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今朝の出来事
しおりを挟む「はあっ…あ……ん」
いつも一人で慰めるより、格段に気持ち良かった。
絶頂したあとの体のけだるさと反比例するように思考がクリアになってきた。
荒い息を整え、濡れた下着から手を退けた。たっぷり湿った指先を拭こうとタオルに手を伸ばすと、ぐっと手首を持たれる。
「え?」
見上げると、獣のようにギラついた眼孔のグレンさんが正面にいた。吐く息も獣のように荒々しい。
「あ、え?グレンさん……?」
あーーーー!!うわーー!!やってしまった!
快楽に押し流されて、グレンさんの目の前で自慰行為をしちゃった。
恥ずかしさを通り越して、誰か私を燃やしてくださいと叫びたい。羞恥にただ赤くなる。惚けてだらしない顔を隠そうと押さえられていない左手で顔を覆う。
「なぜ?顔を隠すのだ?」
「お、見苦しものを御見せして申し訳なくて…」
「見苦しくなどない。女が慰めてるのを初めて見たが、とても妖艶で神秘的な儀式のようだった」
「え?グレンさんお世辞はいいわよ」
グレンさんの誉めすぎたと思う。自慰する儀式ってどんなものか聞いてみたい。
「………お世辞じゃない見てくれ」
グレンさんが指し示したのは、一度出したのに再び雄々しく立ち上がった下半身。私の口内に含まれ、ふやけた皮膚色の肉の棒は興奮のため、血管の走行がわかるほど硬く怒張していた。
明らかにグレンさんは私の痴態を見て欲情してる。
………嬉しい、私で興奮してくれて。
「マナツ様は、綺麗で……その、旨そうだ」
そう言いながら、グレンさんは掴んでいた私の手首を引き指先に舌を這わせた。熱く滑る舌が指の間をナメクジのように這う。自慰して濡れた指先を舐められ、ぞくんぞくんと皮膚が粟立つ。
「ひゃ、あっ。グレンさん汚いから止めて」
「はっ……汚くない……ちゅ、すごく…旨い」
リップ音をたてながら、グレンさんは私の指を丁寧に舐めて吸う。
なんとも言えない感覚が指先から広がっていく。
グレンさんが中指を舐め終らないうちに時間が来てしまった。
トントンと控えめなノックの音。
「マナツ様そろそろお時間です。竜神様とレインさんがお待ちかねです」
外からノコアちゃんの申し訳なさそうな声が聞こえた。
「グ、グレンさん、終わりだから」
そっとグレンさんの胸を押した。これ以上されたらまた、慰めたくなってしまう。
「残念だ、全ての指を舐めたかった」
グレンさんは名残惜しそうに私の指を離した。
◇◇◇
竜神様専用食堂に向かう、グレンさんが扉を開けるより前に中から扉が開いた。
中から出てきたのは、細い紺碧の瞳。シルバーアッシュの髪を後ろに撫で付け、長い襟足を一つに束ねた。無精髭の似合う青年だった。彼は神官兵の白銀の鎧を身につけていた。
「失礼しました」
彼は私とグレンさんを見ると頭を下げた。
「セナ……お前が来るなんて珍しいな?……まさかアヤノに問題が起きたのか?」
え?この人がセナさん?綾乃さんに奴隷宣言された人?まじまじと見つめてしまう。
「アヤノ様本人に問題は起きていません。ただ今日は、レイン様に早急に報告と相談がありまして、朝早くから押し掛けました」
「そうか御苦労様。俺も後でレインに確認する」
「はい!それでは離宮に戻ります」
踵を反そうとするセナさんに慌てて大声をかけた。
「待って!!綾乃さんは元気なのよね?」
私の剣幕に、セナさんは驚きの表情を浮かべた。
「……ご心配なく元気ですよ。私にギャフンと言わせるポーションを作ると息巻いてます」
「そう……良かった」
ギャフンって言う人は言ないと思うけど……言い方が綾乃さんらしくて安心する。
「……アヤノ様を気にかけてくれる人がいて、嬉しいです」セナさんは満足そうな笑みを浮かべ帰って行った。
食堂に入るとにこやかなレインさんが出迎えてくれた。竜神様は昨夜、夜泣きが多かったのでまだ乳母車で就寝中。
「レイン!そこでセナに会ったが、何の報告と相談だった?」
「……ポーション作りの相談を受けていました。アヤノ様特性ポーションで黒花病の進行を遅らせることが出来そうです」
「そうかそれは良かったな!アンローザ様も喜ぶな」
「綾乃さん頑張っているのね」
動機はセナさんに対する対抗意識だとしても、人の為に働く、前の綾乃さんからは考えられない進歩だわ。
「本当です。アヤノ様がここまで成果を上げてくださるなんて予想外ですよ」
レインさんも涼しい笑顔で毒を吐いた。
「レインお前……アヤノに厳しいよな?」
「そんなことありませんよ。それよりマナツ様。いつにも増してグレンの聖なる力に満ちていますね!その様子だと、今朝のお試しは大成功ですね」
自分の思惑通りにコトが運んでレインさんはとても上機嫌。
「レインさん……」
あなた、グレンさんが勘違いするように仕向けたでしょう?
非難を込めて睨んでもレインさんはどこ吹く風で、ニコニコ笑顔を崩さない。
「なぜ怒るのですか?グレンのお陰で、マナツ様のお髪は艶やか。目の隅もありませんし、お肌は瑞々しくハリも見られたいへんお綺麗ですよ」
「……レインさんが言うと褒めてるように聞こえないわよ」ふんっとレインさんから顔を反らした。
「どうしたマナツ様?何を怒っているんだ?」
グレンさんは不思議そうな顔。
グレンさんも怒っていいのよ!騙されたんだから!
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