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第46話 領主会議ーカプランド領編9
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「メルモアお姉ちゃん、おはよう」
「おはようございます。シャルル様」
「昨日の夜はどうしていたの? またおいしいお肉でも食べていたの?」
「そうなんですよ~。エルスタイン領都ではめったに食べられない希少部位があって、それを頂く事が出来ました~」
メルモアお姉ちゃんは「もう、ほっぺたが落ちそうでしたよ」といってご機嫌です。
「僕はねぇ、羽の生えた動物のお肉を食べたんだよ」
「そのお肉を食べていると、昨日会ったギルダお姉さんのように筋肉質な身体になるんだって」
「そうなのですか…。でもシャルル様は私が柔らかい方が良いでしょう」
「う~ん、そうだね…」
大きな胸を押し付けるように抱き付いてこられると、確かに柔らかくて気持ちが良いなぁと思うのでした。
『さぁ、出発しましょう』
ロイセンを出てしばらくすると、あちらこちらに林が見えるようになってきました。
しばらく背の高い木々を見ていなかったから懐かしく感じます。
少し先に大きな橋が見えてきたので、あの辺りには川が流れているようです。
『ようやくここまで来ましたね』
『あの橋を渡ればカプランド領都までは今晩泊まる町を経由してすぐですよ』
「お母さんは領主会議の度に遠くへ行くんだね」
『シャルル、カプランド領都はまだ近い方なのよ。大陸の中央にある王領を挟んで向こうにあるケープノット領都はもっと遠いのですよ』
「確かにケープノット領都は遠いですよね…」
「え~っと、エバーミット様のところだよね…」
「今回はシャルル様のおかげで旅の長さを感じませんけれどね…」
『シエラの言うとおりね…。当分はシャルルと一緒だから苦じゃないわね…』
『でも、シャルルにとっては初めての旅だから大変かもしれませんね』
「ううん、全然大変じゃないよ。僕もみんなと旅が出来て楽しいよ」
「シャルル様は本当にお元気ですよね~」
「メルモアお姉ちゃんとお肉をいっぱい食べたからかな~、な~んてね」
ちょっとおどけて返事をしてみると、メルモアお姉ちゃんが嬉々としてまた抱きついてくるのでした。
そうこうしているうちに橋の袂まで近づきました。
橋は石で造られていて、とても幅が広いものでした。
「近づくと大きい橋だねぇ」
『この橋も大戦前からあったもので、たくさんの兵士が移動しやすいように幅が広いのよ』とお母さんが説明してくれます。
よく見ると、古い石の部分を新しい石で修復した跡も見られました。
『この川は王都の近くから流れてきているの』
もちろん川の上流方向を見ても王領は見えませんが、川幅は広く、水深も深くはないようです。
橋の途中には中洲もあり、人々が魔法の練習や川遊びをして楽しんでいるのも見えます。
川を越えしばらくすると、2つの小さな山が見えてきました。
道はその真ん中を通っていてまるで小さな谷のようです。
近づくにつれ、その小さな山には所々が段々になっていてそこに建物が建っているのが分かります。
「すごいところに建物が建っているんだね」
『ここも昔は砦だったそうなので、その跡を町として利用しているそうです』
「シャルル様、魔動力車で近寄れるのはここまでなので、これからは歩いて宿まで行くことになります」
「そうなんだ…」
僕たちの宿は向かって右側の砦跡になるそうです。
「シエラお姉ちゃん、宿ってあそこじゃないよね?」
ここから見える高い建物を指さして聞いてみました。
「よく分かりましたねシャルル様。今晩の宿はあそこです」
「昨日一緒に泊まった部屋も素敵でしたが、こちらもとても見晴らしが良いと思いますよ」
「でも、すごく高いところにあるね。歩いて登っていくには大変なんじゃない?」
「やはりシャルル様でも大変だと思われますか。でも、ご安心ください。あちらにこの段々を上っていく魔道具が使われている階段があるのです」
シエラお姉ちゃんがそう言いながら指差したところを見てみると、確かに他の人達もそれを利用して上っていきます。
先に駆け足で見に行くと、金属製の段板部分が傾斜にそってスゥーっと上へ動いているのです。
「これは魔動力車と同じで、魔力が動力となって動いているんですよ」
そう言われて上の方へ目をやると、段々ごとにこの動く階段が設置されています。
直接一番上までは行けませんが、これで楽に行けそうです。
何度か動く階段を乗り継ぎ宿の前に到着しました。
振り返って階段を見下ろすと、魔動力車を降りたところがかなり下に見えます。
時折この斜面を吹き降ろす風に身体が飛ばされそうな感じになり、見晴らしは良いかもしれませんがちょっと怖いです。
「シャルル様、大丈夫ですか?」
荷物を持って追いついてきたトリスお姉ちゃんが声を掛けてくれます。
「うん、大丈夫。宿にくるだけでこんなに大変だなんてね。ヌエットお姉ちゃんもお疲れ様」
最後に上がってきたヌエットお姉ちゃんにも声を掛けます。
「今日は私がシャルル様と同じ部屋なんですよ」
「そうだったね…」
朝から楽しみにしていたのを知っています。
「ヌエットもこの数日でなんだか女らしくなったわね…」
「もう~、メルモア先輩、そんなことないですよ~。たぶん…」
メルモア先輩が訝しむようにじぃ~っと私の身体を見てきます。
メルモア先輩は何かとシャルル様に抱き付いておられますが、一緒の部屋で寝ておられないので下腹部がドクドクと感じる機会も無かったのでしょう。
あんなに気持ち良いのに、もったいない話ですねぇ~。
「さぁ、シャルル様、宿の中に入りましょう」
私は誤魔化すようにシャルル様の背中を押して中へ促すのでした。
「おはようございます。シャルル様」
「昨日の夜はどうしていたの? またおいしいお肉でも食べていたの?」
「そうなんですよ~。エルスタイン領都ではめったに食べられない希少部位があって、それを頂く事が出来ました~」
メルモアお姉ちゃんは「もう、ほっぺたが落ちそうでしたよ」といってご機嫌です。
「僕はねぇ、羽の生えた動物のお肉を食べたんだよ」
「そのお肉を食べていると、昨日会ったギルダお姉さんのように筋肉質な身体になるんだって」
「そうなのですか…。でもシャルル様は私が柔らかい方が良いでしょう」
「う~ん、そうだね…」
大きな胸を押し付けるように抱き付いてこられると、確かに柔らかくて気持ちが良いなぁと思うのでした。
『さぁ、出発しましょう』
ロイセンを出てしばらくすると、あちらこちらに林が見えるようになってきました。
しばらく背の高い木々を見ていなかったから懐かしく感じます。
少し先に大きな橋が見えてきたので、あの辺りには川が流れているようです。
『ようやくここまで来ましたね』
『あの橋を渡ればカプランド領都までは今晩泊まる町を経由してすぐですよ』
「お母さんは領主会議の度に遠くへ行くんだね」
『シャルル、カプランド領都はまだ近い方なのよ。大陸の中央にある王領を挟んで向こうにあるケープノット領都はもっと遠いのですよ』
「確かにケープノット領都は遠いですよね…」
「え~っと、エバーミット様のところだよね…」
「今回はシャルル様のおかげで旅の長さを感じませんけれどね…」
『シエラの言うとおりね…。当分はシャルルと一緒だから苦じゃないわね…』
『でも、シャルルにとっては初めての旅だから大変かもしれませんね』
「ううん、全然大変じゃないよ。僕もみんなと旅が出来て楽しいよ」
「シャルル様は本当にお元気ですよね~」
「メルモアお姉ちゃんとお肉をいっぱい食べたからかな~、な~んてね」
ちょっとおどけて返事をしてみると、メルモアお姉ちゃんが嬉々としてまた抱きついてくるのでした。
そうこうしているうちに橋の袂まで近づきました。
橋は石で造られていて、とても幅が広いものでした。
「近づくと大きい橋だねぇ」
『この橋も大戦前からあったもので、たくさんの兵士が移動しやすいように幅が広いのよ』とお母さんが説明してくれます。
よく見ると、古い石の部分を新しい石で修復した跡も見られました。
『この川は王都の近くから流れてきているの』
もちろん川の上流方向を見ても王領は見えませんが、川幅は広く、水深も深くはないようです。
橋の途中には中洲もあり、人々が魔法の練習や川遊びをして楽しんでいるのも見えます。
川を越えしばらくすると、2つの小さな山が見えてきました。
道はその真ん中を通っていてまるで小さな谷のようです。
近づくにつれ、その小さな山には所々が段々になっていてそこに建物が建っているのが分かります。
「すごいところに建物が建っているんだね」
『ここも昔は砦だったそうなので、その跡を町として利用しているそうです』
「シャルル様、魔動力車で近寄れるのはここまでなので、これからは歩いて宿まで行くことになります」
「そうなんだ…」
僕たちの宿は向かって右側の砦跡になるそうです。
「シエラお姉ちゃん、宿ってあそこじゃないよね?」
ここから見える高い建物を指さして聞いてみました。
「よく分かりましたねシャルル様。今晩の宿はあそこです」
「昨日一緒に泊まった部屋も素敵でしたが、こちらもとても見晴らしが良いと思いますよ」
「でも、すごく高いところにあるね。歩いて登っていくには大変なんじゃない?」
「やはりシャルル様でも大変だと思われますか。でも、ご安心ください。あちらにこの段々を上っていく魔道具が使われている階段があるのです」
シエラお姉ちゃんがそう言いながら指差したところを見てみると、確かに他の人達もそれを利用して上っていきます。
先に駆け足で見に行くと、金属製の段板部分が傾斜にそってスゥーっと上へ動いているのです。
「これは魔動力車と同じで、魔力が動力となって動いているんですよ」
そう言われて上の方へ目をやると、段々ごとにこの動く階段が設置されています。
直接一番上までは行けませんが、これで楽に行けそうです。
何度か動く階段を乗り継ぎ宿の前に到着しました。
振り返って階段を見下ろすと、魔動力車を降りたところがかなり下に見えます。
時折この斜面を吹き降ろす風に身体が飛ばされそうな感じになり、見晴らしは良いかもしれませんがちょっと怖いです。
「シャルル様、大丈夫ですか?」
荷物を持って追いついてきたトリスお姉ちゃんが声を掛けてくれます。
「うん、大丈夫。宿にくるだけでこんなに大変だなんてね。ヌエットお姉ちゃんもお疲れ様」
最後に上がってきたヌエットお姉ちゃんにも声を掛けます。
「今日は私がシャルル様と同じ部屋なんですよ」
「そうだったね…」
朝から楽しみにしていたのを知っています。
「ヌエットもこの数日でなんだか女らしくなったわね…」
「もう~、メルモア先輩、そんなことないですよ~。たぶん…」
メルモア先輩が訝しむようにじぃ~っと私の身体を見てきます。
メルモア先輩は何かとシャルル様に抱き付いておられますが、一緒の部屋で寝ておられないので下腹部がドクドクと感じる機会も無かったのでしょう。
あんなに気持ち良いのに、もったいない話ですねぇ~。
「さぁ、シャルル様、宿の中に入りましょう」
私は誤魔化すようにシャルル様の背中を押して中へ促すのでした。
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