上 下
23 / 32
第2章 魔法学園の入学式

測定、その後 ( 2 )

しおりを挟む

「それでは、失礼しますわ」

 サラちゃんが男の人の手を退けて、階段を降りようと歩を進め――

「この魔性が!」

 男の人がそう叫んでサラちゃんの背中を突き飛ばした。
 銀色の髪が広がり、サラちゃんの身体が宙に浮く。

「きゃぁっ!」
「危ない!!」

 私は咄嗟に階段へ躍り出る。
 考えている時間なんてない。この高さから落ちたら酷い怪我をするだろう。打ちどころが悪かったりしたら命も危ないかもしれない。
 私に出来ることだけを考えるんだ。
 階段から落ちる人を助けるなんて、私には、出来ない。でもそれは、前世の事だ。
 この世界には、魔法というものが存在しているんだ!

「『風よ、サラちゃんを優しく受け止めて!』」

 ふわりと優しい風が私の頬を撫でたような気がした。
 落ちていくサラちゃんの身体が、まるでクッションがそこにあるかの様に受け止められる。

「大丈夫ですか!?」

 サラちゃんに駆け寄り、彼女に怪我がないか確認する。
 どこにも傷は無いように見える。良かった。
 安堵の息をついている私を、サラちゃんがじっと見つめる。

「どうかしましたか?」
「――格好良い」

 サラちゃんが瞳をうるませながら私を見ている。
 んー? どうしたのかな、サラちゃん。

「ありがとうございます! 貴女は私の命の恩人ですわ!」

 サラちゃんが私の手をグッと握り締め、そう言う。
 なんだか勢いがすごい。若干引いてしまったではないか。

「い、いえ。人を助けるのは当たり前なので」

 そう言ってニコリと笑うと、サラちゃんは何故か驚いたような顔をした。
 しかし直ぐに顔を引き締めると、サラちゃんは私の後ろ――サラちゃんを突き飛ばした男の人を睨んだ。
 
「これは立派な犯罪ですわ。どう説明するつもりですの?」

 男の人は何度か視線をさ迷わせ、そして踵を返して逃げて行ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。

紅月
恋愛
「なに此処、18禁乙女ゲームじゃない」 と前世を思い出したけど、モブだから気楽に好きな事しようって思ってたのに……。 攻略対象から逆ハーフラグを折ってくれと頼まれたので頑張りますが、なんか忙しいんですけど。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!

めーめー
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。 だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。 「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」 そこから彼女は義理の弟、王太子、公爵令息、伯爵令息、執事に出会い彼女は彼らに愛されていく。 作者のめーめーです! この作品は私の初めての小説なのでおかしいところがあると思いますが優しい目で見ていただけると嬉しいです! 投稿は2日に1回23時投稿で行きたいと思います!!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

第三王子のお守り騎士団

しろっくま
恋愛
「ニコル、目が覚めたらあなたはニコラスよ……」 な、なんですって? 魔法使いなお母様にもしかしたら性転換させられたかも?! 慌てて夜着の中を覗き込むと、胸が…… 「ないーーーーっ!」 更なる奥には、衝撃のブツがついているのか、いないのか? 左遷させられた弟に代わって第六騎士団、通称『第三王子のお守り騎士団』に勤務することになったニコルが繰り広げるドタバタコメディの始まり始まり。 この作品は『なろう』さんに掲載しているものを加筆・修正したものになっています。

美形王子様が私を離してくれません!?虐げられた伯爵令嬢が前世の知識を使ってみんなを幸せにしようとしたら、溺愛の沼に嵌りました

葵 遥菜
恋愛
道端で急に前世を思い出した私はアイリーン・グレン。 前世は両親を亡くして児童養護施設で育った。だから、今世はたとえ伯爵家の本邸から距離のある「離れ」に住んでいても、両親が揃っていて、綺麗なお姉様もいてとっても幸せ! だけど……そのぬりかべ、もとい厚化粧はなんですか? せっかくの美貌が台無しです。前世美容部員の名にかけて、そのぬりかべ、破壊させていただきます! 「女の子たちが幸せに笑ってくれるのが私の一番の幸せなの!」 ーーすると、家族が円満になっちゃった!? 美形王子様が迫ってきた!?  私はただ、この世界のすべての女性を幸せにしたかっただけなのにーー! ※約六万字で完結するので、長編というより中編です。 ※他サイトにも投稿しています。

処理中です...