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第一章 まさかの幽霊
もっとお金を稼ぎたい(7)
しおりを挟む……暖かい。暖かいなにかに包まれているような感じがする。
恐る恐る目を開けると、真っ先にオレンジ色の瞳と目が合った。私は仰向けにされているようだ。
「…………ホ、ムラ?」
「レイカ! 良かった……本当に良かった」
ホムラが涙を流して私を抱き締めた。
背中に激痛が走る。
「痛い痛い痛い! ホムラ痛い!」
「ダメですよ! まだ治療中です!」
「ああっ、ごめん!」
あれ? ホムラとは違う声が聞こえた。女の子の声。
ぼやんとしていた視界が帰ってくる。私の周りには、座っている金髪碧眼の可愛らしい女の子と、立って私を見ている黒髪緑目の男の子がいた。
女の子の手からは、光が出ている。もしかして治癒魔法?
「あの……貴女が私を助けてくれたのですか?」
「あっ、まだ完全に治っていないので……。安静にしておいて下さい」
起き上がろうとしたら女の子に止められた。
刺されたのって確か、背中じゃなかったっけ? なのに仰向けで寝てる。
「刃物が貫通していましたので……。治るには時間がかかります」
刃物が、貫通していた!?
なんじゃそりゃ! そりゃあ痛いわ!
私を刺した奴に怒りが溜まるが、その前に。
――生きていることに、物凄く安堵した。
「ありがとう」
ぽつりと呟いたその言葉は、女の子に届いただろうか。女の子は無言で治療を続けてくれた。
『強化条件を満たしました。天村麗花にスキル『実体化・強』を付与します』
『獲得条件を満たしました。天村麗花にスキル『透明化』を付与します』
『獲得条件を満たしました。天村麗花にスキル『危機感知』を付与します』
『覚醒条件を満たしました。天村麗花にスキル『強靭』を付与します』
『覚醒条件を満たしました。天村麗花にスキル『痛覚無効』を付与します』
『覚醒条件を満たしました。天村麗花にスキル『完治』を付与します』
……なんかめちゃくちゃスキルを獲得したんだが。
いや、獲得以外にもある? 強化、覚醒条件を満たした、と偉大なる創造神エクセラ様は言ったぞ?
何か凄そうだしまた調べよう。
とりあえず今は。
「本当にありがとうございます! どれだけ感謝してもしきれません! 貴女は命の恩人だ!」
治療をしてくれていた女の子に頭を下げる。
女の子はあわあわしながら、私に頭を上げてと言った。
「貴女が助けてくれなかったら、きっと、いや、絶対に死んでいました。貴女のおかげです」
「いえ、わたくしはやるべきことを行っただけです」
女の子はふわりと微笑んでそう言った。何この天使。
ありがとうととにかく言っていたら、傍にいた男の子が話しかけてきた。
「君を刺した男は既に捕らえられた。この魔袋は君のだよね?」
そう言いながら私に水玉の魔袋を差し出す。
これは! 私の!
「私のです! ありがとうございます!」
お金とか服とか入ってるもの。大切なもの。
私が中身を確認していると、ホムラが肩を落として私に謝った。
「ごめん、レイカ。本当だったら僕が気が付かなくちゃいけなかったのに。僕、レイカを守るはずなのに……」
ふるふると肩を震わせる。私は、その様子を見て、まるで怒られるのを怖がる幼い子供の姿が重なった。
ホムラの頭に手を乗せる。
「――私、ホムラに助けられてばっかだよ。だって、ホムラがいなかったらさ、今頃寂しくて泣いているかもしれない。生きるのを諦めているかもしれない。だから、ホムラがいてくれてるだけで、私は守られているんだ。そんなに落ち込まないで」
よしよし、と撫でると、ホムラは私の手を取って、頬に寄せた。
ありがとう、とその口が動いた。私はにこりと笑ってそれを見た。
「ところで!」
くるり、と女の子と男の子を見る。
「感謝のお礼がしたいです!」
2人は顔を見合せた。
「いや、俺は特になんもしてないから」
「わたくしは当たり前のことをしただけですし……」
なんと謙虚な! しかし! 私は諦めないのだよ!
「今死にそうになって、思ったんです。どれだけ誰かに借りがあったとしても、感謝が溜まっていても、言葉や行動にする前に死んたら、貰うだけ貰って、返すことができないことになるじゃないですか。返せる時に恩は返さないといけない、と気がついたんです」
だから、恩を返させてください! と私は頭を下げる。
「……ほんとに俺は特に何もしていないんだが」
「貴方もです! また無一文になるところでした!」
頭を下げ続けている。
「分かりました。頂きます」
女の子がこくりと頷いてくれた。私は万円の笑みを浮かべ、女の子を見た。
「……俺はそこまでいらないから」
男の子も渋々と。
そういえば、恩を返すと言っても何をすれば恩を返すことになるんだろう? 欲しいものを買うとか?
いやいや、それはなんかなー。命の恩人だよ?
とりあえずお話したいから。
「一緒にご飯、食べませんか?」
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