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護衛騎士の証言 (1)
しおりを挟むエミカが王宮を出ていったと知った時のカイト様の慌てっぷりといえば、本当にやばかった。
地雷踏んだりしたら睨み殺されそうなくらい。
追放命令を出したと言った高官殿を本当に殺そうとしていたし。
僕――タイザック・ウル・スクワァート始め、側近達が必死で止めたんだが。
学園から帰ったその日。
カイト様は学園で何か良いことがあったらしく、珍しくとても上機嫌だった。
まあ、顔には出てないのだが。
僕はいつものように護衛騎士としてカイト様についていた。
「エミカ、いるか?」
カイト様が自室のドアを開け、そこにいると思われるエミカに聞こえるように声をあげた。
だが、返事は帰ってこない。
カイト様に続いて僕も部屋に入る。彼はエミカを探すが、どこにも見つからない。
おかしい、と僕は思い始めた。
エミカはだいたい、カイト様が名を呼ぶとすぐにとんでくる。学園から帰った時は、必ずカイト様の自室にいるはずだ。
時々カイト様を驚かそうと隠れている時もあるが、こんなに彼が探しているのに出てこないことはない。
「エミカ!」
カイト様もそう思ったのか、自室を出て王宮内を探すために部屋を出た。
護衛騎士である僕は彼から離れる訳にはいかないから、彼について行こうとした時――
「カイルドルト殿下。何か問題でもありましたか?」
ファクトリー高官殿がカイト様に話しかけた。
カイト様は高官殿を一瞥してから、小さく頷いた。
「エミカの姿が見えない」
「ああ、エミカですか」
高官殿はわざとらしくそう言った。
「エミカに何かしたのか?」
カイト様はゆっくりと目を細めた。高官殿には当たらないようにしているのだろうが、僕の立っている所にはガンガン当たっている。
恐ろしいまでの冷気が。
高官殿はビクビクしている僕に気づかないまま、話す。
「実は、彼女はカイルドルト殿下を暗殺しようと企んでいたのです」
暗殺!?
カイト様は少し目を見開いた。さすがの月の貴公子様も驚いたんだろう。
「エミカはそんな事するはずがないだろう。はったりか?」
やばい。カイト様がお怒り。
でも魔力・剣の能力共に高いカイト様にそんなはったりかますだろうか。
いや、しない。僕だったら確実に。
死にたくないから。
「いいえ、事実です。彼女の私室から、毒薬が発見されましたので」
エミカと毒薬。全く結びつかない。
嘘なのか、と思ったが、高官殿の後ろにいた護衛騎士が袋に入った液体状の薬を見せた。
暗殺などに使われる事の多い、毒薬だ。
「殿下暗殺未遂の疑いで、追放命令を出しました。国王陛下とカルバート殿下のご命令でもあります。監視もつけています。エミカはもう居ませんよ。殿下には新たな侍女をつけるのでご安心を。もちろん、信用出来る者ですよ」
高官殿はそれだけ言って、踵を返して歩いて行った。
カイト様は高官殿の宣言を聞いてから、フリーズしてしまっている。
「カイト様? 大丈夫ですか?」
僕が話しかけても動かない。
すると、右手がぴくりと動いて、左腰に帯刀している剣に向かった。
止めなくてはいけないやつだ、これ。
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