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前途遼遠
LV255 救世主ヤマダ
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フミヤは合格した四人の残し、外にいた冒険者達に解散するように伝えた。冒険者達は散り散りに去って行く。ジンとモコは飽きたのか、明日の仕事のためなのかは分からないがいつの間にかいなくなっていた。
頃合いを見計らい、フミヤは四人が待つ外へと出て行く。
「次が最後という事で……」
ヘーラーは四人の前に姿を現す。
「皆様、お疲れさまでした。私は『至上の女神』ヘーラーです」
精神体のヘーラーは皆に話かける。
「このたび、救世主フミヤがその任を辞退したいと要望があり皆様に集まって頂きました。本当に皆様、救世主になる覚悟はございますか?」
「はいっス!」
「僕でいいならお願いします」
「今更、引けぬだろ!」
「お金持ちになれるなら」
ヘーラーは小さく頷いた。
「それでは今から私に一人ずつ手の平をを差し出してください。恩恵を渡します」
「それだけでいいんっスか?」
「はい、それだけです」
「簡単になれるもんだな」
「簡単?」
イレイザの言葉にヘーラーは反応する。
「簡単ではありませんよ。恩恵を与えるのは一瞬です。但し、恩恵を受け入れる器があるかどうか……」
「資質がなければどうなるんですか?」
「良くて精神崩壊により半死人となり、最悪死に至ります」
一瞬にして周りの空気が凍り付く。
「それでも受けますか?」
皆が互いの出方を窺っている中で、いち早く名乗りを上げたのはこの男だった。
「やるっス! 俺、魔物だし運は良い方だと思うっス。何度か死にかけて生きてるし……」
ヤマダ、運の悪さ 6110
「よろしい。では、行きますよ」
「はいっス」
ヤマダは手の平をヘーラーに差し出した。ヘーラーはヤマダの手の平に重ね合わすようにそっと手を乗せる。
*ヘーラーの手は輝き出した。
ヘーラーの手から出た金色の光は、ヤマダの手を伝いさらに全身へと広がっていく。
「俺は辞めとくぜ。割に合わん! 勇者の付き添いもまあまあ有名になれるし、報酬だってたんまり貰えるしな」
「イレイザは腰抜けだな」
「お前は黙ってろ! だいいちそのような代償があるとは聞いてない!」
「チッ」
「チッって……そもそもお前のわがままのせいだろが!」
*フミヤとイレイザはさらに仲が悪くなった。
「僕はやってみます!」
サイトウは意を決し、おそるおそるヘーラーの前に手を差し出す。
「よろしい」
ヘーラーはヤマダと同様にサイトウの手の平に手を重ね合わせた。サイトウの体もまた金色に光りだす。
「あれ?」
ヤマダの全身を包み込むよう放っていた金色の光はふいに消える。
「終わったんっスか? なんも変わっていないようなんでけど……」
「うああああああぁ」
突然、サイトウは悲鳴を上げた。
サイトウを包んでいた光もふいに消えた。その後に襲ってきたのは激しい右腕の痛み。そして、右手から肩にかけてまでが、普段の三倍の大きさに膨れ上がっていた。
「駄目ですわ。サイトウさんもう一度、私に手を出して!」
ヘーラーは急いでサイトウと手を重ね合わせた。すると、サイトウの右腕部分だけが再度光り、その光は手を伝ってヘーラーへと戻されていく。
「ふぅー」
光の返還と共に右腕が元の大きさに戻り、サイトウは安堵のため息をつく。
「恩恵が順応せず右腕だけに留まってしまったのですね。このまま放置していればおそらく右腕は腐り落ちていたでしょう。私一人の恩恵でこれならば、救世主としては向いてないでしょう」
「そうですか。残念です」
サイトウは少し落ち込んだ様子であった。
「サイトウ、気にしないでいいぞ。仕方ないさ」
「……。お、俺も辞退します」
イッパンはサイトウを見て怖くなったのだ。
「だろうな――って、なんで俺だけがあんな危険なモノを説明なしで受けさせられてんだよ!」
「あなたしかいなかったからですよ。でも、あなたと神の相性はよほど良かったのでしょうね」
(相性って……俺、神嫌いなんだけど)
「それ、私には丸聞こえですからね」
「おいおい、勝手に人のココロを読むなよ」
「聞こえるのです! あぁ、私もあなたが嫌いです」
(コイツもだんだん口が悪くなってきたな)
「だから、聞こえてるって!」
「知ってるよ!」
痴話げんかのようにも見えるフミヤとヘーラーの言い争い。そこへ水を差すようにヤマダが二人に話しかける。
「あの……」
「ん?」
「俺、なんともないっスけど……終わりっすか?」
「もしや、適合者……まさかゴブリンに適合者がいるとは」
ヘーラーは驚きを隠せないでいた。
「おぉーでかしたぞ、ヤマダ!」
「やりましたわ」
フミヤとヘーラーは小躍りして喜んだ。
「お楽しみ中悪いが、俺達は帰るからな」
ヤマダとサイトウを残し、イレイザはイッパンを連れ不機嫌そうに去って行く。
「それでは、私も失礼しようかしら? 後日、改めて違う神達も連れて来ますね」
「うふふ、これで救世主とおさらばだ」
「ええ、そうですね」
「夜中まで頑張った甲斐があったよ」
「ではまた後日……」
ヘーラーは消え去った。
「いやー。まさか、ヤマダが適合者だったとはねぇ」
ヘーラーを見送ったフミヤはヤマダの方を振り向く。
「ん?」
フミヤは目をごしごしと拭う。
「気のせいかな」
「どうしたんっスか?」
すると、サイトウも目をぱちくりさせている。
「ヤマダさん、なんだか頭大きくないですか?」
「俺もそう見えるんだけど……」
「そう言われればなんだか頭が重たいんですけど」
「――って気のせいじゃねぇだろ。その頭!」
どう見てもヤマダの頭が元の三倍以上に大きくなっている。
「これ、死ぬ奴じゃね?」
「えええええ、マジっすか? フミヤさんなんとかしてくださいよ」
「わかんねーよ! おーい! ヘーラー、戻ってこーーい」
ヤマダ、救世主不適合。これによりフミヤの救世主続投が確定した。
なんども言うが、ヤマダ、運の悪さ 6110。
頃合いを見計らい、フミヤは四人が待つ外へと出て行く。
「次が最後という事で……」
ヘーラーは四人の前に姿を現す。
「皆様、お疲れさまでした。私は『至上の女神』ヘーラーです」
精神体のヘーラーは皆に話かける。
「このたび、救世主フミヤがその任を辞退したいと要望があり皆様に集まって頂きました。本当に皆様、救世主になる覚悟はございますか?」
「はいっス!」
「僕でいいならお願いします」
「今更、引けぬだろ!」
「お金持ちになれるなら」
ヘーラーは小さく頷いた。
「それでは今から私に一人ずつ手の平をを差し出してください。恩恵を渡します」
「それだけでいいんっスか?」
「はい、それだけです」
「簡単になれるもんだな」
「簡単?」
イレイザの言葉にヘーラーは反応する。
「簡単ではありませんよ。恩恵を与えるのは一瞬です。但し、恩恵を受け入れる器があるかどうか……」
「資質がなければどうなるんですか?」
「良くて精神崩壊により半死人となり、最悪死に至ります」
一瞬にして周りの空気が凍り付く。
「それでも受けますか?」
皆が互いの出方を窺っている中で、いち早く名乗りを上げたのはこの男だった。
「やるっス! 俺、魔物だし運は良い方だと思うっス。何度か死にかけて生きてるし……」
ヤマダ、運の悪さ 6110
「よろしい。では、行きますよ」
「はいっス」
ヤマダは手の平をヘーラーに差し出した。ヘーラーはヤマダの手の平に重ね合わすようにそっと手を乗せる。
*ヘーラーの手は輝き出した。
ヘーラーの手から出た金色の光は、ヤマダの手を伝いさらに全身へと広がっていく。
「俺は辞めとくぜ。割に合わん! 勇者の付き添いもまあまあ有名になれるし、報酬だってたんまり貰えるしな」
「イレイザは腰抜けだな」
「お前は黙ってろ! だいいちそのような代償があるとは聞いてない!」
「チッ」
「チッって……そもそもお前のわがままのせいだろが!」
*フミヤとイレイザはさらに仲が悪くなった。
「僕はやってみます!」
サイトウは意を決し、おそるおそるヘーラーの前に手を差し出す。
「よろしい」
ヘーラーはヤマダと同様にサイトウの手の平に手を重ね合わせた。サイトウの体もまた金色に光りだす。
「あれ?」
ヤマダの全身を包み込むよう放っていた金色の光はふいに消える。
「終わったんっスか? なんも変わっていないようなんでけど……」
「うああああああぁ」
突然、サイトウは悲鳴を上げた。
サイトウを包んでいた光もふいに消えた。その後に襲ってきたのは激しい右腕の痛み。そして、右手から肩にかけてまでが、普段の三倍の大きさに膨れ上がっていた。
「駄目ですわ。サイトウさんもう一度、私に手を出して!」
ヘーラーは急いでサイトウと手を重ね合わせた。すると、サイトウの右腕部分だけが再度光り、その光は手を伝ってヘーラーへと戻されていく。
「ふぅー」
光の返還と共に右腕が元の大きさに戻り、サイトウは安堵のため息をつく。
「恩恵が順応せず右腕だけに留まってしまったのですね。このまま放置していればおそらく右腕は腐り落ちていたでしょう。私一人の恩恵でこれならば、救世主としては向いてないでしょう」
「そうですか。残念です」
サイトウは少し落ち込んだ様子であった。
「サイトウ、気にしないでいいぞ。仕方ないさ」
「……。お、俺も辞退します」
イッパンはサイトウを見て怖くなったのだ。
「だろうな――って、なんで俺だけがあんな危険なモノを説明なしで受けさせられてんだよ!」
「あなたしかいなかったからですよ。でも、あなたと神の相性はよほど良かったのでしょうね」
(相性って……俺、神嫌いなんだけど)
「それ、私には丸聞こえですからね」
「おいおい、勝手に人のココロを読むなよ」
「聞こえるのです! あぁ、私もあなたが嫌いです」
(コイツもだんだん口が悪くなってきたな)
「だから、聞こえてるって!」
「知ってるよ!」
痴話げんかのようにも見えるフミヤとヘーラーの言い争い。そこへ水を差すようにヤマダが二人に話しかける。
「あの……」
「ん?」
「俺、なんともないっスけど……終わりっすか?」
「もしや、適合者……まさかゴブリンに適合者がいるとは」
ヘーラーは驚きを隠せないでいた。
「おぉーでかしたぞ、ヤマダ!」
「やりましたわ」
フミヤとヘーラーは小躍りして喜んだ。
「お楽しみ中悪いが、俺達は帰るからな」
ヤマダとサイトウを残し、イレイザはイッパンを連れ不機嫌そうに去って行く。
「それでは、私も失礼しようかしら? 後日、改めて違う神達も連れて来ますね」
「うふふ、これで救世主とおさらばだ」
「ええ、そうですね」
「夜中まで頑張った甲斐があったよ」
「ではまた後日……」
ヘーラーは消え去った。
「いやー。まさか、ヤマダが適合者だったとはねぇ」
ヘーラーを見送ったフミヤはヤマダの方を振り向く。
「ん?」
フミヤは目をごしごしと拭う。
「気のせいかな」
「どうしたんっスか?」
すると、サイトウも目をぱちくりさせている。
「ヤマダさん、なんだか頭大きくないですか?」
「俺もそう見えるんだけど……」
「そう言われればなんだか頭が重たいんですけど」
「――って気のせいじゃねぇだろ。その頭!」
どう見てもヤマダの頭が元の三倍以上に大きくなっている。
「これ、死ぬ奴じゃね?」
「えええええ、マジっすか? フミヤさんなんとかしてくださいよ」
「わかんねーよ! おーい! ヘーラー、戻ってこーーい」
ヤマダ、救世主不適合。これによりフミヤの救世主続投が確定した。
なんども言うが、ヤマダ、運の悪さ 6110。
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