10 / 141
散歩
しおりを挟むルカ様の案内を終えて、ラナが着替えを手伝ってくれた。ラナが来ないと、ルカ様がどれを選んだかわからないからね。
私室へ行くとルカ様はもう着替え終わっていて、待ってくれていた。
「お待たせいたしました。」
「いや、・・・うん。ふふっ。行こうか。」
私のドレスを見てご満悦なようで、よかったです。
ルカ様が選んだのは薄紫色がメインで使われている服。私は薄紫のワンピースドレスに黒のフリルやお花の刺繍があしらわれている。
ルカ様は薄紫のシャツの襟に黒のラインが入っていて、ボタンには小さくカットされたダイヤが使われてます。下は裾に薄紫のライン入った黒いズボンです。
「リアはどんな花形好きなんだい?」
エスコートを受けながらお庭を散策していると、花壇にある花を見ながら聞いてきた。
「チューリップが好きです。可愛くて、唯一無二な形をしていませんか?」
「確かに、花弁が根本から上を向いてついてるもんね。他は地面と水平な感じなのに。」
「ルカ様は、どんなお花が好きですか?」
「花にあまり興味はないんだけど・・・リアが好きだというなら、チューリップを見るたびに君の顔が浮かぶだろうな。そう考えると、僕はチューリップを好きになるだろうね。」
珍しくふわっと笑う顔が甘くって、心臓が爆発しそうです。ゲームでも病みに病んだルカ様しか見てないし、こちらに来てからも病みを感じる笑いか塩対応だったので。
こんな笑顔もできるんですね!!不意打ちはズル過ぎますって!
はぁぁぁ、今日も推しが尊い。
「どうかした?」
「いえ、なんにも。」
「ふぅん。」
脳内できゃあきゃあ騒ぐのは、前世の血でして。貴族としてはご本人を前にオタクを解放するのは抵抗があるんです。少なくとも、社交界にそんなレディはいない。そんなことをしたらたちまち噂が広まって、ヒソヒソと陰口を叩かれるのは目に見えてますから。
それだけじゃなくて、ルカ様がストーリーの強制力で私のことを選んでくださったとしたら、私は何をしてもルカ様に気に入ってもらえる。でも、そんなの試したくありませんからね。悲しいじゃないですか。
ちゅっ。
「へぇっ?」
今、頬に柔らかいものが当たりませんでしたか?
「なんか、元気ないように見えた。」
こちらを伺い見る顔はそっけない風を装っている。でもよく見たらお耳が赤くて・・・あぁ、推しが可愛い!!天才かしら?
・・・て、また自分の世界にワープしてました。
「悩みあるなら聞くから。」
「はい、ありがとうございます。」
歩き出したルカ様にこの昂った気持ちを伝えたくて、後ろからギュッと抱きついた。
途端に、ルカ様はピキッと音がなりそうなほど固まってしまいました。
「・・・ルカ様?あの、お嫌でしたか?」
そろりと腕を離そうとした手を掴まれた。
「・・・何してるの?」
「ルカ様に優しくしていただいたのが嬉しくて・・・その、ごめんなさい。」
こちらからのスキンシップは、あまり好まないタイプだったのかもしれないわ。あちらからのスキンシップが多くて気づかなかったけど。
「・・・ハレンチ。」
「・・・へ?」
ボソッと何か言ったようだけど、聞き取れない。
後ろからルカ様の顔を見ると、真っ赤だった。苺みたい。
なんて思っていると、片腕を掴んだままルカ様が歩き出した。
「どこ行きますの?」
「・・・・・・。」
無言のまま、連れてこられたのはお庭の左奥にあるガゼボだった。着くと隣に座るように促された。
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
はっきり言ってカケラも興味はございません
みおな
恋愛
私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。
病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。
まぁ、好きになさればよろしいわ。
私には関係ないことですから。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい
ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。
だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。
気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。
だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?!
平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる