ褒めてくださいました。
ナーナルン様が少し残念そうな顔をされていましたが放っておきます。

それから気になっていたキルシッカさんの肌について聞いてみました。

身体に何も付けていなくてあんなに艶々と瑞々しい髪と肌なんて…、後輩にもキルシッカさんと同じ薄褐色の肌の者はいますが、あの肌質は信じられないですね。
私も年齢の割には肌質に自信があったのですが比べるのが恥ずかしいほどでした。

隣にいるナーナルン様は髪の美しさに驚かれているようです。
お手入れしているのにすいません…。
残念ながらナーナルン様の負けです。
領主様達がお帰りになられた後に何を言われるか分かりませんね…。

それに、年齢を聞くとキルシッカさんは15歳でした。

「15歳!?」
“女”になってまだ数年じゃないですか…。
なのにあの女性らしさは一体…。

シャルル様はキルシッカさんを気にかけておられるようですが、励ましてほしいのは私の方です!と、心の中でそう思うのでした。



ふぅ~、なんだか驚くことばかりで疲れちゃいました。

ちょうどシャルル様も果物を食べられるようなので、説明はナーナルン様に任せて私もいただきます。

あ~、甘酸っぱいっ!
肌に良いのは分かりますが、もうちょっと甘くなれば…。

キルシッカさんのようになる為にもっと効果的な食べ物はないのでしょうか。
情報を集めなければなりませんね。

そう思っていると、突然シャルル様が「あ~ん」と言いながら“あかべりー”をキルシッカさんの口元へ運び、それをキルシッカさんも「あ~ん」と言いながら食べました。

「いっ…!?」
シャルル様がメイドのキルシッカさんに食べさせるなんて…。

キルシッカさんには何のためらいもありませんでした。
むしろシャルル様に食べさせてもらうと美味しいと喜んでいるぐらいです。

同じものを出しているのに、美味しさが変わることは無いでしょう。
でもシャルル様のされた“あ~ん”にはなぜか興味があります。

私が無礼を承知で頼んでみると、シャルル様から“あ~ん”をしてもらったことを誰にも言わない条件で私達も“あ~ん”をしてもらえることになりました。
ナーナルン様から怒られましたが、興味はあったようです。

そして、シャルル様がご自分の“あかべりー”を一つ取って、「あ~ん」と私の方に向けられました。

私はテーブルの上に乗りだし、先ほどのキルシッカさんと同じように「あ~ん」と言いながらパクッと一口でいただいたのですが、急に意識が飛んでしまったのです。

気が付いた時にはナーナルン様が私の横で立っておられ、あまりの美味しさに身体をクネクネとされているところでした。

あれ、私だけ意識が無くなった…?

確かにとっても美味しい物を食べた気がしますが、すぐに意識が飛んでしまっていたので思い出せませんでした。

シャルル様が、再度“あ~ん”のことは言わないようにと厳しく言われたところで、もう一度シャルル様に頼んで“あ~ん”をしてもらいました。

“あ~ん”天使…。
ひそかにシャルル様の為に何か出来るようになろうと思ったのはナーナルン様には秘密です。
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