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第368話【悪霊が群がる城】
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マッチョなエルフたちが森の木を斬り倒して道を作る中で俺はミケランジェロと立ち話をしていた。
サイクロプスのミケランジェロが愛用のスレッジハンマーを背負ったまま言う。
「なあ、アスラン。私も手伝いたいのだが、何をしたら良いのだ。私のような魔物は破壊は得意だが創作は苦手な種族だ。だから指示をくれないか」
「とりあえず、エルフたちが斬り倒した丸太を一ヶ所に集めて置いてくれないか。あとでそれで家を建築するのに使うからさ」
「それは、私の家も含まれるのか?」
「当然だろ。最初は粗末な家だが、そのうちに石作りの立派な神殿に住まわしてやるよ」
「本当か、アスラン!?」
ミケランジェロは歓喜している様子だった。
ミケランジェロはドワーフの村の側で、洞窟に住んでいた。
500年もだ。
そんな彼からして、ちゃんとした家に住めるってのが喜ばしいのだろう。
それが神殿となれば尚のことだ。
「お前さんはガイアの血を引く神族の血縁なのだろ」
「ああ、確かに……」
「ならば俺たちと一緒に町を作って暮らせ。町を作ったら、守れ。それが神の役目だ」
「感謝する……」
そう呟いたミケランジェロが作業を始めた。
エルフたちが斬り倒した丸太を軽々と担いで一ヶ所に集め始める。
まあ、なんとも頼もしいパワーだぜ。
「さて、俺も次の作業に入るかな」
俺の次の作業は魔王城の探索だ。
300メートルほど離れたここまで伝わる霊気の主をどうにかせんとならん。
リッチのマミーレイス婦人──。
アインシュタイン曰く、闇の女王だ。
今回のミッションで最大の困難だろう。
半端ない霊気だぜ。
リッチと言えばアンデッドの中でも最強の部類だ。
だから嘗めて掛かれない。
「アスラーン、ボートの準備ができたぞ~」
水辺のほうからゴリが声を掛けてきた。
そちらを見ればゴリが小型のボートに乗ってオールを振っている。
「おう、今行くぜ!」
俺はボートに駆け寄り飛び乗った。
水上でボートが激しく揺れる。
「危ないな! もっと静かに乗れよ!!」
「すんまそ~ん……」
俺はゴリが漕ぐボートで魔王城に向かった。
ボートにはもう一隻のボートがロープで繋がれ牽引されている。
「俺はお前を向こう岸に降ろしたら、帰っていいんだな?」
「ああ、アンデッドが複数居そうだから、帰ったほうがいい……」
「マジで一人で大丈夫か?」
「お前が居ても足手纏いだろ」
「だよな……」
「まあ、いつものことだから気にすんな。それより俺が留守の間、向こう岸の面倒を見てくれないか」
「ああ、それは任せておけ」
やがてボートは魔王城の麓に到着した。
そこで俺がボートを降りるとゴリは一人で引き返して行く。
俺は手を振ってゴリを見送った。
「さて……」
振り返り黒い城を見上げる。
まずは上に登れる場所を見つけないとな。
そして直ぐに城に上がれる階段を見つけた。
俺は魔王城に初めての一歩を踏み入れた。
崩れ掛けた正門を潜る。
まずは正面から入りたかったのだ。
まあ、記念だからな。
それにしても凄い霊気だ。
魔王城の島に上陸してから更に霊気が強く感じられる。
それにしても周囲を見回せば、城の倒壊が激しいな。
何処からでも幽霊が出てきそうな雰囲気である。
周りの景色が怪しい紫色に見えるぐらいだ。
「さて、早速出迎えかな?」
俺は現在城門が打ち破られた正面ゲートを潜った直ぐ側に立っていた。
城壁に囲まれた広場だ。
そして、複数の出入口が有る。
そのすべての闇に何かが蠢いていた。
おそらく下級の アンデッドだろう。
しかし昼間のせいで出て来ない。
すべての数を合わせれば五十体……。
否、百体は居るかな?
だが、敵にすらならないだろう。
一番高い霊気は正面から流れて来る。
俺はそっちに向かって進んだ。
城内に入ると薄暗かった。
俺が入城すると群がっていたスケルトンたちが道を開ける。
隅のほうに逃げて行く。
「警戒こそされているが、敵意が無いな。こいつらから殺気が感じられない……」
おそらくこいつらを束ねているボスキャラが俺に敵意を持っていないのだろう。
俺は一番強い霊気を辿って先に進んだ。
そして城の中をアンデッドたちに見張られながら進んで謁見室に入った。
室内は天井が崩れて日差しに照らされている。
その日差しの中に玉座が在った。
魔王城の玉座──。
魔王の玉座だ。
黒曜石で作られた玉座には、禍々しい髑髏や動物の角や獣の牙が飾られていた。
いかにも恐怖を司る魔王の玉座だ。
ここに500年前、前魔王が鎮座していたのだろう。
すると辺りが突然暗くなった。
天から照らしていた日差しが黒雲で遮られる。
そして、ドッと霊気が強くなった。
「来るか!」
俺は異次元宝物庫から黄金剣を引き抜くと腰を落として身構えた。
すると謁見室の壁からアンデッドたちが大量に現れる。
壁をすり抜けて沸いたのだ。
うーん、百体は居るな……。
ワイトやレイスの霊体系アンデッドばかりだ。
大臣のような上品な容姿の悪霊たちだった。
これはヤバイぞ……。
この数に魔法を一斉射撃されたら、幾ら俺でも即死レベルだぜ。
半分諦めた俺は若干剣を下げて体の力を抜いた。
驚異を振り払うようにリラックスを心掛ける。
すると玉座の後ろから深々とフードを被ったローブ姿の霊体が現れた。
「出たな……」
フード付きローブは着物としてハッキリと見えるが、その中身は暗闇だった。
おそらく、こいつがマミーレイス婦人だろう。
間違いない……。
ローブの霊体が言う。
『汝、魔王か、勇者か……?』
ボイスじゃあない、テレパシーだ。
年配の女性の声質だった。
でも、悪霊とは思えないほどに澄んだ声色である。
美しい声だ。
俺は率直に答えた。
「俺は、どちらでもないな」
『ならば、選べ……』
「その必要は無い。俺はソロ冒険者アスランだ。魔王でも勇者でもない。強いて言うならば──」
『強いて言うならば、なんじゃ?』
「ここに町を作る者だ!!」
『はい、失格。退場ね』
「えっ!!!」
突然俺の足元が崩れた。
落とし穴だ。
「うわぁぁああああ~!!!」
俺は真っ逆さまに落ちて行く。
魔王城の地下に……。
【つづく】
サイクロプスのミケランジェロが愛用のスレッジハンマーを背負ったまま言う。
「なあ、アスラン。私も手伝いたいのだが、何をしたら良いのだ。私のような魔物は破壊は得意だが創作は苦手な種族だ。だから指示をくれないか」
「とりあえず、エルフたちが斬り倒した丸太を一ヶ所に集めて置いてくれないか。あとでそれで家を建築するのに使うからさ」
「それは、私の家も含まれるのか?」
「当然だろ。最初は粗末な家だが、そのうちに石作りの立派な神殿に住まわしてやるよ」
「本当か、アスラン!?」
ミケランジェロは歓喜している様子だった。
ミケランジェロはドワーフの村の側で、洞窟に住んでいた。
500年もだ。
そんな彼からして、ちゃんとした家に住めるってのが喜ばしいのだろう。
それが神殿となれば尚のことだ。
「お前さんはガイアの血を引く神族の血縁なのだろ」
「ああ、確かに……」
「ならば俺たちと一緒に町を作って暮らせ。町を作ったら、守れ。それが神の役目だ」
「感謝する……」
そう呟いたミケランジェロが作業を始めた。
エルフたちが斬り倒した丸太を軽々と担いで一ヶ所に集め始める。
まあ、なんとも頼もしいパワーだぜ。
「さて、俺も次の作業に入るかな」
俺の次の作業は魔王城の探索だ。
300メートルほど離れたここまで伝わる霊気の主をどうにかせんとならん。
リッチのマミーレイス婦人──。
アインシュタイン曰く、闇の女王だ。
今回のミッションで最大の困難だろう。
半端ない霊気だぜ。
リッチと言えばアンデッドの中でも最強の部類だ。
だから嘗めて掛かれない。
「アスラーン、ボートの準備ができたぞ~」
水辺のほうからゴリが声を掛けてきた。
そちらを見ればゴリが小型のボートに乗ってオールを振っている。
「おう、今行くぜ!」
俺はボートに駆け寄り飛び乗った。
水上でボートが激しく揺れる。
「危ないな! もっと静かに乗れよ!!」
「すんまそ~ん……」
俺はゴリが漕ぐボートで魔王城に向かった。
ボートにはもう一隻のボートがロープで繋がれ牽引されている。
「俺はお前を向こう岸に降ろしたら、帰っていいんだな?」
「ああ、アンデッドが複数居そうだから、帰ったほうがいい……」
「マジで一人で大丈夫か?」
「お前が居ても足手纏いだろ」
「だよな……」
「まあ、いつものことだから気にすんな。それより俺が留守の間、向こう岸の面倒を見てくれないか」
「ああ、それは任せておけ」
やがてボートは魔王城の麓に到着した。
そこで俺がボートを降りるとゴリは一人で引き返して行く。
俺は手を振ってゴリを見送った。
「さて……」
振り返り黒い城を見上げる。
まずは上に登れる場所を見つけないとな。
そして直ぐに城に上がれる階段を見つけた。
俺は魔王城に初めての一歩を踏み入れた。
崩れ掛けた正門を潜る。
まずは正面から入りたかったのだ。
まあ、記念だからな。
それにしても凄い霊気だ。
魔王城の島に上陸してから更に霊気が強く感じられる。
それにしても周囲を見回せば、城の倒壊が激しいな。
何処からでも幽霊が出てきそうな雰囲気である。
周りの景色が怪しい紫色に見えるぐらいだ。
「さて、早速出迎えかな?」
俺は現在城門が打ち破られた正面ゲートを潜った直ぐ側に立っていた。
城壁に囲まれた広場だ。
そして、複数の出入口が有る。
そのすべての闇に何かが蠢いていた。
おそらく下級の アンデッドだろう。
しかし昼間のせいで出て来ない。
すべての数を合わせれば五十体……。
否、百体は居るかな?
だが、敵にすらならないだろう。
一番高い霊気は正面から流れて来る。
俺はそっちに向かって進んだ。
城内に入ると薄暗かった。
俺が入城すると群がっていたスケルトンたちが道を開ける。
隅のほうに逃げて行く。
「警戒こそされているが、敵意が無いな。こいつらから殺気が感じられない……」
おそらくこいつらを束ねているボスキャラが俺に敵意を持っていないのだろう。
俺は一番強い霊気を辿って先に進んだ。
そして城の中をアンデッドたちに見張られながら進んで謁見室に入った。
室内は天井が崩れて日差しに照らされている。
その日差しの中に玉座が在った。
魔王城の玉座──。
魔王の玉座だ。
黒曜石で作られた玉座には、禍々しい髑髏や動物の角や獣の牙が飾られていた。
いかにも恐怖を司る魔王の玉座だ。
ここに500年前、前魔王が鎮座していたのだろう。
すると辺りが突然暗くなった。
天から照らしていた日差しが黒雲で遮られる。
そして、ドッと霊気が強くなった。
「来るか!」
俺は異次元宝物庫から黄金剣を引き抜くと腰を落として身構えた。
すると謁見室の壁からアンデッドたちが大量に現れる。
壁をすり抜けて沸いたのだ。
うーん、百体は居るな……。
ワイトやレイスの霊体系アンデッドばかりだ。
大臣のような上品な容姿の悪霊たちだった。
これはヤバイぞ……。
この数に魔法を一斉射撃されたら、幾ら俺でも即死レベルだぜ。
半分諦めた俺は若干剣を下げて体の力を抜いた。
驚異を振り払うようにリラックスを心掛ける。
すると玉座の後ろから深々とフードを被ったローブ姿の霊体が現れた。
「出たな……」
フード付きローブは着物としてハッキリと見えるが、その中身は暗闇だった。
おそらく、こいつがマミーレイス婦人だろう。
間違いない……。
ローブの霊体が言う。
『汝、魔王か、勇者か……?』
ボイスじゃあない、テレパシーだ。
年配の女性の声質だった。
でも、悪霊とは思えないほどに澄んだ声色である。
美しい声だ。
俺は率直に答えた。
「俺は、どちらでもないな」
『ならば、選べ……』
「その必要は無い。俺はソロ冒険者アスランだ。魔王でも勇者でもない。強いて言うならば──」
『強いて言うならば、なんじゃ?』
「ここに町を作る者だ!!」
『はい、失格。退場ね』
「えっ!!!」
突然俺の足元が崩れた。
落とし穴だ。
「うわぁぁああああ~!!!」
俺は真っ逆さまに落ちて行く。
魔王城の地下に……。
【つづく】
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※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
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