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第65話 【閑話】“やきもい”は誰の手に
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「“やきもい”美味しかったね~」
「そうですね。シャルル様に“あ~ん”をしてもらって特に美味しく感じました」
「トリスお姉ちゃんは食べ過ぎちゃダメだよ~」
「なっ!?」
「シャルル様、やっぱり私が太ってるって思っていたんですね~」
「そ…そんなこと思っていないよ…」
トリスお姉ちゃんが一気に泣きそうな顔になりました。
「だって…、胸が大きくなっているだけなんでしょ?」
「そ、そうそう、胸…、胸です」
(良かった、誤魔化せたよ…)
トリスお姉ちゃんは胸をグイッと持ち上げて僕に見せ付けています。
「じゃあ、僕はお母さんとお父さん、たぶんお母さんと一緒にいるシエラお姉ちゃんに“やきもい”を持って行くから、残りをみんなで上手に分けておいてよ」
「分かりました…」
「……」
え~と、シャルル様が3個持っていかれたので、残り3個ですか…。
つい6個と言いましたが、もう少し買っておくべきでしたね。
私は“あ~ん”してもらった身ですから、ここからもう1個もらってしまえばシャルル様にも嫌われてしまいますね。
それにシャルル様はシエラ先輩にあげるとおっしゃっていましたので、カラードのメルモア先輩やメンテール先輩には1個ずつ渡さないとダメでしょう。
残り1個…。
ヌエットにもあげないと後で何を言われるか分かりませんねぇ。
ヌエットにあげれば簡単な話なのですが、シャルル様は“みんなで”とおしゃっていましたし…。
う~ん、いっそヌエットに預けてみましょう。
ガチャ…。
「ヌエットはいますか?」
私はメイドの集まる管理室に行き、そう尋ねます。
ここでは屋敷での行事や各メイドの一日の予定などが管理されていて、私も朝には一度確認しに来ています。
またここは、個室を持たないメイド達のリビングルームにもなっており、非番の者が寛いでいることもあります。
「はい、トリス先輩」
どうやらヌエットは管理室にいたようです。
「何かご用ですか?」
「ええ、先ほどシャルル様と街へ行ってき…」
ヌエットの目が厳しくなってこちらを睨んでいます。
「ま、街に行ってきたのですが、そこで残り1個なのですがこの“やきもい”をみんなのお土産にと言われたのです」
「「「えっ! シャルル様が…」」」
管理室内がザワザワとしだしました。
「それで、この“やきもい”をヌエットに渡しますから皆で分けて欲しいのです」
「分かりました。皆でいただきます!」
そうして、私はヌエットに“やきもい”を渡し、メルモア先輩とメンテール先輩用にとっておいた“やきもい”を渡しに行くのでした。
「みんな、聞いていましたね」
私は管理室にいた数人のメイドにそう確認しました。
さて、トリス先輩から預かったのは1個ですが…。
「1個を皆で分ければ一口ずつでも食べられそうですが…、皆はどうしたいですか?」
またもや室内がザワザワしだしました。
中には「分けて一口だけでも…」とか、「やっぱり一人で食べたい…」と言う者もいます。
「じゃあ、それについては勝ち取った者の意向で…ということで良いですか?」
そう言うと、皆がしぶしぶ了承しました。
もちろん私が勝ち取れば一人でいただきますけどね…。
勝ち取った時を想像してしまうとついニヤけてしまいます。
私を含めたメイドがこの管理室に4人いた為、クジを作ってみんなで一斉に引くことにしました。
結果、その“やきもい”を手にしたのは…、エリオンだったのです。
「やっ、やった~っ!」
そう言いながら足をそろえてぴょんぴょん飛んでいるのを見ると、私より小柄なのにルーシャ様並みの大きな胸が上下にボヨンボヨンと弾んでいます。
(くっ、なんて威力…)
なんでこの屋敷の火属性の者は胸があんなに大きいのでしょうか。
羨ましい…。
メルモア先輩みたいに胸の突起部分が埋もれているんじゃないでしょうか。
「はい、エリオン。この“やきもい”はあなたの物よ」
手渡そうとした手がプルプルと震えましたが、彼女よりも先輩である私がこんな態度ではいけませんね。
「ありがとうございますっ」
「じゃあ、みんなで分けて一口ずつでも食べましょうか…」
「「「えっ!?」」」
「元々一口ずつで分ければ良いと思っていましたし…」
「良いのですか?」
なんて良い子なの…。
胸の突起部分が埋もれているんじゃないかって思ってごめんね。
「はい、ヌエット先輩」
そして出来るだけ大きい部分をエリオンにあげて、みんなでいただくのでした。
エリオン、この借りはきっと返しますからね。
「そうですね。シャルル様に“あ~ん”をしてもらって特に美味しく感じました」
「トリスお姉ちゃんは食べ過ぎちゃダメだよ~」
「なっ!?」
「シャルル様、やっぱり私が太ってるって思っていたんですね~」
「そ…そんなこと思っていないよ…」
トリスお姉ちゃんが一気に泣きそうな顔になりました。
「だって…、胸が大きくなっているだけなんでしょ?」
「そ、そうそう、胸…、胸です」
(良かった、誤魔化せたよ…)
トリスお姉ちゃんは胸をグイッと持ち上げて僕に見せ付けています。
「じゃあ、僕はお母さんとお父さん、たぶんお母さんと一緒にいるシエラお姉ちゃんに“やきもい”を持って行くから、残りをみんなで上手に分けておいてよ」
「分かりました…」
「……」
え~と、シャルル様が3個持っていかれたので、残り3個ですか…。
つい6個と言いましたが、もう少し買っておくべきでしたね。
私は“あ~ん”してもらった身ですから、ここからもう1個もらってしまえばシャルル様にも嫌われてしまいますね。
それにシャルル様はシエラ先輩にあげるとおっしゃっていましたので、カラードのメルモア先輩やメンテール先輩には1個ずつ渡さないとダメでしょう。
残り1個…。
ヌエットにもあげないと後で何を言われるか分かりませんねぇ。
ヌエットにあげれば簡単な話なのですが、シャルル様は“みんなで”とおしゃっていましたし…。
う~ん、いっそヌエットに預けてみましょう。
ガチャ…。
「ヌエットはいますか?」
私はメイドの集まる管理室に行き、そう尋ねます。
ここでは屋敷での行事や各メイドの一日の予定などが管理されていて、私も朝には一度確認しに来ています。
またここは、個室を持たないメイド達のリビングルームにもなっており、非番の者が寛いでいることもあります。
「はい、トリス先輩」
どうやらヌエットは管理室にいたようです。
「何かご用ですか?」
「ええ、先ほどシャルル様と街へ行ってき…」
ヌエットの目が厳しくなってこちらを睨んでいます。
「ま、街に行ってきたのですが、そこで残り1個なのですがこの“やきもい”をみんなのお土産にと言われたのです」
「「「えっ! シャルル様が…」」」
管理室内がザワザワとしだしました。
「それで、この“やきもい”をヌエットに渡しますから皆で分けて欲しいのです」
「分かりました。皆でいただきます!」
そうして、私はヌエットに“やきもい”を渡し、メルモア先輩とメンテール先輩用にとっておいた“やきもい”を渡しに行くのでした。
「みんな、聞いていましたね」
私は管理室にいた数人のメイドにそう確認しました。
さて、トリス先輩から預かったのは1個ですが…。
「1個を皆で分ければ一口ずつでも食べられそうですが…、皆はどうしたいですか?」
またもや室内がザワザワしだしました。
中には「分けて一口だけでも…」とか、「やっぱり一人で食べたい…」と言う者もいます。
「じゃあ、それについては勝ち取った者の意向で…ということで良いですか?」
そう言うと、皆がしぶしぶ了承しました。
もちろん私が勝ち取れば一人でいただきますけどね…。
勝ち取った時を想像してしまうとついニヤけてしまいます。
私を含めたメイドがこの管理室に4人いた為、クジを作ってみんなで一斉に引くことにしました。
結果、その“やきもい”を手にしたのは…、エリオンだったのです。
「やっ、やった~っ!」
そう言いながら足をそろえてぴょんぴょん飛んでいるのを見ると、私より小柄なのにルーシャ様並みの大きな胸が上下にボヨンボヨンと弾んでいます。
(くっ、なんて威力…)
なんでこの屋敷の火属性の者は胸があんなに大きいのでしょうか。
羨ましい…。
メルモア先輩みたいに胸の突起部分が埋もれているんじゃないでしょうか。
「はい、エリオン。この“やきもい”はあなたの物よ」
手渡そうとした手がプルプルと震えましたが、彼女よりも先輩である私がこんな態度ではいけませんね。
「ありがとうございますっ」
「じゃあ、みんなで分けて一口ずつでも食べましょうか…」
「「「えっ!?」」」
「元々一口ずつで分ければ良いと思っていましたし…」
「良いのですか?」
なんて良い子なの…。
胸の突起部分が埋もれているんじゃないかって思ってごめんね。
「はい、ヌエット先輩」
そして出来るだけ大きい部分をエリオンにあげて、みんなでいただくのでした。
エリオン、この借りはきっと返しますからね。
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