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第104話 領主会議ーバルゼ領編16
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僕たちは“あくみ”を一つずつ食べた後、夕食に向かいました。
「メンテールお姉ちゃん、バルゼ領都では何か美味しい食事があるの?」
「メンテール先輩、もう“野菜やき”じゃ無い方がいいですよぉ~」
「確かに、あれも美味しいですが、あればかりではねぇ」
「え~と、私も食べたことが無いですが、“野菜包み”が有名と聞きます」
「え~、また野菜ですか~」
「大丈夫、お肉も使われているようですよ」
『じゃあ、それにしましょう』
“野菜包み”のお店の前に着くと、案の定店頭は人でいっぱいでしたが店内は座れそうでした。
6人席のテーブルに案内され、僕が片側の真ん中に座ると、それにあわせてみんながストン、ストン…と座っていきます。
いつもなら僕の横に座りたがって、座れなかったお姉ちゃん達から文句がでるはずなのに…、どうも前もって平和的解決がなされていたようです。
両隣はお母さんとシエラお姉ちゃん、向かい側にトリスお姉ちゃん、キルシッカお姉ちゃん、メンテールお姉ちゃんが並んでいます。
シエラお姉ちゃんが“野菜包み”を6人分注文してくれています。
どうも“野菜包み”には種類が無く、一手のようでした。
テーブルに持ってこられた“野菜包み”を見ると一人前のお皿には一口大の大きさの食べ物が10個並べてあり、この一つ一つが“野菜包み”のようです。
「すごい、食べやすく包まれているんだね」
早速テーブルに用意されている茶色い調味料につけて食べてみます。
「熱っ!! はふっほふっ…、あっふ」
…ゴクリ。
「とっても熱いけどおいしい~、中身は細かくしたお肉と野菜なんだね…」
「この包んでいる皮も香ばしく焼けているところと、もっちりしているところがあって面白い食感だよ」
『シャルルがそんなに褒めるなんて…』
「そんな風に聞くととっても美味しそうです」
「いや、美味しいからみんなも早く食べてみてよ」
『でも、とっても熱いんでしょ?』
「……」
「分かったよ、みんな一回ずつだからね」
「「「「シャルル様~」」」」
『ありがとう、シャルル』
そうして、結局皆と“あ~ん”をし合いながら夕食を済ませるのでした。
「次は“りんこパフ”ですね」
メンテールお姉ちゃんが街の人に聞いていた美味しいと評判のお店にみんなで向かいます。
「“野菜包み”は食べやすかったですが、おかわりしても少し物足りなかったですよね」
「トリス、そんなこと言って食べ過ぎるとさらに太るわよ」
「ひどいですよ、シエラ先輩。シエラ先輩だってこの頃肉付きが良くなってきているんじゃないですか?」
ギクッ…。
本当にトリスはつまらないところで鋭いですね。
「私こそ、胸が大きくなってきているんですよ。この間シャルル様にも胸が大きくなっているんじゃない…と言われたんですから」
「えぇ~、本当ですか~、シャルル様~」
「本当だよ。シエラお姉ちゃんの胸は少し大きくなっていた気がしたよ」
「シャルル様、嬉しい~! どうですトリス…」
『もう、あなた達は…。数年前までは体型なんか気にしなかったくせに…』
「ちょっと物足りない方が“りんこパフ”を美味しく頂けて良いじゃないですか」
「本当だね。キルシッカお姉ちゃんの言うとおりだよ」
「ブローナでは“野菜やき”をいっぱい食べ過ぎて、“りんこパフ”を食べ損ねたからね」
「ルーシャ様、シャルル様、このお店です!」
「……」
本当に人気店のようで、この時間でも店頭にはたくさんの人が並んでいました。
メンテールお姉ちゃんが店内に確認しに行くと、座れるようだったので宿に持ち帰らずに中で食べていくことにします。
僕が先ほどのようにテーブルの席に着くと、今度は両隣にお母さんとメンテールお姉ちゃんが座り、向かい側にキルシッカお姉ちゃん、トリスお姉ちゃん、シエラお姉ちゃんが並んでいます。
お母さんだけが定位置でお姉ちゃん達は入れ替わっているようです。
メンテールお姉ちゃんが言うには、6人だと一皿で注文した方が良いとのことでした。
テーブルに運ばれてきた“りんこパフ”を見ると、綺麗な円形で作られていて、店員さんが目の前で6等分に切り分けてくれます。
こんがり焼かれた“りんこパフ”をサクサクッと上面から切り分けられると、中から果実の甘い香りが漂ってきます。
切り分けられて配られた“りんこパフ”の断面は、薄くて硬く、香ばしい生地で作られた深皿のような型に、一口大に切られた“りんこ”と言われる果実が詰めるように入っていました。
「“りんこ”がこんなにたくさん入っているんだね」
パクッ。
一口食べてみると、甘く煮た“りんこ”が周りの香ばしい生地と良く合っています。
「うん、おいしい~!」
「エルスタイン領都で採れる“りんこ”では作れないのかしら…」
『“りんこ”の歯ごたえも良いわね。ちょっとシャクっとしてて…』
「屋敷に帰ったら“りんこパフ”を作ってみても良いね」
エルスタイン領で採れる“りんこ”はバルゼ領で採れる“りんこ”とは種類が違うと聞いていましたが、試してみる価値はありそうです。
『そうね、ロッキとフランに言って一度試してもらおうかしら』
「ロッキとフランって?」
『ロッキとフランは屋敷の食材調達責任者と調理責任者なのよ』
「そうなんだ。そういえば食事を作ってもらっているお姉ちゃん達を見たことが無かったよ」
『カプランド領から帰ってきてからシャルルもお肉をよく食べるようになったから、ロッキも真剣にお肉を調達しているのよ』
「そういえば、お肉料理も焼くだけでなく工夫されているよね」
「屋敷に帰ったら一度お礼を言いに行くよ」
『そうね、とっても喜ぶと思うわよ』
「メンテールお姉ちゃん、バルゼ領都では何か美味しい食事があるの?」
「メンテール先輩、もう“野菜やき”じゃ無い方がいいですよぉ~」
「確かに、あれも美味しいですが、あればかりではねぇ」
「え~と、私も食べたことが無いですが、“野菜包み”が有名と聞きます」
「え~、また野菜ですか~」
「大丈夫、お肉も使われているようですよ」
『じゃあ、それにしましょう』
“野菜包み”のお店の前に着くと、案の定店頭は人でいっぱいでしたが店内は座れそうでした。
6人席のテーブルに案内され、僕が片側の真ん中に座ると、それにあわせてみんながストン、ストン…と座っていきます。
いつもなら僕の横に座りたがって、座れなかったお姉ちゃん達から文句がでるはずなのに…、どうも前もって平和的解決がなされていたようです。
両隣はお母さんとシエラお姉ちゃん、向かい側にトリスお姉ちゃん、キルシッカお姉ちゃん、メンテールお姉ちゃんが並んでいます。
シエラお姉ちゃんが“野菜包み”を6人分注文してくれています。
どうも“野菜包み”には種類が無く、一手のようでした。
テーブルに持ってこられた“野菜包み”を見ると一人前のお皿には一口大の大きさの食べ物が10個並べてあり、この一つ一つが“野菜包み”のようです。
「すごい、食べやすく包まれているんだね」
早速テーブルに用意されている茶色い調味料につけて食べてみます。
「熱っ!! はふっほふっ…、あっふ」
…ゴクリ。
「とっても熱いけどおいしい~、中身は細かくしたお肉と野菜なんだね…」
「この包んでいる皮も香ばしく焼けているところと、もっちりしているところがあって面白い食感だよ」
『シャルルがそんなに褒めるなんて…』
「そんな風に聞くととっても美味しそうです」
「いや、美味しいからみんなも早く食べてみてよ」
『でも、とっても熱いんでしょ?』
「……」
「分かったよ、みんな一回ずつだからね」
「「「「シャルル様~」」」」
『ありがとう、シャルル』
そうして、結局皆と“あ~ん”をし合いながら夕食を済ませるのでした。
「次は“りんこパフ”ですね」
メンテールお姉ちゃんが街の人に聞いていた美味しいと評判のお店にみんなで向かいます。
「“野菜包み”は食べやすかったですが、おかわりしても少し物足りなかったですよね」
「トリス、そんなこと言って食べ過ぎるとさらに太るわよ」
「ひどいですよ、シエラ先輩。シエラ先輩だってこの頃肉付きが良くなってきているんじゃないですか?」
ギクッ…。
本当にトリスはつまらないところで鋭いですね。
「私こそ、胸が大きくなってきているんですよ。この間シャルル様にも胸が大きくなっているんじゃない…と言われたんですから」
「えぇ~、本当ですか~、シャルル様~」
「本当だよ。シエラお姉ちゃんの胸は少し大きくなっていた気がしたよ」
「シャルル様、嬉しい~! どうですトリス…」
『もう、あなた達は…。数年前までは体型なんか気にしなかったくせに…』
「ちょっと物足りない方が“りんこパフ”を美味しく頂けて良いじゃないですか」
「本当だね。キルシッカお姉ちゃんの言うとおりだよ」
「ブローナでは“野菜やき”をいっぱい食べ過ぎて、“りんこパフ”を食べ損ねたからね」
「ルーシャ様、シャルル様、このお店です!」
「……」
本当に人気店のようで、この時間でも店頭にはたくさんの人が並んでいました。
メンテールお姉ちゃんが店内に確認しに行くと、座れるようだったので宿に持ち帰らずに中で食べていくことにします。
僕が先ほどのようにテーブルの席に着くと、今度は両隣にお母さんとメンテールお姉ちゃんが座り、向かい側にキルシッカお姉ちゃん、トリスお姉ちゃん、シエラお姉ちゃんが並んでいます。
お母さんだけが定位置でお姉ちゃん達は入れ替わっているようです。
メンテールお姉ちゃんが言うには、6人だと一皿で注文した方が良いとのことでした。
テーブルに運ばれてきた“りんこパフ”を見ると、綺麗な円形で作られていて、店員さんが目の前で6等分に切り分けてくれます。
こんがり焼かれた“りんこパフ”をサクサクッと上面から切り分けられると、中から果実の甘い香りが漂ってきます。
切り分けられて配られた“りんこパフ”の断面は、薄くて硬く、香ばしい生地で作られた深皿のような型に、一口大に切られた“りんこ”と言われる果実が詰めるように入っていました。
「“りんこ”がこんなにたくさん入っているんだね」
パクッ。
一口食べてみると、甘く煮た“りんこ”が周りの香ばしい生地と良く合っています。
「うん、おいしい~!」
「エルスタイン領都で採れる“りんこ”では作れないのかしら…」
『“りんこ”の歯ごたえも良いわね。ちょっとシャクっとしてて…』
「屋敷に帰ったら“りんこパフ”を作ってみても良いね」
エルスタイン領で採れる“りんこ”はバルゼ領で採れる“りんこ”とは種類が違うと聞いていましたが、試してみる価値はありそうです。
『そうね、ロッキとフランに言って一度試してもらおうかしら』
「ロッキとフランって?」
『ロッキとフランは屋敷の食材調達責任者と調理責任者なのよ』
「そうなんだ。そういえば食事を作ってもらっているお姉ちゃん達を見たことが無かったよ」
『カプランド領から帰ってきてからシャルルもお肉をよく食べるようになったから、ロッキも真剣にお肉を調達しているのよ』
「そういえば、お肉料理も焼くだけでなく工夫されているよね」
「屋敷に帰ったら一度お礼を言いに行くよ」
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