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再びトレームグレイグ

LV25 モンスター襲来 前編

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 とある次元の狭間。

 至上神ゼウスとその息子である狂乱のアレースはトーレムグレイグの様子を見ながら深刻な話をしていた。

「魔界のゲートが開く。かなり街から近いぞ」

「なんですと! そうなれば町は多くの魔物に襲われ破壊し尽くされてしまいます」

「うむ……」

「しかし、父《とと》様、あそこには開花前の救世主がいるのでは?」

「う、ううむ……じゃが、今の救世主は普通の戦士以下の戦力にしかならん」

 魔界のゲートとは魔界と人間界の出入り口。魔物は自力で人間界に侵入する際には膨大な魔力を消費し、ゲートを強制的に作り出さないといけない。さらに、そのゲートを維持するには、大きな魔力を放出し続ける必要もある。ゲートの大きさは魔物の強さと数に比例している。ゆえに、強い魔物が数多く人間界に侵攻するには、それに見合う大きな魔力とゲートが必要となる。

 魔王は人間界侵出後、辺境の地に自分の城を構え一旦、ゲートを閉じた。魔王は今、静養期間である。魔王は配下を人間界に放ち侵攻を続けているが、自身は魔力切れにより静養する必要があった。

 今回のゲートはそれとは別物で、至極稀に起こる自然発生によるものだった。
 
 至上神ゼウスはアレースに言う。
「今回のゲートは以前と異なり、自然発生の物だ。そこまで強いモンスターは出てこれないであろう。しかし今、勇者ヴィオラ達は街を留守している」
 
 アレースは少し考えた後、ゼウスに進言する。
「父様、これは救世主に能力を授けるチャンスなのでは? 街が襲われどうしようもないとなると、我々に力を求めるはず。私が行って、説き伏せて来ましょう」

「なるほど」
 納得したゼウスは人間界にアレースを向かわせる事にする。

「では、アレース。おまえに任した」

「はい。父様、お任せください」


 場所は変わりトーレムグレイグ。

 空が赤黒く澱《よど》んだ風が吹いていた。ゲートの自然発生は初めてではない。この空の現象の数時間後に、ゲートは発生する。
 トーレムグレイグ地方では過去に数回だけ、ゲートが自然発生した事がある。自然発生したゲートは基本的に短時間で自然消滅する。そして、魔界より訪れた魔物達はいずれも、歴代の勇者達により駆除されてきた。

 街の人々は過去数回の経験により、これを理解していた。しかし、今回は勇者がいない。今までにない緊急事態に領主は街の男達を集める。それは【モンペロ】で働いているフミヤも例外ではなかった。

 男達が武器を取り、街の出入り口の北門と南門に集結して間もなく、辺り一帯に何とも言えない不快な音が鳴り響き、空に黒い大きな穴が開いていく。大きく開いた穴からは、大量のモンスター達が我こそはと飛び出してくる。

 王の命令によりトーレムグレイグ城からも、軍隊約1000人が街へ向かう。だがそれより早く、モンスター達は街めがけて一直線に突き進んでいる。

 *フミヤは祈った。

(頑張れ、みんな! こっちまでモンスターが来ませんように……)
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