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第453話【ゴメス】
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凶介と別れた俺はソドムタウンに戻って来ていた。
そろそろ魔法使いギルドがオープンする時間だろう。
俺はファイアーブレスの魔法書を求めて魔法使いギルドに向かっていた。
ストレスはたっぷり眠ったので癒された。
食欲はヒルダが作ってくれた朝食で満たされた。
金欲は凶介がもたらしたスコップ情報で満たされた。
性欲は……、呪いのせいで満たされない。
残るは憤怒と嫉妬を満たすのみだ。
ファイアーブレスの魔法書を手に入れて、俺を笑った全員の頭を燃やしてやるぞ!!
あー、でも~……。
女性たちの髪の毛を燃やすのは、流石にやり過ぎかな~。
しかし、スバルちゃんは兎も角スカル姉さんやユキちゃんは許されないよな。
髪の毛を燃やす以外の仕返しを考えなくてはなるまい。
それは追々考えるとしてだ。
まずは、ファイアーブレスの魔法書だ。
そして、怒りと恨みに燃える俺は魔法使いギルドに到着した。
「よし、開店しているな」
俺が魔法使いギルドの塔に入って行くと、一階ロビーで定員さんが元気良く挨拶をしてきた。
「いらっしゃいませ~」
明るくて笑顔が素敵な女性だ。
黒いローブに魔法のスタッフを持っている魔法使いルックの女性定員だった。
ちょくちょく見る定員だが名前までは知らないし、美人ではあるがモブ感が強い女性定員である。
その女性定員に俺は近付くと目的の物が売っているか確認した。
「すみませんが、ファイアーブレスのスクロールは売ってませんか?」
「はい、在庫なら在るはずです。ただいま取って参りましょうか?」
「ああ、頼む」
「畏まりました。少々お待ちくださいませ」
「あいよ」
女性定員は一礼すると奥の扉に入って行った。
「さてと──」
俺は待っている間に店内を見て回る。
ショーケースの中には色々なマジックアイテムが並んでいた。
全部売り物なのだろうが、武具はほとんどプラス1か2ばかりだ。
プラス3以上のマジックアイテムは一つも無い。
「まあ、一般に売られている物ならこんなものか……」
ゴモラタウンのグレースママの店と比べればショボイ感じがした。
だが、一点だけ俺の目を引いたマジックアイテムが在った。
いや、これはマジックアイテムじゃあないぞ。
「こ、これは……」
それはショーケースの中に入っておらず、檻の中に入っていた。
檻は小さい。
人の頭が二つ並んで入るぐらいのサイズで、テーブルの上に置かれていた。
その檻の中には、モフモフしたロン毛の変な生命体が入っている。
否、生き物かどうかも分からない。
それはまるで生きたカツラだった。
タコかヒトデのようにゆっくりと動いている。
檻には値札が下がっていて、値段の他に名前も書いてあった。
「魔法生物、ヘアーグレムリン……」
このズラ状の生き物がグレムリン?
グレムリンとはインプと違う小悪魔だ。
俺が知っているグレムリンと言えば映画のグレムリンだろう。
クリスマスにプレゼントされた小悪魔が増殖して大暴れするストーリーの映画である。
振るい文献だと、世界大戦時代に飛行機や戦車などに取り付いてトラブルを起こすとされる、まだ新しい種類の小悪魔だ。
最近だとコンピューターに取り付いて株式操作でゴミ投資を勝手にやらかしたり、銀行預金でアダルトグッツを勝手に通販で100ダース買ったりと、とんでもないことをやらかす小悪魔として名が知れている。
まあ、この世界には、コンピューターや通販どころか、まともな機械すら無いから雑魚い小悪魔だな。
しかもヘアーって何さ?
グレムリンもインプもあまり外見は変わらない小悪魔のはずだ。
だが、こいつは髪の毛のような身体をしていやがる。
なんか、キモイ……。
俺が檻に顔を近付けて眺めていると、後ろから定員に声を掛けられた。
「お待たせしました、お客様。こちらがファイアーブレスのスクロールでございます」
俺は振り返ると差し出されたスクロールを受け取った。
そして、代金を払う。
「ありがとうございました」
頭を下げた定員さんに、俺は檻を指差しながら訊いてみた。
「なあ、このヘアーグレムリンって、なんに使うんだ?」
定員さんが答える。
「こちらは主に使い魔として契約されるお客様が多いです」
「使い魔って、普通はカラスとか黒猫とかじゃあないのか?」
「魔法使いには変わり者も多いですからね。好んで小悪魔と使い魔の契約を結ぶ方も少なくありませんよ」
「へぇ~」
俺の視線がもう一度ヘアーグレムリンに移った。
すると定員さんが述べる。
「このヘアーグレムリンは、特に髪の毛が薄くなってきた男性魔法使いのお客様に人気となっています」
「なにっ!!」
やはりか!?
やはり頭に乗せるのか!?
この小悪魔と使い魔の契約を結んで、ズラとして使うんだな!!
「どうやって使い魔にするんだ?」
「ファミリアと言う初級魔法で契約できます。魔法使いなら属性に関係無く習得できる魔法ですわ」
「そ、そのファミリアって魔法のスクロールは売ってるのかい?」
「はい、ございます」
俺は檻にぶら下がった値札を摘まんで値段を見た。
「10000Gだと!?」
「はい」
「こんなズラ系小悪魔が10000Gもするのか!?」
「はい、一部ファンには大変人気な小悪魔ですから」
「なんでファンが多い!?」
「町でウィックを買えば、上質ならば同じだけの値段がします。ですがヘアーグレムリンは魔法使い特権がついてきますからね」
「特権っとは?」
「まず、使い魔なのでペット同然。人によっては家族同然ですね」
「それが特権なのかよ?」
「何より生きてますから呼べば寄って来ます。風で飛ばされても戻って来ますし、部屋で無くしても呼べば姿を表します。失くす心配がありません」
「なるほど……」
紛失防止効果が有るんだな。
「でえ、こいつらの餌は何だ?」
「使い魔なので人間の魔力を少し吸い取ります。ですが健康な人なら問題無い量です」
「髪型はどうする。散髪が必要なのか?」
「ファミリアとして契約すれば、主人のイメージ通りの髪型や色に変化します。ただし主人の身長の半分程度の長髪にしかなりませんが」
「洗濯はどうする?」
「水洗いです」
「寿命は?」
「長ければ100年以上生きるとか」
んん~……。
少し悩むな……。
「もう少し負からない?」
「負かりません……」
ケチいな~。
「ですが、今なら即金でお買い上げするならば、サービスでファミリアのスクロールを一本お付けいたしますわ」
「買った!!」
こうして俺に新しい仲間が加わった。
名前はなんにしようかな~。
ゴメスだ!
ゴメスに決めたぜ!!
【つづく】
そろそろ魔法使いギルドがオープンする時間だろう。
俺はファイアーブレスの魔法書を求めて魔法使いギルドに向かっていた。
ストレスはたっぷり眠ったので癒された。
食欲はヒルダが作ってくれた朝食で満たされた。
金欲は凶介がもたらしたスコップ情報で満たされた。
性欲は……、呪いのせいで満たされない。
残るは憤怒と嫉妬を満たすのみだ。
ファイアーブレスの魔法書を手に入れて、俺を笑った全員の頭を燃やしてやるぞ!!
あー、でも~……。
女性たちの髪の毛を燃やすのは、流石にやり過ぎかな~。
しかし、スバルちゃんは兎も角スカル姉さんやユキちゃんは許されないよな。
髪の毛を燃やす以外の仕返しを考えなくてはなるまい。
それは追々考えるとしてだ。
まずは、ファイアーブレスの魔法書だ。
そして、怒りと恨みに燃える俺は魔法使いギルドに到着した。
「よし、開店しているな」
俺が魔法使いギルドの塔に入って行くと、一階ロビーで定員さんが元気良く挨拶をしてきた。
「いらっしゃいませ~」
明るくて笑顔が素敵な女性だ。
黒いローブに魔法のスタッフを持っている魔法使いルックの女性定員だった。
ちょくちょく見る定員だが名前までは知らないし、美人ではあるがモブ感が強い女性定員である。
その女性定員に俺は近付くと目的の物が売っているか確認した。
「すみませんが、ファイアーブレスのスクロールは売ってませんか?」
「はい、在庫なら在るはずです。ただいま取って参りましょうか?」
「ああ、頼む」
「畏まりました。少々お待ちくださいませ」
「あいよ」
女性定員は一礼すると奥の扉に入って行った。
「さてと──」
俺は待っている間に店内を見て回る。
ショーケースの中には色々なマジックアイテムが並んでいた。
全部売り物なのだろうが、武具はほとんどプラス1か2ばかりだ。
プラス3以上のマジックアイテムは一つも無い。
「まあ、一般に売られている物ならこんなものか……」
ゴモラタウンのグレースママの店と比べればショボイ感じがした。
だが、一点だけ俺の目を引いたマジックアイテムが在った。
いや、これはマジックアイテムじゃあないぞ。
「こ、これは……」
それはショーケースの中に入っておらず、檻の中に入っていた。
檻は小さい。
人の頭が二つ並んで入るぐらいのサイズで、テーブルの上に置かれていた。
その檻の中には、モフモフしたロン毛の変な生命体が入っている。
否、生き物かどうかも分からない。
それはまるで生きたカツラだった。
タコかヒトデのようにゆっくりと動いている。
檻には値札が下がっていて、値段の他に名前も書いてあった。
「魔法生物、ヘアーグレムリン……」
このズラ状の生き物がグレムリン?
グレムリンとはインプと違う小悪魔だ。
俺が知っているグレムリンと言えば映画のグレムリンだろう。
クリスマスにプレゼントされた小悪魔が増殖して大暴れするストーリーの映画である。
振るい文献だと、世界大戦時代に飛行機や戦車などに取り付いてトラブルを起こすとされる、まだ新しい種類の小悪魔だ。
最近だとコンピューターに取り付いて株式操作でゴミ投資を勝手にやらかしたり、銀行預金でアダルトグッツを勝手に通販で100ダース買ったりと、とんでもないことをやらかす小悪魔として名が知れている。
まあ、この世界には、コンピューターや通販どころか、まともな機械すら無いから雑魚い小悪魔だな。
しかもヘアーって何さ?
グレムリンもインプもあまり外見は変わらない小悪魔のはずだ。
だが、こいつは髪の毛のような身体をしていやがる。
なんか、キモイ……。
俺が檻に顔を近付けて眺めていると、後ろから定員に声を掛けられた。
「お待たせしました、お客様。こちらがファイアーブレスのスクロールでございます」
俺は振り返ると差し出されたスクロールを受け取った。
そして、代金を払う。
「ありがとうございました」
頭を下げた定員さんに、俺は檻を指差しながら訊いてみた。
「なあ、このヘアーグレムリンって、なんに使うんだ?」
定員さんが答える。
「こちらは主に使い魔として契約されるお客様が多いです」
「使い魔って、普通はカラスとか黒猫とかじゃあないのか?」
「魔法使いには変わり者も多いですからね。好んで小悪魔と使い魔の契約を結ぶ方も少なくありませんよ」
「へぇ~」
俺の視線がもう一度ヘアーグレムリンに移った。
すると定員さんが述べる。
「このヘアーグレムリンは、特に髪の毛が薄くなってきた男性魔法使いのお客様に人気となっています」
「なにっ!!」
やはりか!?
やはり頭に乗せるのか!?
この小悪魔と使い魔の契約を結んで、ズラとして使うんだな!!
「どうやって使い魔にするんだ?」
「ファミリアと言う初級魔法で契約できます。魔法使いなら属性に関係無く習得できる魔法ですわ」
「そ、そのファミリアって魔法のスクロールは売ってるのかい?」
「はい、ございます」
俺は檻にぶら下がった値札を摘まんで値段を見た。
「10000Gだと!?」
「はい」
「こんなズラ系小悪魔が10000Gもするのか!?」
「はい、一部ファンには大変人気な小悪魔ですから」
「なんでファンが多い!?」
「町でウィックを買えば、上質ならば同じだけの値段がします。ですがヘアーグレムリンは魔法使い特権がついてきますからね」
「特権っとは?」
「まず、使い魔なのでペット同然。人によっては家族同然ですね」
「それが特権なのかよ?」
「何より生きてますから呼べば寄って来ます。風で飛ばされても戻って来ますし、部屋で無くしても呼べば姿を表します。失くす心配がありません」
「なるほど……」
紛失防止効果が有るんだな。
「でえ、こいつらの餌は何だ?」
「使い魔なので人間の魔力を少し吸い取ります。ですが健康な人なら問題無い量です」
「髪型はどうする。散髪が必要なのか?」
「ファミリアとして契約すれば、主人のイメージ通りの髪型や色に変化します。ただし主人の身長の半分程度の長髪にしかなりませんが」
「洗濯はどうする?」
「水洗いです」
「寿命は?」
「長ければ100年以上生きるとか」
んん~……。
少し悩むな……。
「もう少し負からない?」
「負かりません……」
ケチいな~。
「ですが、今なら即金でお買い上げするならば、サービスでファミリアのスクロールを一本お付けいたしますわ」
「買った!!」
こうして俺に新しい仲間が加わった。
名前はなんにしようかな~。
ゴメスだ!
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【つづく】
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