上 下
36 / 314
サイテハの洞窟へ

LV35 フミヤのスキル

しおりを挟む
 遠征部隊はクオ平原でなかなか進む事ができないでいた。――というのも、魔物を討伐し馬車に乗るも、息をつく間もなく新しい魔物が襲ってくるのだ。

「珍しい。確かにクオ平原には多くの魔物がいるが、こんなに集中して襲ってくるとは聞いた事がない」
 ドレンが、そんな話をしている矢先にも……。

「敵襲ー、敵襲ー、またも魔物です!」
 前線の兵士が各馬車な間を駆け抜ける。

「馬車乗るだけ疲れない?」と、フミヤがふと愚痴をこぼすとモコも続き「面倒くさいんで、もう歩きましょうよ」と、愚痴をこぼす。

「やれやれ、今度はゴブリンかよ」
 
 ゴブリンとは狂暴な小鬼族である。身長は1mほどで知性があり、筋肉質な体格をしている。着衣は腰蓑《こしみの》のみ、棍棒や石斧など自身で作った装備で襲ってくる。一匹一匹の戦力は高くないが、群れで襲ってくる習性がある。

 どこから集まったのか? 辺り一帯にゴブリンが現れ、どんどんと集まっていく。その数は驚くほど増え、遠征部隊100人を凌ぐゴブリンの群れが、馬車の周りを円を描くように取り囲む。

「指揮者がいるぞ」
 腕に覚えのある冒険者達は瞬時に察した。

 *フミヤは鼻をほじっている。

 *モコはアクビをしている。

 *ドレンは馬車に隠れている。

 フミヤはドレンを呼ぶが、ドレンは馬車に引き籠り出てこない。

「俺は、戦闘は得意じゃないんだよ。洞窟行ったら頑張るから勘弁して」

「仕方ないヤツだなー」

 何かの合図で一斉に襲い掛かってくるゴブリンの群れ。

「血がたぎる」
 ジンは今までより骨のありそうな魔物の軍勢にテンションが上がった。
 
 ジンがは馬車から大きなハンマーを二本取り出し両手に持つ。かなりの重さであろう巨大ハンマーをいとも簡単に操り、ゴブリン達をなぎ倒していく。

(オーナーってこんなに強かったのか)

 ジンに見とれているフミヤの背後からゴブリンが棍棒で襲い掛かる。

 ゴン!

「いて」

 *フミヤは5のダメージをうけた。
 *フミヤはゴブリンに気付いた。

 *フミヤの攻撃。

 フミヤはゴブリンに殴りかかるも、紙一重で躱され拳は空を切る。繰り出した拳圧に畏怖したにゴブリンは、逃げ出そうと後方へ走り出す。

「逃げんな、コノヤロー‼」

 フミヤは咄嗟に足元に落ちている石を拾って投げつけた。その石が見事にゴブリンの頭部に当たりゴブリンは倒れた。

 *フミヤはゴブリンを倒した。

「ん?」

 フミヤはまたも石を拾い、遠くのゴブリン目掛けて投げつけた。すると、またも石は頭部に当たり、ゴブリンは倒れる。

「おお」
 フミヤは次々と石を拾ってはゴブリンに投げつけた。

 投げた石は全て正確に頭へと命中し、ゴブリンを倒れていく。これは、狩猟スキルLV10(MAX)の効果によるものだった。

 フミヤは今まで戦う事と無縁であったため、自分のスキルの使用はおろかスキルの確認方法すら知らなかった。まして、自分にそんなスキルがあるなど夢にも思っていない。

「フフフ、俺は天に愛されている」
 フミヤは石による攻撃がただのラッキーだと思っている。

「あいつ、なんだか普通に戦えてるじゃないか」
 フミヤの料理をしている姿しか知らないジンは、意外と活躍しているフミヤに少し驚いている様子だった。

 大量の数で他の生物を圧倒するゴブリンであるが、100人の手練れ冒険者と兵士に大苦戦。うまく機能する遠征部隊にゴブリンの群れは確実に数を減らしていった。

だがしかし、ゴブリンの数が残り20匹前後になった頃、馬車のの両側から上位種、ゴブリンロード六匹が姿を現す。――と同時に、前方の兵士達にも騒《ざわ》めきが起こっていた。

 最前列の方で魔人が現れたのだ。

「なかなかやるじゃないか人間ども。俺が直々に相手をしてやろう」

 前方に魔人、左右にゴブリンロードが三匹ずつ、遠征部隊に緊張が走る。

「まずいな」
 ジンは呟いた。

―――――――――――――――――――――――――
ゴブリンロード ゴブリンの進化系モンスター。体格は2m前後、知性がゴブリンよりも優れ、並みの人間であれば素手で骨を粉々にできる程の腕力を持つ。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

元悪役令嬢はオンボロ修道院で余生を過ごす

こうじ
ファンタジー
両親から妹に婚約者を譲れと言われたレスナー・ティアント。彼女は勝手な両親や裏切った婚約者、寝取った妹に嫌気がさし自ら修道院に入る事にした。研修期間を経て彼女は修道院に入る事になったのだが彼女が送られたのは廃墟寸前の修道院でしかも修道女はレスナー一人のみ。しかし、彼女にとっては好都合だった。『誰にも邪魔されずに好きな事が出来る!これって恵まれているんじゃ?』公爵令嬢から修道女になったレスナーののんびり修道院ライフが始まる!

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」 学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。 家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。 しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。 これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。 「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」 王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。 どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。 こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。 一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。 なろう・カクヨムにも投稿

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

処理中です...