11 / 62
第1章
親友(?)ノア 〜ジェイドsaid〜
しおりを挟む「彼女は何者なんだ?」
奥から出て来るなり、ノアは問いただした。
「何者って、人間だけど?」
「そういうことじゃない。あれだけ死にたがってた君を、どうやってそんな幸せそうな顔にしたんだってことだよ。」
「僕、そんなに幸せそう?」
「あぁ、とっても。彼女が、君の唯一か?じいさんかと思ってたぞ。」
「僕もそう思ってたさ、つい最近まで。」
あの一瞬で理解してしまうなんて、本当にノアは誰より僕の性質を理解している。きっと、一生敵わない。
「彼女と過ごしてどれくらいだ?どこ出身で、どうやって出会った?」
「ちょっと待って、質問が多いよ。大丈夫、彼女は僕に害するような人ではないよ。」
「なぜ、そう言い切れる?君は自分の価値を理解してるのか?」
ノアが呆れたような、少し怒ったような顔で詰め寄って来る。
「理解しているさ。他人から見た僕の価値を、誰よりもね。」
"絶対わかってない!"って顔にかいてあるよ?心配しなくても、ちゃんとわかってるさ。
「僕の口から、彼女の事情は言えない。」
そんなに睨まれても、ただ根拠もなく盲目に信じてるわけじゃないさ。
ロビーに置いてあるソファに腰掛けた。つられたように、ノアが向かいに座る。
「これは僕の独り言なんだけどね、彼女はこの世と思えない服を着て先日の嵐の日に倒れていたんだ。」
やっぱり、服に興味を惹かれたみたいだね。
最新の服を隅々までサーチして、知らないものはないんじゃないかってくらい服に詳しいノア。そんな君も知らない服って、本当に存在するのか確認したいよね?見てみたいよね?
身を乗り出しちゃってるし。そんなに態度に出るなんて、商人として心配だよ。
「それから彼女は、1週間も目を覚さなかった。」
「・・・1週間?」
「人として1週間も栄養を取らずに寝続けるなんてありえないよね。彼女がどこから来たか聞いて、納得したよ。なぜ、僕の元にやって来たかもね。」
「彼女はどこから来たって言うんだ?」
「僕は独り言を言っていただけにすぎないからね。本人に直接聞くといい。」
そんなに顔をしかめないでくれよ。僕から話せるのはこれが限界だ。
「そんなの、会って直ぐに話してくれるような事情じゃねぇじゃないか。」
「僕には話してくれたけどね。」
「恩人なんだからそりゃそうだろうよ。」
お前のそういうとこらが嫌いだぜ、と小さい声で呟いたの、ちゃんと聞こえてるからね?
「仕方ねぇ。とりあえず、これくらいで納得しといてやるよ。」
「上に行こうか。姉貴たちはまだしばらくかかるだろうからよ。あ、そうだまだお前に言うことあったわ。」
ノアは僕の首に手を回し、ひそひそ話をするように話を続ける。
「アカリちゃんの下着とか、どうやって用意してた?人間の女性の生態について、どこまで理解してる?」
ああぁぁ!!僕、彼女に下着を渡さなかったんじゃないか?言われるまで気付かないなんて・・・!
「その顔、やっぱりなぁ。お前は服をここでしか買わないもんな。過去に女がいたこともないし。」
言われなくてもわかる。僕は今、きっと顔が真っ青だ。あと、指先が冷たい。
「大丈夫。姉貴が今見繕ってるから。」
神様!ノア様!ビオレット様!!
君たち姉弟がこんなに頼もしく思える日が来るなんて!
少し先で階段を登っているノアの背中を拝んでおく。僕、無宗教だけど。
そこから2階の客室で、ノアの伝えたかった"女性の生態"というものを教えてもらった。それでわかったことが1つ。僕の無知っぷりが、アカリに苦労を強いていたということ。
そして思ったこと。
これで彼女を幸せにしているつもりだったのか!?
ノアはそれなりにモテる。女性と付き合っていた経験もある。僕なんかよりよっぽど女性というものを理解している。後で個別にビオレットに教えを乞うとして、今はノアから聞けるだけ聞き出したい。
聞けば聞くほど、自分の無知さに呆れるけどね。
そんなこと、彼女に無理を強いてることに比べたらちっぽけなことだ。
僕はノアのような友だちがいて、心から良かったと思ってるよ!(人生で初めて、ね。)
アカリがいると知れば、もうナンパ(彼的には客引き)に付き合わされることもないし。ノアと僕ができてるなんて、意味のわからない噂も消えるはずだ。そう考えても、やっぱりここにアカリを連れてきて良かった。
「ジェイドが好きそうな服を選んでおいたから。今の話を合わせて、俺に借りがあることを忘れるなよ?」
・・・・・・・・・やっぱり訂正する。
君は商人に向いているし、こんなやつが友だちなんて嘘だ!!!
0
お気に入りに追加
31
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる