DNAの改修者

kujibiki

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第96話 狙われた属性石

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森の中を進んでいると道の両端に石碑が建っているのが見え、その前を通り過ぎる時によく見ると、“ここからバルゼ領”と文字が彫ってありました。

「キルシッカお姉ちゃん、バルゼ領に入ったみたいだね」

「はい、やっぱりこの森が領界だったようです」

「それにしても、森の中に入ってからずいぶん経つのに出口が見えないね~」

「あの石碑が中間地点だとすれば、同じくらいの距離があるかもしれませんよ」



ようやく森を抜けるとしばらくは草原のようでしたが、少し先にはまた森が見えます。

「バルゼ領は森だらけだね」

「たぶんこの辺りだけですよ…」

僕達がそんな話をしながら魔動力車が次の森に入ろうとした頃、突然数人が目の前に飛び出してきて魔動力車が止められてしまいました。

「シャルル様、急に止まってすいません。大丈夫でしたか?」

「うん、僕は大丈夫。キルシッカお姉ちゃんこそ良く反応できたね」

魔動力車の前方を見ると、先ほど飛び出してきたと思われる数人の他にも道の両脇から何人もの人が現れてきました。

「何者ですか!?」

乗客室から出てきたシエラお姉ちゃんが運転席の僕のすぐ側で、前方にいる人たちに向かって叫んでいます。

キルシッカお姉ちゃん側にはメンテールお姉ちゃんが立っていました。

「シャルル様、気を付けてください。あの人たちは盗賊です」

「盗賊…」
顔を隠すために布を巻き付けているようです。



「お前たちはエルスタイン領主一行なんだろ?」
「ずいぶんと希少な属性石を持っているそうじゃないか。それを渡しな!!」

「“はい”と言って渡せるわけないでしょう」

運転席の窓越しだとあまり聞き取れませんが、どうも属性石を狙っているようです。

「いう事を聞かないと痛い目を見るよ」

盗賊の一人が手のひらに【火球ファイヤー・ボール】を出現させて見せています。

「【火球】ごときに私達がひるむとも?」

「いいや、でもこちらには20人いるんだ。それだけの数をお前たちで抑えることは出来ないだろう」
「さぁ、お前たちこいつらを取り囲むんだ」

「おぉ~っ!!(×全員)」

(確かに20人は多いですね…)
武器を手にしているようなので、魔法以外にも物理攻撃をしてくるみたいです。
囲まれるとやっかいですが、ルーシャ様とシャルル様は絶対お守りしないと…。

「メンテール、そちらの防御は任せますよ。乗客室の出入口に近づけないように」

「了解」



「キルシッカお姉ちゃん。僕のことは良いから、シエラお姉ちゃんの援護を…。特にあの武器を持っている人達に注意して!」

「わ、分かりました。シャルル様はじっとしていてくださいね」

キルシッカお姉ちゃんはそう言うと運転席から降り、魔動力車の後方を確認してからシエラお姉ちゃんの側に行きました。

水盾ウォーター・シールド
風圧ウィンド・プレッシャー
砂壁サンド・ウォール

相手からの攻撃が始まりかけた瞬間にお姉ちゃん達が同時に魔法を使います。

シエラお姉ちゃんの【水盾】に【火球】が当たる度にジュウジュウと音がしますが、なんとか防御が出来ています。

相手が放つ武器もメンテールお姉ちゃんの【砂壁】に刺さるだけで通り抜けることはありませんし、近寄って来た者や武器をキルシッカお姉ちゃんの【風圧】で吹き飛ばしているのもすごいです。

(でも、これじゃあ…)

今のところ防御は問題ないのですが相手を抑える手段がないのです。
お母さんは風魔法で攻撃できるのかな?

と思っていると、【火球】を使う者達が魔法を変え、球を細い棒状にしてきたのです。

その火属性の魔法はシエラお姉ちゃんとキルシッカお姉ちゃんの防御を突き抜けるようになり、魔動力車にも届くようになりましたが、キルシッカお姉ちゃんがすぐに魔法で消してくれています。

まだ何とか防御は出来ていますが、このままだといずれもたなくなりそうです。

魔動力車の運転席の窓からシエラお姉ちゃんを見ていると、その火属性の魔法が【水盾】を突き抜けてシエラお姉ちゃんの脇腹をかすめました。

(シエラお姉ちゃん!)

服が焦げ、少し血がにじんでいるのが見えますが、シエラお姉ちゃんは両手を下げることなく【水盾】で防いでいます。

「ほらほら…、もうもたないんじゃないか? 早く諦めないともっと怪我をするぜ」

「なにを…、こんな傷くらい…で」



風弾ウィンド・バレット

お母さんがシエラお姉ちゃんとキルシッカお姉ちゃんの間に現れると、魔法で一人二人と倒していきます。

(お母さん、凄いよ!)

「これはこれは、まさか領主様が出てくるとは…」
「お前たち、目標をあの女性に向けろ!」

「「「おうっ!」」」

「させません!」

トリスお姉ちゃんも【水盾】を使いながらお母さんの側にやってきました。

(今だっ!)
僕はその機会を逃さず運転席の扉を開け、まずはシエラお姉ちゃんを抱き寄せ引き入れます。

「シエラお姉ちゃん大丈夫? 今のうちに【治療】できる?」

「はい、【治療】するだけの魔力はまだありますがルーシャ様が…」

「大丈夫、今はトリスお姉ちゃんが頑張っているよ」
「だから、先に治しておいて…」

そう言うと僕も外に出るのでした。

「シャ、シャルル様~!?」

運転席からシエラお姉ちゃんが呼んでいますが、聞いているわけにはいきません。



「あなたがシエラお姉ちゃんを傷つけたんだね?」

「おいおい、今度はあの属性石を採掘した男の子まで出て来たぞ~」

『シャルル、出てきちゃダメでしょ』

「シャルル様、運転席にもどって…」

「あなたがシエラお姉ちゃんを傷つけたんだね?」

「はぁ~、同じ事ばかり言いやが…」

「グハッ」
“ズサァーーーーーーーッ”

「僕の大切な女性を傷つけるなんて許さないよ」
僕はシエラお姉ちゃんを傷つけた相手に一気に駆け寄り、腕で突き飛ばすのでした。

『えっ!? 今、そこにいた盗賊はどこに行ったの?』

「ル、ルーシャ様、あんなところまで飛んで行っています」

「「「「しゅ、首領がやられたぞ~」」」」

「あの男の子の方を先にやれっ!」
「どうせ魔法は使えないんだから…」

「「「お…おうっ!」」」

「シャルル様、危な~い!」

メンテールお姉ちゃんが駆け寄って魔法で防御をしてくれようとしていましたが問題ありません。

僕は放たれた魔法や武器を手で払いのけ、再び指示を出していた者の元に一瞬で駆け寄り、腕で突き飛ばすのでした。

「ウグッ」
“ドサァーーーーーーーッ”

『シャルル…、あなた…』

「シャルル様、すごいですぅ」

「「「「副首領もやられたぞ~!」」」」

盗賊たちは魔法も武器も効かなかった僕に驚きながら、倒れた二人を残して四方八方に逃げ帰っていきました。



フゥ~。
「トリスお姉ちゃん、シエラお姉ちゃんが【治療】出来ているか見てあげてくれる?」

「はい!」

「メンテールお姉ちゃんとキルシッカお姉ちゃんは倒れている二人を動けないようにしてここへ連れてきて」

「「は、はい!」」

「お母さん、大丈夫? あの風属性の魔法すごかったよ」
その辺りに倒れていたはずですが、いつの間にか逃げてしまっているようです。

『そ、そう…? 私もシャルルのおかげで助かりましたよ』
シャルルの動きには驚きましたね…。

「まさか本当に属性石を奪おうとする人達がいるなんてね」

『本当ね…』
ちょっとナモアイで目立ち過ぎたでしょうか…。



「ルーシャ様、シャルル様、倒れていた二人を拘束してきました」

火属性の魔法を使っていた方はウェーブがかった紫色の髪をしていて、顔を覆っている布を取ると長い睫毛が印象的な整った顔立ちをしています。

もう一人の方は茶色の長いまっすぐな髪で、キルシッカお姉ちゃんと同じ薄褐色の肌をしていました。
気を失ったままなので分かりませんが、おそらくヌエットお姉ちゃんより少し若い感じがします。

『じゃあ、町についたら彼女たちを引き渡しましょう』

「こんなに綺麗なのに盗賊なんかにならずにもっとやさしい女性になれればいいのにね…」

『そうね…』

シエラお姉ちゃんの方は傷を自分で治せたそうで、運転席から僕が二人目の盗賊を突き飛ばしているのを見ていたそうです。



領界を越えるだけだったのに盗賊に襲われたせいで、夕方に町に着くことになりました。
宿に向かう前に、このバルゼ領の警備の人に盗賊を引き渡しに行きます。

引き渡す頃には彼女たちも気が付いていて、火属性の魔法を使う女性はアシュリ、薄褐色の肌の女性はフラネルと名乗りました。
アシュリという女性がカラードだったのには驚きました。

「まさか、私達が男の子に負けるなんてな…。罪を償ったらもう一度あんたに会いに行くよ」

「ごめんね。僕は綺麗でかわいくて女性らしい人が好きだから、お姉さん達とはもう会う事はないよ」

「えっ!?」
「……」

「せっかく二人とも綺麗なんだから、かわいくて女性らしい態度と言葉遣いになったら考えてあげる」
そう最後に行って、引き渡しを終えるのでした。
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