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ポーションと奴隷

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「慌ただしい1日でしたね?」 
「本当にそうですね」 
 
  1日の終わりの添い寝タイム。本来小春さんの順番なのだけど、昼間吐いてそのあと腹痛下痢になってしまった竜神様はぐずぐず。ぽんぽこりんのお腹を擦る。早く下痢が治りますよう思いを込めて。
 竜神様は調子か悪いせいか、余計私から離れなくなってしまった。竜神様が小春さんになつかず、恨めしそうな視線が怖かった。 
 
 私の膝を枕にして竜神様は寝息をたてている。くたりと下がる耳が可愛い。毛皮はカシミアのような極上の手触りに、ずっと撫でていたくなる。 
 ブランドさんの触りたい気持ちが痛いほどわかるけど……どんだけ食べさせたのよあの人!説教の時に正座もさせるんだったわ! 
  
 グレンさんは、昨晩の添い寝と今日の魔力譲渡をしてくれた。立て続けだと魔力が枯渇するので、今夜の添い寝係りはレインさん。 
 朝の魔力譲渡もレインさんがしてくれるとのこと。少しグレンさんと気まずいので、正直ほっとしている。 

「今日はレインさんも疲れたでしょう?私は少しだけ編み物するから、先に休んでね」 
 後ろから私を抱き締めるレインさんに声を掛けた。レインさんの添い寝スタイルはいつも背後からの抱き締めである。 
 最初は恥ずかしいのと、貞操の危機を警戒した。
 でも、レインさんは首の後ろの匂いを嗅ぐだけで何もしてこないので、いつの間にか慣れてしまった。 
 今では背中越しに伝わるレインさんの温もりが心地よくなっている。ちなみにグレンさんの添い寝スタイルは、真ん中に竜神様を挟んでの川の字である。 
 
「大丈夫ですよ。ポーションを飲みましたから……マナツ様は、また編み物ですか?根を入れすぎて倒れないようにして下さいね」
 レインさんは首の後ろの匂いを嗅いだ。鼻息がかかりこそばい、身を捩る。 

「ん、大丈夫よ。それよりポーション私も飲んだら元気になるかしら?新しい腹巻き完成させたいのよ」 
 昨晩、グレンさんも飲んでいたことを思い出した。そんなに高効果なら、私も是非とも飲みたい。隈なくなるかしら?
 
「マナツ様、このポーションはアヤノ様が作ったものです。アヤノ様と聖なる力が異なるので、残念ですがマナツ様には効果は有りませんよ」
 
「そう……効果が出ないのは残念だけど、アヤノさんポーション作り頑張っているのね!」 
 久しぶりに聞く同郷の近況に嬉しくなる。アヤノさんが竜神様にしていた行為は許せない。でも彼女に不幸になって欲しいわけじゃない。 
 
人は変われる…やり直せるとそう思いたい。 
そして、私も変われたら……。 
 
   
「初期のポーションは生ゴミ以下でしたが、最近は一心不乱にポーション作りに励み、精度の高い上級ポーションを作れるまでに成長しましたよ」 

 生ゴミ以下……って、レインさんは穏やかそうに見えて以外に辛辣よね? 

「ふふ……今は、神官兵隊長セナの鼻を証し奴隷にしたい一心で、黒花病治療薬を開発に勤しんでいるそうです」 

「ど、奴隷?」 
不穏な単語にびびる。 
 
「アヤノさんやっぱり変わってないの?」 
 
「そうですね…向こう見ずで独り善がり、他人の心情を重んじれない性格は余り変わっていませんよ」 

「……だ、大丈夫なの?」 

「大丈夫でしょう。今までしなかった身の回りのことは自分で行い。散財もせず、物を欲しがらない。文句は多いですが、仕事に打ち込んでいますから……矯正しがいあるとセナが笑っていましたよ」 
 
 綾乃さんのきつい性格に物ともせず、矯正するという剛胆なセナさん。その人を奴隷にしたいと豪語する綾乃さん。 
 自分の監視係をわざわざ怒らすなんて、流石アヤノさんと言うべきか。 
 
「その、セナさんはアヤノさんに奴隷にしたいと言われてどんな反応したの?」 
  
 怒ったか、呆れたのか? 

「喜んでいましたよ」 

「え?」 

「初対面で熱烈な求婚プロポーズされたと大変興奮して、嫁にするなら厳しく鍛え治すと張り切っていました」 
 ニコニコと楽しそうなレインさん。面白い玩具を見つけた子供の顔。  

「……もしかして、奴隷にしたいって深い意味があったりする?」 

「そうですね。『鎖で縛っても一生自分の物にしたい。そばに居て欲しい。それほど深く愛していますっ』と、言う意味になります」 
 
あ、綾乃さーーーん!! 
盛大にプロポーズしてるわ!! 
私は心の中で叫んだ。 

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