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亡者の大森林へ向かえ

LV134 ヘーラー降臨

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約5億イエンもの大金を手にしたフミヤとイルイルは、
大袋を担ぎカジノを出た。

「これ捕まらないよな?悪いの神だもんな」
フミヤはイルイルに相談した。
「うん、聞かなかった事にしよう」
イルイルは笑顔で答えた。
「お前、図太い性格してるよな」
フミヤの顔は少し引きつっていた。

フミヤとイルイルの後ろを完全敗北した神二人がトボトボとついて行く。
「ポセイドン様、絶対ヘーラー様に怒られますよ」
「うむ、まずい事になった・・・な」

勝手に人間界の通貨を作り、世の秩序を乱した事に
今更気付いた二人は悩んでいた。

「あの後ろの二人はいつまでついて来るんだ?」
「うーん、お金返して欲しいんじゃない?」

フミヤがアポローンに声をかける。
「おーい、このお金返してやろうか?」

「神の言葉に二言はない。それはお前達の物だ。
それよりも、この人間界のルールを破り秩序を乱したうえ、
何も成果を果たしていない不甲斐なさに我々は嘆いているのだ」
アポローンはフミヤの申し出をキッパリと断る。

・・・神がギャンブルは良いのか?
フミヤはふと思ったが口に出すのは止《や》めた。

続けてポセイドンは答える。
「ただ、ヘーラーという私の姉が少々怖くてな。
今回の事により我々にどんな処罰が下されるか・・・
まあ、それも仕方ない・・・か」


ヘーラーとは至上神ゼウスの正妻である。
ポセイドンの姉にして気が強く腕っぷしも強いと言われる女神で
嫉妬深く、ゼウスに対しての執着心が強い。
アポローンは、ゼウスと愛人の子供である。
それを知るヘーラーはゼウスへの嫉妬心から、事あるごとに難癖つけては
愛人の子供であるアポローンにひどい罰を下していた。


ドドオーーン

当然、天地が避けるような轟音と共に地面に稲妻が激しく落ち、
一人の女性が空より降り立つ。

「ヘーラー」
「ヘーラー様」

高貴な出で立ちに刺すような冷たい目をした女性は、
フミヤと神達を見渡す。

「あなたがフミヤね・・・噂は聞いてるわ」

「また神か。最近コイツ等、どんどん普通に現れるな」
フミヤが神々のオンパレードにため息をつく。

ドゴン!

フミヤの体が地面にめり込む。
「ギャ」
思わず悲鳴を上げるフミヤ。

「あなた神に失礼よ。少し黙ってて」
へーラーは地面から首だけ出したフミヤを見下ろすように
そう言うと、ポセイドンとアポローンの方へ振り向く。

「あなた達にはお仕置きが必要ね。神の称号を剥奪でもしようかしら」

*ポセイドンとアポローンは怯えている。

情報収集や監視能力に長けた女神であるヘーラーは、
神達が人間界で過ごす様子を全て監視していたのである。

「ああ、姉君よ。どうか静まっておくれ」
ポセイドンがヘーラーへ必死に許しを請う。

「どうかお許しを・・・」
アポローンも手を合わせ懇願する。

「あなた達は救世主に恩恵を与えるという使命を忘れ、
遊び呆けた挙句人間界に害を及ぼした。その罪は大きい」

「言ってる事はまともね」
イルイルはボソっと呟いた。


「狂乱の戦神」
スキルを使ったフミヤが勢いよく地面から飛び出し、
ヘーラーに殴りかかった。
「いきなり地面に埋めやがって!何様だ、このやろう」

「馬鹿、止めなさいフミヤ!」
イルイルが止めに入るが、間に合わない。
フミヤがヘーラーに全力の一撃を放つ。

だがしかし、ヘーラーはその一撃を何食わぬ顔で受け取めた。

これにはさすがのイルイルも驚く。
「魔人を倒す程のフミヤの攻撃を、左手一本で防ぐなんて・・・」

ヘーラーはそのまま腕を掴み、フミヤを地面に叩きつける。
「ぎゃっ」
またも悲鳴を声を上げるフミヤ。

「がっかりね。救世主ってこの程度なの?」

「痛《い》てて、それよりお前神だろ。
人が見ている町中で、こんなに暴れて大丈夫なのかよ」
と、フミヤは言う。

「それなら心配ありませんわ。私は情報の神、
人々が私達の事を認識できないように操作すればいいだけの話。
現に町の皆さんは何事もなかったかのように過ごされているでしょ?」

「なるほどね」
全てにおいて凌駕するヘーラーに成すすべがないフミヤ。

そして怯えて役に立たない男神二人。

この者達の裁きはいか程に・・・





その頃、アプロディーテーとヘーバイストスは
ひっそりと二人でデートを楽しんでいた。
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