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入学式
しおりを挟む「おはよう、リア。」
「ルカ様、おはようございます。」
本日は入学式です。ルカ様からの提案で今日から待ち合わせして、寮から学園まで一緒に登校することになりました。と言っても、徒歩5分圏内なんですけど。
「制服、似合ってるね。可愛いよ。・・・それ以上、スカートの丈は短くしちゃダメだからね?」
「ふふ、わかりました。ルカ様もお似合いですね。」
誰もおかしいと突っ込まないの?と思うのだが、普段着ているドレスやワンピースはふくらはぎくらいまでの丈があるのに対し、学園の制服は膝上丈だ。これはどう考えても日本人が作ったゲームだから、このおかしさに誰も気付かずスルーしているのだろう。私も敢えて質問したりしない。
元日本人の私は制服を着慣れている。だから制服のアレンジの仕方はいくらでも思いつくのだけど、周りと差がつき過ぎて目立つのは嫌なのよね。ファッションリーダーとか、そういうのは王太子の婚約者様にまかせるわ。
外に張り出されたクラス表を確認して(これも日本!て感じがするよね)、教室に荷物を置きに行くことにした。クラスはルカ様と一緒で、私は喜んだんだけどルカ様は「当然!」という態度だったので、どこかに圧力でもかけたのかもしれない・・・。
入学式の感想は、どの世界も式ってつまらないものなんだなってこと。学園長のお話が短かったのはありがたかったけど。あ、あと入学生の挨拶はもちろんライト様がされていたわよ。
「僕たちはこの学園の理念に則り、お互いを尊重し切磋琢磨し合う関係性を築いていきたいと思います!」
って仰ってたんだけど、なんだか学園の理念ってライト様が考えたの??ってくらいピッタリでちょっと笑っちゃいそうになった。
式中、ルカ様はずっと私の手を握っていた。ホールに入る前からずっとだったから、周りに見られて恥ずかしかったのよね。嫌ではないから振り払わなかったけど。だってほら、私とルカ様のラブラブっぷりを見せて牽制しておきたかったとかだと思うの。そう思うと、なんか可愛いなぁって思っちゃって。
教室内の席は自由席だったので、私は窓側、隣はルカ様という"リアには誰も近づけさせない!"という信念を感じ取った。・・・友だちくらいは作らせてほしいわ。
そうそう、カエラも同じクラスだったの。ライト様とリアン様は別クラス。お察しの通り、カエラは見るからにがっかりしていたわ。
初めてのホームルームでは、1人ずつ自己紹介をした。今座っている席順で前から順に。私たちは真ん中より前側に座っていたので、割とすぐに順番は回ってきた。当たり障りのないことを言って終わるつもりだったのだけど・・・
「エミリア・シューリットの婚約者でこの国第三王子、ルカ・ド・カルシャイアです。よろしくしてくれなくても大丈夫です。」
なんてルカ様が挨拶するものだから驚いてしまった。全男子を敵だと思ってるみたいだし、女子も自分の隣からリアを奪う奴らみたいな認識をしてるみたい。まさかそこまでするとは思ってなかったけど、ゲーム内のルカ様を考えたら妥当かもしれないわね。私の検討が甘かったんだわ。
授業中も手を繋ごうとしてくるんだけど、流石にノートを取るときは・・・てお断りを入れておいた。第三王子の婚約者が授業中に態度悪いのも、成績が悪いのもどうかと思うから・・・。ルカ様は全然気にしないんだろうけど。
『君の視線を奪う黒板が恨めかしい』
『やっぱり、字が綺麗だね。惚れ直すよ。』
『宝物にするから、後でそのノートをコピーとらせてよ。それか、僕のノートと交換しよう。』
『真剣な顔もいいね。見惚れてしまうよ。』
授業中、隣からはこんな感じのメモが次々と差し出された。授業をしっかり受けなくても、天才ルカ様はきっといい成績を取るんだろう。私はそんなに器用でもないし、頭も良くない。習ってる内容が日本の小学生と同じ算数とか国語とかだと返事が書けるんだけど、歴史とかはゲームの設定を細かく覚えてないので聞いていないとわからなくなってしまう。
『なんで返事くれないの?』
『少しはこっちを見てよ』
段々とメモがヤンデレ化してきたので
『この授業は私の苦手な科目なんです。後でまとめてお返事してもいいですか?』
と聞いてみたら、
『そんなの、後で僕がいくらでも教えてあげるのに』
『わかった!この授業は我慢する。だから後でご褒美ちょうだいね。』
と返事が来たんだけど、わかってくれてよかった!というよりご褒美に何を要求されるんだろう?これこの授業を受ける度に求められるのかな?とか考えるとちょっぴり不安になったのは、ルカ様には秘密。
メモのやりとりは先生には気付かれていないっぽいんだけど、後ろの子には丸見えだったらしい。その日の授業終わり、声をかけられた。
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