541 / 604
第540話【第一試合、グゲルグvsササビー】
しおりを挟む
『それでは第一試合、グゲルグ選手vsササビー選手戦の始まりです。両者入場!!』
進行役のアナウンスに続いて、これから対戦する二人がステージに上がった。
『まずは右からステージに上がって来たのは鍛冶屋の娘でグゲルグ嬢24歳独身。現在彼氏募集中だ!!』
なに、彼氏が居ないのか!?
綺麗な艶が輝くショートボブで、顔立ちも整っている。
スタイルも腹筋が勇ましく割れているが美しいアスリート体型だ。
胸も十分なサイズ感なのに、彼氏が居ないのか!!
勿体無いな。
『続きまして左からステージに上るのは農夫のササビー選手。奥さんが妊娠したので今年が最後の喧嘩祭りと決意を決めての出場です!!』
ササビーさんは爪先で跳ねるようにジャンプを繰り返していた。
身体を暖めているのだろう。
ステージの下でゴリと並んで立っていた俺はゴリに訊いてみた。
「なあ、ゴリ。ササビーさんとグゲルグって、どっちが勝つかな?」
瓦割りのデモンストレーションではササビーさんのほうが多く瓦を割っている。
純粋なパンチ力だけなら、若干だがササビーさんのほうが上だ。
ゴリは真っ直ぐステージの上を見ながら答えた。
「掴まれなければササビーさんにも勝ち目はあると思うぞ」
「掴まれなければって、なんだ?」
「グゲルグは小さなころ柔道って言う素手の格闘術を習っていたんだ」
「柔道だって……」
ストレッチしながら身体の筋肉を解しているグゲルグの腰には黒い帯が巻かれていた。
タンクトップにスパッツ姿のせいで、帯の存在に注目していなかったが、あれは柔道の黒帯ってことかい。
って、ことは──。
グゲルグの柔道の実力は黒帯レベルなのか。
「誰だよ、鍛冶屋の娘に柔道なんて教えた異世界転生者はよ……」
勿体無いぞ……。
もしも彼女が柔道なんてやらないで、普通の女の子として育っていれば、きっと可愛らしい嫁さんになっていたかも知れないのにさ。
この田舎町は綺麗な花を肥溜めの横に植えてしまったのだ。
本当に勿体無いな。
グゲルグとササビーさんがリング中央で向かい合う。
両者が睨み合う。
『それでは、第一試合開始だ!!』
進行役が叫ぶと試合開始の鐘が鳴り響く。
すると会場の観客たちが一斉に沸き上がった。
声援が多く飛ぶが殆どがグゲルグに向けてだろう。
やはり人気では女性選手のほうが圧倒のようだな。
「行くぞ、お嬢さん!!」
「来いや、オッサン!!」
「そりゃ!」
先手はササビーさんがグゲルグのボディーにパンチを飛ばした。
そして、ヒット。
だが、グゲルグは揺らぎもしない。
割れた美しいシックスパックで受け止める。
「気を使わないで、オッサン。女だからって舐めてると、痛い目に合うわよ!!」
「ぬぬぅ……」
ササビーさんは女性相手だから顔を殴らずボディーを狙ったのだろう。
優しいな。
だが、あの割れた腹筋を破るほどのパンチ力はササビーさんには無かったようだ。
「女を甘く見ていると、後悔するわ、よっと!!」
グゲルグのハイキック。
その上段廻し蹴りは綺麗に脚が伸びていた。
しなやかな鞭のようにササビーさんの頭部を狙う。
「ぐぐっ!!」
ササビーさんのガードが寸前で間に合った。
腕を立てて防御に成功したが、大きくよろめいていた。
それにしても、身体が柔らかいな。
あんなに高く脚を上げて股を開いたら視線が釘付けになっちまうぞ。
観客も今の蹴りで一層と盛り上がったしよ。
「まだまだ、行くよ!」
グゲルグがダッキングから肘打ちをササビーさんの鳩尾に突き立てる。
「ごっ!!」
肘が楔のように刺さった。
更に屈んだ体制から跳ね上がるようにアッパーカット。
だが、顎先を狙った拳は空を切り天を指す。
避けた。
ナイス、ササビーさん!
だが──。
「掴まえた!」
あらら……。
ササビーさんがグゲルグに襟首を両手で掴まれちゃったよ。
これは不味くね。
「放せっ!」
ササビーさんの膝蹴り。
だが、その膝がヒットするよりも早くグゲルグが体を捻った。
凄い速度のスピンである。
グゲルグの身体がササビーさんの懐に潜り込む。
背負い投げの体勢だ。
「ぬああっ!!」
ヤバイ、担がれた。
グゲルグの腰の上にササビーさんが乗ってしまっている。
グゲルグが両足で地面を蹴った。
ササビーさんの両足が地面を離れる。
浮く。
グゲルグがお辞儀をするように身体を曲げると、その背後をササビーさんが飛んで行った。
「どりゃぁあああ!!」
「ぐはっ!!」
ササビーさんが完全に投げられていた。
背負い投げで頭から足元に落とされる。
綺麗な教科書通りの背負い投げであった。
しかも、ササビーさんは受け身が取れていない。
だが、まだ意識は有るな。
「これで終わりだ!!」
グゲルグが倒れているササビーさんの片腕を取って胸元に引いた。
そしてササビーさんの片腕と頭を両足で挟み込んだ。
三角締めだ。
「うぐぐぅ……」
両足で締め付けられるササビーさんが顔を真っ赤にしながら踠いていた。
三角締めを外せそうにない。
俺は愕然としながら呟いた。
「う、羨ましい……。俺も一度で良いから女性に三角締めをされたいぞ。いな、あれは三角締めじゃあない、あれは幸せ固めだ!!」
苦しい顔のササビーさんがグゲルグの脚をポンポンっと叩いた。
タップだ。
ギブアップである。
『おお~~っと、ここでササビー選手のギブアップだ!!』
ササビーさんを三角締めから解放したグゲルグが立ち上がると、進行役のオッサンが勝者の腕を上げて勝利宣言をする。
『勝者、グゲルグ選手だ~~!!』
そのコールで観客が沸き上がる。
喧嘩祭り第一試合勝者、グゲルグ。
【つづく】
進行役のアナウンスに続いて、これから対戦する二人がステージに上がった。
『まずは右からステージに上がって来たのは鍛冶屋の娘でグゲルグ嬢24歳独身。現在彼氏募集中だ!!』
なに、彼氏が居ないのか!?
綺麗な艶が輝くショートボブで、顔立ちも整っている。
スタイルも腹筋が勇ましく割れているが美しいアスリート体型だ。
胸も十分なサイズ感なのに、彼氏が居ないのか!!
勿体無いな。
『続きまして左からステージに上るのは農夫のササビー選手。奥さんが妊娠したので今年が最後の喧嘩祭りと決意を決めての出場です!!』
ササビーさんは爪先で跳ねるようにジャンプを繰り返していた。
身体を暖めているのだろう。
ステージの下でゴリと並んで立っていた俺はゴリに訊いてみた。
「なあ、ゴリ。ササビーさんとグゲルグって、どっちが勝つかな?」
瓦割りのデモンストレーションではササビーさんのほうが多く瓦を割っている。
純粋なパンチ力だけなら、若干だがササビーさんのほうが上だ。
ゴリは真っ直ぐステージの上を見ながら答えた。
「掴まれなければササビーさんにも勝ち目はあると思うぞ」
「掴まれなければって、なんだ?」
「グゲルグは小さなころ柔道って言う素手の格闘術を習っていたんだ」
「柔道だって……」
ストレッチしながら身体の筋肉を解しているグゲルグの腰には黒い帯が巻かれていた。
タンクトップにスパッツ姿のせいで、帯の存在に注目していなかったが、あれは柔道の黒帯ってことかい。
って、ことは──。
グゲルグの柔道の実力は黒帯レベルなのか。
「誰だよ、鍛冶屋の娘に柔道なんて教えた異世界転生者はよ……」
勿体無いぞ……。
もしも彼女が柔道なんてやらないで、普通の女の子として育っていれば、きっと可愛らしい嫁さんになっていたかも知れないのにさ。
この田舎町は綺麗な花を肥溜めの横に植えてしまったのだ。
本当に勿体無いな。
グゲルグとササビーさんがリング中央で向かい合う。
両者が睨み合う。
『それでは、第一試合開始だ!!』
進行役が叫ぶと試合開始の鐘が鳴り響く。
すると会場の観客たちが一斉に沸き上がった。
声援が多く飛ぶが殆どがグゲルグに向けてだろう。
やはり人気では女性選手のほうが圧倒のようだな。
「行くぞ、お嬢さん!!」
「来いや、オッサン!!」
「そりゃ!」
先手はササビーさんがグゲルグのボディーにパンチを飛ばした。
そして、ヒット。
だが、グゲルグは揺らぎもしない。
割れた美しいシックスパックで受け止める。
「気を使わないで、オッサン。女だからって舐めてると、痛い目に合うわよ!!」
「ぬぬぅ……」
ササビーさんは女性相手だから顔を殴らずボディーを狙ったのだろう。
優しいな。
だが、あの割れた腹筋を破るほどのパンチ力はササビーさんには無かったようだ。
「女を甘く見ていると、後悔するわ、よっと!!」
グゲルグのハイキック。
その上段廻し蹴りは綺麗に脚が伸びていた。
しなやかな鞭のようにササビーさんの頭部を狙う。
「ぐぐっ!!」
ササビーさんのガードが寸前で間に合った。
腕を立てて防御に成功したが、大きくよろめいていた。
それにしても、身体が柔らかいな。
あんなに高く脚を上げて股を開いたら視線が釘付けになっちまうぞ。
観客も今の蹴りで一層と盛り上がったしよ。
「まだまだ、行くよ!」
グゲルグがダッキングから肘打ちをササビーさんの鳩尾に突き立てる。
「ごっ!!」
肘が楔のように刺さった。
更に屈んだ体制から跳ね上がるようにアッパーカット。
だが、顎先を狙った拳は空を切り天を指す。
避けた。
ナイス、ササビーさん!
だが──。
「掴まえた!」
あらら……。
ササビーさんがグゲルグに襟首を両手で掴まれちゃったよ。
これは不味くね。
「放せっ!」
ササビーさんの膝蹴り。
だが、その膝がヒットするよりも早くグゲルグが体を捻った。
凄い速度のスピンである。
グゲルグの身体がササビーさんの懐に潜り込む。
背負い投げの体勢だ。
「ぬああっ!!」
ヤバイ、担がれた。
グゲルグの腰の上にササビーさんが乗ってしまっている。
グゲルグが両足で地面を蹴った。
ササビーさんの両足が地面を離れる。
浮く。
グゲルグがお辞儀をするように身体を曲げると、その背後をササビーさんが飛んで行った。
「どりゃぁあああ!!」
「ぐはっ!!」
ササビーさんが完全に投げられていた。
背負い投げで頭から足元に落とされる。
綺麗な教科書通りの背負い投げであった。
しかも、ササビーさんは受け身が取れていない。
だが、まだ意識は有るな。
「これで終わりだ!!」
グゲルグが倒れているササビーさんの片腕を取って胸元に引いた。
そしてササビーさんの片腕と頭を両足で挟み込んだ。
三角締めだ。
「うぐぐぅ……」
両足で締め付けられるササビーさんが顔を真っ赤にしながら踠いていた。
三角締めを外せそうにない。
俺は愕然としながら呟いた。
「う、羨ましい……。俺も一度で良いから女性に三角締めをされたいぞ。いな、あれは三角締めじゃあない、あれは幸せ固めだ!!」
苦しい顔のササビーさんがグゲルグの脚をポンポンっと叩いた。
タップだ。
ギブアップである。
『おお~~っと、ここでササビー選手のギブアップだ!!』
ササビーさんを三角締めから解放したグゲルグが立ち上がると、進行役のオッサンが勝者の腕を上げて勝利宣言をする。
『勝者、グゲルグ選手だ~~!!』
そのコールで観客が沸き上がる。
喧嘩祭り第一試合勝者、グゲルグ。
【つづく】
0
お気に入りに追加
383
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる