上 下
3 / 22

第三話

しおりを挟む
あ、あれ? 冒険者ギルドはどこだろう? ガリウスさんが分かりにくい場所に建てるはずがないんだけど。
割と直感的な思考の持ち主だったから…。
それでこの国の王様とか貴族の人に面白がられてたなんてお話を聞かせてもらったなぁ。

見ちゃいけない物を見てしまった気がする。

『主様、これは城でありませぬか?』

「ははっ。 看板に冒険者ギルドって書いてあるや。 僕は夢でも見ているのかもしれない」

「あら~。 この街は初めてかい? ここの領主様とここのギルドマスター様が面白い方でねぇ! 気付いたらとっても凄いギルドが出来ちゃってたのよ?」

「ソ、ソウナンデスネ」

「しかもね? アンタ! ここのギルドに負けじと領主様ったら邸宅をギルドより豪華にしてしまってね」

えぇ…。
それはそれで大丈夫なのかな?

「それで起こった陛下が王城を改築して、王城まで大きくなったって話よ?」

国家問題になってる!?
ガリウスさん何やってるの!?

「ガリウスさんしばらく会わないうちに何やってるの…」

「アンタ、ギルドマスター様とお知り合いだったのかい!? それは凄いことじゃないかい。 多分ここら辺の宿屋とか、食堂は無料になっちまうんじゃないのかしら?」

「そ、そんな! 悪いですよ!? 僕が凄いわけじゃないんですから!」

「それだけあの人には、いや、あの人達には感謝してるのさ。 ほれ、用事があるんだろ? 呼び止めて悪かったね。 これでも良かったらこれでも飲んでおくれよ。 ウチの商品さ」

「ありがとうございます! 大事に飲みますね!」

何だろうコレ。 ベリル系の香りがする?

『それはフレッシュブルベリルの果汁と柑橘の香りがするな。 後で我にも分けてくれ。 実は我はベリルが好きなのだ』

え、えぇ。 さっきのおばさんはこれを売ってるって言ってたし後で追加で買ってあげよう。

「分かったよ。 後でね」

とりあえず、この豪勢な扉をどうやって開けるのかを考えていたら勝手に開いた。
所謂自動扉と言う奴らしい。

「お、新人さんか! 頑張れよ~!」

ベテランさんっぽい方が気さくに声を掛けてくれた。
すっごい重そうな大槌を片手で持ち歩いてるし凄い人なんだろうな…。

「はい! ありがとうございます!」

周りから和やかな視線や、和やかな会話が飛んでいる。
決して嫌な物ではないし、このギルドにはテイマーも居るようだ。
意を決して受付に向かう。

「すみません! 冒険者の登録に来ました!」

「はいニャ! 君の年齢と職を教えて欲しいニャ!」

「十三歳! テイマーです!」

「ほほぅ! 名前なんていうニャ?」

「マルクって言います」

「ふむふむ、マルク君ニャ。 良い名前ニャ。 ん? 聞き覚えがあるニャ。 思い出せないニャ」

考え込む受付嬢の子。 歳は変わらなそうだ。

「あ、ところで何をテイムしているニャ?」

「ここで出すと少し騒ぎになるかもしれないのですが…」

「ここのギルドに腰抜けは居ないニャ! そうニャろ?」

うぉおおおおおおおおおおおおお!!! と地鳴りのような声が響く。
まるでお父さんを見ているみたい。 剣を振るたびに叫んでいたからね。

「では、失礼して…」

『主様、久々の召命心り感謝致します!』

『研究の途中に呼び出すなんて酷いわ!』

『ケラケラ…ウマソウナタマシイ…』

「「「「「「「ヒヒイイイイニャアアアア」」」」」」」

『む、すぐに我を再召喚したか、では先ほどの果汁を貰えるのか?』

ジュースね...?
というか、冒険者も受付嬢も固まっちゃった。
言葉を喋る魔物は珍しいからかな?

「おい、何の騒ぎだ! …って、おいマルク! どうしてここに? いや、冒険者登録か。 それはお前の従魔か? だとしたら喋ったよな?」

「は、はい」

「はぁ、可能性として、そこのアンデッドは【死者の宮殿】 の特殊個体達だな? 良くもまぁテイム出来たもんだ。 ましてや【天馬】 まで…。 ダンジョンには冒険者になるまで行くなと言った言いつけておいたが、お前がそれを守るとは思ってなかったけど…これほどとはなぁ。 流石は賢者の血を引く者だよ」

その一言で場の空気が張りつめた。
ほんわかした空気なんかじゃない。 新人を見つめる視線じゃない。
皆が僕を見つめるその視線が歴戦の猛者を見つめるソレになってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 よろしくお願いいたします。 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

美少女ゲームの悪役令息に転生した俺、『本編先乗り』と【モンスター錬成】で原作を破壊する

ふつうのにーちゃん
ファンタジー
美少女ゲーム【ドラゴンズ・ティアラ】は、バグが多いのが玉に瑕の1000時間遊べる名作RPGだ。 そんな【ドラゴンズ・ティアラ】を正規プレイからバグ利用プレイまで全てを遊び尽くした俺は、憧れのゲーム世界に転生してしまう。 俺が転生したのは子爵家の次男ヴァレリウス。ゲーム中盤で惨たらしい破滅を迎えることになる、やられ役の悪役令息だった。 冷酷な兄との対立。父の失望からの勘当。学生ランクFへの降格。破滅の未来。 前世の記憶が蘇るなり苦難のスタートとなったが、むしろ俺はハッピーだった。 家族にハズレ扱いされたヴァレリウスの【モンスター錬成】スキルは、最強キャラクター育成の鍵だったのだから。 差し当たって目指すは最強。そして本編ごとの破滅シナリオの破壊。 元よりバランス崩壊上等のプレイヤーだった俺は、自重無しのストロングスタイルで、突っかかってくる家族を返り討ちにしつつ、ストーリー本編を乗っ取ってゆく。 (他サイトでも連載中)

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。 けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。 というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない? そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。 小説家になろうでも掲載しております。

処理中です...