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第397話【レベル40到達】
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時間が止まる。
俺がレッサーデーモンのルイレアールを倒した直後に世界が灰色に染まった。
シャンデリアに飾られた天井が透き通ると晴天の空が広がる。
その青い空の果てに閃光が輝くと、そこに光の扉が現れた。
光の扉から長い階段が俺の手前まで伸び下りて来る。
「出やがったな、糞女神のアテナさんよ……」
俺は苦虫を噛み潰したような表情で糞女神を出迎えた。
「…………」
そう、出迎えた……。
「んー……?」
あれ~~?
俺、ちゃんと出迎えているよ?
だが、糞女神は光の扉から姿を現さない。
「あれれ~、何してるの。遅刻かな……?」
まあ、いいや……。
俺はとりあえずヒューマンキラーで傷付いている体をヒールで癒した。
しかし、俺が全身の傷を癒し終わっても糞女神の野郎は光の扉から出て来ない。
あの野郎、またテレビドラマでも観ていて俺を放置しているのかな?
ちっ、しゃあないか……。
落胆した俺は仕方無いと階段を上りだした。
やがて光の扉に到達する。
「あのー、どなたかいらっしゃいますか~?」
俺は光の扉を開けて中を覗き込みながら声を掛けるが返答は無い。
扉の向こうは静かである。
光の扉の中は室内だった。
「なんじゃい、この部屋は……」
驚きながら室内を見回す俺は、恐る恐る部屋に踏み込んだ。
部屋の中は白とピンクが目映い乙女チックな部屋だった。
壁紙はハート柄のピンク。
窓のカーテンもフリル付きのピンク。
ベッドは天井付きでピンクの掛布団。
室内に在るテーブルや椅子は純白ばかりで高級品。
すべての家具がシャンデリアからの光に照らされて目が痛いほど輝いていた。
俺は呆れながら感想を述べる。
「なんだ、この世間知らずのお嬢様を模倣する貧乏精神の女が住んで居そうな部屋は……」
兎に角、何から何まで痛々しいのだ。
「んっ……?」
気付けばベッドの布団に膨らみがある。
誰か寝てやがるぞ。
俺は痛々しい部屋を進んで可愛らしいベッドに近付いた。
「すやすや、すやすや……」
「この野郎……」
そこにはノーメイクの糞女神が熟睡してやがる。
ノーメイクの糞女神アテナはいつもよりあどけなく見えた。
でも、可愛くない寝顔だ。
ガキっぽい。
「なるほど」
ここは糞女神の寝室のようだな。
この糞女神様は遅刻どころか完全に寝坊してやがる。
しかも熟睡中じゃあねえか……。
俺が振り返りテーブルの上を見てみれば、発泡酒の500ミリ缶と、数枚のブルーレイディスクのパッケージが置かれていた。
ビールの缶は六本すべてが空である。
俺はブルーレイを手に取ってタイトルを確認した。
「愛の逃○行……」
韓流ドラマかよ!!
しかもレンタルした日付が昨日の晩なのに、もう四巻まで観てやがるぞ。
この糞女神、昨日は徹夜だったな!
俺は額に血管を浮かべながらベッドの元に戻った。
寝ている糞女神に声を掛ける。
「おい、糞女神、起きろ。仕事の時間だぞ!」
「ムニュムニュ……。お母さん、あと五分……」
イラっ!!
なに、この女子高生みたいな寝言は!?
もうそんな歳じゃあねえだろうが!!
「おい、起きろ……。俺がレベル40になったぞ! ボーナスタイムだ!!」
「んん……。今日は仕事を休むから、会社に電話しといて、お母さん……」
「何を寝ぼけていやがる!!」
「有休届けはあとで出しとくからぁ……」
「有休があるんかい!?」
それっきり糞女神の反応が無くなった。
しばらく待っても起きてこない。
完全にあと五分で起きる気なんてなさそうだぞ。
俺は壁に在る可愛らしい掛け時計の針を仰視しながら待つ。
一分が過ぎた。
三分が過ぎた。
五分が過ぎた。
「おい、糞女神。五分が過ぎたぞ」
眠る糞女神から返答は無い。
更に七分が過ぎた。
そして、十分が過ぎた。
「おーい、糞女神様。もう十分が過ぎたぞ!」
「すやすや、すやすや……」
やはり反応無し。
完璧に熟睡中だ。
なんなんだ、この糞女神は……。
「はぁ~……、しかたねえか……」
俺は落胆するように溜め息を吐いた。
「どうするかな……」
俺は言いながら防具を脱ぎ出す。
「俺も疲れているから休ませてもらうぞ……」
そう述べた俺は全裸で糞女神が寝るベッドに潜り込むと隣に添い寝した。
「あったか~い。このベッドはフカフカだぁ~」
俺は戦いで疲れていたので直ぐに睡魔に襲われた。
こうして全裸の俺も糞女神と一緒に熟睡する。
【つづく】
俺がレッサーデーモンのルイレアールを倒した直後に世界が灰色に染まった。
シャンデリアに飾られた天井が透き通ると晴天の空が広がる。
その青い空の果てに閃光が輝くと、そこに光の扉が現れた。
光の扉から長い階段が俺の手前まで伸び下りて来る。
「出やがったな、糞女神のアテナさんよ……」
俺は苦虫を噛み潰したような表情で糞女神を出迎えた。
「…………」
そう、出迎えた……。
「んー……?」
あれ~~?
俺、ちゃんと出迎えているよ?
だが、糞女神は光の扉から姿を現さない。
「あれれ~、何してるの。遅刻かな……?」
まあ、いいや……。
俺はとりあえずヒューマンキラーで傷付いている体をヒールで癒した。
しかし、俺が全身の傷を癒し終わっても糞女神の野郎は光の扉から出て来ない。
あの野郎、またテレビドラマでも観ていて俺を放置しているのかな?
ちっ、しゃあないか……。
落胆した俺は仕方無いと階段を上りだした。
やがて光の扉に到達する。
「あのー、どなたかいらっしゃいますか~?」
俺は光の扉を開けて中を覗き込みながら声を掛けるが返答は無い。
扉の向こうは静かである。
光の扉の中は室内だった。
「なんじゃい、この部屋は……」
驚きながら室内を見回す俺は、恐る恐る部屋に踏み込んだ。
部屋の中は白とピンクが目映い乙女チックな部屋だった。
壁紙はハート柄のピンク。
窓のカーテンもフリル付きのピンク。
ベッドは天井付きでピンクの掛布団。
室内に在るテーブルや椅子は純白ばかりで高級品。
すべての家具がシャンデリアからの光に照らされて目が痛いほど輝いていた。
俺は呆れながら感想を述べる。
「なんだ、この世間知らずのお嬢様を模倣する貧乏精神の女が住んで居そうな部屋は……」
兎に角、何から何まで痛々しいのだ。
「んっ……?」
気付けばベッドの布団に膨らみがある。
誰か寝てやがるぞ。
俺は痛々しい部屋を進んで可愛らしいベッドに近付いた。
「すやすや、すやすや……」
「この野郎……」
そこにはノーメイクの糞女神が熟睡してやがる。
ノーメイクの糞女神アテナはいつもよりあどけなく見えた。
でも、可愛くない寝顔だ。
ガキっぽい。
「なるほど」
ここは糞女神の寝室のようだな。
この糞女神様は遅刻どころか完全に寝坊してやがる。
しかも熟睡中じゃあねえか……。
俺が振り返りテーブルの上を見てみれば、発泡酒の500ミリ缶と、数枚のブルーレイディスクのパッケージが置かれていた。
ビールの缶は六本すべてが空である。
俺はブルーレイを手に取ってタイトルを確認した。
「愛の逃○行……」
韓流ドラマかよ!!
しかもレンタルした日付が昨日の晩なのに、もう四巻まで観てやがるぞ。
この糞女神、昨日は徹夜だったな!
俺は額に血管を浮かべながらベッドの元に戻った。
寝ている糞女神に声を掛ける。
「おい、糞女神、起きろ。仕事の時間だぞ!」
「ムニュムニュ……。お母さん、あと五分……」
イラっ!!
なに、この女子高生みたいな寝言は!?
もうそんな歳じゃあねえだろうが!!
「おい、起きろ……。俺がレベル40になったぞ! ボーナスタイムだ!!」
「んん……。今日は仕事を休むから、会社に電話しといて、お母さん……」
「何を寝ぼけていやがる!!」
「有休届けはあとで出しとくからぁ……」
「有休があるんかい!?」
それっきり糞女神の反応が無くなった。
しばらく待っても起きてこない。
完全にあと五分で起きる気なんてなさそうだぞ。
俺は壁に在る可愛らしい掛け時計の針を仰視しながら待つ。
一分が過ぎた。
三分が過ぎた。
五分が過ぎた。
「おい、糞女神。五分が過ぎたぞ」
眠る糞女神から返答は無い。
更に七分が過ぎた。
そして、十分が過ぎた。
「おーい、糞女神様。もう十分が過ぎたぞ!」
「すやすや、すやすや……」
やはり反応無し。
完璧に熟睡中だ。
なんなんだ、この糞女神は……。
「はぁ~……、しかたねえか……」
俺は落胆するように溜め息を吐いた。
「どうするかな……」
俺は言いながら防具を脱ぎ出す。
「俺も疲れているから休ませてもらうぞ……」
そう述べた俺は全裸で糞女神が寝るベッドに潜り込むと隣に添い寝した。
「あったか~い。このベッドはフカフカだぁ~」
俺は戦いで疲れていたので直ぐに睡魔に襲われた。
こうして全裸の俺も糞女神と一緒に熟睡する。
【つづく】
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