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第一章 まさかの幽霊
転生(2)
しおりを挟む時は約10分前。
私こと天村麗花は、高校に入って一番にできた友達と一緒にショッピングを楽しんでいた。
「この服可愛いね」
「そうだねー。お揃いにして買お!」
いつもより奮発して、友達とあーだこーだ言いながら可愛い服や文房具等を買った。
久しぶりの友達との買い物。溜まっていた鬱憤が払われているようにも感じ、とても楽しかった。
そのショッピングモールで目玉でもある屋上の展望台に行くのは自然な流れだった。
空は青く、太陽も輝き、優しい風が吹く。自然は今日という日を祝福しているようにも思えた。
――少なくとも、その時は。
なんだが人が集まってざわついている。私達は何かな、と言い合いながらざわめきの根源を見ようと人混みを覗いた。
――心臓が逆立つような気分だった。
私が卒業した中学の後輩が、今まさに屋上から飛び降りようとしていたのだ。
顔は見えなかったけど、間違いなく後輩だ。覚えている。部活で虐められてて、私が一度それを庇ったからか私に懐いていた子だ。
どうして死のうとしているのだろう。私が卒業したから、また虐められたのかな。死にたい気分なのかな。
死なせていいのかな。
頭の中でぐるぐると色んな言葉が回る中、私はフェンスを越えていて、その子の名前を無意識に呼び手を伸ばした。
「――小春」
後輩が私の言葉を聞き取ってか、後ろを向いた。その顔は驚きに染まっていた。
「――先輩?」
後輩がそう呟こうとしたその時。
勢いよく風が吹いた。今まで世界を祝福していた風が、今は狂気を持っているかのようにも感じた。
何故ならば、後輩の身体が風のせいで煽られ、屋上から落ちそうになったのだから。
「――――ぁ」
何かを言う前に身体は勝手に動いていた。
友達が悲痛に似た声を上げているのが聞こえた。しかし、私の身体は止まらなかった。
後輩に手を伸ばし、渾身の力で彼女を屋上に戻した。
後輩が周りの人達に保護されたのを見て、良かったと安堵する。
後輩は私を見て叫んでいた。
友達も私を見て叫んでいた。
人々も私を見て叫んでいた。
――友達への罪悪感、後輩への心配、家族への謝罪。短い人生の心残り。それらが胸の中で燻る。
空でも飛べそうな気分だな、と現実逃避で思った。
そして、私は意識を失った。
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