362 / 604
第362話【運搬】
しおりを挟む
兎に角、水の王はデカイ。
俺が向こうの世界で知ってるワニの最大級は、イリエワニの5.2メートルだ。
インドガビアルだって最大で5メートルほどまで育つ。
でも、先程見たシロナガスワニクジラの全長は10メートル以上有っただろう。
おそらく12メートル前後の超巨体だ。
なんだろうなー……。
最近さ~、大きさで勝負してないか?
ミケランジェロに始まって、エルフ族の破極道山にアンドレアとかさ~。
敵が大きければ良いってもんじゃあねえぞ、まったくよ~。
俺は、そんなことを考えながら半壊した石橋の上で胡座をかいていた。
高い場所から湖の水面を眺めている。
そんな俺の横には転送絨毯が敷かれていた。
畳にして二畳程度の大きさだ。
転送できるサイズは、その中に描かれた丸い魔法陣の大きさまでである。
それ以上の大きさの物は転送したことがないが、グラブルの話だと無理っぽい。
「これで、アレを転送できるかな……?」
俺が顎を撫でながら考え込んでいると、横でゴロゴロしていたアインシュタインが話し掛けてきた。
「なー、アスランー(棒読み)」
「なんだ?」
「オラはー、まだー、ワニの餌にならないのかー?(棒読み)」
えっ、なに、こいつ?
マジでワニの餌になりたいのかな?
「もう少しまってろ……」
「じゃあー、それまでオラはー、ソドムタウンに遊びに行ってていいかー?(棒読み)」
「ああ、いいぞ」
「じゃあー、行ってくるー(棒読み)」
俺の承諾を得たアインシュタインが、ゴロゴロと転がりながら転送絨毯の上に移動すると、「チ◯コー(棒読み)」と言って消えた。
しばらく俺は、水面を眺めながら作戦を考えた。
そして、だいたい纏まる。
しかし、足りないものが多いな。
それは、どうしよう……。
悩む……。
「俺もここで考えていても仕方ないか。一旦ソドムタウンに帰ってコーヒーでも飲みながら考え直そうかな……」
そんなわけで俺もソドムタウンに帰ることにした。
転送絨毯が突然の強風で吹き飛ばないように、念のため端々に岩を乗せて固定しておく。
「よし、これでいいだろう」
そして俺がログハウスに帰るとリビングでガイアとアインシュタインが遊んでいた。
どうやら二人はママゴトをしているようだ。
「はい、ご飯よ。おたべ」
「わー、ご飯を食べるふりだー(棒読み)」
「あなた、美味しい?」
「わはー、美味しいふりだー(棒読み)」
「ところであなた、このキャバクラの名刺はなんなの?」
「えっ!! そ、それは、いや、マジで、なんでそれを!!」
「あなたの袖に入っていたわ」
あれ、アインシュタインが棒読みじゃあないぞ!?
マジで戸惑ってるし、マジで目が泳いでるぞ!?
「あなた、このキャサリンって娘がお気に入りなんだ?」
「いや、キャサリンは、ほら、なんて言うか、仕事の付き合い、そうだよ、仕事の付き合いだよ。それ以外に関係ないからさ、あはっはっはっー……」
なに、こいつ!?
これは演技じゃあないよな!?
マジか!?
「まあ、いいわ。でも、浮気はお仕置きね」
「そ、そんなー(棒読み)」
「パンダ、やっておしまい!」
「ひぃーーーー(棒読み)」
突然パンダゴーレムがアインシュタインの首を閉めながら持ち上げた。
パンダのベアハッグだ。
「やめてやめて、止めて止めてー(棒読み)」
なんだろう?
拷問されてるよな。
それでもアインシュタインは嬉しそうに見えるのが不思議だ。
「んっ?」
なんだ!?
強い気配が急接近して来るぞ!?
空からだ!!
飛んで来るのか!?
俺は壊れたログハウスの天井から外を見上げた。
すると上空に二つの影を見つける。
強い気配の招待はアレだ。
それはこちらに向かって飛んで来る。
「あれは、ドラゴンか?」
大きな翼を広げた二匹のドラゴンだ。
青と赤いのが飛んで来る。
グラブルとアンの兄妹だろう。
いや、そろそろ完璧な姉妹になってるかな?
そしてログハウスの前に二匹のドラゴンが着地した。
すると突風が吹き荒れる。
「うわー、ドーラーゴーンーだー。食ーわーれーるー(棒読み)」
そんなことを言ってるアインシュタインは、まだベアハッグをされたままである。
「やあ、アスラン♡」
ブルードラゴンが人間の姿に変身した。
長い髪の頭に珊瑚のような角が飛び出た美女である。
前回はオッパイだけ女体化していたが、今回は顔まで女体化が進んだらしい。
かなりクールな美面であった。
続いてレッドドラゴンも人間の姿に変身する。
アンのほうは相変わらずのロリリボンスタイルのままだ。
なんだか見慣れると、ドキドキ感もワクワク感も無いな。
とても詰まらん。
「アスラン、アスラン、元気だったか?」
俺はウザイ娘のアンを無視した。
「よう、グラブル。今日はどうした?」
グラブルが自分の頬に手を当てながら言う。
「ほら、顔が女体化できたから見せに来たんだよ」
「でも、まだチ◯コがあるんだろ?」
「当然」
「うげー……」
「なに、ぶちこんで貰いたいの?」
「それは断る……」
「どう、無くなる前に、最後に一発やらせてよ♡」
「断じて断る!!」
「もー、つれないなー」
グラブルは形の良い胸を左右に揺らしながら照れていた。
なぜ、ここで照れる!?
ぜんぜん分からんぞ!?
まあ、いいか……。
「ところでグラブル。ちょっと訊きたいんだが、いいか?」
「スリーサイズを?」
「いや、それは……」
「下半身も女体化が進めば、もっとクビレるからセクシーになるわよ」
「いや、今後のスリーサイズも気になるが、今訊きたいのは別の話だ」
ここで元気良くアンが口を挟んで来た。
「じゃあじゃあじゃあ、アンのスリーサイズを訊きたいのか!?」
「いや、貧乳のスリーサイズなんて、どーーーでもいいよ。興味ねーわー」
「うわー、貧乳差別だ!!」
ガイアが言う。
「ロリコンをディスるといろいろな方面から叩かれるぞ。早く謝っておけ、アスラン」
「こわ!! ごめんなさい!!」
「世界中の乳無し乙女に謝罪しとけー(棒読み)」
「てめー、これ以上誤解を招くようなことを口走るな!!」
マジでクレームが来るから怖いんだよ!!
本当に来るんだからね!!
「ところでアスラン。僕に何が訊きたいんだ?」
グラブルが脱線した話を正常な道に戻してくれた。
「いや、前に言っていた大型の転送絨毯はいつごろできるかなってね」
「急ぐかい?」
「出来れば直ぐに使いたい」
「試作品だが、10メートル四方のサイズの絨毯なら有るぞ」
「おっ、マジで。じゃあそれを貸してくれ」
「いいけど、貸す代わりにキスしてくれる?」
「こ・と・わ・る!!」
「じゃあ、ほっぺにチューでいいよ」
「い・や・だ!!」
「じゃあ、足の甲でいいよ」
「それならしゃあないか……」
足なら我慢できるぞ。
するとグラブルがアインシュタインに命令する。
「そこのホビット。僕の前で四つん這いになって踏み台になりなさい」
「はーいー(嬉しそうに棒読み)」
アインシュタインが四つん這いになると、その背中にグラブルが足を乗せる。
ハイヒールの踵がホビットの背中にめり込んだ。
「はぁぁーぅぅ(切なそうに棒読み)」
「さあ、アスラン。僕の足に口付けするんです」
「あ、ああ……」
これも大型転送絨毯を借りるためだ。
仕方ないんだ。
俺が望んで足にキスをしたいわけでは無いのだ。
少し胸が呪いで痛むが本当だぞ。
そして、俺がグラブルの足に顔を近付けてから気がついた。
「なんか、ムキムキっと筋っぽいし、脛毛が生えてないか……?」
「ああ、そりゃあそうさ。だって下半身はまだ男だもの」
わーすーれーてーたーー!!
美しいのは上半身だけだ。
下半身は女体化が進んでいないのだった。
「う、うぐぅぐぅ……」
やべ、なんか臭って来た。
マジで加齢臭がするぞ。
「ほら、早くキスしてくださいな」
「やっぱ、無理……」
俺が顔を逸らそうとした時である。
ガイアが言った。
「パンダ、やっておしまい」
「のわっ!!」
俺はパンダゴーレムに後頭部を押されてグラブルの雄足に顔面をぶつけてしまう。
事実上キスしたこととなる。
「おええぇーーー!! 吐きそーーー!!!」
「失礼だな、アスラン……」
「と、兎に角だ。これで大型絨毯を貸してもらえるな……」
「ああ、いいよ。貸して上げようさ」
グラブルが自分の異次元宝物庫から大きな絨毯を二枚出す。
丸められた大型転送絨毯は、ピンク色のふざけた生地を使用していた。
なんだか卑猥な色合いである。
「これは試作品だから、転送時の合言葉は試運転の時に僕が決めてあるからね。悪いがそれを使ってくれ」
言いながらグラブルが転送絨毯をログハウスの外で広げる。
絨毯の中央には本来ならば六芒星の魔法陣が描かれているのだが、この転送絨毯はハート型のヘンテコな魔法陣が描かれていた。
「なんだ、この魔法陣は……。ふざけ過ぎてね?」
「問題無い。ちゃんと転送するからさ」
「でえ、合言葉は?」
俺の転送絨毯は『チ◯コ』だ。
人によっては恥ずかしがるが、俺には問題無い。
この大型転送絨毯にも合言葉があるはずだ。
そして、グラブルが合言葉を教えてくれる。
「アスランがグラブルを愛しているだ」
「えっ、なんて……?」
「アスランがグラブルを愛しているだよ」
「マジで……?」
「ああ、本当だよ」
「書き換えられないの?」
「試作品だから変更は出来ないんだ」
「嘘だ……」
「本当だよ。嫌なら借りなくても構わないんだが」
「ぅぅ……」
「どうする、アスラン?」
「借りさせてください……」
グラブルがニンマリと笑った。
畜生が……。
人の足元を見やがって……。
こうして俺は大型転送絨毯を借りられた。
しかし、転送するたびに憂鬱になりそうだ。
でも、これで目的のアイテムを運搬できるぞ。
まずは目的地までアキレスで走らなければならない。
確か歩いて二日ぐらいだったから、アキレスで走れば半日で到着できるだろう。
ならば出発は明日の朝かな。
俺の転送絨毯は魔王城に置いとかないとならないから、大型転送絨毯でソドムタウンに運搬したら、大型転送絨毯を回収して、またアキレスでソドムタウンに戻って、今度は魔王城に大型転送絨毯で運搬か……。
転送絨毯があるから運搬は楽になるが、それでも行ったり来たりで時間が掛かりそうな作業だぜ。
しかも一人で運搬は無理だろう。
五人か六人ぐらいの人手が居るな。
それも何とかしないとならんか。
んんー……。
ゴリやオアイドスたちじゃあ人手不足だな。
バイマンとカンパネルラ爺さんは非力だしさ。
そうだ、サンジェルマンさんのパーティーに応援を求めよう。
冒険者ギルドに居てくれるかな。
冒険に出てなければいいのだが……。
【つづく】
俺が向こうの世界で知ってるワニの最大級は、イリエワニの5.2メートルだ。
インドガビアルだって最大で5メートルほどまで育つ。
でも、先程見たシロナガスワニクジラの全長は10メートル以上有っただろう。
おそらく12メートル前後の超巨体だ。
なんだろうなー……。
最近さ~、大きさで勝負してないか?
ミケランジェロに始まって、エルフ族の破極道山にアンドレアとかさ~。
敵が大きければ良いってもんじゃあねえぞ、まったくよ~。
俺は、そんなことを考えながら半壊した石橋の上で胡座をかいていた。
高い場所から湖の水面を眺めている。
そんな俺の横には転送絨毯が敷かれていた。
畳にして二畳程度の大きさだ。
転送できるサイズは、その中に描かれた丸い魔法陣の大きさまでである。
それ以上の大きさの物は転送したことがないが、グラブルの話だと無理っぽい。
「これで、アレを転送できるかな……?」
俺が顎を撫でながら考え込んでいると、横でゴロゴロしていたアインシュタインが話し掛けてきた。
「なー、アスランー(棒読み)」
「なんだ?」
「オラはー、まだー、ワニの餌にならないのかー?(棒読み)」
えっ、なに、こいつ?
マジでワニの餌になりたいのかな?
「もう少しまってろ……」
「じゃあー、それまでオラはー、ソドムタウンに遊びに行ってていいかー?(棒読み)」
「ああ、いいぞ」
「じゃあー、行ってくるー(棒読み)」
俺の承諾を得たアインシュタインが、ゴロゴロと転がりながら転送絨毯の上に移動すると、「チ◯コー(棒読み)」と言って消えた。
しばらく俺は、水面を眺めながら作戦を考えた。
そして、だいたい纏まる。
しかし、足りないものが多いな。
それは、どうしよう……。
悩む……。
「俺もここで考えていても仕方ないか。一旦ソドムタウンに帰ってコーヒーでも飲みながら考え直そうかな……」
そんなわけで俺もソドムタウンに帰ることにした。
転送絨毯が突然の強風で吹き飛ばないように、念のため端々に岩を乗せて固定しておく。
「よし、これでいいだろう」
そして俺がログハウスに帰るとリビングでガイアとアインシュタインが遊んでいた。
どうやら二人はママゴトをしているようだ。
「はい、ご飯よ。おたべ」
「わー、ご飯を食べるふりだー(棒読み)」
「あなた、美味しい?」
「わはー、美味しいふりだー(棒読み)」
「ところであなた、このキャバクラの名刺はなんなの?」
「えっ!! そ、それは、いや、マジで、なんでそれを!!」
「あなたの袖に入っていたわ」
あれ、アインシュタインが棒読みじゃあないぞ!?
マジで戸惑ってるし、マジで目が泳いでるぞ!?
「あなた、このキャサリンって娘がお気に入りなんだ?」
「いや、キャサリンは、ほら、なんて言うか、仕事の付き合い、そうだよ、仕事の付き合いだよ。それ以外に関係ないからさ、あはっはっはっー……」
なに、こいつ!?
これは演技じゃあないよな!?
マジか!?
「まあ、いいわ。でも、浮気はお仕置きね」
「そ、そんなー(棒読み)」
「パンダ、やっておしまい!」
「ひぃーーーー(棒読み)」
突然パンダゴーレムがアインシュタインの首を閉めながら持ち上げた。
パンダのベアハッグだ。
「やめてやめて、止めて止めてー(棒読み)」
なんだろう?
拷問されてるよな。
それでもアインシュタインは嬉しそうに見えるのが不思議だ。
「んっ?」
なんだ!?
強い気配が急接近して来るぞ!?
空からだ!!
飛んで来るのか!?
俺は壊れたログハウスの天井から外を見上げた。
すると上空に二つの影を見つける。
強い気配の招待はアレだ。
それはこちらに向かって飛んで来る。
「あれは、ドラゴンか?」
大きな翼を広げた二匹のドラゴンだ。
青と赤いのが飛んで来る。
グラブルとアンの兄妹だろう。
いや、そろそろ完璧な姉妹になってるかな?
そしてログハウスの前に二匹のドラゴンが着地した。
すると突風が吹き荒れる。
「うわー、ドーラーゴーンーだー。食ーわーれーるー(棒読み)」
そんなことを言ってるアインシュタインは、まだベアハッグをされたままである。
「やあ、アスラン♡」
ブルードラゴンが人間の姿に変身した。
長い髪の頭に珊瑚のような角が飛び出た美女である。
前回はオッパイだけ女体化していたが、今回は顔まで女体化が進んだらしい。
かなりクールな美面であった。
続いてレッドドラゴンも人間の姿に変身する。
アンのほうは相変わらずのロリリボンスタイルのままだ。
なんだか見慣れると、ドキドキ感もワクワク感も無いな。
とても詰まらん。
「アスラン、アスラン、元気だったか?」
俺はウザイ娘のアンを無視した。
「よう、グラブル。今日はどうした?」
グラブルが自分の頬に手を当てながら言う。
「ほら、顔が女体化できたから見せに来たんだよ」
「でも、まだチ◯コがあるんだろ?」
「当然」
「うげー……」
「なに、ぶちこんで貰いたいの?」
「それは断る……」
「どう、無くなる前に、最後に一発やらせてよ♡」
「断じて断る!!」
「もー、つれないなー」
グラブルは形の良い胸を左右に揺らしながら照れていた。
なぜ、ここで照れる!?
ぜんぜん分からんぞ!?
まあ、いいか……。
「ところでグラブル。ちょっと訊きたいんだが、いいか?」
「スリーサイズを?」
「いや、それは……」
「下半身も女体化が進めば、もっとクビレるからセクシーになるわよ」
「いや、今後のスリーサイズも気になるが、今訊きたいのは別の話だ」
ここで元気良くアンが口を挟んで来た。
「じゃあじゃあじゃあ、アンのスリーサイズを訊きたいのか!?」
「いや、貧乳のスリーサイズなんて、どーーーでもいいよ。興味ねーわー」
「うわー、貧乳差別だ!!」
ガイアが言う。
「ロリコンをディスるといろいろな方面から叩かれるぞ。早く謝っておけ、アスラン」
「こわ!! ごめんなさい!!」
「世界中の乳無し乙女に謝罪しとけー(棒読み)」
「てめー、これ以上誤解を招くようなことを口走るな!!」
マジでクレームが来るから怖いんだよ!!
本当に来るんだからね!!
「ところでアスラン。僕に何が訊きたいんだ?」
グラブルが脱線した話を正常な道に戻してくれた。
「いや、前に言っていた大型の転送絨毯はいつごろできるかなってね」
「急ぐかい?」
「出来れば直ぐに使いたい」
「試作品だが、10メートル四方のサイズの絨毯なら有るぞ」
「おっ、マジで。じゃあそれを貸してくれ」
「いいけど、貸す代わりにキスしてくれる?」
「こ・と・わ・る!!」
「じゃあ、ほっぺにチューでいいよ」
「い・や・だ!!」
「じゃあ、足の甲でいいよ」
「それならしゃあないか……」
足なら我慢できるぞ。
するとグラブルがアインシュタインに命令する。
「そこのホビット。僕の前で四つん這いになって踏み台になりなさい」
「はーいー(嬉しそうに棒読み)」
アインシュタインが四つん這いになると、その背中にグラブルが足を乗せる。
ハイヒールの踵がホビットの背中にめり込んだ。
「はぁぁーぅぅ(切なそうに棒読み)」
「さあ、アスラン。僕の足に口付けするんです」
「あ、ああ……」
これも大型転送絨毯を借りるためだ。
仕方ないんだ。
俺が望んで足にキスをしたいわけでは無いのだ。
少し胸が呪いで痛むが本当だぞ。
そして、俺がグラブルの足に顔を近付けてから気がついた。
「なんか、ムキムキっと筋っぽいし、脛毛が生えてないか……?」
「ああ、そりゃあそうさ。だって下半身はまだ男だもの」
わーすーれーてーたーー!!
美しいのは上半身だけだ。
下半身は女体化が進んでいないのだった。
「う、うぐぅぐぅ……」
やべ、なんか臭って来た。
マジで加齢臭がするぞ。
「ほら、早くキスしてくださいな」
「やっぱ、無理……」
俺が顔を逸らそうとした時である。
ガイアが言った。
「パンダ、やっておしまい」
「のわっ!!」
俺はパンダゴーレムに後頭部を押されてグラブルの雄足に顔面をぶつけてしまう。
事実上キスしたこととなる。
「おええぇーーー!! 吐きそーーー!!!」
「失礼だな、アスラン……」
「と、兎に角だ。これで大型絨毯を貸してもらえるな……」
「ああ、いいよ。貸して上げようさ」
グラブルが自分の異次元宝物庫から大きな絨毯を二枚出す。
丸められた大型転送絨毯は、ピンク色のふざけた生地を使用していた。
なんだか卑猥な色合いである。
「これは試作品だから、転送時の合言葉は試運転の時に僕が決めてあるからね。悪いがそれを使ってくれ」
言いながらグラブルが転送絨毯をログハウスの外で広げる。
絨毯の中央には本来ならば六芒星の魔法陣が描かれているのだが、この転送絨毯はハート型のヘンテコな魔法陣が描かれていた。
「なんだ、この魔法陣は……。ふざけ過ぎてね?」
「問題無い。ちゃんと転送するからさ」
「でえ、合言葉は?」
俺の転送絨毯は『チ◯コ』だ。
人によっては恥ずかしがるが、俺には問題無い。
この大型転送絨毯にも合言葉があるはずだ。
そして、グラブルが合言葉を教えてくれる。
「アスランがグラブルを愛しているだ」
「えっ、なんて……?」
「アスランがグラブルを愛しているだよ」
「マジで……?」
「ああ、本当だよ」
「書き換えられないの?」
「試作品だから変更は出来ないんだ」
「嘘だ……」
「本当だよ。嫌なら借りなくても構わないんだが」
「ぅぅ……」
「どうする、アスラン?」
「借りさせてください……」
グラブルがニンマリと笑った。
畜生が……。
人の足元を見やがって……。
こうして俺は大型転送絨毯を借りられた。
しかし、転送するたびに憂鬱になりそうだ。
でも、これで目的のアイテムを運搬できるぞ。
まずは目的地までアキレスで走らなければならない。
確か歩いて二日ぐらいだったから、アキレスで走れば半日で到着できるだろう。
ならば出発は明日の朝かな。
俺の転送絨毯は魔王城に置いとかないとならないから、大型転送絨毯でソドムタウンに運搬したら、大型転送絨毯を回収して、またアキレスでソドムタウンに戻って、今度は魔王城に大型転送絨毯で運搬か……。
転送絨毯があるから運搬は楽になるが、それでも行ったり来たりで時間が掛かりそうな作業だぜ。
しかも一人で運搬は無理だろう。
五人か六人ぐらいの人手が居るな。
それも何とかしないとならんか。
んんー……。
ゴリやオアイドスたちじゃあ人手不足だな。
バイマンとカンパネルラ爺さんは非力だしさ。
そうだ、サンジェルマンさんのパーティーに応援を求めよう。
冒険者ギルドに居てくれるかな。
冒険に出てなければいいのだが……。
【つづく】
0
お気に入りに追加
383
あなたにおすすめの小説
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる