DNAの改修者

kujibiki

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第20話 これも秘密

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『シャルルは良い子にしてる?』

ある日、夕食前にリビングでシャルル様と遊んでいると、後ろからルーシャ様に声をかけられました。
今日のお仕事は早めに終わられたようです。

シャルル様もすぐに立ち上がってルーシャ様の足元に駆け寄って抱き付き、とても嬉しそうな顔をされています。

ルーシャ様の後ろにはシエラ先輩も付いているので、お二人でシャルル様の様子を見に来られたのかもしれません。

「シャルル様はいつも屋敷内やお庭で走り回っておられ本当にお元気ですよ。私も追いかけるのに大変なぐらいです…」

シャルル様はシエラ先輩のことも分かっているみたいで、ルーシャ様に抱きついた後に「シエラおねえちゃ~ん」と駆け寄っていきます。

まぁ、シエラ先輩もシャルル様の顔を見るたびに抱き付いて頬ずりしているのでさすがに覚えてもらっているようです。

『トリスは大変かもしれませんが、怪我などには気をつけてやってくださいね』

「はいっ」
そうだ、私はシャルル様の怪我が自然に治ってしまうことを相談してみようと思っていたのでした。

「ルーシャ様、そのことで少しよろしいでしょうか?」

シャルル様がシエラ先輩の足元に飛びついている間に相談してみます。

『どうしたのトリス、そんなまじめな顔をして…。何か問題でも?』

「いえ、問題ということではありませんが、実はシャルル様が3歳になった頃から少し不思議なことが起こるのです」

ルーシャ様の後ろでしゃがんでシャルル様を抱きしめているシエラ先輩もこちらを見上げています。

「シャルル様はよく走り回っておられるので擦り傷や切り傷が絶えないのですが、私が【治療】魔法をかけようとする前に自然に治ってしまうのです」

『なんですって!?』

「シャルル様は男の子ですから魔法ではないとは思うのですが…。何度か確認しましたがシャルル様に意識している様子は無いのです」

『そ…そうですか、分かっているとは思いますがこれも秘密ですよ』

「「はい…」」

無邪気にはしゃぐシャルル様を見ながら私達は頷き合うのでした。
シャルル様は一体何者なのでしょうか。



XX XY



今日は久しぶりに仕事を早く終わらせました。
領主ともなると暇ではありません。
近く領主会議が行われる予定なので、領内の情報をまとめておかなければならないのです。

ここ最近仕事尽くめなのでかなり疲れてしまいました。
シャルルの補充が必要みたいです。
これからシャルルのところに向かうと伝えると、側にいたシエラも顔をほころばせて喜んでいます。

(屋敷の者から聞いていますよ…)
あなたは屋敷内でシャルルを見かけるたびに抱きついて頬ずりしているのでしょう。
なんだかシエラも少し艶やかになってきたような気がします。



夕食までの時間はリビングで遊んでいることが多いと聞いていたので、シャルルの部屋には向かわずリビングの方へ向かいました。
やっぱりいました。トリスに遊んでもらっているようです。

『シャルルは良い子にしてる?』

その声に真っ先に気付いたシャルルは両腕を広げこちらに駆け寄ってきます。
初めは金髪に近かった髪の色も、今は私と同じくらいの亜麻色になっています。
撫でてみると髪質はラルクに似ているのか柔らかく少し癖があるようです。

あまり気にしていなかったけれど、この子の成長は早いのかしら…。
3歳にしては大きい気がします。

すぐに後ろにいるシエラの方に向かってしまったので、大きさのことは気に留めることもなく、トリスに近況を尋ねるのでした。

トリスが急に真剣な顔付で話しかけてきたのには意表をつかれましたが、聞くところによるとシャルルは傷を負っても自然に治ってしまうというのだそうです。

やはりこの子は天使なのではないでしょうか。
私は二人に秘密であることを念押しするのでした。
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