15 / 87
何かの病気?
しおりを挟む綾乃さんはレインさんにしこたま怒られたようで、少し大人しくなった。
少しだけど、5日後には私の部屋に押し掛け、勝ったドレスを寄越せと騒いだ。激怒したグレンさんに首根っこを捕まれていたわ。
お疲れの綾乃さん付き侍女さん達には時々労いでおやつを作って渡している。泣いて喜びから苦労が伺える。
小春さんは今日も変わらず神官見習いさん4人侍らせている。
毛糸帽子(やっと作れた)効果かケガは減ってきてるから一安心。 編むときはレインさんかグレンさんの監視つきだけど。
ただ一番最初から小春さんに付いていたシャインさんだっけかな? 彼の目が窪み、表情が虚ろなのが気になって。小春さんの逆ハーレムにいても幸せそうに見えない。
レインさんにそれとなく尋ねたら、シャインさんは一途で真面目な人柄の好青年。コハルさんに、余りのめり込まないよう注意はしたとのこと。大丈夫かしら?
私はと言うとーー。
「ギュロロロロー!ギュロロロロー!!」
断末魔のような悲鳴をあげて竜神様がカサカサ逃げる。ハイハイのスピードが速い、そろそろ掴まり立ちするかも。
「竜神様、逃げないで下さい……ノコアちゃんそっちに回って!」
「はい!お任せ下さい。さあ竜神様観念して下さい!」
「ギュ!ギュ!!ギュロロロロロロロロー!!!」
私とノコアちゃんに挟まれ退路を絶たれた竜神様は呆気なく捕まった。
ゴシゴシゴシ……二人かがりで竜神様の牙を磨く。歯磨きである。
なぜ子供という生き物はあんなに全力で歯磨きから逃げるのだろうか?疑問しか湧かない。
「竜神様少し我慢して下さいね。虫歯になったらおやつ食べられませんからね。これが終わったら大好きなお散歩ですよ」
あっ、牙の裏少し茶色いしっかり磨かないと。根本を優しくブラッシングした筈だったのに……。
ポロリっと、根本から取れてしまった!!
え?うそうそうそなんで?
変な病気!驚き他の牙を確認すると、ポロリポロリと全て抜け落ちてしまった。
「え?歯槽膿漏ー?!そんな馬鹿な!生え変わりにしても全部一辺に無くなるなんてこと……はっ!まさか変な病気!グレンさん、レインさんに報告しないと」
竜神様をマントに包むと転がるように自室を飛び出した。
「マナツ様!私もお供します」
その後をノコアちゃんが付いてくる。神官室までなんで遠いの?神殿の広い廊下をひた走る。
次の角を曲がれば神官室と左に曲がった瞬間大きな壁に阻まれた。
「きゃ!」
ドスン、反動で尻餅を付き添うになった私を誰かが抱き止めた。
「お嬢さん大丈夫か?」
おじさまっと、呼びたくなるような渋くて格好いい声。堅そうな髪を切り込んだ。見上げるような筋肉の精悍な男性が仁王立ちしていた。男性は紫黒色の堅そうな髪を刈り込んでいて、瞳も同系色。左目には厳つい眼帯。鍛え抜かれた軍人に見えた。
「私は大丈夫です!それより竜神様!」
「ギュロ」
牙は抜けたままだけど、ケガがなくて安心する。
「すいません。急いでいたので前を見ていませんでした」深々とお辞儀して謝ると男は渋い顔をした。
「竜神様に、なにかあったのか?」
答えろと有無を言わさない迫力。殺気で人を殺せそうなほど。こ、怖い。
「マナツ様どうしました?」
男の後ろから見知ったレインさんの顔が見えてほっとする。
「竜神様の牙が全部抜け落ちてしまったのよ!何かの病気だったら……」
なんで、早く気づいてあげられなかったのだろう?
自己嫌悪に陥りそうだわ。
「病気じゃないから、心配するな」
答えたのはレインさんではなく、眼帯の大男だった。
10
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
海空里和
恋愛
王都にある果実店の果実飴は、連日行列の人気店。
そこで働く孤児院出身のエレノアは、聖女として教会からやりがい搾取されたあげく、あっさり捨てられた。大切な人を失い、働くことへの意義を失ったエレノア。しかし、果実飴の成功により、働き方改革に成功して、穏やかな日常を取り戻していた。
そこにやって来たのは、場違いなイケメン騎士。
「エレノア殿、迎えに来ました」
「はあ?」
それから毎日果実飴を買いにやって来る騎士。
果実飴が気に入ったのかと思ったその騎士、イザークは、実はエレノアとの結婚が目的で?!
これは、エレノアにだけ距離感がおかしいイザークと、失意にいながらも大切な物を取り返していくエレノアが、次第に心を通わせていくラブストーリー。
溺愛の始まりは魔眼でした。騎士団事務員の貧乏令嬢、片想いの騎士団長と婚約?!
参
恋愛
男爵令嬢ミナは実家が貧乏で騎士団の事務員と騎士団寮の炊事洗濯を掛け持ちして働いていた。ミナは騎士団長オレンに片想いしている。バレないようにしつつ長年真面目に働きオレンの信頼も得、休憩のお茶まで一緒にするようになった。
ある日、謎の香料を口にしてミナは魔法が宿る眼、魔眼に目覚める。魔眼のスキルは、筋肉のステータスが見え、良い筋肉が目の前にあると相手の服が破けてしまうものだった。ミナは無類の筋肉好きで、筋肉が近くで見られる騎士団は彼女にとっては天職だ。魔眼のせいでクビにされるわけにはいかない。なのにオレンの服をびりびりに破いてしまい魔眼のスキルを話さなければいけない状況になった。
全てを話すと、オレンはミナと協力して魔眼を治そうと提案する。対処法で筋肉を見たり触ったりすることから始まった。ミナが長い間封印していた絵描きの趣味も魔眼対策で復活し、よりオレンとの時間が増えていく。片想いがバレないようにするも何故か魔眼がバレてからオレンが好意的で距離も近くなり甘やかされてばかりでミナは戸惑う。別の日には我慢しすぎて自分の服を魔眼で破り真っ裸になった所をオレンに見られ彼は責任を取るとまで言いだして?!
※結構ふざけたラブコメです。
恋愛が苦手な女性シリーズ、前作と同じ世界線で描かれた2作品目です(続きものではなく単品で読めます)。今回は無自覚系恋愛苦手女性。
ヒロインによる一人称視点。全56話、一話あたり概ね1000~2000字程度で公開。
前々作「訳あり女装夫は契約結婚した副業男装妻の推し」前作「身体強化魔法で拳交える外交令嬢の拗らせ恋愛~隣国の悪役令嬢を妻にと連れてきた王子に本来の婚約者がいないとでも?~」と同じ時代・世界です。
※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる