DNAの改修者

kujibiki

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第10話 魂の格

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『では、転生作業に入る前にもう一度言っておく』

『先ほども言ったがここでの記憶は転生後忘れてしまう。しかし惑星トーナに転生したお前は、その世界で“男”になった時、ここでの記憶を思い出すだろう』

『まぁ、これは魂の格が最高位者に与えられる特権のようなものだ。救済者と同じように転生させられても魂の格はそのままで同時に前世の記憶も思い出すだろう』

『他にも魂の格が最高位者には優遇されていることがある』
『まず簡単に死ぬことはない。致命傷じゃない限り自然にキズは癒されるだろう』

『つまり通常から身体強化されている状態になっている。ほかの者より健康に、あらゆる機能がパワフルに生きられることだろう』

「それは凄いですね…」

『それにお前が危害と認識したものからは自動的に防衛される。お前が好きそうなチートというやつだろう? あの星ではあって損は無いだろうからな(ボソッ)』

「えっ…」
何か聞いてはいけないようなことが…。

『また、魔法についても適性は生まれた時からすべて備わっている。だが備わっているからと言って魔法がすぐに使えるわけではない』

『こういうチュートリアルもお前が“男”にならないと思い出さない内容だが、これから転生する星では魔法は女を“食って”覚えていくのが良いだろう。そういう世界だと思ってくれ』

『その内自分でも魔法が作れるようになるかもしれないな。我が言っていてなんなんだがかなりチートというやつだな』

女を食うってなんだ?
突っ込みどころ満載だが、おっさんは突っ込みを許さないかのように一気に説明をしていく。
とにかく魂の格が最高位者がかなり優遇されているのが分かった。

『ではこれから、この星の女性や男性の問題を少し話しておく』

「教えてもらえるのですか…?」

『今じゃないと言ったのは“男”にならないとお前は思い出さないからだ』

『まず、根本的に女性と男性の寿命が明らかに違う。女性の寿命は男性の約二倍ほどあり、平均60歳ほどとなっている。要するに男性の寿命は平均30歳ほどになる』

『お前が“男”になるころには分かるだろうが、あの星の男性は男であって男ではない。そう嫌な顔をするな…、しかしお前には信じられないような悲しい運命を辿っている』

『女性を助けて欲しいと言ったのは、男の方は一朝一夕に改善することが出来ないからだ。とりあえず女性はお前が転生することによって救われることが多いだろう。頑張って欲しい』

『それから男性の寿命が短いと言って心配することは無い。お前の寿命は女性以上に長くなるはずだ』

『惑星トーナは比較的新しい星でお前と比べれば魂の格が低い者達ばかりだ。そう考えるとお前の寿命が比較できないほど長くなる可能性もある。まっ、そんなところだろう…』

長い…、長い説明だった。とりあえず問題については寿命が関係するようだ。

男性の寿命の短さが特に気になるが、俺には当てはまらなさそうだし、今のところすぐにはどうにかなるものではないとおっさんも言っている。

トーナに転生して“男”になってみないことには分からないこともあるということか…。
まぁせっかくの異世界転生なのだから新たな世界を楽しむのも良いかもしれないな。

「まぁ、頑張ってみるか…」

ガラン・ゴロン・パシュと繰り返す光の玉を見下ろしながら俺も気持ちを固めるのだった。



「……ここは?」

視界が変わったと思ったらクリアボックスの中から出ているようだった。
先ほどまで床下に見えていた光の玉が近くに見える。
一つの玉は直径60cmほどの大きさで、内部には色鮮やかな光が揺らめいている。

光りは眩しいものではなく、まるで暖炉の火を見ているかのように落ち着いた気分になる程度のものだ。

おっさんが見上げるしぐさをするのでつられて見てみると、ちょうど真上のところにこれまでいたクリアボックスが小さく見えていた。

『ここは特異作業場と言って、見ての通り先ほどの空間からちょうど真下にあたるのだ』

「面白いですね」
ちょうどクリアボックスと同じ大きさぐらいの広さが歩けるように床になっているみたいだ。

『周りに見える光の玉の流れは止めることが出来ないので、ここで個別に出荷できるようになっているのだ』

「……」
出荷ねぇ、もう少しマシな言い方はないのだろうか。

『では早速始めようか。すまないがそこに見える台の上に寝てみてくれ』

示された方を見てみると、床から白い石のような台が現れていたので、俺は言われるままに仰向けに寝てみた。

おっさんはその間に中央付近で両手を地にかざし、魂の入っていないからの玉を作り出している。

玉が周りに見える光の玉と同じくらいに大きくなった頃、床から四角柱が伸びてきて玉を下から支える格好となった。なんだか形状はマッチ棒みたいだ。
俺は寝ながら首だけを玉の方に向けて作業を見ていた。

『よし、今からお前をこの玉に封じるぞ』
『今、形取っている姿から光の魂へと形を変えることになる』

そうか、物心ついた時から見て来た俺の姿ともいよいよお別れか…。
なんだか感慨深い。
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