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第146話【髑髏魔法使い】

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俺は現在のところ迷路スペース内をヒソヒソと隠れながら行動していた。

俺がスケルトンウォリアーを三体ほどぶっ倒したら髑髏魔法使いの野郎がファイアーボールを撃ち込んで来やがったんだ。

仲間のスケルトンウォリアーを巻き込むように俺を狙ってチュドーーンって感じにだよ。

凄い爆風でしたわ。

最初の一発目でスケルトンウォリアーは全滅ですよ。

超強力な範囲魔法ですわ。

仲間を巻き込むなんて、なんて酷い外道でしょうね。

そのあとにタイマンとなったから俺が髑髏魔法使いに飛び掛かろうとしたけれど、二発三発とファイアーボールをガンガン投げて来やがって近付けやしないんだ。

もうメチャクチャな魔法乱打でしたわ。

それで仕方無く俺は、後退して迷路内に逃げ込んだってわけですよ~。

弓矢のような飛び道具は、魔法の効果で弾かれるので役に立たないし、おそらくマジックアローのような魔法攻撃もレジストされて無効化されるだろう。

遠距離攻撃は効かないと思う。

しかし近距離に近付くのも難しい。

あのファイアーボールの爆風は半端じゃあないのだ。

あいつのオリジナルなのかは知らないけれど、かなり爆風が強化されている。

何らかの魔法効果で強化されていそうなんだわ。

幸いなのは、あの髑髏魔法使いは足を痛めているのか、びっこを引いてやがる。

歩行速度がとても遅い。

それと、あの骸骨頭にマジックトーチ付きの矢が突き刺さっていることだ。

アンデッドは視力で物を見ていないのだろう。

片目に光る矢が刺さっていても関係ないようだ。

その明かりが目印と代わって、迷路内でヤツが近付いて来ても分かるってわけだよね。

しかし、最大の問題は、やっぱりファイアーボールだ。

迷路の曲がり角に俺が潜んで待っていても、何故か感ずいてファイアーボールを投げてきやがる。

直撃こそ免れているから無事だが、完全命中していたら一発で瀕死に追い込まれそうだわ。

さて、このピンチな状況を、どう攻略したものか。

やっぱり自力が無理なら他力本願かな?

あの天井から落ちて来た石板みたいなトラップでもあれば楽なんだが、そうそう都合の良い物はありゃしない。

ならば持久戦かな?

あの矢を反らす魔法も無限じゃあなかろう。

自力の魔法か、それともマジックアイテムなのかは分からんが、回数は固定のはずだ。

こっちには矢が1000本近くあるんだ。

流石に1000回は矢を弾けまい。

ならば直線状の廊下で矢を放つ。

ファイアーボールの届く間合い外ならば数本ずつ撃てるだろう。

俺はロングボウ+1を構えて長い廊下の奥で待った。

曲がり角の向こうからマジックトーチの明かりが近付いて来る。

曲がり角から髑髏魔法使いが見えたら矢を連続発射だ。

さあ、来い!

俺が気合いを込めて矢を引いて待つと、骸骨魔法使いがびっこを引きながら、曲がり角を曲がって姿を表した。

魔法の矢で光る骸骨。

びっこを引いていた。

古びているが上品なローブ。

片手でついた禍々しいスタッフ。

その一望から、やはりながら高レベル魔法使いだ。

こいつが二人目の英雄クラスのアンデッドだろう。

魔法使いの英雄だ。

「食らえ!」

俺は20メートルほどの距離から矢を放った。

この距離なら魔法は届かないはずだ。

しかし、髑髏魔法使いがスタッフを光らせる。

するとやはり矢は狙いを露骨に外した。

俺は二本目の矢を構えると、即座に放つ。

だがやはり矢は光るスタッフの効果で狙いを外される。

まだ何発か撃てるぞ。

びっこを引いての移動速度は凄く遅いぜ。

ガンガン撃ちまくってやるぞ。

俺は更に三本目の矢を構えた。

そして矢を放った刹那に髑髏魔法使いの姿が消えた。

「えっ!?」

背後!?

テレポートか!!

『にぃぃしゃぁああ!!』

炎だと!?

「ぐぅぁぁあ!!」

髑髏魔法使いが背後から現れて、俺に手を翳すと、俺の全身から炎が沸き上がったのだ。

俺には耐火防御と耐魔法防御のマジックアイテムがある。

この程度ならば堪えられるぞ。

我慢だ!!

ロングボウを捨てて腰のショートソード+1を鞘から抜き出す。

俺は全身を燃やしながら髑髏魔法使いに斬りかかった。

「サンダーエンチャントウェポン!!」

俺は電撃魔法を宿したショートソードで髑髏魔法使いに斬りかかる。

胸を狙って袈裟斬りにショートソードを振るう。

しかし──。

『ぐっる!!』

「消えた!?」

俺の攻撃が空振った。

俺は踵を返して走り出す。

二回目のテレポート先は、おそらく最初に居た場所だろう。

だから俺は走ったのだ。

案の定だ。居やがる。

だが距離は20メートル。

ファイアーボールが飛んで来た。

もう退けない。

俺は魔法に正面からブチ当たった。

爆風が通路内に広がる。

その爆炎の中を俺は走った。

痛いが痛くない!!

熱いが熱くない!!

気合いで堪えられる!!

あと10メートルだ。

「セルフヒール!」

俺が走りながら回復魔法を施していると、二発目のファイアーボールが飛んで来た。

直撃。

再び爆炎が広がった。

まだ堪えられる!!

その爆炎の中から俺は走り出た。

髪の毛が燃えてないか!?

口から煙が出てないか!?

だが、もう少しだぞ!!

あと3メートルだ!!

「りぃぁぁああ!!」

俺はサンダーエンチャントが掛かったショートソードを髑髏魔法使いに向けて投げ付けた。

髑髏魔法使いはスタッフを光らせて、投げられたショートソードを回避する。

バーーカめが!!

回避に魔法を使ったな!!

俺の攻撃ターンが続く。

俺は真横の空間に作り出した異次元宝物庫の穴からロングソード+2を取り出した。

そして、対死人用長剣を横一線に振るう。

髑髏魔法使いはスタッフを盾に俺の攻撃を受けたが、完璧にパワー負けしていた。

大きく体勢を傾ける。

やはり魔力は強くても近接戦ならば俺だろうさ。

「とりゃ!!」

俺の前蹴りが髑髏魔法使いの腹を蹴りつけ後方に飛ばした。

すると髑髏魔法使いは背後の壁に激突してよろめく。

隙だらけだぞ!!

「ヘルムクラッシャー!!」

俺の振るった縦斬りの一打が髑髏魔法使いの頭部を斬り裂いた。

パカリと骸骨が二つに割れて、片方が床に落ちて跳ね上がる。

「勝った!」

しかし──。

髑髏魔法使いのスタッフが俺の眼前に向けられた。

こわっ!!

髑髏の片目がまだ光ってやがる。

『マ、マジックアロー……』

ええっ!!

そう髑髏魔法使いが呟くと同時に髑髏魔法使いの身体が灰となって崩れ落ちた。

スタッフとローブがバサリと床に落ちる。

よ、良かった……。

最後のマジックアローは放たれなかった。

俺も尻餅をついて座り込む。

全身から焦げた煙を上げながらだ。


【つづく】
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