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第228話【悪酔い魔界】

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俺は不思議に考えていた。

なんで男なら酒を飲めだのこうだのって言われなければならないのかが不思議で仕方がない。

若い俺には、すげー疑問だわ。

飲めない物は飲めないんだよ。

だって美味しく感じないどころか苦くてアルコール臭いだけで不味いんだもの。

それを無理矢理飲ますのが大人の男のやることかって言うんだ。

こうなったら飲めない男に無理矢理飲ませたことを後悔させてやるぞ。

「おらっ! 次のヤツ、掛かってこいや!!」 

俺が椅子に乗り片足をテーブルの上に乗せて叫ぶと周りの男たちの歓声が上がった。

「うぉぉおおおおおお!!!」

「いいぞ、にーちゃん、もっとやれ!!」

男たちの歓声に押されて俺はウイスキーのボトルをラッパ飲みする。

ここはドリフターズ亭の酒場だ。

俺の周りには酔いどれ鉱夫たちが群がりワンヤワンヤと騒いでいる。

すると人混みを掻き分けて大男が俺の前に出て来た。

つるっぱげのおっさんだ。

「なんだー、今度はお前が相手か!!」

「そうだ、俺が相手だ!!」

「よーし、上等だ、ハゲ!!」

俺は大男を煽ると椅子から下りてテーブルに肘を付いた。

「誰がハゲだ! 俺はエコヘアーだ!!」

すると大男もテーブルに肘を付いて俺の手を握る。

腕相撲だ。

そして、見知らぬオヤジが俺たちの前でなんの前触れもなく叫ぶ。

「レーディー、ゴー!!」

「うりゃぁああああ!!!」

「どらぁぁああああ!!!」

俺の腕と大男の太い腕が力比べに力んだ。

テーブルが俺たち二人の闘志で軋んで揺れる。

最初は両者ともに動かない。

力任せに震えるだけだった。

だが、少しずつ俺が大男の腕を倒し始めると、周囲の歓声が大きくなってい 行く。

「終わりだ、このズラ野郎!!」

「ズラなんて被ってねーよ、うわぁぁあ!!」

大男の手の甲がテーブルに付く。

勝ったのは俺だった。

「どうだい、ごらぁーー!!」

「おおーーー!!」

俺は歓声を浴びながらウイスキーをラッパ飲みすると、周りのオヤジたちに言う。

「また俺が勝ったから、罰ゲームタイムだぞ!!」

「おおおおおーーー!!」

騒ぎ立てるオヤジたちが、俺に負けた大男を羽交い締めにする。

怪しい笑みを浮かべながら俺が、押さえ込まれている大男の前に立った。

「ヒック、覚悟はいいな~」

「や、やめてくれ……!!」

「誰かズボンをめくれや!!」

「や、やめろ……」

「これもすべて飲めない俺に酒を飲ませた天罰だ!!」

するとオヤジの一人が大男のズボンの前を広げる。

そこに俺が問答無用でゲロを吐いた。

「ゲロゲロゲロゲロ~~」

「ぎぃぁあああ、やーめーてー!!!」

俺はゲロを存分に吐き終わると更に述べる。

「他に勇敢な挑戦者は居ないか~。今度は背中の中に吐いてやるぞ。ゲロケロゲロ~……」

言いながら俺は吐き散らしていた。

もうこのホールで吐いたのは一回二回ではない。

記憶に無いが、十回は吐いている。

これで明日の掃除は大変だろうさ。

酒場の中は俺のゲロで魔界と化しているはずだ。

ゲロ魔界だ!

大笑いだぜ!!

はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ~~……………。

ゲロケロゲロ~~……

はい、ごめんなさい、笑い過ぎだわ……。

ヒック、また吐いたぜ!!

俺の記憶に残っているのは、このぐらいのエピソードだけです。

次の記憶は昼過ぎに宿屋の裏のゴミ捨て場で野良犬と寝ていたことですわ……。

俺はヨタヨタと起き上がると、またゲロを吐きました。

ゲロを浴びた野良犬が逃げて行く。

「きゃんきゃん!!」

「ああ、俺を見捨てないでくれ……」

それにしても気持ち悪いな……。

これが噂に名高い二日酔いってヤツですか……。

これはキツイぞ……。

頭がガンガンして、まだ目が回っている感覚が続いていますがな……。

あー、体が酒臭いな……。

み、水が飲みたい……。

俺はフラフラと歩きながら店の中に戻る。

すると昨日のマスターがモップで床掃除をしていた。

床はまだゲロだらけである。

「糞ガキ、目覚めやがったな!!」

「おはよう……。悪いが大声はやめてくれ、頭に響くから……」

「ホールが、てめーのゲロだらけだ。てめーも掃除しやがれ!!」

「だからゲコの俺に酒なんて飲ませたらアカンのだよ……。飲ませたあんたが悪い……」

「くそっ………」

「オヤジさん、とりあえず水くれ……」

「水だと~。酒を飲め、酒を! 迎え酒だ、馬鹿野郎!!」

「マジで……、また吐きまくるぞ……」

マスターは少し考えてから、考えを改める。

「分かった分かった……。ほら、水だ。だからもう吐くなよ」

「できるだけ努力する……」

「いいから、ぜってーに吐くな!!」

「あと部屋を貸してくれ……」

「金は有るのか?」

俺がカウンターの上に手の平内からコインを召喚するとマスターは驚いていた。 

「魔法かい、坊主……?」

「そんなもんだよ……」

俺は部屋の鍵を借りると二階に上がった。

道中の階段がかなり長く感じておっくうだったが、なんとか部屋に辿り付いた。

俺は兎に角まだ眠りたかったのでベッドに倒れ込んで眠りに付いた。

そのままぐっすりと眠り続ける。

「はっ!!」

そして突然に俺は目が覚めた。

ベッドから跳ね起きる。

「ま、魔女が……」

えっ、魔女?

何か悪い夢を見ていたような気がするが、瞬時に忘れてしまったぞ……。

俺が窓の外を見れば夜だった。

しかし酒場のほうからは、騒がしい音が聴こえてきたから、そんなに遅い時間でもないのだろう。

あー、喉が渇いたな。

腹も減ったぞ……。

下に行って飯でも食うかな。

そして俺が一階に下りて行くと、騒いでいたオヤジたちが俺に気付いて静まりかえる。

えっ、なんで……?

皆が驚きと恐れの眼差しで俺を見ていた。

なに、この反応は……?

俺はカウンター席に座るとマスターに問う。

「昨日、俺は何をしたんだ?」

「坊主、覚えて無いのか?」

「腕相撲してたのは、覚えているが……」

「じゃあ、そのあとは覚えて無いのか?」

「ああ、全然記憶に御座いません……」

「そうか、なら忘れろ……」

「マジで……」

「で、また酒か?」

「飯と水を頼む」

「分かった。じゃあ、二階の自室で待っててくれないか、注文は運ばせるから」

俺は静まりかえった酒場を見回してから気付く。

マスターが気を使ってくれてるんだな。

「分かった、そうするよ……」

俺が二階の部屋に戻って少しすると、再び一階が騒がしくなる。

俺は昨日、本当に何を仕出かしたんだろう?

いや、知らないほうがいいのかも知れない……。

やっぱり俺は酒を飲まないほうがいいのだろうさ。

うん、そうしよう……。

あれ、ベッドに何かあるな?

俺はそれを拾って広げて見た。

ブラジャーとパンティーだ。

「なんで!?」


【つづく】
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