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第503話【目覚めたらキミが居た】
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俺が目を覚ますと天井が視界に入って来た。
木造の天井だ。
俺はベッドで寝ているようだ。
あまり記憶に無い天井だな。
シンジ君的に言えば知らない天井だぜ。
俺は横を見た。
あれ、ここってスカル姉さんの診療所じゃあねえか?
なんだか医療器具やら薬草が詰まった瓶が並んでいるもの。
なら、知ってるぞ。
ここの天井を知っている。
いや、おニューの診療所の天井を眺めるのは初めてかな。
あれ、どうだったかな~……。
まあ、いいや。
俺は身体を起こそうと背筋に力を入れたが、なかなか思うように動けない。
ベッドから起き上がることも出来なかった。
無理して動こうとすると、背中に激痛が走る。
「痛たたっ……」
俺が苦痛に小声を漏らすと同時に診療所の扉が開いてツインテールの女の子が入って来る。
ヤボったい眼鏡を掛けた少女はスバルちゃんだった。
寝ている俺とスバルちゃんの目が合う。
スバルちゃんは硬直して目を呆然とさせている。
手に持った洗面器がフルフルと揺れていた。
「おはよう、スバルちゃん。来てたんだ」
掠れた小声だったが何とかしゃべれた。
自分で自分の小声を聞いて悟る。
俺、弱ってるんだなってさ。
だって思うように身体も動かないもの。
少し呼吸も辛いしさ。
しばし間を置いてからスバルちゃんが微笑んだ。
「おはよう、アスラン君……」
優しい声で言ったスバルちゃんが俺が寝そべるベッドの横に歩み寄る。
そして、テーブルに洗面器を置くと俺に背を向けた。
どうやらタオルを絞っているようだ。
水の音が聴こえて来る。
そのテーブルの上にゴメスが蠢いていた。
あー……。
ヅラなのバレたな……。
そして、スバルちゃんは俺に背を向けたまま訊いて来た。
「身体、痛くない?」
「ああ、背中が痛くて動けない」
「そうよね、刺されたんだもの」
刺されたんだよな、俺。
ミーちゃんにヒールが効かないダガーで深々と一突きだ。
刃先が内臓まで達して真っ黒な血が吹き出していたのを覚えている。
普通なら死んでいそうな傷だったはずだ。
俺は記憶を辿り出す。
「確か……」
するとスバルちゃんが振り返り、タオルで俺の額を拭き出した。
ああ、冷たくて気持ちいい……。
俺は視線をスバルちゃんの優しい微笑みに向けると質問を投げ掛けた。
「俺、確か、刺されたよな?」
「うん、刺されましたよ」
俺の額を拭き終わったスバルちゃんが、今度は顔を拭き出した。
しゃべれない……。
邪魔臭かったから手で退けようとしたが、腕も思うように動かない。
なのでしばらくスバルちゃんに好き勝手に顔を拭かれまくった。
でも、気持ちいいや~。
そして、スバルちゃんがタオルを下げた。
あー、スッキリした~。
じゃなくて~。
「スバルちゃん。俺、刺されてからどうなったんだ?」
スバルちゃんがタオルを洗面器の水で絞りながら答える。
「皆に助けられたのよ」
「皆?」
そうだ──。
俺が最後に見たのはスカル姉さんが飛び蹴りで割って入って来たところだ。
あれで、助けられたんだ。
でも、皆ってことは、皆も居たのか。
前を向き直したスバルちゃんが説明してくれた。
「私は居なかったんですが、皆さんが戦ってアスラン君を助け出してくれたらしいですよ」
「戦ったのか、皆で……」
「スカル先生を中心に、ゴリさん、バイマンさん、オアイドスさん、カンパネルラお爺さん、九匹のシルバーウルフたち、それにガイアちゃんまで戦ったとか──」
「それで、勝敗は?」
「あの三人を取り押さえて、魔王城前に連行しました」
「じゃあ、俺も奴らの顔を拝みに行くか──」
そう言い俺が身体を起こそうと力んだが、やはり背中が痛んで動けない。
それどころかベッドから上半身を起こすことすら出来ない。
起きる代わりに俺の背中から激痛が全身に走った。
「痛い……。スバルちゃん、痛いよ……」
俺が情けない声で言うと、スバルちゃんは微笑みながら俺の容態を説明してくれる。
「一週間はベッドで寝たきりです。傷口はヒールで治らないから昔ながらの治療法で縫い合わせたのよ。あとは私の薬草と痛み止で時間を掛けて癒さないと」
「い、一週間も寝たきりかよ……」
スバルちゃんが意地悪っぽく言う。
「ベッドから起きれるのが一週間先で、一人で歩けるようになるのが一ヶ月先よ」
「マジで……」
「マジです」
「その間のトイレは?」
スバルちゃんがベッドの下から尿瓶を取り出して可愛らしく微笑みながら指差した。
マジですか……。
「大きいほうは?」
続いてスバルちゃんがベッドの下からアヒルのオマルを取り出して可愛らしく微笑みながら指差した。
アヒルかよ……。
「でも、一人で出きるかな……」
スバルちゃんが恥ずかしそうにモジモジしながら小声で言う。
「わ、私がお手伝いします……」
「そ、それは魅力的な提案だな……。でも断るよ」
「あなたは大怪我をしたのよ。死にそうなぐらいの大怪我を──。本当に心配したんだからね」
「それとこれとは話が別だろ……」
「ですが……」
小声を返したスバルちゃんは、それでも優しく微笑んでいる。
でも、その微笑みの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。
もう一度だけ俺が問う。
「俺、かなりヤバかった?」
「うん、かなり……」
スバルちゃんが俯いた。
あー、心配掛けたのかな……。
これは、少しの間は大人しくしていないとならないかな……。
「分かったよ。是非ともトイレをスバルちゃんに手伝ってもらいたい……」
「喜んで……」
喜ぶの!?
マジで手伝ってくれた上に喜ぶの!?
その手の趣味が有るのかな!?
あとで訊いた話だと、ヒルダやプロ子たちも無事だったらしい。
バラバラに刻まれたが、メイドたちで死んだ者は居ないとか。
今、バームとクーヘン兄弟が縫合中らしい。
それとミーちゃん、角刈りポニーテール、クラウドの三名は、スカル姉さんたちにボコボコにされたあとに魔王城の地下牢獄に幽閉されたとか。
角刈りポニーテールと戦った際に、何人かが怪我をしたらしいが、怪我をしたのは野郎どもばかりだと聞かされている。
スカル姉さんは無事のようだ。
その日の晩にはスカル姉さんも診療所に帰ってきて俺の額にデコピンを食らわせて行った。
俺が抵抗できないことを良いことに、三発もデコピンを連続でブチ込んで行ったのだ。
更にチ◯コまで摘まみ上げれて、グイグイ引っ張りやがった。
マジで人が動けないからって……。
それにしても、俺は眠い。
こんなに眠いのは初めてだ。
暇さえあれば寝てしまう。
血が足りてないのかな。
まただ……。
また、眠くなって来た……。
どうせ、する、ことが、ないんだから、ね、よ、う……。
Zzzzzz……。
【つづく】
木造の天井だ。
俺はベッドで寝ているようだ。
あまり記憶に無い天井だな。
シンジ君的に言えば知らない天井だぜ。
俺は横を見た。
あれ、ここってスカル姉さんの診療所じゃあねえか?
なんだか医療器具やら薬草が詰まった瓶が並んでいるもの。
なら、知ってるぞ。
ここの天井を知っている。
いや、おニューの診療所の天井を眺めるのは初めてかな。
あれ、どうだったかな~……。
まあ、いいや。
俺は身体を起こそうと背筋に力を入れたが、なかなか思うように動けない。
ベッドから起き上がることも出来なかった。
無理して動こうとすると、背中に激痛が走る。
「痛たたっ……」
俺が苦痛に小声を漏らすと同時に診療所の扉が開いてツインテールの女の子が入って来る。
ヤボったい眼鏡を掛けた少女はスバルちゃんだった。
寝ている俺とスバルちゃんの目が合う。
スバルちゃんは硬直して目を呆然とさせている。
手に持った洗面器がフルフルと揺れていた。
「おはよう、スバルちゃん。来てたんだ」
掠れた小声だったが何とかしゃべれた。
自分で自分の小声を聞いて悟る。
俺、弱ってるんだなってさ。
だって思うように身体も動かないもの。
少し呼吸も辛いしさ。
しばし間を置いてからスバルちゃんが微笑んだ。
「おはよう、アスラン君……」
優しい声で言ったスバルちゃんが俺が寝そべるベッドの横に歩み寄る。
そして、テーブルに洗面器を置くと俺に背を向けた。
どうやらタオルを絞っているようだ。
水の音が聴こえて来る。
そのテーブルの上にゴメスが蠢いていた。
あー……。
ヅラなのバレたな……。
そして、スバルちゃんは俺に背を向けたまま訊いて来た。
「身体、痛くない?」
「ああ、背中が痛くて動けない」
「そうよね、刺されたんだもの」
刺されたんだよな、俺。
ミーちゃんにヒールが効かないダガーで深々と一突きだ。
刃先が内臓まで達して真っ黒な血が吹き出していたのを覚えている。
普通なら死んでいそうな傷だったはずだ。
俺は記憶を辿り出す。
「確か……」
するとスバルちゃんが振り返り、タオルで俺の額を拭き出した。
ああ、冷たくて気持ちいい……。
俺は視線をスバルちゃんの優しい微笑みに向けると質問を投げ掛けた。
「俺、確か、刺されたよな?」
「うん、刺されましたよ」
俺の額を拭き終わったスバルちゃんが、今度は顔を拭き出した。
しゃべれない……。
邪魔臭かったから手で退けようとしたが、腕も思うように動かない。
なのでしばらくスバルちゃんに好き勝手に顔を拭かれまくった。
でも、気持ちいいや~。
そして、スバルちゃんがタオルを下げた。
あー、スッキリした~。
じゃなくて~。
「スバルちゃん。俺、刺されてからどうなったんだ?」
スバルちゃんがタオルを洗面器の水で絞りながら答える。
「皆に助けられたのよ」
「皆?」
そうだ──。
俺が最後に見たのはスカル姉さんが飛び蹴りで割って入って来たところだ。
あれで、助けられたんだ。
でも、皆ってことは、皆も居たのか。
前を向き直したスバルちゃんが説明してくれた。
「私は居なかったんですが、皆さんが戦ってアスラン君を助け出してくれたらしいですよ」
「戦ったのか、皆で……」
「スカル先生を中心に、ゴリさん、バイマンさん、オアイドスさん、カンパネルラお爺さん、九匹のシルバーウルフたち、それにガイアちゃんまで戦ったとか──」
「それで、勝敗は?」
「あの三人を取り押さえて、魔王城前に連行しました」
「じゃあ、俺も奴らの顔を拝みに行くか──」
そう言い俺が身体を起こそうと力んだが、やはり背中が痛んで動けない。
それどころかベッドから上半身を起こすことすら出来ない。
起きる代わりに俺の背中から激痛が全身に走った。
「痛い……。スバルちゃん、痛いよ……」
俺が情けない声で言うと、スバルちゃんは微笑みながら俺の容態を説明してくれる。
「一週間はベッドで寝たきりです。傷口はヒールで治らないから昔ながらの治療法で縫い合わせたのよ。あとは私の薬草と痛み止で時間を掛けて癒さないと」
「い、一週間も寝たきりかよ……」
スバルちゃんが意地悪っぽく言う。
「ベッドから起きれるのが一週間先で、一人で歩けるようになるのが一ヶ月先よ」
「マジで……」
「マジです」
「その間のトイレは?」
スバルちゃんがベッドの下から尿瓶を取り出して可愛らしく微笑みながら指差した。
マジですか……。
「大きいほうは?」
続いてスバルちゃんがベッドの下からアヒルのオマルを取り出して可愛らしく微笑みながら指差した。
アヒルかよ……。
「でも、一人で出きるかな……」
スバルちゃんが恥ずかしそうにモジモジしながら小声で言う。
「わ、私がお手伝いします……」
「そ、それは魅力的な提案だな……。でも断るよ」
「あなたは大怪我をしたのよ。死にそうなぐらいの大怪我を──。本当に心配したんだからね」
「それとこれとは話が別だろ……」
「ですが……」
小声を返したスバルちゃんは、それでも優しく微笑んでいる。
でも、その微笑みの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。
もう一度だけ俺が問う。
「俺、かなりヤバかった?」
「うん、かなり……」
スバルちゃんが俯いた。
あー、心配掛けたのかな……。
これは、少しの間は大人しくしていないとならないかな……。
「分かったよ。是非ともトイレをスバルちゃんに手伝ってもらいたい……」
「喜んで……」
喜ぶの!?
マジで手伝ってくれた上に喜ぶの!?
その手の趣味が有るのかな!?
あとで訊いた話だと、ヒルダやプロ子たちも無事だったらしい。
バラバラに刻まれたが、メイドたちで死んだ者は居ないとか。
今、バームとクーヘン兄弟が縫合中らしい。
それとミーちゃん、角刈りポニーテール、クラウドの三名は、スカル姉さんたちにボコボコにされたあとに魔王城の地下牢獄に幽閉されたとか。
角刈りポニーテールと戦った際に、何人かが怪我をしたらしいが、怪我をしたのは野郎どもばかりだと聞かされている。
スカル姉さんは無事のようだ。
その日の晩にはスカル姉さんも診療所に帰ってきて俺の額にデコピンを食らわせて行った。
俺が抵抗できないことを良いことに、三発もデコピンを連続でブチ込んで行ったのだ。
更にチ◯コまで摘まみ上げれて、グイグイ引っ張りやがった。
マジで人が動けないからって……。
それにしても、俺は眠い。
こんなに眠いのは初めてだ。
暇さえあれば寝てしまう。
血が足りてないのかな。
まただ……。
また、眠くなって来た……。
どうせ、する、ことが、ないんだから、ね、よ、う……。
Zzzzzz……。
【つづく】
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