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第276話【猛毒の結果】
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俺が目を覚ますと、そこは洞窟だった。
壁際に敷かれた藁の上に俺は寝ている。
ちょっと藁がチクチクするかな……。
洞窟だが、光は有る。
魔法の光が天井にぼんやりと有り、それが薄暗く洞窟内を照らし出していた。
洞窟はドーム型で大きい。
俺が寝ている壁際の反対側に釜戸があって、そこで巨大サソリと巨大ムカデが言い争っていた。
「ちょっとあんたは手を出さないザマス!!」
「五月蝿いわね! ダーリンの食事は私が作るのよ!!」
「やめるザマス! 鍋にサソリを入れないで!!」
「あなたこそ私の眷族を茹でないでよね!!」
あー、五月蝿いな~……。
目が覚めたけれど頭がクラクラする。
体が起こせないぞ……。
全身が痺れている。
まだ毒が抜けてないんだな……。
「目が覚めたか」
んん?
頭のほうから声がした。
俺が視線を上げれば寝ている俺の頭のほうにバーバラが座っていた。
膝を抱えるように体育座りをしている。
「あー……、バーバラか……」
バーバラは笑顔である。
「お母様の猛毒を食らって死なないなんて、あなたは凄いわね」
バーバラは言いながら笑顔で寝ている俺の頭を撫でてきた。
あー、なんか落ち着くわ~。
毒から来る痛みが和らいだような気がする。
そうだ、思い出した。
確かバーバラが助けてくれたんだ。
「バーバラ、ありがとう……」
「何が?」
「俺を助けてくれただろ?」
「だって、人間がこの森に来るなんて、久々だもの」
「でぇ、あの二人は何を喧嘩してるんだ?」
「お母様とアイラですか?」
「そうそう」
「どちらがあなたに料理を食べさせるかで喧嘩をしているみたいですわ」
「なんで……?」
「アイラはあなたと交尾がしたいかららしくって、お母様はあなたと私を交尾させたいらしいのよ」
うぐっ!
ちょっと胸が痛んだぞ……。
アイラとは無いが、バーバラとは可能だもんな……。
「お前は俺と交尾がしたいのか?」
「私はどっちでもいいかな」
「そうなん……」
あれれ?
あんまり乗り気じゃあないんだな。
まあ、それはそれでいいけれどさ。
「ところで俺の体が動かないんだが、これって大丈夫なのか?」
「さー、どうだろう。もう一生動けないかもよ」
「マジか!?」
「冗談よ」
笑顔でこえーこと言うなよな!!
マジで信じたじゃんか!!
「口が効けたんだから、もうしばらくしたら、体の麻痺も消えて来ると思うわよ」
「そ、そうなのか……」
ちょっと安心したぜ。
あっ、右手が少し動いたぞ。
でも、左手はぜんぜん動かないわ~。
まあ、あんだけ腫れてたもんな。
しゃ~あないよね~。
まあ、完全に毒が体から抜けるのを、呑気に待つか~。
俺とバーバラが話していると、アイラとグレーテが鍋を持って駆けて来る。
「はーーい、ダーリン。サソリの塩スープが出来たぞ~」
「婿殿~。ムカデのがら汁が出来たザマスよ~」
うわ~……。
二匹して下手物スープを拵えやがったな……。
バーバラが笑顔で言う。
「良かったわね。これで精がつくわ」
他人事だと思って勝手を言いやがってよ。
サソリとかムカデを食べれるかってんだ。
あー、でも多くのアジア圏内の国だと普通に食べられているか……。
いや、俺には無理だわ!
虫とか絶対に食えないぞ……。
勘弁してくれって感じだわ。
「ちょっとあんた邪魔よ。どきなさいよ!!」
「あなたこそ邪魔ザマス!!」
言い争いながら鍋を運んで来る巨大サソリと巨大ムカデが躓いて鍋を投げた。
「「あっ!」」
空中を舞う二つのアツアツ鍋が俺の上に落ちて来る。
俺は派手に激熱スープを全身に浴びた。
「熱っっっぅうううう!!!」
「キャーー!! お母様、何をしているのですか!!」
「てへ、ころんじゃったザマス……」
「わ、た、し、も、♡」
アイラとグレーテがモジモジと恥ずかしがっていた。
そんなに恥ずかしがってねーで、先ずは俺を助けろ!!
こっちとら動けない重病人だぞ、ゴラァ!!
バーバラが布切れを持ってきて俺の体を拭いてくれた。
「もう二人とも、たまに人間が来たからって年甲斐もなくはしゃいじゃって……。本当に仕方無いわね」
「た、助かったぜ、バーバラ。拭いてくれてありがとう。死ぬほど熱かったぜ……」
「あっ、今のショックで少し動けるようになったぞ。右腕だけ動くや」
「じゃあ、はい、タオル」
「ありがとう。自分で拭くよ」
俺はバーバラからタオルを受け取ると顔を拭いた。
そして、体も拭く。
あれ?
装備も服もつけてないわん……。
「俺、ぜーんーらーだー!!」
「装備なら邪魔だったから、全部脱がせたわ」
「か、看病するのに邪魔だったのね……」
「いや、手術するのに邪魔だったんだよ」
「へぇ~、お前、手術なんて出来るんだ~」
体内から毒を取り出す手術でもしたのかな?
「私が手術なんて出来るわけないわ。手術をしたのはお母様よ」
「へぇ~。あんな鋏で器用だな」
「鋏だからこそ、切断するのが手早かったんだよ。傷口を縫ったのは私だけれどね」
へぇ?
何を笑顔で言ってますか、この蠍美少女は?
切断……?
何を切ったのさ?
俺は恐る恐る左腕のほうを見た。
すると───。
「ひーだーりーてーがー、なーいー!!!」
「毒で腐りかけていたからな。切断したんだ」
「なんで!?」
「切断しないと、お前の命まで危なかったからに決まってるだろ」
バーバラは無垢に微笑む。
まるで天使のような笑みだった。
そしてバーバラは紫色に変わったパンパンな左腕を持ち上げて俺に見せた。
「これが、切り落としたお前の腕だ。食べるか?」
「食うかーーーー!!!!!」
「じゃあ、私が食べていいかな?」
「食わないでーーーー!!
!」
俺の左腕が、左腕が、左腕がぁぁあああ!!!
【つづく】
壁際に敷かれた藁の上に俺は寝ている。
ちょっと藁がチクチクするかな……。
洞窟だが、光は有る。
魔法の光が天井にぼんやりと有り、それが薄暗く洞窟内を照らし出していた。
洞窟はドーム型で大きい。
俺が寝ている壁際の反対側に釜戸があって、そこで巨大サソリと巨大ムカデが言い争っていた。
「ちょっとあんたは手を出さないザマス!!」
「五月蝿いわね! ダーリンの食事は私が作るのよ!!」
「やめるザマス! 鍋にサソリを入れないで!!」
「あなたこそ私の眷族を茹でないでよね!!」
あー、五月蝿いな~……。
目が覚めたけれど頭がクラクラする。
体が起こせないぞ……。
全身が痺れている。
まだ毒が抜けてないんだな……。
「目が覚めたか」
んん?
頭のほうから声がした。
俺が視線を上げれば寝ている俺の頭のほうにバーバラが座っていた。
膝を抱えるように体育座りをしている。
「あー……、バーバラか……」
バーバラは笑顔である。
「お母様の猛毒を食らって死なないなんて、あなたは凄いわね」
バーバラは言いながら笑顔で寝ている俺の頭を撫でてきた。
あー、なんか落ち着くわ~。
毒から来る痛みが和らいだような気がする。
そうだ、思い出した。
確かバーバラが助けてくれたんだ。
「バーバラ、ありがとう……」
「何が?」
「俺を助けてくれただろ?」
「だって、人間がこの森に来るなんて、久々だもの」
「でぇ、あの二人は何を喧嘩してるんだ?」
「お母様とアイラですか?」
「そうそう」
「どちらがあなたに料理を食べさせるかで喧嘩をしているみたいですわ」
「なんで……?」
「アイラはあなたと交尾がしたいかららしくって、お母様はあなたと私を交尾させたいらしいのよ」
うぐっ!
ちょっと胸が痛んだぞ……。
アイラとは無いが、バーバラとは可能だもんな……。
「お前は俺と交尾がしたいのか?」
「私はどっちでもいいかな」
「そうなん……」
あれれ?
あんまり乗り気じゃあないんだな。
まあ、それはそれでいいけれどさ。
「ところで俺の体が動かないんだが、これって大丈夫なのか?」
「さー、どうだろう。もう一生動けないかもよ」
「マジか!?」
「冗談よ」
笑顔でこえーこと言うなよな!!
マジで信じたじゃんか!!
「口が効けたんだから、もうしばらくしたら、体の麻痺も消えて来ると思うわよ」
「そ、そうなのか……」
ちょっと安心したぜ。
あっ、右手が少し動いたぞ。
でも、左手はぜんぜん動かないわ~。
まあ、あんだけ腫れてたもんな。
しゃ~あないよね~。
まあ、完全に毒が体から抜けるのを、呑気に待つか~。
俺とバーバラが話していると、アイラとグレーテが鍋を持って駆けて来る。
「はーーい、ダーリン。サソリの塩スープが出来たぞ~」
「婿殿~。ムカデのがら汁が出来たザマスよ~」
うわ~……。
二匹して下手物スープを拵えやがったな……。
バーバラが笑顔で言う。
「良かったわね。これで精がつくわ」
他人事だと思って勝手を言いやがってよ。
サソリとかムカデを食べれるかってんだ。
あー、でも多くのアジア圏内の国だと普通に食べられているか……。
いや、俺には無理だわ!
虫とか絶対に食えないぞ……。
勘弁してくれって感じだわ。
「ちょっとあんた邪魔よ。どきなさいよ!!」
「あなたこそ邪魔ザマス!!」
言い争いながら鍋を運んで来る巨大サソリと巨大ムカデが躓いて鍋を投げた。
「「あっ!」」
空中を舞う二つのアツアツ鍋が俺の上に落ちて来る。
俺は派手に激熱スープを全身に浴びた。
「熱っっっぅうううう!!!」
「キャーー!! お母様、何をしているのですか!!」
「てへ、ころんじゃったザマス……」
「わ、た、し、も、♡」
アイラとグレーテがモジモジと恥ずかしがっていた。
そんなに恥ずかしがってねーで、先ずは俺を助けろ!!
こっちとら動けない重病人だぞ、ゴラァ!!
バーバラが布切れを持ってきて俺の体を拭いてくれた。
「もう二人とも、たまに人間が来たからって年甲斐もなくはしゃいじゃって……。本当に仕方無いわね」
「た、助かったぜ、バーバラ。拭いてくれてありがとう。死ぬほど熱かったぜ……」
「あっ、今のショックで少し動けるようになったぞ。右腕だけ動くや」
「じゃあ、はい、タオル」
「ありがとう。自分で拭くよ」
俺はバーバラからタオルを受け取ると顔を拭いた。
そして、体も拭く。
あれ?
装備も服もつけてないわん……。
「俺、ぜーんーらーだー!!」
「装備なら邪魔だったから、全部脱がせたわ」
「か、看病するのに邪魔だったのね……」
「いや、手術するのに邪魔だったんだよ」
「へぇ~、お前、手術なんて出来るんだ~」
体内から毒を取り出す手術でもしたのかな?
「私が手術なんて出来るわけないわ。手術をしたのはお母様よ」
「へぇ~。あんな鋏で器用だな」
「鋏だからこそ、切断するのが手早かったんだよ。傷口を縫ったのは私だけれどね」
へぇ?
何を笑顔で言ってますか、この蠍美少女は?
切断……?
何を切ったのさ?
俺は恐る恐る左腕のほうを見た。
すると───。
「ひーだーりーてーがー、なーいー!!!」
「毒で腐りかけていたからな。切断したんだ」
「なんで!?」
「切断しないと、お前の命まで危なかったからに決まってるだろ」
バーバラは無垢に微笑む。
まるで天使のような笑みだった。
そしてバーバラは紫色に変わったパンパンな左腕を持ち上げて俺に見せた。
「これが、切り落としたお前の腕だ。食べるか?」
「食うかーーーー!!!!!」
「じゃあ、私が食べていいかな?」
「食わないでーーーー!!
!」
俺の左腕が、左腕が、左腕がぁぁあああ!!!
【つづく】
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