65 / 567
第65話 【閑話】“やきもい”は誰の手に
しおりを挟む
「“やきもい”美味しかったね~」
「そうですね。シャルル様に“あ~ん”をしてもらって特に美味しく感じました」
「トリスお姉ちゃんは食べ過ぎちゃダメだよ~」
「なっ!?」
「シャルル様、やっぱり私が太ってるって思っていたんですね~」
「そ…そんなこと思っていないよ…」
トリスお姉ちゃんが一気に泣きそうな顔になりました。
「だって…、胸が大きくなっているだけなんでしょ?」
「そ、そうそう、胸…、胸です」
(良かった、誤魔化せたよ…)
トリスお姉ちゃんは胸をグイッと持ち上げて僕に見せ付けています。
「じゃあ、僕はお母さんとお父さん、たぶんお母さんと一緒にいるシエラお姉ちゃんに“やきもい”を持って行くから、残りをみんなで上手に分けておいてよ」
「分かりました…」
「……」
え~と、シャルル様が3個持っていかれたので、残り3個ですか…。
つい6個と言いましたが、もう少し買っておくべきでしたね。
私は“あ~ん”してもらった身ですから、ここからもう1個もらってしまえばシャルル様にも嫌われてしまいますね。
それにシャルル様はシエラ先輩にあげるとおっしゃっていましたので、カラードのメルモア先輩やメンテール先輩には1個ずつ渡さないとダメでしょう。
残り1個…。
ヌエットにもあげないと後で何を言われるか分かりませんねぇ。
ヌエットにあげれば簡単な話なのですが、シャルル様は“みんなで”とおしゃっていましたし…。
う~ん、いっそヌエットに預けてみましょう。
ガチャ…。
「ヌエットはいますか?」
私はメイドの集まる管理室に行き、そう尋ねます。
ここでは屋敷での行事や各メイドの一日の予定などが管理されていて、私も朝には一度確認しに来ています。
またここは、個室を持たないメイド達のリビングルームにもなっており、非番の者が寛いでいることもあります。
「はい、トリス先輩」
どうやらヌエットは管理室にいたようです。
「何かご用ですか?」
「ええ、先ほどシャルル様と街へ行ってき…」
ヌエットの目が厳しくなってこちらを睨んでいます。
「ま、街に行ってきたのですが、そこで残り1個なのですがこの“やきもい”をみんなのお土産にと言われたのです」
「「「えっ! シャルル様が…」」」
管理室内がザワザワとしだしました。
「それで、この“やきもい”をヌエットに渡しますから皆で分けて欲しいのです」
「分かりました。皆でいただきます!」
そうして、私はヌエットに“やきもい”を渡し、メルモア先輩とメンテール先輩用にとっておいた“やきもい”を渡しに行くのでした。
「みんな、聞いていましたね」
私は管理室にいた数人のメイドにそう確認しました。
さて、トリス先輩から預かったのは1個ですが…。
「1個を皆で分ければ一口ずつでも食べられそうですが…、皆はどうしたいですか?」
またもや室内がザワザワしだしました。
中には「分けて一口だけでも…」とか、「やっぱり一人で食べたい…」と言う者もいます。
「じゃあ、それについては勝ち取った者の意向で…ということで良いですか?」
そう言うと、皆がしぶしぶ了承しました。
もちろん私が勝ち取れば一人でいただきますけどね…。
勝ち取った時を想像してしまうとついニヤけてしまいます。
私を含めたメイドがこの管理室に4人いた為、クジを作ってみんなで一斉に引くことにしました。
結果、その“やきもい”を手にしたのは…、エリオンだったのです。
「やっ、やった~っ!」
そう言いながら足をそろえてぴょんぴょん飛んでいるのを見ると、私より小柄なのにルーシャ様並みの大きな胸が上下にボヨンボヨンと弾んでいます。
(くっ、なんて威力…)
なんでこの屋敷の火属性の者は胸があんなに大きいのでしょうか。
羨ましい…。
メルモア先輩みたいに胸の突起部分が埋もれているんじゃないでしょうか。
「はい、エリオン。この“やきもい”はあなたの物よ」
手渡そうとした手がプルプルと震えましたが、彼女よりも先輩である私がこんな態度ではいけませんね。
「ありがとうございますっ」
「じゃあ、みんなで分けて一口ずつでも食べましょうか…」
「「「えっ!?」」」
「元々一口ずつで分ければ良いと思っていましたし…」
「良いのですか?」
なんて良い子なの…。
胸の突起部分が埋もれているんじゃないかって思ってごめんね。
「はい、ヌエット先輩」
そして出来るだけ大きい部分をエリオンにあげて、みんなでいただくのでした。
エリオン、この借りはきっと返しますからね。
「そうですね。シャルル様に“あ~ん”をしてもらって特に美味しく感じました」
「トリスお姉ちゃんは食べ過ぎちゃダメだよ~」
「なっ!?」
「シャルル様、やっぱり私が太ってるって思っていたんですね~」
「そ…そんなこと思っていないよ…」
トリスお姉ちゃんが一気に泣きそうな顔になりました。
「だって…、胸が大きくなっているだけなんでしょ?」
「そ、そうそう、胸…、胸です」
(良かった、誤魔化せたよ…)
トリスお姉ちゃんは胸をグイッと持ち上げて僕に見せ付けています。
「じゃあ、僕はお母さんとお父さん、たぶんお母さんと一緒にいるシエラお姉ちゃんに“やきもい”を持って行くから、残りをみんなで上手に分けておいてよ」
「分かりました…」
「……」
え~と、シャルル様が3個持っていかれたので、残り3個ですか…。
つい6個と言いましたが、もう少し買っておくべきでしたね。
私は“あ~ん”してもらった身ですから、ここからもう1個もらってしまえばシャルル様にも嫌われてしまいますね。
それにシャルル様はシエラ先輩にあげるとおっしゃっていましたので、カラードのメルモア先輩やメンテール先輩には1個ずつ渡さないとダメでしょう。
残り1個…。
ヌエットにもあげないと後で何を言われるか分かりませんねぇ。
ヌエットにあげれば簡単な話なのですが、シャルル様は“みんなで”とおしゃっていましたし…。
う~ん、いっそヌエットに預けてみましょう。
ガチャ…。
「ヌエットはいますか?」
私はメイドの集まる管理室に行き、そう尋ねます。
ここでは屋敷での行事や各メイドの一日の予定などが管理されていて、私も朝には一度確認しに来ています。
またここは、個室を持たないメイド達のリビングルームにもなっており、非番の者が寛いでいることもあります。
「はい、トリス先輩」
どうやらヌエットは管理室にいたようです。
「何かご用ですか?」
「ええ、先ほどシャルル様と街へ行ってき…」
ヌエットの目が厳しくなってこちらを睨んでいます。
「ま、街に行ってきたのですが、そこで残り1個なのですがこの“やきもい”をみんなのお土産にと言われたのです」
「「「えっ! シャルル様が…」」」
管理室内がザワザワとしだしました。
「それで、この“やきもい”をヌエットに渡しますから皆で分けて欲しいのです」
「分かりました。皆でいただきます!」
そうして、私はヌエットに“やきもい”を渡し、メルモア先輩とメンテール先輩用にとっておいた“やきもい”を渡しに行くのでした。
「みんな、聞いていましたね」
私は管理室にいた数人のメイドにそう確認しました。
さて、トリス先輩から預かったのは1個ですが…。
「1個を皆で分ければ一口ずつでも食べられそうですが…、皆はどうしたいですか?」
またもや室内がザワザワしだしました。
中には「分けて一口だけでも…」とか、「やっぱり一人で食べたい…」と言う者もいます。
「じゃあ、それについては勝ち取った者の意向で…ということで良いですか?」
そう言うと、皆がしぶしぶ了承しました。
もちろん私が勝ち取れば一人でいただきますけどね…。
勝ち取った時を想像してしまうとついニヤけてしまいます。
私を含めたメイドがこの管理室に4人いた為、クジを作ってみんなで一斉に引くことにしました。
結果、その“やきもい”を手にしたのは…、エリオンだったのです。
「やっ、やった~っ!」
そう言いながら足をそろえてぴょんぴょん飛んでいるのを見ると、私より小柄なのにルーシャ様並みの大きな胸が上下にボヨンボヨンと弾んでいます。
(くっ、なんて威力…)
なんでこの屋敷の火属性の者は胸があんなに大きいのでしょうか。
羨ましい…。
メルモア先輩みたいに胸の突起部分が埋もれているんじゃないでしょうか。
「はい、エリオン。この“やきもい”はあなたの物よ」
手渡そうとした手がプルプルと震えましたが、彼女よりも先輩である私がこんな態度ではいけませんね。
「ありがとうございますっ」
「じゃあ、みんなで分けて一口ずつでも食べましょうか…」
「「「えっ!?」」」
「元々一口ずつで分ければ良いと思っていましたし…」
「良いのですか?」
なんて良い子なの…。
胸の突起部分が埋もれているんじゃないかって思ってごめんね。
「はい、ヌエット先輩」
そして出来るだけ大きい部分をエリオンにあげて、みんなでいただくのでした。
エリオン、この借りはきっと返しますからね。
0
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
スカートの中を覗きたい騎士団員達
白木 白亜
ファンタジー
超美人で噂の新米騎士、クレナ。
彼女が騎士団に入団すると決まったとき、騎士団には女性用の制服がなく、クレナ専用にわざわざデザインされた。
しかし、それは黒く、短くてしかも横にスリットの入ったタイトスカートで……
そんな中で、いろんな団員が偶然を装ったり連携したりして必死にパンチラを狙う下品な話。
※この物語はスライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話のスピンオフ的作品となります。
不定期更新です。
異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】
kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。
※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。
『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
未来人が未開惑星に行ったら無敵だった件
藤岡 フジオ
ファンタジー
四十一世紀の地球。殆どの地球人が遺伝子操作で超人的な能力を有する。
日本地区で科学者として生きるヒジリ(19)は転送装置の事故でアンドロイドのウメボシと共にとある未開惑星に飛ばされてしまった。
そこはファンタジー世界そのままの星で、魔法が存在していた。
魔法の存在を感知できず見ることも出来ないヒジリではあったが、パワードスーツやアンドロイドの力のお陰で圧倒的な力を惑星の住人に見せつける!
セイギの魔法使い
喜多朱里
ファンタジー
社畜が極まって死んでしまった男は、神の手によって異世界転生を果たす。
AVや成年漫画やエロゲ――R18作品の力を発動できる性技魔法を授かったアルベルト・ハルフォードだが、折角の貴族生まれも性技魔法のせいで追放されてしまい、その日暮らしの冒険者となることに。
人前では力を隠しながら、アルベルトは性欲の力で異世界で成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる