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第524話【呪いの解き方】
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「だ~る~ま~さ~ん~が~、こ~ろ~ん~だぁ~」
朝っぱらから五月蝿いな……。
俺は早朝の宿屋の二階で目が覚めた。
外から子供の声がギンギンと響いて来る。
「なんだよ、朝っぱらから……」
なんで開拓中の町で子供たちが朝から遊んでいるんだ。
まだ住人らしい住人なんてほとんど居ないはずなのにさ。
俺は愚痴りながら眠たい目を擦るとベッドから出た。
そして服を着ると一階に下りて行く。
「やあ、アスラン君、おはよう」
ハンスさんだ。
「おはようさん……」
ハンスさんはカウンターの中で何やら仕込み作業に励んでいた。
包丁で野菜を刻む手を止めずに俺に話し掛けて来る。
「なんだい、まだ眠そうだね。昨晩は遅かったのかい?」
「ああ、昨日はスバルちゃんの家で食事を頂きながら新しい家の相談をしていたんだ……」
「へぇ~、キミもそろそろ身を固める決意がついたんだ」
「うん。もうこの町を拠点に冒険を進めるつもりだから、家もこの町に建てようと思ってね」
「そこでスバルちゃんと暮らすのかい?」
俺は浮かない顔で言った。
「彼女が良ければね……」
そんな俺の空気を読んでかハンスさんが言う。
「なんだか不満気な表情だね。彼女に何か問題でも有るのかい。スバルちゃんは良い嫁さんになると思うんだが?」
俺はカウンター席に座ると出された水を一気に飲み干す。
「スバルちゃんに問題があるんじゃあなくて、俺に問題があるんだよ……」
「なんだい、問題って?」
「俺が彼女と結婚しても、今のままだと彼女を抱くどころかイチャイチャすら出来ないんだ……」
「なんだ、もうチンチンが立たないのか?」
「インポじゃあねえよ……」
「じゃあゲイなのか?」
「それも違う」
「じゃあ、なんだい?」
「呪いだ……」
「呪いだって?」
ハンスさんは首を傾げながら俺の前に食事を出した。
黒パンとコーンスープの簡単な朝食だ。
俺は硬いパンを噛りながら話す。
「俺、呪われててさ。エロイことを考えたりしたりすると心臓が痛み出すんだよ。最悪死んじまうらしい……」
「それは難儀な呪いだな」
「だから、スバルちゃんと結婚してもエロイことが出来ないんだ。もう血の涙が出そうなぐらいの災いだよ!!」
「確かに、それは生き地獄だな……」
「分かるか、この気持ち!!」
「分かる分かる……」
「好いた女の子どころか好いていない女の子のパンツすら見れないし、匂いすらスーハースーハー出来ないんだぞ。ビーチクを見たらペロペロしたくなる気持ちすら沸かせないんだぞ。脇の下だってクンクンしたいのにさ!!」
「うん、やっぱり、その気持ちは分からんぞ……」
「なんで!!」
「まあ、キミの変態的な思いは理解出来ないが、結論から言うと呪いを解けばいいんじゃないか?」
「どうやってさ!?」
「んん~……。私は呪いの解き方なんて知らないが、ギルガメッシュさんやゾディアックさんなら知ってるんじゃないか?」
「あっ、そう言えば、その辺を訊いたことないな……」
しまった!!
盲点だった!!
糞女神に訊いたらレベル100になったらレベルアップボーナスでペナルティーを解除してくれるって言われたから、それだけを鵜呑みにしていたぜ。
そうだよ、よくよく考えたら糞女神以外の人に呪いを解いて貰えばいいんじゃあないか!!
その辺を今まで誰にも相談をしたことがなかったぜ。
「そうだな、よし、これから訊いてくるか!!」
俺は目の前のパンとコーンスープを胃袋に流し込むと席を立った。
そのまま酒場を出て行く。
すると店の前で子供たちが遊んでいる光景に出くわした。
朝っぱらから騒いでいたのはこいつらだ。
フルプレートの男が壁に額を当てて、その後ろに子供たちが忍び寄ろうとしている。
「だ~る~ま~さ~ん~が~、こ~ろ~ん~だっ!!」
あ~、達磨さんが転んだをしているのか。
子供たちは三人だ。
あれ、テイアーとガイアじゃあねえか。
それに、もう一人はホビットのアインシュタインだ。
一人だけ子供じゃないのが混ざってる。
いや、全員子供じゃあねえよ。
あれ、もしかして、このフルプレートの野郎はメタルキャリアかな?
「だ~る~ま~さ~ん~が~、こ~ろ~ん~……!!」
メタルキャリアだと思われる野郎が最後の「だっ」を言う寸前に、背後から忍び寄っていた三人の子供たちが同時に飛びかかった。
背後からメタルキャリアの後頭部に同時に飛び蹴りを食らわす。
その同時三連キックに蹴られたフルプレートのヘルムが激音を鳴らして壁にめり込んだ。
凄い音が響く。
「なに、この達磨さんが転んだは……。鬼役を殺す気か……」
壁に頭を埋めたメタルキャリアがグッタリとしている。
「あっ、アスランじゃあないか~」
子供たち三人が俺に気付いたようだ。
「お前ら、何をやってるんだ……」
アインシュタインが答える。
「達磨さんが転んだだ(棒読み)」
「それは見て分かるけど、そうじゃあなくて……。俺が知ってる達磨さんが転んだよりも、かなりハードでバイオレンスだなって思ってよ……」
テイアーが言う。
「暇だったから四人で遊んで居たんだ。アスランも混ざるか?」
「いや、まだ死にたくないから遠慮しとく……。お前らだけで楽しく遊んでてくれ……」
流石はドラゴンと神様だな。
かなりハードな遊びをこなしているよ……。
こいつらには関わらないで置こう。
何気ない遊びで殺されるかも知れない……。
ガイアが言う。
「でも、そろそろ達磨さんが転んだも飽きてきた。何せメタルキャリアはジャンケンが弱すぎていつも鬼になるから」
テイアーが言う。
「ガイアちゃんは三秒先までなら未来が読めるし、私は心が読めるし、アインシュタインは幸運の塊だから、ジャンケンは絶対に負けないんだよ。だからいつもメタルキャリアが鬼になるんだよね」
ドラゴンも神様も凄いな。
それと肩を並べる幸運の塊なアインシュタインも恐ろしいぞ。
ここまで来るとメタルキャリアが可愛そうだわ……。
「まあ、お前らは子供なんだから、遊んでいればいいさ。大人の俺は仕事に行ってくるからよ……」
テイアーとガイアが声を揃えて言う。
「「冒険か?」」
「いや、ちょっと女神に呪われていてな。それを解こうと思ってよ」
ガイアが言う
「そう言えばアスランはアテナちゃんに呪われているんだっけ」
「そうだよ。あの糞女神って、ガイアの孫なんだろ。ならガイアは俺の呪いを解けないのか?」
「めんどい」
「あー、めんどいかー……。じゃあテイアーは俺の呪いを解けないか?」
「大人に戻れば解けない事も無いかな」
「大人になるのに何年かかる?」
「15年ぐらいかな。あと少しだ」
程遠い……。
ぜんぜん少しじゃない。
「そんなに待てんな」
そうだ、青い薬が在ったな。
「それを飲んでも女神の呪いを解くのは難しいぞ」
心を読みやがったな!
「やっぱりガイア、面倒臭がらないで俺の呪いを解いてくれないか?」
「今の私は神の力を封印されているから、その封印を解かないとならないんだ。その封印を解くほうがアスランの呪いを解くより面倒臭いぞ」
「そうなん……。使えないガキばかりだな。やっぱりギルガメッシュに相談してみるか。じゃあ俺は行くぜ」
「「「行ってらっしゃ~い」」」
俺は三人に見送られながら魔王城街を後にした。
早朝のソドムタウンに向かう。
【つづく】
朝っぱらから五月蝿いな……。
俺は早朝の宿屋の二階で目が覚めた。
外から子供の声がギンギンと響いて来る。
「なんだよ、朝っぱらから……」
なんで開拓中の町で子供たちが朝から遊んでいるんだ。
まだ住人らしい住人なんてほとんど居ないはずなのにさ。
俺は愚痴りながら眠たい目を擦るとベッドから出た。
そして服を着ると一階に下りて行く。
「やあ、アスラン君、おはよう」
ハンスさんだ。
「おはようさん……」
ハンスさんはカウンターの中で何やら仕込み作業に励んでいた。
包丁で野菜を刻む手を止めずに俺に話し掛けて来る。
「なんだい、まだ眠そうだね。昨晩は遅かったのかい?」
「ああ、昨日はスバルちゃんの家で食事を頂きながら新しい家の相談をしていたんだ……」
「へぇ~、キミもそろそろ身を固める決意がついたんだ」
「うん。もうこの町を拠点に冒険を進めるつもりだから、家もこの町に建てようと思ってね」
「そこでスバルちゃんと暮らすのかい?」
俺は浮かない顔で言った。
「彼女が良ければね……」
そんな俺の空気を読んでかハンスさんが言う。
「なんだか不満気な表情だね。彼女に何か問題でも有るのかい。スバルちゃんは良い嫁さんになると思うんだが?」
俺はカウンター席に座ると出された水を一気に飲み干す。
「スバルちゃんに問題があるんじゃあなくて、俺に問題があるんだよ……」
「なんだい、問題って?」
「俺が彼女と結婚しても、今のままだと彼女を抱くどころかイチャイチャすら出来ないんだ……」
「なんだ、もうチンチンが立たないのか?」
「インポじゃあねえよ……」
「じゃあゲイなのか?」
「それも違う」
「じゃあ、なんだい?」
「呪いだ……」
「呪いだって?」
ハンスさんは首を傾げながら俺の前に食事を出した。
黒パンとコーンスープの簡単な朝食だ。
俺は硬いパンを噛りながら話す。
「俺、呪われててさ。エロイことを考えたりしたりすると心臓が痛み出すんだよ。最悪死んじまうらしい……」
「それは難儀な呪いだな」
「だから、スバルちゃんと結婚してもエロイことが出来ないんだ。もう血の涙が出そうなぐらいの災いだよ!!」
「確かに、それは生き地獄だな……」
「分かるか、この気持ち!!」
「分かる分かる……」
「好いた女の子どころか好いていない女の子のパンツすら見れないし、匂いすらスーハースーハー出来ないんだぞ。ビーチクを見たらペロペロしたくなる気持ちすら沸かせないんだぞ。脇の下だってクンクンしたいのにさ!!」
「うん、やっぱり、その気持ちは分からんぞ……」
「なんで!!」
「まあ、キミの変態的な思いは理解出来ないが、結論から言うと呪いを解けばいいんじゃないか?」
「どうやってさ!?」
「んん~……。私は呪いの解き方なんて知らないが、ギルガメッシュさんやゾディアックさんなら知ってるんじゃないか?」
「あっ、そう言えば、その辺を訊いたことないな……」
しまった!!
盲点だった!!
糞女神に訊いたらレベル100になったらレベルアップボーナスでペナルティーを解除してくれるって言われたから、それだけを鵜呑みにしていたぜ。
そうだよ、よくよく考えたら糞女神以外の人に呪いを解いて貰えばいいんじゃあないか!!
その辺を今まで誰にも相談をしたことがなかったぜ。
「そうだな、よし、これから訊いてくるか!!」
俺は目の前のパンとコーンスープを胃袋に流し込むと席を立った。
そのまま酒場を出て行く。
すると店の前で子供たちが遊んでいる光景に出くわした。
朝っぱらから騒いでいたのはこいつらだ。
フルプレートの男が壁に額を当てて、その後ろに子供たちが忍び寄ろうとしている。
「だ~る~ま~さ~ん~が~、こ~ろ~ん~だっ!!」
あ~、達磨さんが転んだをしているのか。
子供たちは三人だ。
あれ、テイアーとガイアじゃあねえか。
それに、もう一人はホビットのアインシュタインだ。
一人だけ子供じゃないのが混ざってる。
いや、全員子供じゃあねえよ。
あれ、もしかして、このフルプレートの野郎はメタルキャリアかな?
「だ~る~ま~さ~ん~が~、こ~ろ~ん~……!!」
メタルキャリアだと思われる野郎が最後の「だっ」を言う寸前に、背後から忍び寄っていた三人の子供たちが同時に飛びかかった。
背後からメタルキャリアの後頭部に同時に飛び蹴りを食らわす。
その同時三連キックに蹴られたフルプレートのヘルムが激音を鳴らして壁にめり込んだ。
凄い音が響く。
「なに、この達磨さんが転んだは……。鬼役を殺す気か……」
壁に頭を埋めたメタルキャリアがグッタリとしている。
「あっ、アスランじゃあないか~」
子供たち三人が俺に気付いたようだ。
「お前ら、何をやってるんだ……」
アインシュタインが答える。
「達磨さんが転んだだ(棒読み)」
「それは見て分かるけど、そうじゃあなくて……。俺が知ってる達磨さんが転んだよりも、かなりハードでバイオレンスだなって思ってよ……」
テイアーが言う。
「暇だったから四人で遊んで居たんだ。アスランも混ざるか?」
「いや、まだ死にたくないから遠慮しとく……。お前らだけで楽しく遊んでてくれ……」
流石はドラゴンと神様だな。
かなりハードな遊びをこなしているよ……。
こいつらには関わらないで置こう。
何気ない遊びで殺されるかも知れない……。
ガイアが言う。
「でも、そろそろ達磨さんが転んだも飽きてきた。何せメタルキャリアはジャンケンが弱すぎていつも鬼になるから」
テイアーが言う。
「ガイアちゃんは三秒先までなら未来が読めるし、私は心が読めるし、アインシュタインは幸運の塊だから、ジャンケンは絶対に負けないんだよ。だからいつもメタルキャリアが鬼になるんだよね」
ドラゴンも神様も凄いな。
それと肩を並べる幸運の塊なアインシュタインも恐ろしいぞ。
ここまで来るとメタルキャリアが可愛そうだわ……。
「まあ、お前らは子供なんだから、遊んでいればいいさ。大人の俺は仕事に行ってくるからよ……」
テイアーとガイアが声を揃えて言う。
「「冒険か?」」
「いや、ちょっと女神に呪われていてな。それを解こうと思ってよ」
ガイアが言う
「そう言えばアスランはアテナちゃんに呪われているんだっけ」
「そうだよ。あの糞女神って、ガイアの孫なんだろ。ならガイアは俺の呪いを解けないのか?」
「めんどい」
「あー、めんどいかー……。じゃあテイアーは俺の呪いを解けないか?」
「大人に戻れば解けない事も無いかな」
「大人になるのに何年かかる?」
「15年ぐらいかな。あと少しだ」
程遠い……。
ぜんぜん少しじゃない。
「そんなに待てんな」
そうだ、青い薬が在ったな。
「それを飲んでも女神の呪いを解くのは難しいぞ」
心を読みやがったな!
「やっぱりガイア、面倒臭がらないで俺の呪いを解いてくれないか?」
「今の私は神の力を封印されているから、その封印を解かないとならないんだ。その封印を解くほうがアスランの呪いを解くより面倒臭いぞ」
「そうなん……。使えないガキばかりだな。やっぱりギルガメッシュに相談してみるか。じゃあ俺は行くぜ」
「「「行ってらっしゃ~い」」」
俺は三人に見送られながら魔王城街を後にした。
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