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ついに 2

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「いよいよ、明日ですね・・・」

 僕の侍従、ラーヤは少し緊張した面持ちでココアを僕に渡した。

「なんで、ラーヤがそんな緊張してるんだよ。」

「だって、ついにこの日が来た!って感じじゃないですか!」

ラーヤがこんなに騒いでいるのには理由がある。

ここ最近、リアの様子がずっとおかしい。始めに気づいたのは、もちろん侍女のラナ。そして報告を受けたラーヤと、実感した僕。

リアが困っているかもしれないのに、僕が調べないわけがない。

彼女の日記をすぐさま入手。(不正入手とは言わせない)妖精の住処まで行って解読した。

内容はわからないところもあったが、どうにか理解した。

明日やって来る男爵令嬢を、リア=リアの前世の彼女はこの世界のヒロイン(主人公)だと思い込んでいる。そしてそのヒロインに、生徒会を含む学園の者たちが惹かれていく。そしてリアはそいつらに虐げられる悪役。

僕から言わせたら、ヒロインは誰にでも媚を売っていて気持ち悪いし常識がなってない。ライトが彼女を庇ったりするのは、"虐められてる"と思っているならあり得るが、あのリアンやサイラスまでヒロインを好きになるとは思えない。まして、サイラスがリアを虐げるなんて・・・。

しかし、リアが前世でその物語を読んでお婆様が書いたっていうんだから馬鹿な話だと無碍にすることもできない。

僕がこれを知って、前世のその物語内でもリアが好きだと知ってどれだけほっとしたか。そして、そこに書かれている性格が驚くほど僕だった。一歩間違えたら僕はリアを監禁するだろうし、誰かのものになるならと殺してしまうというのもわかってしまう。

リアが僕の扱いが上手いのは、この物語を知っていたからだ。それはいいんだけれど、もし自分が死なない為に僕を上手く扱って、前世は他の男が好きだったなんて話だったら許せなかっただろう。あれから何度か日記を入手したが、リアは僕のことを前世から好きだ。僕が思ってたよりずっと、物語の僕に嫉妬するほどに。

ラーヤが、僕がリアを殺す物語の結末を読んで引いていた。

「うわぁ、やりそう。すごくやりそう。死体に保存魔法かけて愛でてそう。」

とかブツブツ言っていた。

・・・うん、多分そうしたんだろうな。僕もそうしたんだと思うよ。

「そんなことをされる可能性があるのに、ルカ様が好きでそばに居てくださってよかったですね。最高の婚約者じゃないですか。」

羨ましい、そんなことしても受け入れてもらえるなんて羨ましい。俺もそんな婚約者ほしいです!

・・・って、周りをウロチョロされたのは鬱陶しかったけど。

リアはきっと、全てを受け入れたわけじゃない。自分が死ぬのは、そして僕が誰かを殺すのは避けようとしてるはずだ。そう考えると、リアの今までの行動に納得がいく。可愛い頭で、僕との幸せな未来のために奮闘していたなんて愛しいでしかない。リアの言葉を使うなら、僕の推しが世界一。


「いい加減、ソワソワするのやめてくれないか。鬱陶しい。」

「もう!なんで殿下はそうもドライなんですか!」

ドライなもんか。ドライなやつは婚約者の日記を黙って読んだりしないし、勝手に悩みを調べたりしない。

リアが1番怖がっているのは、シナリオの強制力とやらでライトを好きになってしまうこと。自分が死ぬより、僕を裏切り、傷つけることの方が恐れている。そんな可愛い不安、僕しかどうにかできないでしょ。

リアが不安にならないように、ずっと惚れてもらえたら僕の勝ち。どこぞの運命なんて知るもんか。

愛でて愛でて、ドロドロに甘やかして、僕しか見えないようにしてしまえばいいんでしょ?

はぁ、リアには悪いけど僕は少し楽しみだよ。

君はきっと、不安がって今までより僕にくっついて来てくれるんだ。僕以外の好意は心の底では信用できなくて、僕を好きだという気持ちに安心を覚える。

あぁ、なんて最高なんだろう。僕へのご褒美かな。

「殿下、気持ち悪い顔してます。」

「うるさい。」

仕方ないだろう。僕らの甘い学生ライフが始まるんだから。
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