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第188話【アスランの連勝】
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ダグラス・ウィンチェスターは、苦々しい顔でベンチに座りながら四角い頭を揺さぶるようにトントンと手の平で叩いていた。
その後ろからジャンヌがヒールを掛けている。
ジャンヌが心配そうに訊いた。
「大丈夫ですか、ウィンチェスター様……」
「ああ、ありがとうよ、ジャンヌ……」
ヒールを掛け終わったジャンヌが俺に詰め寄って来る。
「アスランさん、いきなり殴り掛かって、何をするんですか。相手は曲がりなりにも老体なんですよ!!」
ジャンヌは両手に持ったジルドレを突き出しながら俺を怒っていた。
突き出されたジルドレがシャーシャーと言いながら俺の眼前で爪を振るっている。
しかし、俺は正々堂々と言い訳を述べた。
「何を言ってるんだいジャンヌちゃん。最初に斧を投げて来たのは、その四角い爺さんだぞ」
「あー、確かに……」
反論は無いようだ。
ここまであっさり引かれると、なんだか張り合いが無いな。
もっと突っ掛かって来てもらいたいものである。
どうやらジャンヌちゃんは、ツンデレキャラでは無いようだ。
寂しいな~。
ひじょーーに勿体無い……。
M的な俺には刺激が足りないぞ。
そして、ダグラスがベンチから立ち上がると、俺たちに言う。
「ああ、確かにワシから攻撃を仕掛けたんだ。そいつの言う通りだな。謝るべきはワシのほうだわな」
俺の目の前に立ったダグラスが四角い大胸筋を張る。
「だが、謝らねーーぞ、ドアホが!!」
「なんだと、この糞爺!!」
「ちょっと待ってください、二人とも!!」
睨み合う俺たちの間にジャンヌが割って入る。
すると鼻を鳴らしたダグラスが退いた。
「まあ、それよりも、今までのメトロが送り込んできた冒険者よりは骨が有るってのは、よーーく分かったぜ。
でえ、名前は?」
「ソドムタウンのアスランだ」
「俺はダグラス・ウィンチェスターだ。よろしくな」
ダグラスが右手を差し出して来たので俺は握手を返した。
しかし───。
「かかったな!!」
「なに!?」
ダグラスは俺が差し出した手首を両手でガッシリと掴むと飛びかかって来る。
下半身で跳ねると両足を俺の腕と体に絡み付けてきた。
「飛び付き腕十字だと!?」
「この腕は、貰ったぜ!!」
ダグラスの体が俺の腕に絡み付くと、全体重で腕が、体が、強く引っ張られた。
身体が大地に向かって強い力で引っ張られる。
「なろーー!!」
だが俺は、蟹股に体勢を築くと全力で耐えた。
そして、動きが止まる。
ダグラスが逆さまの体勢で驚いていた。
「なに!?」
重力を利用して引っ張っていたダグラスの背中は大地に着いていない。
宙に浮いていた。
俺が飛び付き腕十字を支えるように、片腕だけでダグラスを持ち上げているのだ。
「若者のパワーを、舐めんなよ!!」
「ぬぬぬぬぬぬっ!!」
伊達にマジックアイテムで筋力をアップさせていないぜ。
何よりも、俺の身体は鍛え上げられているんだ。
数々の冒険歴を舐めるなよ。
それがすべてトレーニング以上のトレーニングなんだからよ!!
「おっらぁーーーー!!」
「ななななななっ!!」
俺は腕を高く上げてダグラスを持ち上げた。
ダグラスの体が俺の頭よりも高い位置に上がる。
「覚悟はいいよな、糞爺!?」
「承知のうえだ、餓鬼が!!」
「うらぁぁあああ!!」
「!!!!」
俺はダグラスを地面に向けて振り下ろした。
ダグラスは頭から地面に叩き付けられる。
ゴンッと音が鳴ると同時にゴキッと鈍い音も聴こえた。
「どうだ、糞爺!!」
「…………」
スルリと俺の手から放れたダグラスが、力無いままグッタリと沈む。
動かない。
気絶したかな?
「ダーグーラースーさーまー!!!」
叫んだジャンヌが駆け寄って来て、必死にヒールを施していた。
しかし、ダグラスは白目を剥いたままである。
やっぱり動かない。
三本勝負だとしても、俺の二連勝だ。
よし、これで俺の完全勝利だな。
【つづく】
その後ろからジャンヌがヒールを掛けている。
ジャンヌが心配そうに訊いた。
「大丈夫ですか、ウィンチェスター様……」
「ああ、ありがとうよ、ジャンヌ……」
ヒールを掛け終わったジャンヌが俺に詰め寄って来る。
「アスランさん、いきなり殴り掛かって、何をするんですか。相手は曲がりなりにも老体なんですよ!!」
ジャンヌは両手に持ったジルドレを突き出しながら俺を怒っていた。
突き出されたジルドレがシャーシャーと言いながら俺の眼前で爪を振るっている。
しかし、俺は正々堂々と言い訳を述べた。
「何を言ってるんだいジャンヌちゃん。最初に斧を投げて来たのは、その四角い爺さんだぞ」
「あー、確かに……」
反論は無いようだ。
ここまであっさり引かれると、なんだか張り合いが無いな。
もっと突っ掛かって来てもらいたいものである。
どうやらジャンヌちゃんは、ツンデレキャラでは無いようだ。
寂しいな~。
ひじょーーに勿体無い……。
M的な俺には刺激が足りないぞ。
そして、ダグラスがベンチから立ち上がると、俺たちに言う。
「ああ、確かにワシから攻撃を仕掛けたんだ。そいつの言う通りだな。謝るべきはワシのほうだわな」
俺の目の前に立ったダグラスが四角い大胸筋を張る。
「だが、謝らねーーぞ、ドアホが!!」
「なんだと、この糞爺!!」
「ちょっと待ってください、二人とも!!」
睨み合う俺たちの間にジャンヌが割って入る。
すると鼻を鳴らしたダグラスが退いた。
「まあ、それよりも、今までのメトロが送り込んできた冒険者よりは骨が有るってのは、よーーく分かったぜ。
でえ、名前は?」
「ソドムタウンのアスランだ」
「俺はダグラス・ウィンチェスターだ。よろしくな」
ダグラスが右手を差し出して来たので俺は握手を返した。
しかし───。
「かかったな!!」
「なに!?」
ダグラスは俺が差し出した手首を両手でガッシリと掴むと飛びかかって来る。
下半身で跳ねると両足を俺の腕と体に絡み付けてきた。
「飛び付き腕十字だと!?」
「この腕は、貰ったぜ!!」
ダグラスの体が俺の腕に絡み付くと、全体重で腕が、体が、強く引っ張られた。
身体が大地に向かって強い力で引っ張られる。
「なろーー!!」
だが俺は、蟹股に体勢を築くと全力で耐えた。
そして、動きが止まる。
ダグラスが逆さまの体勢で驚いていた。
「なに!?」
重力を利用して引っ張っていたダグラスの背中は大地に着いていない。
宙に浮いていた。
俺が飛び付き腕十字を支えるように、片腕だけでダグラスを持ち上げているのだ。
「若者のパワーを、舐めんなよ!!」
「ぬぬぬぬぬぬっ!!」
伊達にマジックアイテムで筋力をアップさせていないぜ。
何よりも、俺の身体は鍛え上げられているんだ。
数々の冒険歴を舐めるなよ。
それがすべてトレーニング以上のトレーニングなんだからよ!!
「おっらぁーーーー!!」
「ななななななっ!!」
俺は腕を高く上げてダグラスを持ち上げた。
ダグラスの体が俺の頭よりも高い位置に上がる。
「覚悟はいいよな、糞爺!?」
「承知のうえだ、餓鬼が!!」
「うらぁぁあああ!!」
「!!!!」
俺はダグラスを地面に向けて振り下ろした。
ダグラスは頭から地面に叩き付けられる。
ゴンッと音が鳴ると同時にゴキッと鈍い音も聴こえた。
「どうだ、糞爺!!」
「…………」
スルリと俺の手から放れたダグラスが、力無いままグッタリと沈む。
動かない。
気絶したかな?
「ダーグーラースーさーまー!!!」
叫んだジャンヌが駆け寄って来て、必死にヒールを施していた。
しかし、ダグラスは白目を剥いたままである。
やっぱり動かない。
三本勝負だとしても、俺の二連勝だ。
よし、これで俺の完全勝利だな。
【つづく】
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