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陽太と母親

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今の状況だけでも充分迷惑をかけているのに
さらに余計な心配をかけたくない。
そう思うとゆうこは 昨日の浴室での出来事を
斗真に告げられずにいた。

「よし、病院に行こう。」
無性に母親に会いたくなったゆうこは
毎日の日課である病院に行く事にした。
あれから病院にずっと通っていたおかげで
ゆうこはだいたい母親が来てから帰るまでの
時間がわかるようになっていた。

病院の部屋に入るとやはり母親はいつも通り
ベッド横の椅子に座り 優子の顔を眺めていた。
「お母さん、いつもごめんね。」
ゆうこは母親の肩にそっと手を置き、謝った。

コンコン

扉をノックし入って来る男性、陽太だ。
母親と陽太の初対面、陽太は母親を見ると
軽く会釈えしゃくし、
「本間 陽太です。ゆうこさんとは 2年前から
お付き合いさせてもらっています。」
と丁寧に挨拶をする。

「えっ、あなたが陽太さん?あっ、ごめんなさい。
ウチの子がなんかひどい事していたみたいで・・・。」

「ああ、斗真さんって方ですよね。お会いになられたんですね。」

「そう、私は前から 陽太さんの話は聞いていたのよ。
すごくいい人だって。なのにこの前、その斗真さんって人に
挨拶されてびっくりしたの 聞いていた名前が違うなって。」

「大丈夫ですよ、たぶん優子にも何か事情があるのかも
しれませんし・・・。目を覚ましたらちゃんと話聞こうかなって
思っています。」

「それにしてもこの子は一体何してるんだか・・・。
目を覚ましたら一回説教しないとね。」

「いえいえ、大丈夫ですよ 優子はそんな子じゃないんで!」

二人の会話から思わぬ情報が引き出される。
「・・・、どういう事?」
ゆうこは昨日の浴室の件に続き、
ますます訳が分からなくなっている。

母親は優子の話が嬉しいのか、複雑な心境を語りながらも
陽太と仲良く話をしていた。
「それよりお店は大丈夫?
まだ、自分のお店オープンして間もないんでしょ?」

「はい、今日はバイトの子もいますし、厨房ちゅうぼう
チーフに任せていますので。」

「そう、わざわざ優子のためにありがとう。」

「いえ、優子に会いたかったんで。」
そう言うと 優子の手をそっと陽太が握る。
陽太の優しさに絆されたゆうこは涙が止まらない。
・・・とその瞬間、ゆうこの身体は激しく引っ張られる。

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