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第426話【行き止まりの壁】

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やりー!

「おお、持ってるじゃあねえか、この野郎~」

俺は倒したばかりのフォーハンドスケルトンウォリアーの首無し死体を漁っていた。

ハンドアックスがマジックアイテムだったほかに、プレートメイルの中に変な置物と魔法のスクロールを隠してやがったぜ。

マジックアイテムはこの三つだけだった。

まあ、閉鎖ダンジョンに再チャレンジしての初戦利品だからな。

まあまあの収穫だろう。

「回収終了っと。よし、冒険再開だぜ」

俺は石橋の上で、来た道のほうを見た。

やはり鉄柵で塞がれたままだ。

仕方無いので俺はフォーハンドスケルトンウォリアーが出て来た扉のほうに進んだ。

扉を潜ると、そこは廊下だった。

真っ直ぐと道が続いているのだが、直ぐ横に1メートルちょっとの窪みが有る。

その中にレバーが一つあった。

「なんだ、このレバー?」

トラップだとしても仕組みは分からんな。

まあ、引いて見るか。

「作動っ!」

俺は躊躇無くレバーを下に入れた。

すると地鳴りが轟く。

「おおっ!!」

ゆっくりだが俺の背後で石橋の部屋の扉が閉まった。

「もしかして──」

もう一度レバーを上げて見ると地鳴りが轟いて扉が開いた。

「やはりそうだわ~」

どうやらこのレバーがトラップの解除装置のようだ。

扉を開くと留め具が外れて鉄柵が降りる。

そして、このレバーを引くと扉が閉まって石橋の向こうの鉄柵が上がるのだろう。

「なかなか凝った仕掛けだな」

よし、カラクリも分かったことだし先に進むかな。

こうしてトラップの仕組みに納得した俺は閉鎖ダンジョンの廊下を進んで先を目指した。

すると二方向に別れる階段に出くわす。

右は下りの階段だ。

左は上りの階段だった。

まあ、今回は地下を目指すのが最初の目的だ。

ここは下りの階段をさっさと進もうかな。

それから幾度か曲がりくねる階段を数分ほど下ると真っ直ぐな廊下に出た。

今度はその廊下をひたすら進む。

しかし行き止まりに行き当たる。

「あれ、行き止まりかよ……。ここまで来てハズレだったぜ。いや、違うな?」

廊下を進んでいた俺が行き止まりの壁だと思った物は、プルンプルンと震えていた。

周りの石壁と同じ感じの色合いだったから壁かと思ったが、それは道いっぱいを塞ぐスライムの塊だった。

どうやら擬態しているようだな。

「でけーなー……」

俺はネーム判定をしてみた。

【キューブスライムです】

キューブって、直訳するとなんだっけ?

ルービックキューブとかだから四角いってことか?

こんな時にはググリたいよね。

本当にネットが欲しいわ~。

久々にソシャゲーとかやりたいわ~。

エロサイト観たいわ~……。

痛った……。

「さて、このデカブツをどうしたものかな?」

キューブスライムは俺を襲って来る気配は今のところ無い。

だが、道幅いっぱいいっぱいに詰まってるせいで先に進めない。

マジで邪魔だ。

こいつを倒すしか先に進む方法は無いだろう。

てか、向こう側が見えないから先があるのかも分からないけれどね。

「兎に角、駆除だな」

俺は黄金剣にファイアーエンチャントウェポンを掛けてからキューブスライムに近付いた。

「じゃあ、突くか──」

俺が炎の黄金剣を後方に引いて突こうと構えたときであった。

キューブスライムがプルプルと揺れだした。

刹那!!

「敵意っ!!」

壁のようなキューブスライムの体から触手が三本伸びでた。

しかも動きが速い。

「くそっ!!」

俺は触手の一本を黄金剣で斬り落として、残りの二本を後方に跳ねて躱した。

「この野郎、獲物が近付くのを待ってやがったな!」

切り落とされた触手の先は、陸に釣り上げられた魚のように跳ねていたが、しばらくするとドロリと溶けて動かなくなる。

不意打ちは回避できた。

だがしかし、キューブスライムがズルズルと前進を開始する。

「この野郎。完全に俺を補食する気満々だな!」

俺は腰からゴールドショートソード+3を引き抜いた。

黄金剣の二刀流だ。

「行くぞ!」

俺は黄金の短剣に秘められた力でサンダーエンチャントウェポンを掛ける。

元々ゴールドショートソードに有る能力だ。

「火と電気で削り殺してやる!」

俺が双剣を構えて近付くとキューブスライムは三本の触手を伸ばして攻撃してくる。

どうやら触手の数は三本までしか伸ばせないようだな。

俺は巧みに双剣を振るって触手を切り落としてはキューブスライムの本体も斬り付けた。

切り落とされた触手の先が何本も俺の足元で跳ねている。

「オラオラオラっ!!」

サクサクと斬り進む俺が力いっぱいに袈裟斬りを繰り出すとキューブスライムの体が大きく裂けてから崩れ落ちた。

ドロリとした汚物のように、廊下いっぱいに広がると、キューブスライムは動かなくなる。

もうその形はキューブでは無かった。

生命力が完全に尽きて形を保ってられなくなったのだろう。

「よし、チョロいぜ。──おや?」

崩れ落ちたチューブスライムの中から小箱が出て来る。

20センチぐらいの正方形のチェストボックスだった。

俺は異次元宝物庫内から要らないウエスを取り出すとチェストボックスにへばり付いたヘドロを綺麗に拭い取る。

「これはこれでなかなかだな」

味の有る装飾が施されたチェストボックスだった。

このチェストボックス自体がマジックアイテムである。

だからキューブスライムに溶かされずに残っていたのだろう。

キューブスライム的には消化不良状態だったのだろうさ。

「どうする。中身が気になるな……」

だが、今まで戦利品の鑑定は冒険が終わってからの楽しみとして取っておいている。

それがルーティンと化しているのだ。

ここは縁起を担いで決まりを守ろうか……。

チェストボックスを開けるのは、寝る前のドキドキ戦利品チェックタイムまで待とう。

俺は小箱を異次元宝物庫に仕舞うとキューブスライムが塞いでいた廊下の先を見た。

やはり道はまだまだ続いている。

俺はそのまま廊下を進んだ。


【つづく】
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