上 下
44 / 87

今朝の出来事

しおりを挟む
 
「はあっ…あ……ん」  
  
 いつも一人で慰めるより、格段に気持ち良かった。 
 絶頂したあとの体のけだるさと反比例するように思考がクリアになってきた。 

 荒い息を整え、濡れた下着から手を退けた。たっぷり湿った指先を拭こうとタオルに手を伸ばすと、ぐっと手首を持たれる。 

「え?」  

 見上げると、獣のようにギラついた眼孔のグレンさんが正面にいた。吐く息も獣のように荒々しい。

「あ、え?グレンさん……?」 

 あーーーー!!うわーー!!やってしまった!
 
 快楽に押し流されて、グレンさんの目の前で自慰行為をしちゃった。 
 恥ずかしさを通り越して、誰か私を燃やしてくださいと叫びたい。羞恥にただ赤くなる。惚けてだらしない顔を隠そうと押さえられていない左手で顔を覆う。 
 
「なぜ?顔を隠すのだ?」 
 
「お、見苦しものを御見せして申し訳なくて…」 
 
「見苦しくなどない。女が慰めてるのを初めて見たが、とても妖艶で神秘的な儀式のようだった」  

「え?グレンさんお世辞はいいわよ」 
 グレンさんの誉めすぎたと思う。自慰する儀式ってどんなものか聞いてみたい。
  
「………お世辞じゃない見てくれ」 
 グレンさんが指し示したのは、一度出したのに再び雄々しく立ち上がった下半身。私の口内に含まれ、ふやけた皮膚色の肉の棒は興奮のため、血管の走行がわかるほど硬く怒張していた。
  
 明らかにグレンさんは私の痴態を見て欲情してる。 
  
 ………嬉しい、私で興奮してくれて。
 
「マナツ様は、綺麗で……その、旨そうだ」 
 そう言いながら、グレンさんは掴んでいた私の手首を引き指先に舌を這わせた。熱く滑る舌が指の間をナメクジのように這う。自慰して濡れた指先を舐められ、ぞくんぞくんと皮膚が粟立つ。 

「ひゃ、あっ。グレンさん汚いから止めて」 
「はっ……汚くない……ちゅ、すごく…旨い」 
 リップ音をたてながら、グレンさんは私の指を丁寧に舐めて吸う。 
 なんとも言えない感覚が指先から広がっていく。  
 グレンさんが中指を舐め終らないうちに時間が来てしまった。 
  
 トントンと控えめなノックの音。 
 
 「マナツ様そろそろお時間です。竜神様とレインさんがお待ちかねです」 
 外からノコアちゃんの申し訳なさそうな声が聞こえた。
  
「グ、グレンさん、終わりだから」 
 そっとグレンさんの胸を押した。これ以上されたらまた、慰めたくなってしまう。  
 
「残念だ、全ての指を舐めたかった」 
 グレンさんは名残惜しそうに私の指を離した。  
  
  

 
 ◇◇◇ 


 
 
 竜神様専用食堂に向かう、グレンさんが扉を開けるより前に中から扉が開いた。 

 中から出てきたのは、細い紺碧の瞳。シルバーアッシュの髪を後ろに撫で付け、長い襟足を一つに束ねた。無精髭の似合う青年だった。彼は神官兵の白銀の鎧を身につけていた。
 
「失礼しました」
 彼は私とグレンさんを見ると頭を下げた。 

「セナ……お前が来るなんて珍しいな?……まさかアヤノに問題が起きたのか?」 
 
 え?この人がセナさん?綾乃さんに奴隷宣言された人?まじまじと見つめてしまう。 

「アヤノ様本人に問題は起きていません。ただ今日は、レイン様に早急に報告と相談がありまして、朝早くから押し掛けました」 
 
「そうか御苦労様。俺も後でレインに確認する」 
 
「はい!それでは離宮に戻ります」 
 踵を反そうとするセナさんに慌てて大声をかけた。 

「待って!!綾乃さんは元気なのよね?」 
 私の剣幕に、セナさんは驚きの表情を浮かべた。 

「……ご心配なく元気ですよ。私にギャフンと言わせるポーションを作ると息巻いてます」 
 
「そう……良かった」  
 ギャフンって言う人は言ないと思うけど……言い方が綾乃さんらしくて安心する。
 
「……アヤノ様を気にかけてくれる人がいて、嬉しいです」セナさんは満足そうな笑みを浮かべ帰って行った。
 

 
  
  
 食堂に入るとにこやかなレインさんが出迎えてくれた。竜神様は昨夜、夜泣きが多かったのでまだ乳母車で就寝中。  

「レイン!そこでセナに会ったが、何の報告と相談だった?」 

「……ポーション作りのを受けていました。アヤノ様特性ポーションで黒花病の進行を遅らせることが出来そうです」 

「そうかそれは良かったな!アンローザ様も喜ぶな」 

「綾乃さん頑張っているのね」 
 動機はセナさんに対する対抗意識だとしても、人の為に働く、前の綾乃さんからは考えられない進歩だわ。 

「本当です。アヤノ様がここまで成果を上げてくださるなんて予想外ですよ」 
 レインさんも涼しい笑顔で毒を吐いた。 

「レインお前……アヤノに厳しいよな?」
 
「そんなことありませんよ。それよりマナツ様。いつにも増してグレンの聖なる力に満ちていますね!その様子だと、今朝のお試しは大成功ですね」 
 自分の思惑通りにコトが運んでレインさんはとても上機嫌。 

「レインさん……」 
 あなた、グレンさんが勘違いするように仕向けたでしょう? 
 非難を込めて睨んでもレインさんはどこ吹く風で、ニコニコ笑顔を崩さない。 
 

「なぜ怒るのですか?グレンのお陰で、マナツ様のお髪は艶やか。目の隅もありませんし、お肌は瑞々しくハリも見られたいへんお綺麗ですよ」 
 
「……レインさんが言うと褒めてるように聞こえないわよ」ふんっとレインさんから顔を反らした。 

「どうしたマナツ様?何を怒っているんだ?」 
 グレンさんは不思議そうな顔。 
  
 グレンさんも怒っていいのよ!騙されたんだから! 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【R-18】逃げた転生ヒロインは辺境伯に溺愛される

吉川一巳
恋愛
気が付いたら男性向けエロゲ『王宮淫虐物語~鬼畜王子の後宮ハーレム~』のヒロインに転生していた。このままでは山賊に輪姦された後に、主人公のハーレム皇太子の寵姫にされてしまう。自分に散々な未来が待っていることを知った男爵令嬢レスリーは、どうにかシナリオから逃げ出すことに成功する。しかし、逃げ出した先で次期辺境伯のお兄さんに捕まってしまい……、というお話。ヒーローは白い結婚ですがお話の中で一度別の女性と結婚しますのでご注意下さい。

スパダリ猟犬騎士は貧乏令嬢にデレ甘です!【R18/完全版】

鶴田きち
恋愛
★初恋のスパダリ年上騎士様に貧乏令嬢が溺愛される、ロマンチック・歳の差ラブストーリー♡ ★貧乏令嬢のシャーロットは、幼い頃からオリヴァーという騎士に恋をしている。猟犬騎士と呼ばれる彼は公爵で、イケメンで、さらに次期騎士団長として名高い。 ある日シャーロットは、ひょんなことから彼に逆プロポーズしてしまう。オリヴァーはそれを受け入れ、二人は電撃婚約することになる。婚約者となった彼は、シャーロットに甘々で――?! ★R18シーンは第二章の後半からです。その描写がある回はアスタリスク(*)がつきます ★ムーンライトノベルズ様では第二章まで公開中。(旧タイトル『初恋の猟犬騎士様にずっと片想いしていた貧乏令嬢が、逆プロポーズして電撃婚約し、溺愛される話。』) ★エブリスタ様では【エブリスタ版】を公開しています。 ★「面白そう」と思われた女神様は、毎日更新していきますので、ぜひ毎日読んで下さい! その際は、画面下の【お気に入り☆】ボタンをポチッとしておくと便利です。 いつも読んで下さる貴女が大好きです♡応援ありがとうございます!

溺愛の始まりは魔眼でした。騎士団事務員の貧乏令嬢、片想いの騎士団長と婚約?!

恋愛
 男爵令嬢ミナは実家が貧乏で騎士団の事務員と騎士団寮の炊事洗濯を掛け持ちして働いていた。ミナは騎士団長オレンに片想いしている。バレないようにしつつ長年真面目に働きオレンの信頼も得、休憩のお茶まで一緒にするようになった。  ある日、謎の香料を口にしてミナは魔法が宿る眼、魔眼に目覚める。魔眼のスキルは、筋肉のステータスが見え、良い筋肉が目の前にあると相手の服が破けてしまうものだった。ミナは無類の筋肉好きで、筋肉が近くで見られる騎士団は彼女にとっては天職だ。魔眼のせいでクビにされるわけにはいかない。なのにオレンの服をびりびりに破いてしまい魔眼のスキルを話さなければいけない状況になった。  全てを話すと、オレンはミナと協力して魔眼を治そうと提案する。対処法で筋肉を見たり触ったりすることから始まった。ミナが長い間封印していた絵描きの趣味も魔眼対策で復活し、よりオレンとの時間が増えていく。片想いがバレないようにするも何故か魔眼がバレてからオレンが好意的で距離も近くなり甘やかされてばかりでミナは戸惑う。別の日には我慢しすぎて自分の服を魔眼で破り真っ裸になった所をオレンに見られ彼は責任を取るとまで言いだして?! ※結構ふざけたラブコメです。 恋愛が苦手な女性シリーズ、前作と同じ世界線で描かれた2作品目です(続きものではなく単品で読めます)。今回は無自覚系恋愛苦手女性。 ヒロインによる一人称視点。全56話、一話あたり概ね1000~2000字程度で公開。 前々作「訳あり女装夫は契約結婚した副業男装妻の推し」前作「身体強化魔法で拳交える外交令嬢の拗らせ恋愛~隣国の悪役令嬢を妻にと連れてきた王子に本来の婚約者がいないとでも?~」と同じ時代・世界です。 ※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

【R18】制裁!淫紋!?~嵌められた とりまき令嬢、助けを求めたのは隠し攻略対象(※王弟)でした~

茅野ガク
恋愛
悪役令嬢のとりまきに転生したけどこっそりヒロインを助けていたら、それがバレて制裁のために淫紋を刻まれてしまった伯爵令嬢エレナ。 逃げ出した先で出会ったのは隠しキャラの王弟で――?! ☆他サイトにも投稿しています

美貌の騎士団長は逃げ出した妻を甘い執愛で絡め取る

束原ミヤコ
恋愛
旧題:夫の邪魔になりたくないと家から逃げたら連れ戻されてひたすら愛されるようになりました ラティス・オルゲンシュタットは、王国の七番目の姫である。 幻獣種の血が流れている幻獣人である、王国騎士団団長シアン・ウェルゼリアに、王を守った褒章として十五で嫁ぎ、三年。 シアンは隣国との戦争に出かけてしまい、嫁いでから話すこともなければ初夜もまだだった。 そんなある日、シアンの恋人という女性があらわれる。 ラティスが邪魔で、シアンは家に戻らない。シアンはずっとその女性の家にいるらしい。 そう告げられて、ラティスは家を出ることにした。 邪魔なのなら、いなくなろうと思った。 そんなラティスを追いかけ捕まえて、シアンは家に連れ戻す。 そして、二度と逃げないようにと、監禁して調教をはじめた。 無知な姫を全力で可愛がる差別種半人外の騎士団長の話。

処理中です...